こんにちは。My Garden 編集部です。
街中がクリスマスムードに包まれる頃、鮮やかな赤色でお部屋を彩ってくれたポインセチア。「冬の間、リビングを明るくしてくれてありがとう」と感謝しつつ、春の訪れとともに少しずつ緑色に戻っていくその姿を見て、「このまま育て続けてもいいのかな?」「葉っぱが落ちてしまったけれど、またあの美しい赤色を見ることができるの?」と、少し不安な気持ちになっている方も多いのではないでしょうか。
実は、ポインセチアは非常に生命力の強い植物です。日本の四季という気候の変化に合わせて、適切なケアをしてあげれば、一年限りではなく、何年も続けて元気に育てることができます。そのために最も重要となるのが、成長期に合わせて行う「植え替え」と、樹形を整える「剪定(せんてい)」という二つの作業です。多くのガーデナーさんが「いつやればいいの?」「どんな土を使えばいいの?」と迷ってしまうこの作業ですが、植物の生理メカニズムに基づいた正しいタイミングと方法さえ知っていれば、決して難しいことではありません。
この記事では、ポインセチアを翌年も元気に咲かせるために不可欠な植え替えの知識を、初心者の方にも分かりやすく、かつ専門的な視点も交えながら徹底的に解説します。失敗しないための土の配合レシピから、具体的な作業手順、そして植え替え後のトラブル対処法まで、この記事一つで全てが分かるように網羅しました。大切なポインセチアを復活させ、次の冬も美しい赤色を楽しむための第一歩を、一緒に踏み出しましょう。
この記事のポイント
- ポインセチアの植え替えに最適な時期がなぜ5月から7月なのかという理由
- 初心者でも失敗しにくい土の配合や根腐れを防ぐ鉢選びのポイント
- 植え替えとセットで行うべき剪定(切り戻し)の具体的な方法と重要性
- 植え替え後の水やりや肥料の与え方など復活させるための管理テクニック
ポインセチアの植え替え時期と最適なタイミング
ポインセチアを長く健康に育てるためには、カレンダー上の日付だけで判断するのではなく、植物が本来持っている「生育サイクル」と「気温」の関係を深く理解し、それに合わせた管理を行うことが最も大切です。ここでは、なぜ特定の時期に植え替えを行わなければならないのか、その生理学的な理由や、準備すべき環境条件について、詳しく掘り下げて解説していきます。
5月から7月が適期である理由

結論から申し上げますと、ポインセチアの植え替えに最も適した時期は、平均気温が安定して20℃前後になる「5月中旬から7月上旬」の間です。これには、ポインセチアの故郷である原産地の環境と、植物としての生理的な特性が深く関係しています。
ポインセチアは、メキシコを中心とする中南米の熱帯・亜熱帯地域が原産です。現地の気候は一年を通して温暖であり、寒さとは無縁の環境で育っています。そのため、ポインセチアは寒さに極めて弱く、日本の冬(11月〜3月)の環境下では、見た目は元気そうでも、植物の体内代謝は著しく低下し、いわば「冬眠(休眠)」に近い状態でじっと耐えています。この休眠期間中は、根が水を吸い上げる力も弱く、傷ついた組織を修復するエネルギーも残っていません。
多くの園芸書やネットの情報では「春になったら植え替え」と書かれていることがありますが、日本の3月や4月上旬は、ポインセチアにとってはまだ「寒い」時期に含まれます。「三寒四温」という言葉があるように、暖かい日があっても夜間は冷え込むことが多く、この時期に慌てて植え替えを行い、根を切ったり土を崩したりすると、休眠から完全に目覚めていない根はダメージを修復することができず、そのまま腐って枯れてしまうリスクが非常に高いのです。
一方で、ゴールデンウィークを過ぎて5月中旬頃になると、日本の平均気温も安定して上昇してきます。気象庁のデータを見ても、東京の5月の平均気温は約19℃〜20℃程度まで上がり、ポインセチアの生育適温である20℃〜30℃の範囲に入ってきます(出典:気象庁『過去の気象データ検索』)。
気温が20℃を超えると、ポインセチアは本格的な「生育期」に入ります。この時期になると、植物ホルモンの働きが活発になり、根は土中の水分や養分を積極的に吸収し始め、新しい枝や葉を伸ばそうとする生命力に溢れています。この「成長しようとする力」が最も強い時期に植え替えを行うことで、多少根が切れてもすぐに新しい根(細根)が伸び、新しい土にしっかりと活着(根付くこと)することができるのです。
また、5月〜6月は日本の「梅雨」の前、あるいは梅雨の時期に重なりますが、実はこれも植え替えには好都合な場合があります。適度な空中湿度があることで、葉からの過剰な水分の蒸散が抑えられ、根への負担が軽減されるからです。ただし、7月中旬以降の「真夏」に入ってしまうと状況は一変します。35℃近い猛暑は植物にとっても過酷なストレス環境であり、この時期の植え替えは根に致命的なダメージを与えかねないため、遅くとも7月上旬までには作業を終えるのが鉄則です。
注意点:真夏の植え替えは避ける
生育期だからといって、30℃を超えるような真夏の猛暑日に植え替えを行うのはおすすめできません。人間が熱中症になるような環境では、植物も体力を消耗しきっています。高温による呼吸量の増加と水分の蒸散過多が重なり、傷ついた根では水分供給が追いつかず、「しおれ」や「枯死」を招く原因になります。もし作業が遅れて7月以降に行う場合は、曇りの日や夕方の涼しい時間帯を選び、直後の遮光管理を徹底してください。
植え替えに適した土の配合と作り方

「どんな土を使えばいいですか?」という質問をよくいただきますが、ポインセチアにとって理想的な土の条件は、「水はけ(排水性)が抜群に良く、かつ適度な保水性があること」です。これは矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、原産地のメキシコでは、岩場や傾斜地など、雨が降ってもすぐに水が抜けていくような場所に自生しています。そのため、常に水でじめじめしている環境を非常に嫌い、排水性の悪い土では根が窒息してしまい、すぐに「根腐れ」を起こしてしまいます。
植物の根も呼吸をしています。土の粒と粒の間に適度な隙間(気相)があり、そこにある酸素を取り込むことで根は健全に機能します。ベタベタした粘土質の土や、微塵(みじん)が詰まった古い土では、この隙間がなくなり、根が窒息死してしまうのです。市販の土をそのまま使うのではなく、ポインセチアの好みに合わせて自分でブレンドしてみたい!という方のために、私が実践している「失敗しない黄金比率」をご紹介します。
| 資材名 | 比率 | 役割と選定の理由 |
|---|---|---|
| 赤玉土(中粒) | 5 | ベースとなる基本用土です。重要なのは「小粒」ではなく「中粒」をメインに使うこと。粒が大きいほど土の間に隙間ができ、新鮮な空気が入りやすくなるため、根腐れ防止に絶大な効果があります。 |
| 腐葉土 | 3 | 広葉樹の落ち葉が発酵したもので、土壌改良の王様です。土をふかふかに柔らかくし、微生物の働きを活性化させます。また、肥料分を保持する力(保肥力)を高める役割も担います。 |
| 酸度調整済みピートモス | 2 | 水苔などが堆積してできた資材で、非常に軽量で保水性が高いのが特徴です。ポインセチアは弱酸性の土を好むため、pHが調整されたものを使用することで、根が栄養を吸収しやすい環境を整えます。 |
さらにこだわりたい方は、この配合に排水性を高める「パーライト」や「軽石」を全体の1割程度混ぜ込んだり、根腐れ防止剤として「珪酸塩白土(ミリオンなど)」を少量加えたりすると、より完璧な用土になります。これらの資材は、土の中に半永久的な空気の通り道を確保してくれるため、長期間栽培しても土が固くなりにくいというメリットがあります。
もちろん、初心者の方で「配合はちょっとハードルが高いかも…」という場合は、無理をする必要はありません。ホームセンターなどで売られている市販の「観葉植物用の土」や「ポインセチア専用の土」を使っても十分に育ちます。
市販の培養土を使う時の裏技
市販の培養土は、商品によっては保水性が高すぎて、水やりを繰り返すと泥のように固まってしまうものがあります。これを防ぐための簡単なテクニックとして、市販の土に「赤玉土(小粒〜中粒)」を2割〜3割ほど混ぜてみてください。これだけで水はけと通気性が劇的に改善され、根腐れのリスクをぐっと減らすことができますよ。ぜひ試してみてくださいね。
根腐れを防ぐための鉢の選び方

植え替えの際に悩むのが「鉢のサイズ」と「材質」ですよね。実は、鉢選びを間違えると、どれだけ良い土を使っても失敗してしまうことがあるほど重要な要素なんです。植物の地上部の大きさだけでなく、根の量に見合った鉢を選ぶことが成功の鍵となります。
まずサイズについてですが、原則として「今植わっている鉢よりも、ひと回り大きなサイズ」を選んでください。具体的には、鉢の直径が3cmから6cm程度(1号〜2号)大きいものです。例えば、現在5号鉢(直径15cm)なら、次は6号鉢(直径18cm)が適正サイズです。
よくある失敗が、「これから大きく育てたいから」とか「何度も植え替えるのは面倒だから」といって、いきなり8号鉢や10号鉢のような大きな鉢に植えてしまうケースです。これを「過大な鉢増し」と言います。鉢が大きすぎると、当然入る土の量も増えます。しかし、まだ小さい株の根では、その大量の土に含まれる水分を吸い切ることができません。その結果、土がいつまでも湿った状態(過湿)が続き、根が呼吸できずに窒息し、最終的に根腐れを起こして枯れてしまうのです。これを「大鉢の害」と呼びます。植物の成長に合わせて、少しずつ鉢を大きくしていく「鉢増し」こそが、健全な根を育てる近道なのです。
次に鉢の材質(素材)です。ポインセチアにとって理想的なのは、鉢の表面に見えない微細な穴が無数に開いていて、空気や水分を通す「素焼き鉢(テラコッタ)」です。鉢自体が呼吸しているため、土の中が蒸れにくく、根に酸素を供給しやすい環境を作れます。特に水やりの加減が難しい初心者の方には、失敗が少ないおすすめの素材です。
とはいえ、素焼き鉢は重くて割れやすい、土が乾きやすいというデメリットもあります。管理のしやすさを優先して「プラスチック鉢」を選ぶ場合は、底の形状に注目してください。通常の丸い排水穴が一つ開いているだけのものではなく、鉢底の角にスリット(切れ込み)が入っている「スリット鉢」が強くおすすめです。スリット鉢は排水性が抜群に良く、さらに根が鉢の中でぐるぐると回ってしまう「サークリング現象」を防ぎ、健康な根を効率よく張らせる構造になっています。サークリングした根は、養分を吸収する効率が悪いため、スリット鉢を使うことで植物の生育が良くなることが実証されています。
植え替えと同時に行う剪定の重要性

植え替え作業を行う際、ぜひセットで行っていただきたいのが、地上部の枝を切る「剪定(切り戻し)」です。「せっかく冬の間に伸びた枝を切るなんてもったいない!」「かわいそう」と思われるかもしれませんが、実はこれこそが、ポインセチアを枯らさずに復活させるための重要な「外科手術」なのです。
植物は、地上部の「枝葉(Top)」と地下部の「根(Root)」の重量バランス(T/R比)を一定に保ちながら生きています。植え替えの際、古い土を落としたり根を整理したりすると、どうしても根の総量が減り、一時的に水を吸い上げる能力が低下します。この状態で、もし地上部にたくさんの葉っぱが残っていたらどうなるでしょうか?
葉っぱからは常に水分が蒸発(蒸散)しています。根からの給水能力は落ちているのに、葉からはどんどん水分が出ていく…つまり「支出が収入を上回る」状態になり、植物体内の水分収支が崩壊して、株全体が急速にしおれてしまうのです。最悪の場合、そのまま回復せずに枯れてしまいます。
そのため、植え替えと同時に地上の枝葉を全体の高さの半分、あるいは3分の1程度まで思い切ってカット(強剪定)し、葉の枚数を減らして蒸散を抑える必要があります。これにより、根への負担が劇的に軽くなり、植え替え後の回復が早まります。目安としては、それぞれの枝に葉っぱが数枚残る程度、あるいは葉が全くない状態(丸坊主)になっても、節(ふし)さえ残っていれば必ず新芽が出てくるので心配ありません。
また、この時期に剪定を行う理由はもう一つあります。それは「わき芽」の促進です。植物には、一番上の芽(頂芽)だけが伸びようとする性質(頂芽優勢)があります。剪定をして頂芽を止めると、その下にある節々から新しい「わき芽」が一斉に吹き出してきます。これにより、枝数が増え、冬にはこんもりとしたボリュームのある、プロが育てたような美しい株姿(ブッシュ状)に仕立てることができるのです。枝数が増えれば、その分だけ赤く色づく苞の数も増え、見ごたえのあるポインセチアになります。
失敗しないための温度と環境管理
植え替えが終わった直後のポインセチアは、人間で言えば「大きな手術を終えて退院した直後」のような、非常にデリケートな状態です。この時期の管理場所や環境が、その後の生死を分けると言っても過言ではありません。
まず、植え替え直後の1週間〜10日間程度は、「風通しの良い明るい日陰」で静かに養生させてください。絶対に避けるべきなのが「直射日光」と「強風」です。根がまだ水を十分に吸えない状態で、強い日差しや風に当たると、葉からの蒸散が激しくなり、脱水症状を起こしてしまいます。軒下やベランダの奥など、雨が当たらず、柔らかな光が入る場所がベストです。
1週間ほど経って、葉にハリが出てきたり、小さな新芽が動き出したりしたら、根が新しい土に活着し始めたサインです。そうしたら、徐々に午前中だけ日が当たる場所へ移動させ、数日かけて完全に日当たりの良い場所へと慣らしていきます(これを「馴化(じゅんか)」と言います)。いきなり環境を変えるのではなく、少しずつ光に慣らすことで、葉焼けなどのトラブルを防ぐことができます。
また、5月とはいえ、天候によっては「寒の戻り」で急に冷え込む日があるかもしれません。特に夜間の気温には注意が必要です。もし最低気温が10℃~12℃を下回るような予報が出ている日は、念のため夜だけ室内に取り込むなどの配慮をしてあげると安心です。逆に、梅雨に入って長雨が続く場合は、過湿による根腐れや病気(灰色かび病など)を防ぐため、雨の当たらない場所へ避難させることも忘れないでください。高温多湿な日本の夏を乗り切るためには、「風通し」の確保が何よりも重要になります。
ポインセチアの植え替え時期に実践する手順
最適な時期を理解し、土や鉢の準備が整ったら、いよいよ実践編です。ここでは、初めての方でも迷わずスムーズに作業できるよう、プロのテクニックを交えた具体的なステップを解説していきます。手順を追って作業すれば、失敗することはまずありませんよ。
初心者でも簡単な植え替えの方法
まずは必要な道具を揃えましょう。新しい鉢、配合した土(または市販の土)、鉢底石(軽石)、鉢底ネット、清潔なハサミ、割り箸(棒)、そして手袋(軍手など)です。特にポインセチアの樹液で汚れることがあるので、新聞紙やビニールシートを広げて作業することをおすすめします。
失敗しない植え替えの3ステップ
- ステップ1:株を丁寧に引き抜く

まず、現在の鉢から株を抜きます。この時、無理に茎を持って引っ張り上げようとしないでください。茎が折れたり根が千切れたりします。鉢を横に倒し、側面や底を手のひらでパンパンと叩いて振動を与え、土と鉢の縁を剥がすようにしてから、株元を優しく持ってゆっくりと引き抜きましょう。どうしても抜けない場合は、鉢の縁に沿ってナイフなどを差し込むと抜けやすくなります。 - ステップ2:根鉢(ねばち)を崩して整理する

抜いた株の根っこを見てみてください。根と土が固まった状態を「根鉢」と言います。この根鉢を、手で優しくほぐしていきます。古い土を全体の3分の1程度落とすイメージです。この時、黒ずんでブヨブヨになっている腐った根や、異常に長く伸びすぎた根があれば、清潔なハサミで切り取ってください。根の先端を少し切ることで、新しい根(吸水能力の高い細根)の発根が刺激され、より元気に育つようになります。 - ステップ3:新しい鉢に植え付ける
新しい鉢の底穴をネットで塞ぎ、鉢底石を2〜3cmほどの厚さに敷き詰めます(これは排水確保のために必須です)。その上に少し土を入れ、株を置いて高さを確認します。高さが決まったら、株の周りの隙間に土を入れていきます。この時、割り箸などの棒で土をツンツンとつつきながら入れるのがコツです。こうすることで、根と根の間の細かい隙間にもしっかり土が行き渡り、空洞ができるのを防げます。
ここで一番気をつけていただきたいのが「深植え」への警告です。植物の茎と根の境目(地際部分)を土に埋めてしまうと、そこから茎が腐敗しやすくなります。必ず、以前の土の表面の高さと、新しい土の表面の高さが同じになるように(あるいは少し浅めになるように)調整してください。また、水やりの際に水が溜まるスペース(ウォータースペース)を確保するため、鉢の縁から2〜3cm下まで土を入れるようにしましょう。これにより、水やりの際に土が外に溢れ出るのを防ぐことができます。
植え替え後にしおれる原因と対策

「手順通りにやったはずなのに、植え替え直後に葉っぱがくたっとしてしまった…」というトラブルは、実は比較的よく起こります。これを見ると焦って水をあげたくなりますが、原因を冷静に見極めることが大切です。
最も多い原因は、根の吸水機能が一時的に低下しているにも関わらず、葉からの蒸散量が多すぎることによる「脱水症状(ウィルティング)」です。特に、剪定(葉を減らす作業)を十分に行わなかった場合や、植え替え直後に風の当たる場所に置いてしまった場合に起こりやすい現象です。根が水を吸い上げるスピードよりも、葉から水が出ていくスピードの方が速いため、植物体内の水分が不足してしまうのです。
もししおれてしまったら、以下の応急処置を行ってください。
- 即座に日陰へ移動:直射日光や風は蒸散を加速させるので、風の当たらない暗めの場所へ移します。お風呂場(水がかからない場所)なども湿度が高くて有効です。
- 葉水(はみず)を与える:根から水が吸えない状態なので、霧吹きで葉の表と裏にたっぷりと水を吹きかけます。これにより、葉の気孔が閉じて蒸散が抑えられ、直接水分補給もできます。
- ビニール袋で密閉(簡易温室):それでも回復しない重度の場合は、大きな透明のビニール袋(ゴミ袋など)を用意し、鉢ごと株全体をすっぽりと覆います。袋の中に息を吹き込んで膨らませ、口を縛ります(数カ所小さな空気穴を開けておきます)。こうすることで内部の湿度がほぼ100%になり、蒸散が完全にストップするため、株の体力が温存され、数日でシャキッと回復することが多いです。回復したら、数日かけて徐々に袋の口を開け、外気に慣らしていってください。
一方で、土がびしょ濡れなのにしおれている場合は、残念ながら「根腐れ」の可能性があります。この場合は水やりを中止し、風通しの良い場所で土を乾かすことに専念してください。腐敗臭がする場合は、再度掘り上げて腐った根を切除し、新しい乾いた土に植え直す緊急手術が必要になることもあります。
植え替え後の水やりと肥料の与え方

植え替え作業が終わったら、その直後に最初の水やりを行います。この「一度目の水やり」は非常に重要です。ジョウロで優しく、鉢底から流れ出る水が茶色く濁った状態から、完全に無色透明になるまで、たっぷりと与え続けてください。
これには単に水分を与えるだけでなく、土の中に含まれる細かい粉(微塵)を洗い流し、土の粒子を安定させ、根と土を密着させるという重要な役割があります。微塵が残っていると、後に土の中で層を作り、排水性を悪化させる原因になるからです。また、水を通すことで土の中に新鮮な酸素を引き込む効果もあります。
その後の水やりは、「土の表面が白く乾いたらたっぷりと」が基本ですが、植え替え直後の1ヶ月間は、まだ根が十分に張っていないため、通常よりも土の乾きが遅くなる傾向があります。指を土の第一関節くらいまで入れてみて、中まで湿っているようなら水やりは待ちましょう。過保護な水やりは禁物です。ポインセチアは乾燥には強いですが、過湿にはめっぽう弱いことを忘れないでください。
そして肥料についてですが、ここにも落とし穴があります。「元気になるように」といって、植え替え直後に濃厚な肥料を与えるのは絶対にNGです。
- 元肥(もとごえ):植え替えの際、土にあらかじめ混ぜ込んでおく肥料です。これには「緩効性肥料(マグァンプKなど)」を使用します。特に根の伸長を助ける「リン酸(P)」成分が多いものを選ぶと、活着がスムーズになります。緩効性肥料は、水やりや土の微生物の働きによってゆっくりと溶け出すため、デリケートな根を傷めません。
- 追肥(ついひ):植え替え後、約2週間〜3週間は追肥を控えます。傷ついた根に速効性の液体肥料などが触れると、浸透圧の関係で根から水分が奪われ、逆に枯れてしまう「肥料焼け」を起こす危険があるからです。新芽が元気に伸びてきて、葉の色が濃くなってきたのを確認してから、規定量よりも薄めの液体肥料を1週間〜10日に1回のペースで開始しましょう。
剪定した枝を使った挿し木の手順

植え替えの時に剪定で切り落とした枝、そのままゴミ箱へ捨ててしまうのはもったいないですよね。その枝が元気であれば、「挿し木(さしき)」をして、新しいポインセチアの株を増やすことができるんです。成功すれば、クリスマスの楽しみが2倍、3倍に増えますよ。挿し木は遺伝的に親株と全く同じ性質を持つクローン(複製)を作る作業なので、お気に入りの品種を確実に残す手段としても有効です。
挿し木は以下の手順で行います。
- 挿し穂(さしほ)を作る:切り取った枝を、10cm程度の長さ(2〜3節分)に切り揃えます。これを「挿し穂」と呼びます。先端の柔らかすぎる部分は発根しにくいので、ある程度硬さのある充実した枝を選ぶのがコツです。
- 葉を調整する:先端の葉を2〜3枚だけ残し、下の方についている葉は全て取り除きます。残した葉も、大きすぎる場合はハサミで半分にカットします。これは、葉からの蒸散を抑え、発根に必要なエネルギーを温存させるためです。
- 樹液を洗い流す(最重要):ポインセチアの茎を切ると、白い乳液状の樹液が出てきます。この樹液をそのままにしておくと、切り口で固まって導管を塞ぎ、水を吸えなくなってしまいます。必ず切り口を流水でよく洗い流すか、コップの水に30分ほど浸して、樹液が出なくなるまで処理してください。これが成功率を分ける最大のポイントです。
- 土に挿す:清潔な土(肥料分の入っていないバーミキュライトや、赤玉土の小粒など)を用意し、割り箸で穴を開けてから、枝を優しく挿します。肥料分のある土や使い古しの土を使うと、切り口から雑菌が入り腐敗する原因になります。
- 管理する:直射日光の当たらない明るい日陰に置き、土が絶対に乾かないようにこまめに水やりをします。順調にいけば約1ヶ月ほどで発根し、新しい命が誕生します。発根したら、小さなポットに植え替えて(鉢上げ)、親株と同じように育てていきましょう。
豆知識:白い樹液に注意
ポインセチアの白い樹液は、ユーフォルビア属特有のもので、人によっては触れるとかぶれたり、痒くなったりすることがあります(ラテックスアレルギーなど)。作業をする際は、使い捨ての手袋などを着用することをおすすめします。もし手についた場合は、すぐに石鹸でよく洗い流してくださいね。
ポインセチアの植え替え時期の総まとめ
ここまで、ポインセチアを翌年も美しく咲かせるための植え替えについて、時期や方法、注意点を詳しく解説してきました。最後に、成功のための重要ポイントをもう一度おさらいしておきましょう。
- 植え替えのベストタイミングは、気温が20℃以上になり生育が活発化する5月中旬〜7月上旬。
- 土は水はけ重視の配合にし、鉢は「ひと回りだけ大きなサイズ」を選ぶことで根腐れを防ぐ。
- 植え替えと同時に「強剪定(切り戻し)」を行い、水分の蒸散抑制とわき芽の促進を狙う。
- 植え替え直後は直射日光を避け、肥料は根が落ち着いてから与えることで「肥料焼け」を防ぐ。
「植え替え」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、植物にとっては新しい洋服に着替えて、リフレッシュするようなものです。この5月から7月の間に適切なケアをしてあげれば、ポインセチアは驚くほど元気に育ち、冬にはまたあの鮮やかな赤色で私たちを楽しませてくれるはずです。
最初は失敗することもあるかもしれませんが、植物は手をかけた分だけ必ず応えてくれます。少しの手間と愛情をかけて、あなただけの特別なポインセチアを育ててみてくださいね。この冬、ご自身で再生させたポインセチアを飾る喜びは、何物にも代えがたい体験になることでしょう。
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