こんにちは。My Garden 編集部です。
初夏から秋深くまで、爽やかなブルーやホワイトの花穂を長く立ち上げ、私たちの目を楽しませてくれるサルビア・サリーファン。イスラエルのダンジガー社によって育種されたこの品種は、従来のブルーサルビア(サルビア・ファリナセア)に比べて圧倒的に花付きが良く、ボリューム感が出ることで大人気です。しかし、冬の足音が聞こえてくると、多くのガーデナーがある悩みに直面します。「このまま屋外の地植えで冬を越せるの?」「それとも鉢上げして室内に取り込むべき?」「冬前にバッサリ切り戻してもいいの?」といった疑問です。
実は私自身、過去に良かれと思って冬前に株を綺麗に剪定してしまい、そのまま枯らしてしまった苦い経験があります。サリーファンは本来、原産地周辺では多年草として扱われますが、日本の厳しい冬、特に霜や凍結には少しデリケートな一面を持っています。しかし、正しい知識とちょっとした準備さえあれば、冬を乗り越え、翌春にはさらに大きく豪華な姿で再会することは十分に可能です。
この記事では、植物生理学的な視点も交えつつ、初心者の方でも実践できる具体的な冬越しテクニックを徹底解説します。寒冷地にお住まいの方から暖地の方まで、それぞれの環境に合わせた最適解を見つけていただけるはずです。
この記事のポイント
- サリーファンの耐寒限界温度と、植物が凍結して枯れるメカニズム
- なぜ「冬前の切り戻し」が厳禁なのか、その生理学的な理由
- 地植え・鉢植え・挿し芽、それぞれの環境に合わせた具体的な防寒プロトコル
- 春の萌芽を見逃さないための観察ポイントと、再生に向けたケア手順
サルビア・サリーファンの冬越しで失敗しない基礎知識
冬越し対策を始める前に、まずは敵(寒さ)と味方(サリーファンの性質)を知ることから始めましょう。なぜ多くの人が冬越しに失敗してしまうのか、その原因の多くは「間違ったタイミングでの手入れ」や「耐寒性の過大評価」にあります。ここでは、植物が冬を生き抜くための基本的な仕組みについて、少し深掘りして解説します。
寒さで枯れる原因と耐寒性レベル
園芸店や苗についているラベルを見ると、サルビア・サリーファンの耐寒性について「半耐寒性(Semi-hardy)」と記載されているのをよく見かけます。しかし、この「半」という言葉が曲者なんですよね。具体的に何度まで耐えられるのか、という明確な基準は曖昧になりがちで、私たちガーデナーを悩ませる要因の一つです。
一般的に、サリーファンの耐寒温度の目安はマイナス5℃(-5℃)前後とされています。しかし、「気温計が-5℃にならなければ大丈夫」と単純に考えるのは危険です。なぜなら、植物が枯れる原因は気温だけではないからです。
植物の体内で起きている「凍結」の恐怖

植物が寒さで枯れるとき、体の中では何が起きているのでしょうか。実は、単に「冷たい」から枯れるのではなく、物理的な「破壊」と「脱水」が主な原因です。
気温が氷点下になると、植物の細胞内や細胞同士の隙間(細胞間隙)にある水分が凍り始めます。水は凍ると氷になりますが、その際に体積が増えますよね。植物の体内でできた鋭利な氷の結晶が、柔らかい細胞膜を内側から突き破ってしまうことがあります。これを「細胞内凍結」と言い、一度これが起こると細胞は壊死し、元に戻ることはありません。
また、細胞の外側で水分が凍ると、今度は細胞の中から水分が引き抜かれてしまい、極度の脱水状態(乾燥害)に陥ります。これを「細胞外凍結」と言います。冬場に土が湿っているのに植物がシナシナに枯れてしまうのは、この脱水が原因であることが多いのです。
風と霜が体感温度を下げる
さらに注意したいのが「寒風」と「霜」です。私たち人間も、風速1m/sの風が吹くと体感温度が1℃下がると言われますが、植物も同じです。冷たい北風が吹き付ける場所では、気温が0℃でも、植物の表面温度はマイナス数度まで下がることがあります。また、霜が葉や茎に付着すると、そこから急速に冷却が進み、組織が壊死してしまいます。
つまり、マイナス5℃というのはあくまで「無風状態で、かつ急激な温度変化がない場合」のギリギリのラインだと考えてください。安全マージンを取るなら、マイナス3℃を下回る予報が出た時点で、何らかの対策が必要だと思ったほうが無難です。
冬前の切り戻しは行わないのが正解

冬越しで最も多い失敗例、そして私がかつて犯した過ち、それが「冬支度としての強剪定(切り戻し)」です。「枯れ込んだ枝があると見栄えが悪いし、病気の原因になりそうだから、冬前に地際でバッサリ切ってスッキリさせよう」と考えがちですが、サリーファンに関してはこれが命取りになります。
サルビア・サリーファンの場合、本格的な冬が来る前の切り戻しは絶対に行ってはいけません。
その理由は、植物の生理機能と構造的な防御システムに深く関係しています。
1. 傷口は「冷気」と「病原菌」の高速道路

植物の茎の中には、水分や養分を運ぶための「維管束(いかんそく)」というパイプが通っています。生育期であれば、剪定をしてもすぐにカルス(癒傷組織)が形成されて傷口が塞がりますが、晩秋から冬にかけて植物は休眠に向かっているため、修復能力が極端に低下しています。
この時期に太い茎をバッサリ切ってしまうと、傷口がいつまでも塞がらず、そこが開いたままの状態になります。すると、そこから氷点下の冷気がパイプを通って株の深部、つまり生命維持に最も重要な「クラウン(株元)」まで直接届いてしまうのです。本来なら守られるべき心臓部が、内側から凍結してしまうようなものです。
また、雨が降ればその傷口から水が入り込み、腐敗菌やカビが侵入する「高速道路」となってしまいます。冬の間に株元が腐って枯れてしまう原因の多くは、この不適切な時期の剪定にあります。
2. 古い枝葉は最強の「天然断熱材」
もう一つの理由は、物理的な防御機能です。冬の間、サリーファンの地上部は寒さで枯れて茶色くなりますが、この枯れた枝や葉は決して無駄なゴミではありません。これらが幾重にも重なり合うことで、株元の周りに空気の層(デッドエアスペース)を作り出します。
ダウンジャケットが暖かいのと同じ原理で、この空気の層が断熱材となり、放射冷却による地表面の急激な温度低下や、冷たい霜が直接クラウンに降り注ぐのを防いでくれるのです。「枯れ姿は天然の防寒コート」。そう考えて、春の暖かさが安定するまでは、掃除したい気持ちをグッと抑えてそのままにしておくことが、生存率を高める最大の秘訣です。
秋からの水やりと肥料の止め時

植物には、寒さに備えて体質を変化させる「順化(Hardening)」という素晴らしい能力が備わっています。私たち人間が季節に合わせて衣替えをするように、植物も細胞の中身を冬仕様に変えていくのです。このプロセスを助け、強化してあげるのが、秋(10月〜11月)の管理者の重要な役割です。
肥料は「窒素」を断ち、「カリウム」で締める
まず肥料管理ですが、10月に入ったら、葉や茎の成長を促進する「窒素(N)」成分を多く含んだ肥料は完全にストップします。もしこの時期に窒素が効きすぎていると、植物は「まだ成長できる!」と勘違いして、水分を多く含んだ軟弱な芽を伸ばし続けてしまいます。
この「未熟な徒長枝」は、細胞壁が薄く水分も多いため、寒さに非常に弱く、霜が降りれば一発で凍ってしまいます。冬に向けては、植物の体を「硬く、締まった」状態にしなければなりません。そのため、9月下旬頃までに緩効性肥料の効果が切れるように調整しましょう。
一方で、根の張りを良くし、細胞の浸透圧調整を助ける「カリウム(K)」は、耐寒性を高める効果が期待できます。もし与えるのであれば、微粉ハイポネックスのようなカリウム主体の液体肥料を薄めに与える程度にとどめ、11月以降は基本的に無肥料(断肥)で管理して、植物に休眠の合図を送ります。
水やりは「スパルタ」気味にして体液を濃くする
気温の低下とともに、植物の光合成活動や蒸散量は減ってきます。いつまでも夏と同じような感覚で毎日水を与えていると、鉢の中が常に湿った状態になり、根腐れの原因になるだけでなく、致命的なリスクを招きます。
植物の耐寒性を高めるテクニックとして有効なのが、「水やりを控えて、軽い水ストレスを与える」ことです。土を乾燥気味に管理すると、植物は体内の水分を逃すまいとして、細胞内の水分を減らし、代わりに糖分やアミノ酸などの溶質濃度を高めようとします。
これは、真水よりも砂糖水の方が凍りにくいのと同じ原理(凝固点降下)です。植物自身に「天然の不凍液」を作らせるために、秋からは土の表面が乾いてからさらに2〜3日、冬本番は1週間近く待ってから水を与えるくらいの「スパルタ管理」に切り替えましょう。これが、細胞レベルでの凍結防止策となります。
屋外越冬できる地域と条件の目安

「うちは地植えのままでいけるかな?」「やっぱり掘り上げた方がいいかな?」と迷う場合、判断基準となるのがお住まいの地域の気候条件です。ここでは、アメリカ農務省が定めた「USDAハードネスゾーン」という指標を日本の気候に当てはめて、より具体的に解説します。
まず、ご自身の地域の「冬の最低気温」が何度まで下がるかを知ることが、すべての対策の出発点です。気象庁のデータなどを参考に、お住まいの地域の「最低気温の平年値」や、過去に記録した「極値」を確認してみてください。
(出典:気象庁『過去の気象データ検索』)
| ゾーン目安 | 最低気温範囲 | 該当地域の例 | 屋外越冬の判定と詳細 |
|---|---|---|---|
| Zone 7以下 | -12℃以下 | 北海道、東北内陸、長野県の高地など | 不可(屋内必須)
地植えでの越冬は物理的に不可能です。霜が降りる前に掘り上げて鉢に移し、室内の凍らない場所へ取り込む必要があります。 |
| Zone 8 | -7℃ 〜 -12℃ | 北関東(宇都宮、前橋など)、東北沿岸部、内陸部の盆地 | 困難(屋内推奨)
強い寒波が来ると-10℃近くになるため、枯死するリスクが高いです。どうしても屋外にする場合は、南側の壁際など特定の場所に限定し、厳重な防寒が必要です。 |
| Zone 9a | -4℃ 〜 -7℃ | 北関東の平野部、東海・近畿の内陸部 | 条件付き可能
-5℃の境界線エリアです。寒風が当たらない南向きの軒下や、マルチングや不織布による保護があれば越冬可能です。 |
| Zone 9b以上 | -4℃以上 | 東京23区、横浜、大阪、名古屋、福岡などの都市部 | 可能
基本的な防寒対策(マルチング等)を行えば、屋外の地植えでも十分に越冬できます。ヒートアイランド現象の恩恵も受けやすいエリアです。 |
都市部の「マイクロクライメイト」を活用する
表の判定はあくまで目安です。実際には、同じ庭の中でも場所によって温度が異なる「マイクロクライメイト(微気候)」が存在します。例えば、家の北側と南側では体感温度が全く違いますし、室外機の風が当たる場所や、風の通り道になっている場所は極端に寒くなります。
東京や大阪などの都市部(Zone 9b)であっても、北風が吹き抜ける場所や、放射冷却で冷え込みやすい開けた場所では注意が必要です。逆に、北関東(Zone 9a)であっても、南向きの壁際で、昼間の太陽熱を蓄えたコンクリートの近くであれば、意外と暖かく越冬できることもあります。ご自宅の庭の中で「冬に雪が一番早く溶ける場所」や「風が当たらない場所」を探し、そこをサリーファンの定位置にしてあげましょう。
地上部を残して根を守る重要性
先ほど「切り戻しはしない」とお伝えしましたが、これは単に「傷口を守る」以上の意味があります。地上部を残すことは、実は春の作業をスムーズにするための重要な「マーカー」としての役割も果たしているのです。
春の「うっかり掘り返し」事故を防ぐ
冬の間、サリーファンは地上部が枯れてしまい、地面の上には茶色い茎だけが残ります。もしこれを地際で綺麗に刈り取ってしまうとどうなるでしょうか。地面には何も目印がなくなってしまいます。
春になり、ガーデニングシーズンが始まると、「あ、ここスペースが空いてる!新しい花を植えよう」と思ってスコップを入れた瞬間、「ガリッ!」と嫌な感触が…。冬越しして生きているサリーファンの根を、自分自身で切断してしまうという悲劇は、実はガーデナーあるあるの一つです。枯れた茎をあえて残しておくことで、「ここにサリーファンが眠っていますよ」という目印になり、春の不用意な掘り返し事故を確実に防ぐことができます。
枯れ姿(ウィンターガーデン)を楽しむ心の余裕
欧米のガーデニング、特にナチュラリスティックな植栽では、冬の枯れた植物の姿(シードヘッドやドライになった茎葉)を「ウィンターガーデン」として鑑賞する文化があります。霜が降りた朝、サリーファンの枯れた花穂や茎に氷の結晶が付き、朝日に照らされてキラキラと輝く姿は、生きている植物ならではの静寂な美しさがあります。
「枯れて汚い」と捉えるのではなく、「冬の庭の構造物(オーナメント)」として捉え直してみると、切り戻さないことへの抵抗感も薄れるかもしれません。「枯れ枝も、春までは大切なガードマンであり、冬の景色の一部」。そう割り切って、春の芽吹きまでじっくりと付き合ってあげてください。
サルビア・サリーファンの冬越し方法と春の再生手順
ここからは、いよいよ実践編です。「地植え」「鉢植え」「挿し芽」という3つのシナリオ別に、具体的な冬越しのアクションプランをご紹介します。ご自身の栽培環境に合わせて、最適な方法を選んでください。
地植えで越冬させるマルチング対策
一度地面に植えてしまった株は、鉢植えのように暖かい場所へ移動させることができません。そのため、その場の環境を少しでも暖かく保ち、地温の低下を防ぐ工夫、すなわち「マルチング」が生命線となります。地植えでの成功率は、このマルチングの質と量で決まると言っても過言ではありません。
1. マルチング資材の選び方と特徴

マルチングに使える資材はいくつかありますが、サリーファンの冬越しに最適なのは「腐葉土」や「バーク堆肥」などの有機質資材です。
| 資材の種類 | 保温性 | 通気性 | 特徴・おすすめ理由 |
|---|---|---|---|
| 腐葉土・バーク堆肥 | ◎ | ◯ | 【推奨】 空気を含んで保温性が高く、分解熱も期待できる。春になったらそのまま土に混ぜ込んで土壌改良材として使えるため、撤去の手間がないのが最大のメリット。 |
| 敷きわら | ◎ | ◎ | 空気の層を多く含むため断熱効果は抜群。ただし、冬の強風で飛び散りやすいため、ネットで押さえるなどの工夫が必要。見た目が少し畑っぽくなる。 |
| ウッドチップ | ◯ | ◎ | 見た目がおしゃれで美観を損なわない。ただし、隙間が大きくなりやすいため、保温効果を高めるにはかなり厚く敷く必要がある。 |
| ビニールマルチ | ◎ | × | 【非推奨】 地温を上げる効果は最強だが、通気性がなく土が蒸れる。過湿を嫌うサリーファンの根腐れを招く恐れがあるため避けるべき。 |
2. 施工のタイミングと具体的な手順
マルチングを行うタイミングは、本格的な霜が降りる直前、関東であれば11月下旬〜12月上旬頃がベストです。早すぎると地温が高くなりすぎて休眠が遅れたり、虫の温床になったりすることがあります。
手順はシンプルですが、「厚み」が重要です。
まず、株元の雑草を取り除き、枯れ落ちた葉などを掃除します。その後、株元(茎の立ち上がり部分)を中心に、直径30cm〜40cmの範囲に、選んだ資材をドーナツ状に敷き詰めます。
この時の厚さは、ケチらずに「5cm〜10cm」を目安にしてください。薄いと断熱効果が得られず、霜柱が立った時に土ごと根が持ち上げられる「凍上(とうじょう)」を防げません。根が持ち上げられて寒風に晒されると、一晩で枯れてしまいます。
3. 不織布による「トンネル」活用術
数年に一度の大寒波が予報された場合や、寒冷地に近いエリアでは、マルチングだけでは不安なことがあります。そんな時は、農業用の不織布(パオパオなど)を株の上からふわりと被せ、四隅を石やピンで固定する「ベタ掛け」や、支柱を立てて覆う「トンネル掛け」が有効です。
不織布はビニールと違って通気性があるため、掛けっぱなしにしても蒸れる心配がありません。これで冷たい風を遮断し、葉や茎の表面温度の低下を数度は食い止めることができます。見た目は少し大袈裟になりますが、大切な株を守るための「緊急避難措置」として覚えておいてください。
鉢植えは軒下や室内へ移動させる
鉢植えで育てている方は、地植えの方よりも圧倒的に有利なポジションにいます。なぜなら、天候や気温に合わせて、植物にとって最適な環境へ「移動」ができるからです。この機動力を最大限に活かしましょう。
1. 「南向きの軒下」が庭の特等席
冬の鉢植え管理の鉄則は、「霜に当てない」「冷たい雨に当てない」「寒風に当てない」の3点です。これらをすべて満たすのが、建物の南側にある軒下です。
軒下は、屋根があることで夜間の放射冷却(地面の熱が空へ逃げる現象)が抑えられ、露地よりも数度気温が高く保たれます。また、雨がかからないため、鉢土の水分量を自分でコントロールでき、乾燥気味に保ちやすくなります。
さらに、建物の外壁(特にコンクリートやタイル)の近くに置くと、昼間に壁が蓄えた太陽熱が夜間に放出される「輻射熱(ふくしゃねつ)」の恩恵を受けられるため、さらに温度が安定します。まさに庭の中の特等席(マイクロクライメイト)です。
2. 根を守る「二重鉢(ダブルポット)」テクニック

鉢植えには一つだけ弱点があります。それは、地面の中に根がある地植えと違い、鉢の側面が直接外気に触れているため、「横から冷やされて根が凍りやすい」ことです。特にプラスチックの鉢や、厚みのない鉢では、外気温と鉢内の温度がほぼ同じになってしまいます。
これを防ぐプロの裏技が「二重鉢(ダブルポット)」です。
今植えている鉢よりも一回りか二回り大きな鉢(または発泡スチロール箱やカゴ)を用意し、その中にサリーファンの鉢をすっぽりと入れます。そして、鉢と鉢の隙間に、くしゃくしゃにした新聞紙、プチプチ(気泡緩衝材)、腐葉土、ヤシ繊維、もみ殻などをぎっしりと詰めます。
これにより、空気の層による魔法瓶のような断熱効果が生まれ、外気の影響を遮断して根を凍結から守ることができます。見た目も、お洒落なバスケットなどを使えばインテリア性が高まります。
3. 室内管理の場合の注意点:暖かすぎはNG
もしZone 8以下の地域にお住まいで、室内に取り込む必要がある場合は、置き場所に注意が必要です。「寒いとかわいそうだから」といって、暖房がガンガンに効いたリビング(20℃以上)に置くのは逆効果です。
暖かすぎると、植物は春が来たと勘違いして休眠から覚めてしまい、日照不足の中でひょろひょろと徒長してしまいます。また、暖房の風が直接当たると極度の乾燥で枯れてしまいます。
理想的な場所は、「暖房を使っていない部屋の、日当たりの良い窓辺」や「玄関」です。室温が5℃〜10℃程度あれば十分です。夜間、窓際は冷え込むので、厚手のカーテンを引くか、窓から少し離す工夫も忘れずに。
寄せ植え管理と枯れた場合の対処
冬のガーデニングの定番であるパンジーやビオラ、ハボタンなどと一緒に、高さのあるアクセントとしてサリーファンを寄せ植えにしている方も多いでしょう。この場合、耐寒性の異なる植物が同居しているため、少し悩ましい問題が発生します。
パンジーやビオラは非常に耐寒性が強く、雪をかぶっても平気で咲き続けますが、サリーファンにとっては過酷すぎます。逆に、サリーファンに合わせて寄せ植え全体を室内に取り込むと、今度はパンジーたちが日光不足や高温で徒長し、花が咲かなくなってしまいます。
A. 救出プラン(推奨):別居させる
もしサリーファンを確実に守り、来年も楽しみたいのであれば、寒さが本格化する前(11月中旬まで)に「救出(掘り上げ)」を行うのが最も確実です。
寄せ植えを一度解体し、サリーファンだけを丁寧に掘り上げて、単独の鉢(少し小さめの鉢でOK)に植え替えます。そして、前述の通り軒下や室内で管理します。寄せ植えの空いたスペースには、寒さに強いストックやキンギョソウなどを補植してあげれば、冬の間も華やかな寄せ植えを楽しめます。
B. 共存プラン:割り切って管理する
「掘り上げるのは面倒」「場所がない」という場合は、そのまま屋外で管理することになりますが、この場合はリスクを許容する必要があります。
サリーファンは冬の間、地上部が枯れて茶色くなります。これを「枯れた=死んだ」と早合点して抜いてしまわず、「今は休んでいるだけ」と割り切り、冬の寄せ植えの「ドライフラワー風オーナメント」として背景に残すスタイルです。
ただし、この場合の管理で注意すべきは水やりです。パンジーは水を欲しがりますが、休眠中のサリーファンは水を吸いません。パンジーに合わせて頻繁に水やりをすると、サリーファンの根が過湿で腐る(根腐れ)リスクが高まります。水やりは、パンジーが少ししおれる直前まで待つなど、できるだけ乾燥気味の管理を心がけてください。
挿し芽で保険の苗を作る方法

「もし外の親株が大寒波で全滅してしまったらどうしよう…」という不安を解消する最強のリスクヘッジ、それが「挿し芽(挿し木)」によるバックアップ(保険)作りです。親株が大きいと室内に入れる場所がありませんが、小さな挿し芽苗なら、3号ポット(直径9cm)サイズで管理できるため、窓辺のちょっとしたスペースで冬越しが可能です。
1. 挿し芽の適期と準備
挿し芽の成功率が高いのは、9月下旬〜10月上旬、最高気温が25℃以下、最低気温が15℃以上くらいの時期です。真冬になってからでは発根しないので、秋の早めの準備が肝心です。
用意するものは、よく切れるハサミ、挿し木用土(赤玉土小粒やバーミキュライトなどの清潔で肥料分のない土)、3号ポットです。
2. 具体的な手順
- 挿し穂の採取: 病気のない元気な枝の先端を、10cm〜15cmほどの長さでカットします。これを「天芽(てんめ)」と言い、成長ホルモンが多いため発根しやすい部分です。
- 調整: 下半分の葉を取り除きます。上部の葉が大きい場合は、蒸散を抑えるために半分にカットします。蕾や花がついている場合は、エネルギーを消費してしまうので全て取り除きます。
- 水揚げ: カットした枝を、1時間ほどコップの水に挿して吸水させます(水揚げ)。
- 挿す: 用土に割り箸などで穴を開け、枝を優しく挿します。指で周りの土を押さえて安定させ、たっぷりと水をやります。
3. 冬越しの管理
挿してから2〜3週間ほどは、直射日光の当たらない明るい日陰で、土を乾かさないように管理します。新芽が動き出し、ポットの底から根が見えてきたら発根成功です。
発根した小苗は、寒くなる前に室内の明るい窓辺に取り込みます。親株よりも寒さに弱いので、屋外放置は厳禁です。水やりは控えめにし、肥料は与えずに春を待ちます。
万が一、屋外の親株が枯れてしまっても、この「保険の苗」があれば、遺伝子を受け継いだクローンとして来春からまたスタートできます。私は毎年、親株の冬越しに挑戦しつつ、必ず3〜4本の挿し芽苗を作って精神的な安定を得ています。
春の切り戻しと植え替えのタイミング
長い冬を耐え抜き、3月に入って日差しが暖かくなり、桜の便りが聞こえる頃になると、いよいよサリーファンの目覚めの時です。ここからの初動が、その年の開花パフォーマンスを決定づけます。
1. 萌芽(ほうが)のサインを見逃さない

関東平野部では、3月中旬〜4月上旬頃になると、枯れ木のようだった株元から変化が現れます。地際の土の中から、鮮やかな緑色の小さな新芽(シュート)が顔を出したり、枯れたように見える古い茎の節々から、小さな緑の芽が吹き出してきたりします。
この「萌芽」を確認するまでは、まだ植物は半休眠状態です。焦って水をやりすぎたり、肥料を与えたりせず、じっと見守ってください。
2. 春の切り戻し(リセット剪定)の実践
新芽の動きを確実に確認できたら、いよいよ冬の間お世話になった「防寒コート(枯れた地上部)」を脱ぐ時間です。
地際から元気な新芽が出ている場合は、枯れた古い茎を地際数センチ(新芽のすぐ上)でバッサリと切り取ります。これを「更新剪定」とも呼びます。もし地際から芽が出ておらず、茎の途中から芽が出ている場合は、その元気な芽の上でカットします。
この作業により、株元に日光と風がたっぷりと当たるようになり、新芽の成長スイッチが完全にオンになります。この劇的な変化を見るのが、冬越しに成功したガーデナーだけの特権です。
3. 植え替えと施肥でロケットスタート
剪定が終わったら、次は根のケアです。鉢植えの場合は、冬の間に土が古くなったり、根詰まり気味になったりしていることが多いため、一回り大きな鉢に植え替えるか、古い土を落として新しい培養土で植え直します。
このタイミングで、緩効性肥料(マグァンプKなど)を元肥としてしっかりと土に混ぜ込みます。さらに、新芽が展開し始めたら、即効性のある液体肥料を1週間〜10日に1回与え始めます。
地植えの場合も、株周りの土を軽くほぐし、完熟堆肥や腐葉土をすき込んで土壌をふかふかにし、追肥を行うことで、5月からの爆発的な開花エネルギーをチャージさせましょう。
サルビア・サリーファンの冬越し成功の要点
最後に、これまでの内容をまとめます。情報量が多くなりましたが、以下の5つのポイントさえ押さえておけば、サリーファンの冬越しは決して恐れるものではありません。
- 「-5℃」がデッドライン。お住まいの地域がこれより下がるなら、無理せず室内へ避難させるか、厳重な防寒を。
- 秋以降は「窒素肥料」を切り、「水やり」を減らす。植物体を硬く締めて、細胞レベルで耐寒性を高める順化を行う。
- 冬前の強剪定は絶対NG!枯れた地上部は、クラウンを守る天然の防寒着として、春の萌芽まで大切に残す。
- 地植えは厚さ5〜10cmのマルチングで根を守り、鉢植えは南向きの軒下&二重鉢で霜と寒風を避ける。
- どうしても心配なら、秋のうちに挿し芽で小さな「保険の苗」を作っておくのが賢いリスクヘッジ。
手をかけて冬を越した2年目の株は、根の張りが段違いに良く、株張りも立派になります。初夏に立ち上がる花穂の数とボリュームは、1年目の苗とは比べ物にならないほどの迫力を見せてくれるはずです。
あの美しいブルーオーシャンを再び自宅の庭で再現するために、ぜひ今年の冬は「守りのガーデニング」に挑戦してみてくださいね!
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