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失敗しないひまわりの種の取り方!収穫時期や保存のコツを解説

ひまわりの種 取り方1  収穫時期を迎え、種がびっしりと詰まったひまわりの花盤 ひまわり
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こんにちは、My Garden 編集部です。

夏の花壇を元気に彩ってくれたひまわりも、季節が進むにつれて頭を垂れ、いよいよ種採りのシーズンがやってきますね。あの大きな花の中にびっしりと詰まった種を見ると、なんだか豊かな気持ちになりませんか?

でも、いざ収穫しようと思うと、「具体的にいつ取ればいいの?」「花が枯れるまで待っていたら、カビたり腐ったりしないかな?」と不安になることはありませんか。実際に、タイミングを少し間違えただけで、せっかく取った種が中身スカスカだったり、保存中にカビだらけになってしまったりという失敗は意外と多いんです。

また、来年のために上手に保存して発芽率を高めるプロのコツや、栄養満点のスーパーフードとして美味しく食べるための加工方法も気になるところですよね。この記事では、そんな「ひまわりの種の取り方」に関するあらゆる疑問や悩みを、植物の生理学的な視点も交えつつ、初心者の方にもわかりやすく徹底解説していきます。

この記事のポイント

  • ベストな収穫のタイミングを外見の変化から正確に見極める方法
  • カビや腐敗を防ぎながら長期保存するための乾燥と管理のコツ
  • 中身が入っていない「しいな」を防ぐための栽培管理と受粉の工夫
  • 収穫した種を美味しく食べるための下処理とローストレシピ
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 失敗しないひまわりの種の取り方と収穫時期

せっかく愛情を込めて育てたひまわりですから、充実した種をしっかりと収穫したいですよね。ここでは、種が十分に熟して収穫に最適となるタイミングの見極め方や、失敗の原因となりやすい乾燥不足や「しいな」への対策について、具体的なサインとともに解説していきます。

 ベストな収穫時期を見極めるサイン

ひまわりの種 取り方2  ひまわりの種の収穫時期を判断するための花盤裏側の色の変化(緑・黄・茶)

ひまわりの種を収穫する上で最も大切なのは、植物が出す「もう準備ができたよ」というサインを見逃さないことです。気持ちとしては「早く収穫して安心したい」と思うかもしれませんが、ここはぐっと我慢が必要です。

早すぎる収穫は、種の中身が未熟でシワシワになってしまう最大の原因です。種子の中にある「胚(はい)」や「胚乳(はいにゅう)」が十分に育っていない段階で親株から切り離してしまうと、乾燥させた時に水分だけが抜けてペシャンコになってしまいます。逆に、遅すぎると過乾燥で地面に落ちてしまったり、カビや鳥に食べられるリスクが高まります。

まず注目すべきは、花の裏側にある総苞(ガク)の部分です。開花中のひまわりのガクは鮮やかな緑色をしていて、水分をたっぷり含んでいますが、種が熟すプロセスに入ると、この色が劇的に変化します。最初は緑色が薄くなり、徐々に黄色(レモンイエロー)に変わり、最終的には褐色(茶色)へと枯れていきます。この花盤の裏側全体が黄色くなり、さらに茶色の斑点が広がって全体が枯れ色になってきた頃が、植物からの水分供給がストップし、種が自立した状態になった合図です。

また、視覚的な変化だけでなく、種自体の硬さを確認することも非常に重要な指標になります。花盤の中心付近や外側の種を数粒ピンセットや指で取ってみて、指先で強く押してみてください。もし、爪を立てても全く凹まず、カチカチに硬化していれば、中身の栄養分(デンプンや脂質)が限界まで蓄えられた証拠です。逆に、少しでも柔らかかったり、押した時に「プヨッ」として乳白色の汁が滲み出たりする場合は、まだ登熟(とうじゅく)の途中です。この段階で収穫してしまうと、乾燥させた時に中身が縮んでしまい、発芽能力のない種になってしまいます。

一般的に、開花してから種が完熟するまでは約1ヶ月半から2ヶ月ほどの時間を要します。「花が散ったからすぐ収穫」ではなく、そこからじっくりと種を育てる期間があることを覚えておいてくださいね。

収穫サインのチェックリスト

観察する場所 収穫にはまだ早い状態 収穫OKのサイン(適期)
花びら(舌状花) 萎れてついている 完全に乾燥して脱落している
首の角度 横や上を向いている 重みでガクッと真下を向いている
裏側(ガク) 緑色・黄緑色 全体が黄色〜褐色・茶色
種の硬さ 爪で押すと凹む・汁が出る 黒く光沢があり、石のように硬い

花が枯れるまで待つ際の重要ポイント

ひまわりの種 取り方3 鳥害から種を守るためにネットや不織布を被せて保護したひまわりの花

収穫時期を待つ間、ただ放置しておけば良いというわけではありません。この1ヶ月以上の「待機期間」こそが、良質な種を得られるかどうかの分かれ道となります。特に注意したいのが、雨と鳥による被害です。

種が熟して脂質を蓄え始めると、スズメやカワラヒワなどの野鳥たちは敏感にそれを察知し、美味しいご馳走として狙いを定めます。彼らの「美味しい時期」を見抜く能力は凄まじく、油断していると、朝起きたら種が一つも残っていなかった、なんて悲劇も珍しくありません。

これを防ぐためには、花びらが散り始めた段階で、花盤全体にタマネギネットや不織布、防鳥ネットを被せて物理的にガードするのが最も確実でおすすめです。ネットを被せることで、鳥のクチバシが届かなくなるだけでなく、完熟して自然にポロリと落ちてしまう種をネットの底で受け止める役割も果たしてくれます。通気性の良いタマネギネットや台所用の水切りネットは、蒸れを防ぎつつ種を守れる優秀なアイテムです。

また、この時期は秋の長雨や台風のシーズンとも重なりがちです。ひまわりは種が重くなると首を垂れますが、これは雨水が花盤(ディスク)の上に溜まって腐敗するのを防ぐための、植物の賢い生存戦略でもあります。しかし、それでも何日も雨が降り続くと、高い湿度によってカビが発生するリスクがあります。

鉢植えで育てている場合は、雨の予報が出たら軒下やベランダの奥など、雨の当たらない場所に移動させてあげましょう。地植えの場合は移動ができませんが、枯れた葉っぱをこまめに取り除いて風通しを良くしたり、首がしっかり下を向いているか確認したりするだけでも、生存率は変わってきます。もし、あまりにも雨が続きそうで、かつ種がほぼ熟しているようであれば、少し早めに切り上げて収穫し、雨の当たらない場所で追熟(ついじゅく)させるという判断も必要になってくるかもしれません。

 中身がスカスカになる原因と対策法

ひまわりの種 取り方4 実入りを良くするために筆を使ってひまわりの人工授粉を行っている作業風景

いざ収穫して殻を割ってみたら、「中身が入っていない(スカスカ)」だったという経験はありませんか?殻はあるのに中身の仁(胚)が形成されていないこの状態は、「しいな(粃)」や「不稔(ふねん)」と呼ばれ、家庭菜園での種採りで最も多い失敗の一つです。この原因は、主に「受粉不良」「栄養バランスの偏り」の二点に集約されます。

まず受粉についてですが、ひまわりは基本的に「他家受粉」といって、自分自身の花粉ではなく、他の株の花粉を受粉することで種を作る性質(自家不和合性)を持っています。自然界ではミツバチなどが花粉を運んでくれますが、マンションの高層階や都市部など、訪花昆虫が少ない環境では受粉がうまくいかないことが多々あります。

これを防ぐには、開花時期に人の手で優しく花を撫でたり、筆や綿棒を使って花粉を広げたりする人工授粉が効果的です。特に、Aのひまわりの花粉をBへ、Bの花粉をAへというように、異なる株同士で花粉を交換(異株間授粉)させてあげると、受精率が上がり、中身の詰まった立派な種ができやすくなります。花粉の活動が活発な午前中に行うのがベストです。

次に栄養バランスです。植物を育てる肥料の三大要素には、葉や茎を育てる「窒素(N)」、花や実を育てる「リン酸(P)」、根を育てる「カリ(K)」があります。この中で、窒素成分が多い肥料を与えすぎると、植物は体を作ることにエネルギーを使いすぎてしまい、子孫を残す(種を作る)ことを後回しにしてしまいます。これを「つるぼけ」と言います。

逆に、実や種を育てるために不可欠なのが「リン酸(P)」です。花が咲く前の段階で、骨粉入り肥料やバットグアノなど、リン酸分を多く含む肥料を追肥として与えることで、種子の充実を助けることができます。土壌中のリン酸は植物が吸収しにくい形になりやすいため、微生物を含む堆肥と一緒に施すのも効果的です。

品種による違いに注意
最近人気の「ミニひまわり」や「F1品種(一代交配種)」の中には、そもそも種ができにくい、あるいは種ができないように改良された品種も存在します。また、F1品種から採れた種を翌年蒔いても、親と同じような花が咲かない(先祖返りする)ことがあるので、種採りをする際は育てている品種の特性を事前に確認しておくと安心です。

 カビを防ぐための予備乾燥の手順

ひまわりの種 取り方5 カビを防ぐために茎を縛って逆さまに吊るして予備乾燥させているひまわりの様子

適切な時期に収穫できたとしても、その後の処理を間違えると、あっという間に種をダメにしてしまいます。収穫した直後のひまわりの花盤には、私たちが想像している以上に多量の水分が含まれています。これをいきなり密閉容器に入れたり、風通しの悪い場所に積み重ねたりすると、種自身の呼吸熱と水分で蒸れてしまい、内部からカビが発生したり、カビ毒が生成されたりする原因になります。

そこで非常に重要になるのが、収穫直後の「一次乾燥(予備乾燥)」という工程です。収穫したら、種を外さずにまずは花盤(顔のような丸い部分)のまま徹底的に乾燥させます。花盤につけたまま乾燥させる理由は、収穫直後の種は水分を多く含んで柔らかく、無理に外そうとすると傷ついてしまうからです。

天気の良い日が続く週間予報が出ているなら、直射日光に3日〜1週間ほど当てて天日干しにするのが最も効率的です。強力な紫外線に当てることで、表面についた雑菌を殺菌する効果も期待できます。

干し方は、茎を紐で縛って逆さまに吊るすか、ザルや新聞紙の上に重ならないように並べます。ただし、ここで絶対に気をつけなければならないのが夜間の管理です。秋の夜長は気温が下がり、夜露が発生しやすくなります。昼間カラカラに乾かしても、夜露で濡れてしまっては元も子もありません。夕方になり日が陰ってきたら、必ず玄関や室内に取り込む習慣をつけましょう。

もし、食用にする目的で油脂分の酸化を防ぎたい場合や、天候が不安定で雨が続きそうな場合は、最初から「陰干し」を選択するのも賢い方法です。雨の当たらない軒下や、室内の風通しの良い場所に吊るします。室内干しの場合は、扇風機やサーキュレーターの風を弱く当て続け、常に空気が動いている状態を作ってあげると、カビのリスクを劇的に下げることができます。

 茎を長く残して切る理由と方法

ひまわりの種 取り方6 後熟効果を得るために花から30cm下の位置で茎を切断するひまわりの収穫方法

いよいよ収穫という時、あなたはどのあたりで茎を切りますか?花のすぐ真下で「チョキン」と切ってしまうのは、実は少しもったいない切り方かもしれません。プロの農家や熟練の園芸愛好家は、あえて茎を30cmほど長く残して切断します。

なぜ邪魔になる茎をわざわざ残すのか。それには明確で科学的な理由が2つあります。ひとつは、乾燥作業の実用面です。先ほど説明したように、収穫後は吊るして乾燥させるのが一般的ですが、茎が長ければそこに麻紐などを結びつけて簡単に吊るすことができます。短いとネットに入れたりカゴに並べたりする必要があり、場所を取ってしまいます。

そしてもうひとつ、こちらがより重要なのですが、「後熟(こうじゅく)」という効果を期待するためです。植物には、本体から切り離された後も、茎や葉に残っている養分や水分を、生き残るために種子(次世代)へと送り続けようとする性質があります。これを転流(トランスロケーション)と呼びます。茎を長く残しておくことで、そこにある「最後の栄養分」がじわじわと種に移動し、より実の詰まった充実した種に仕上がるのです。

切る時は、切れ味の良い清潔な剪定ばさみを使用してください。スパッと切ることで雑菌の侵入を防げます。また、茎についている大きな葉っぱは、乾燥の妨げになるため全て取り除いておきましょう。こうして「茎付き」の状態でしばらく吊るして乾燥させるのが、プロのような高品質な種を採るための秘訣です。

 収穫後のひまわりの種の取り方と保存や活用

しっかりと乾燥させたら、次はいよいよ種を外して保存や利用の準備を進めましょう。カビや腐敗を防ぐためには、乾燥工程と同じくらい、この「脱穀(だっこく)」と「選別」のプロセスが重要になります。ここでは、大量の種を効率よく、かつきれいに外すためのプロ並みのテクニックや、来年の種まきまで高い発芽率を維持するための保存の鉄則、そして栄養満点のスーパーフードとしてひまわりの種を美味しく安全に食べる方法について、詳しくご紹介していきます。

 網を使って簡単に種を外すコツ

ひまわりの種 取り方7 焼き網を使って乾燥したひまわりの種を効率よく脱穀している作業の様子

一次乾燥が順調に進み、花盤の裏側が完全に茶色くなり、水分が抜けて軽くなっていれば、脱穀の準備は完了です。試しに種を指で触ってみて、ポロリと簡単に取れるようであれば作業を開始しましょう。数個程度なら指で弾いて外すこともできますが、大きなひまわりの花盤には、数百から場合によっては一千個以上の種が密集しています。これらをすべて指先で外そうとすると、指が痛くなるだけでなく、爪の間に入って怪我をしてしまうこともあります。

そこでおすすめなのが、「金網」を利用した脱穀テクニックです。用意するのは、バーベキュー用の焼き網や、キッチンの魚焼きグリルの網、あるいは100円ショップで手に入る目の粗い金網などです。方法はとてもシンプルで、網の上に花盤の種がついている面を押し当て、大根おろしをするような要領でゴリゴリと擦りつけるだけです。

こうすることで、網の金属部分が種の根元に引っかかり、面白いようにバラバラと種が外れていきます。手で外すよりも圧倒的に早く、しかも種を潰さずにきれいに取ることができるので、大量の収穫がある場合には必須のテクニックと言えるでしょう。作業をする際は、細かい花殻や乾燥した茎の破片が飛び散りますので、大きめのビニールシートや新聞紙を敷き、必ず軍手をして手を保護してから行ってください。

もし、同じくらいの大きさの乾燥した花盤が2つある場合は、道具を使わずに「花盤同士を擦り合わせる」という方法も有効です。種がついている面を合わせ、両手で持って互い違いに回すように擦ると、摩擦でお互いの種が外れます。これは昔ながらの知恵ですが、道具の準備がいらず、ゴミも散らかりにくい効率的な方法です。

 ゴミを取り除く風選と選別のやり方

ひまわりの種 取り方8 扇風機の風を利用してひまわりの種とゴミを選別する風選(ふうせん)の仕組み

網を使って豪快に種を外すと、種だけでなく、花の咲いていた跡である「管状花(かんじょうか)」の枯れたカスや、小さな茎の破片、ホコリなどが大量に混ざってしまいます。また、外見は立派な種に見えても、中身が入っていない「しいな(不稔種子)」も混入しています。これらを手作業で一粒ずつ選別するのは気が遠くなる作業ですが、空気の力を利用した「風選(ふうせん)」を行えば、一瞬で解決します。

家庭で風選を行う最も簡単な方法は、扇風機を使うことです。まず、扇風機を「強」モードに設定して固定します。その風の通り道に、新聞紙やブルーシートを縦長に広げておきます。そして、扇風機の風の出口付近で、種を少し高い位置からパラパラとゆっくり落としてみてください。

すると、中身が詰まっていて比重が重い「良質な種」は、風の影響をあまり受けずに真下(手前)に落ちます。一方で、中身のないスカスカな種や、軽い花殻、ゴミなどは、風に吹き飛ばされて遠くの方へ落ちていきます。この「重さの違い」を利用することで、発芽能力のある良い種だけを手前に集めることができるのです。

一度で完全にきれいにならない場合は、この作業を2〜3回繰り返してみてください。驚くほど純度の高い、きれいな種だけが残ります。この工程をしっかりと行うことで、保存中のカビの原因となる有機物を除去でき、翌年の発芽率や、食用にする際の品質が格段に向上します。

昔の農具「唐箕(とうみ)」の原理
この扇風機を使った選別は、かつて日本の農家で広く使われていた「唐箕(とうみ)」という農具と同じ原理です。ハンドルを回して風を起こし、米や麦と籾殻を選別していた先人の知恵を、現代の家電で再現しているわけですね。

 来年まで発芽率を保つ保存方法

ひまわりの種 取り方10 発芽率を維持するために乾燥剤と一緒に密閉容器で保存されたひまわりの種

きれいに選別された種を手に入れると満足してしまいがちですが、実はここからが長期保存における正念場です。「去年採った種を大切にしまっておいたのに、春に蒔いたらほとんど芽が出なかった」という失敗談は後を絶ちません。その最大の原因は、保存中の「湿気」による品質劣化です。種は休眠状態にあっても微弱な呼吸を続けており、湿気が多いと呼吸が活発になりすぎて、蓄えていたエネルギーを使い果たしてしまうのです。

長期保存を成功させるための鉄則は、「徹底的な乾燥(二次乾燥)」「低湿度・低温環境の維持」です。風選が終わった種は、さらに数日間、風通しの良い日陰で乾燥させます。この「二次乾燥」では、種の中の水分を極限まで抜くことが目的です。乾燥完了の目安は、種を割った時に「パキッ」と乾いた高い音がすること。爪で押して少しでも湿り気を感じるようでは乾燥不足です。

十分に乾燥したら、湿気を遮断できる密閉容器に入れます。茶筒やジャムの空き瓶などが適していますが、ジップロックなどの保存袋を使う場合は、微細な穴から湿気が入るのを防ぐために二重にすることをおすすめします。

そして、ここで忘れてはいけないのが乾燥剤(シリカゲル生石灰の投入です。お菓子や海苔についてくる乾燥剤を再利用する方もいますが、すでに吸湿能力を失っている場合が多いため、できれば100円ショップやホームセンターで購入できる新しい乾燥剤を使ってください。乾燥剤を一緒に入れることで容器内の湿度を強制的に下げ、カビの発生と種の呼吸を強力に抑制します。

 冷蔵庫を活用したカビない保管場所

密閉容器に入れた種は、どこに置いておくのがベストでしょうか。常温の物置やキッチンの棚などは、夏場の高温や梅雨時の湿気の影響を受けやすく、種の寿命を縮めてしまうリスクがあります。そこで、家庭内で最も安定して種を守れる場所として推奨されるのが「冷蔵庫の冷蔵室」です。

種子の寿命に関する有名な法則に「ハリントンの法則」というものがあります。これによれば、種子の含水率が1%下がるか、あるいは保存温度が5℃下がると、その種子の寿命は約2倍に伸びるとされています。冷蔵庫の冷蔵室は通常2℃〜6℃程度に保たれており、光も入らないため、種子を休眠させたまま長期保存するには理想的な環境なのです。

ここで注意したいのが、「野菜室」には入れないこと。野菜室は野菜の鮮度を保つために湿度がやや高めに設定されていることが多く、乾燥を好む種の保存には不向きです。また、「冷凍庫」での保存は、理論上は数十年単位での保存が可能になりますが、それは含水率を5%以下という極めて低いレベルまで乾燥させた場合に限られます。家庭での一般的な乾燥レベル(含水率10%前後)で冷凍すると、種の中に残った水分が凍結・膨張し、細胞膜を破壊して種を死なせてしまう(凍害)恐れがあります。リスクを避けるためにも、家庭では「冷蔵室」での保存が最も安全で確実です。

 ハムスターや食用にするための下処理

ここまでは「来年蒔くための種」としての保存法を解説してきましたが、ひまわりの種は人間にとっても非常に栄養価の高い優れた食材です。リノール酸(オメガ6脂肪酸)、抗酸化作用のあるビタミンE、葉酸、亜鉛、マグネシウムなどのミネラルが豊富に含まれており、美容や健康維持に役立つスーパーフードとして世界中で愛されています。

ただし、食用にする場合は大前提として「農薬を使わずに育てたもの」、あるいは「食用作物として登録された農薬を適正に使用したもの」に限ります。観賞用の薬剤を使用したひまわりの種は、残留農薬のリスクがあるため絶対に食べないでください。

食べる部分は、白黒の縞模様の殻の中にある「仁(じん)」と呼ばれる白い胚の部分です。海外やメジャーリーグのベンチで見かけるように、殻付きのまま口に入れ、歯と舌で器用に殻を割って中身だけを食べるスタイルもワイルドで楽しいですが、お菓子作りやサラダのトッピングに使うなら、事前に殻を剥く必要があります。

この殻剥き(デ・ハリング)が意外と大変なのですが、大量に処理する場合の裏技があります。種を厚手のビニール袋に入れ、上から麺棒でゴロゴロと強めに転がして殻にヒビを入れます。その後、たっぷりの水に投入してかき混ぜると、比重の軽い殻が水面に浮き上がり、重い中身(仁)が沈みます。浮いた殻をアミですくい取れば、比較的簡単に中身だけを取り出すことができます。

ひまわりの種の栄養価については、公的なデータベースでもその豊富さが確認できます。特にビタミンEの含有量はナッツ類の中でもトップクラスです。

ひまわりの種の栄養について
ひまわりの種(フライ、味付け)には、100gあたり約12mgのビタミンE(α-トコフェロール)が含まれています。これはアーモンドに次ぐ含有量であり、強力な抗酸化作用が期待できます。

 食べるなら知りたいローストのレシピ

ひまわりの種 取り方10 食用のひまわりの種をフライパンで香ばしく乾煎り(ロースト)している調理風景

生のひまわりの種は、そのままだと少し青臭さがあり、食感もしっとりとしていてあまり美味しくありません。また、生の状態では酵素抑制物質が含まれていることもあるため、加熱調理(ロースト)をして食べるのが一般的です。ローストすることで、ナッツ特有の香ばしい風味が引き出され、カリッとした食感を楽しむことができます。

1. シンプルなドライロースト(素焼き)

最も手軽で、種本来の甘みを感じられる方法です。フライパンに油を引かずに、殻を剥いた種(または殻付きの種)を入れます。弱めの中火にかけ、焦げ付かないように木べらで絶えずかき混ぜ続けます。パチパチとはぜる音が聞こえ始め、表面がきつね色になり、香ばしい香りが立ってきたら完成です(約3〜5分)。冷めるとさらにカリッとするので、余熱で焦げないようにお皿に移して冷ましましょう。サラダやヨーグルトのトッピングに最適です。

2. 本格的な塩味の殻付きロースト

市販のスナックのような、中身まで塩味が染み込んだ殻付き種を作りたい場合は、「塩水で煮てから焼く」というひと手間を加えます。
まず、水500mlに対して塩大さじ2杯程度を溶かした濃いめの塩水を作ります。そこに洗った殻付きの種を入れ、15分〜20分ほど弱火で煮込みます。この工程で、浸透圧によって殻の内部まで塩分が入っていきます。
煮上がったらザルにあけて水気を切り、クッキングシートを敷いた天板に重ならないように広げます。200℃に予熱したオーブンで10分〜15分ほど、水分が飛んでカリッとなるまで焼けば完成です。食べ始めると止まらなくなる美味しさですが、カロリーが高いので食べ過ぎには注意してくださいね。

 基本のひまわりの種の取り方まとめ

ここまで、ひまわりの種の収穫から乾燥、脱穀、保存、そして美味しい食べ方までを網羅的に解説してきました。適切なタイミングで収穫し、しっかりと乾燥させてカビを防げば、ひまわりの種は来年への命をつなぐバトンにもなり、私たちの健康を支える栄養源にもなります。

何より、自分で育てた花から種を採るという体験は、ガーデニングの喜びを何倍にも深めてくれるはずです。種を採ることで、植物の命のサイクルを肌で感じることができるでしょう。ぜひこの記事を参考に、今年の夏はひまわりを「咲かせて終わり」にせず、最後まで味わい尽くしてみてください。

この記事の要点まとめ

  • 収穫適期は花盤の裏が黄色〜褐色になり種が硬くなった頃
  • 花びらが散ったら防鳥ネットを掛けて鳥害を防ぐ
  • 中身がスカスカなのは受粉不良やリン酸不足が主な原因
  • 人工授粉や適切な追肥を行うことで実入りが良くなる
  • 収穫は晴れた日に行い茎を30cmほど長く残して切る
  • 切断後も茎からの養分転流(後熟)を期待して乾燥させる
  • 最初は花盤ごと天日干しや陰干しで水分を飛ばす(一次乾燥)
  • 脱穀には焼き肉網などを使うと効率的に種が外せる
  • 扇風機の風を利用した風選でゴミや不稔種子を取り除く
  • 保存用の種はさらにパキッとなるまで乾燥させる(二次乾燥)
  • 長期保存の条件は低湿度・低温・密閉・遮光の4つ
  • 乾燥剤と共に密閉容器に入れ冷蔵庫の冷蔵室で保管する
  • 食用にする場合は無農薬で育てた種を使用することが大前提
  • 食べる時は塩水で煮てからローストすると中まで味が染みる
  • 種は高カロリーなので食べ過ぎず適量を守って楽しむ
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