こんにちは。My Garden 編集部です。
鮮やかなイエローの花が魅力のパワーデイジーですが、地植えに挑戦してみたいけれど株の大きさがどれくらいになるのか気になったり、植え付けの時期や冬越しの方法で悩んだりしていませんか。鉢植えとは違って一度植えると移動ができないため、事前の準備がとても大切です。この記事では、私が実際に育てて感じたポイントや失敗しないための土作りのコツなどを中心に、地植えでの楽しみ方を詳しくご紹介します。
この記事のポイント
- 地植えで失敗しないための土作りと植え付けの適期
- 1株でどこまで広がるかという成長サイズと株間
- 日本の夏と冬を乗り切るための季節ごとの管理法
- 花が咲かないトラブルの解決策と正しい切り戻し位置
カレンデュラパワーデイジーの地植え栽培の魅力

パワーデイジーを地植えにする最大のメリットは、なんといってもその「圧倒的なパフォーマンス」を引き出せることにあります。鉢植えでは制限されてしまう根を自由に伸ばせるため、驚くほど大きく育ち、庭一面を明るく彩ってくれますよ。まずは、地植えを成功させるための基本的な知識から見ていきましょう。
パワーデイジーの特徴と地植えでの大きさ

パワーデイジーが従来のキンセンカ(カレンデュラ)と決定的に違うのは、種を作らない(不稔性:ふねんせい)という点です。園芸において、植物が種を作るという行為は、実は命を削るほどの大仕事なんです。通常、植物は開花後に受粉し、種子が形成されると、体内の栄養や光合成で作ったエネルギーのほとんどを「種の成熟」のために最優先で送り込みます。その結果、新しい花芽を作る余裕がなくなり、株自体が急速に老化したり、一年草であればそのまま枯れて一生を終えたりします。これが植物の自然なサイクルなのですが、長く花を楽しみたい私たちガーデナーにとっては少し寂しいですよね。
しかし、このパワーデイジーは不稔性であるため、種子形成というエネルギー消費の激しいプロセスが発生しません。本来なら種を作るために使われるはずだった莫大なエネルギーが、すべて「株の成長(栄養成長)」と「次の花を咲かせること(生殖成長)」だけに再配分されます。これが、パワーデイジーが「スーパーハイブリッド」と呼ばれる理由であり、他の植物には真似できない圧倒的なパフォーマンスの秘密なんです。
そのため、地植えにして根域制限(鉢の壁による根の成長ストップ)から解放された時の爆発力は凄まじいものがあります。ホームセンターなどで販売されている購入時の3号(9cm)ポット苗は、ちょこんとしていて可愛らしく、手のひらに収まるサイズですよね。しかし、これを地植えにして、日当たりと水はけの良い環境で育てると、半年から1年後には全く別の植物かと思うほど巨大化します。最終的な株張り(横幅)は、カタログスペックでは40cm程度と書かれていることもありますが、地植えの実績では最低でも60cm、環境が良ければ直径100cm〜120cmほどまで大きく広がります。
高さに関しては、茎が立ち上がるというよりは、横に這いながら分岐を繰り返し、こんもりとしたドーム状の茂みを作る性質が強いため、約40cm〜50cmほどに収まります。つまり、縦に伸びるのではなく、横に広がる力が非常に強いのです。この性質を利用すれば、雑草が生える隙間を与えないほど高密度に地面を覆い尽くす「花の咲くグランドカバー」として機能します。例えば、幅2メートルの花壇であれば、計算上はたった2株か3株植えるだけで、隙間なく埋め尽くすことが可能です。これは経済的でもありますし、手入れの手間を大幅に減らすことにも繋がります。
さらに詳しい品種特性や開発背景については、開発元の公式情報も非常に参考になりますので、興味がある方はチェックしてみてください。
(出典:PW PROVEN WINNERS『カレンデュラ パワーデイジー』)
| 栽培環境 | 株張り(横幅) | 草丈(高さ) | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 鉢植え(8号鉢) | 30cm 〜 40cm | 30cm 〜 35cm | コンパクトにまとまり、移動も容易。 |
| 地植え(標準) | 60cm 〜 80cm | 35cm 〜 40cm | 隣の植物と適度な距離が必要。 |
| 地植え(好条件) | 100cm 〜 120cm | 40cm 〜 50cm | 圧倒的なボリューム。1株で主役級。 |
不稔性によるもう一つのメリット
種ができないということは、花びらが散った後に掃除をする必要が少なく、また「こぼれ種」であちこちから芽が出てきて雑草化してしまう心配もありません。「庭をきれいに保ちたいけれど、管理の手間は極力減らしたい」という忙しい現代のガーデナーにとって、まさに理想的な性質と言えるでしょう。
地植えに適した植え付け時期とタイミング
地植えを成功させるための第一歩は、お住まいの地域の気候区分に合わせて「最適な植え付けのタイミング」を正確に見極めることです。日本列島は南北に長く、地域によって気温の変化が劇的に異なるため、教科書通りに「一律〇月」と決めてしまうのは危険です。地域の特性に応じた戦略を立てることが、失敗しないための近道となります。
温暖地(関東以西の平野部、東海、関西、九州など)
関東から西の、冬でも雪があまり積もらない比較的暖かい地域にお住まいの方には、断然「秋植え(9月下旬〜11月上旬)」を強くおすすめします。「これから寒くなるのに植えて大丈夫?」と思われるかもしれませんが、実はこの時期こそがベストシーズンなのです。
秋に植える最大のメリットは、本格的な厳冬期が到来する前に、まだ地温が残っている温かい土の中で、根をしっかりと地面に張らせることができる点です(これを園芸用語で「活着(かっちゃく)」といいます)。植物にとって、根が土に馴染んでいない状態で真冬を迎えるのは、裸で外に放り出されるようなもので非常に危険です。しかし、年内にしっかりと根を張った株は、冬の寒さや乾燥風に対しても格段に抵抗力が増します。
さらに大きなメリットは、翌春のスタートダッシュです。春になってから慌てて植えた苗が、ようやく新しい根を伸ばそうと準備運動を始める頃、秋植えで冬を越した株は、すでに土中深くまで張り巡らせた根を使って水分や養分をフルに吸収し、蓄えたエネルギーを使って爆発的な成長を開始します。結果として、春植えの株に比べて株のサイズが2倍、3倍になり、花数も桁違いに多くなります。また、温暖地であれば、真冬の間も完全に花が止まることは少なく、ポツポツと鮮やかな黄色い花を咲かせて、彩りの少ない冬枯れの庭を明るく照らしてくれるという嬉しいおまけもついてきます。
寒冷地(東北、北海道、長野などの高冷地、北陸の豪雪地帯)
一方で、冬の間に地面がカチカチに凍結したり、深い雪に数ヶ月間覆われたりする寒冷地にお住まいの方は、戦略をガラリと変えて「春植え(4月〜5月)」を鉄則としてください。
寒冷地で無理に秋植えをしてしまうと、根が十分に張る前に土壌が凍結してしまいます。土の中の水分が凍ると体積が膨張し、植物の根を持ち上げて切断してしまう「霜柱」の被害に遭ったり、根が凍傷を負って吸水できなくなり、そのまま枯死してしまうリスクが非常に高くなります。どんなに耐寒性が強い植物でも、根付いていない状態での凍結には耐えられません。
桜の花が散り、遅霜の心配がなくなって、十分に地温が上がってから植え付けても決して遅くはありません。パワーデイジーの驚異的な成長スピードをもってすれば、ゴールデンウィーク頃に植えても、夏までには十分に大きな株に育ち、秋遅くまで満開の花を楽しむことができます。寒冷地の場合は、春から秋までの期間を全力で楽しむ「パフォーマンス最強の植物」として割り切り、冬越しに関しては「できたらラッキー」くらいの感覚で挑むか、あるいは本格的な冬が来る前に掘り上げて鉢に移し、軒下や玄関内で管理するという方法も有効です。
地植え時の株間と植え方ポイント

園芸店で色鮮やかな花苗を買ってくると、ついつい「早く花壇を花でいっぱいにしたい!」という気持ちが先走り、苗同士を近づけて植えたくなりますよね。その気持ちは痛いほど分かりますが、パワーデイジーに関しては「密植(みっしょく)」は絶対に厳禁です。植え付け時の「我慢」と「勇気あるスペース確保」が、数ヶ月後の成功を決定づけます。
繰り返しになりますが、この植物は1株で直径1メートル近くまで広がるポテンシャルを秘めています。もし、一般的な一年草と同じ感覚で20cmや30cm間隔で植えてしまうとどうなるでしょうか?植えてから1〜2ヶ月もすれば、お互いの成長した枝葉が激しくぶつかり合い、重なり合ってしまいます。そうなると、下の方の葉には日光が当たらなくなり光合成ができずに枯れ込みます(枯れ上がり)。さらに、株元の風通しが極端に悪くなることで、湿気がこもり、蒸れによる腐敗や、カビが原因の病気が発生するリスクが跳ね上がります。
健康に、そして美しく育てるためには、隣の株とは最低でも30cm、できれば40cm〜50cm程度のゆったりとした株間を空けて植え付けてください。「そんなに空けたらスカスカで土が見えてかっこ悪い」と思われるかもしれませんが、安心してください。そのスカスカの状態はほんの一時のことです。パワーデイジーの成長速度は目を見張るものがあり、1ヶ月もすれば旺盛に枝を伸ばし、その隙間はあっという間に埋まってしまいます。むしろ、成長した時に葉先が触れ合う程度の丁度よい距離感を保つことが、長く健康に育てるための最大の秘訣です。
具体的な植え付け手順(失敗しないコツ)

1. 根鉢の処理:
ポットから苗を抜いた際、根が白くびっしりと回って固まっている(サークリング現象)場合は注意が必要です。そのまま植えると新しい土に根が伸びていけません。底面の根を指で優しくほぐし、十字に切れ込みを入れるようなイメージで少し崩してから植えると、新しい土に馴染みやすくなり、スムーズな活着を促せます。
2. 水極め(みずぎめ):
植え穴に苗を置いたら、土を戻す前に一度水を入れ、泥状にして根と土を密着させる方法も有効です。植え付け後に上から水をかけるだけでなく、根の周りに空洞ができないようにすることが重要です。
3. 深植えの回避:
これが最も重要です。ポットの土の表面と、地面の高さが全く同じになるように植えるのが基本です。「深植え」をして茎の部分まで土に埋めてしまうと、茎が呼吸できずにそこから腐ってしまう「茎腐れ」の原因になります。逆に浅すぎて根鉢が飛び出していると、すぐに乾いて根が傷みます。「ウォータースペース」を確保しつつ、株元が埋まらない絶妙な高さを狙ってください。
植え付けの黄金ルール
「今は小さくても、未来は大きい」。この言葉を念頭に置き、将来の姿を想像して十分なスペースを確保しましょう。もしスペースが余って寂しい場合は、間に一時的に別の一年草を植えておき、パワーデイジーが大きくなったら抜く、という方法も賢いテクニックです。
地植えに適した土作りの基本と排水性
植物のラベルやスペック表にはよく「土質は選ばない」「強健な性質」と書かれていますが、これを「カチカチの固い庭土にそのまま穴を掘って植えても大丈夫」と解釈するのは非常に危険です。特に、一度植えたら移動できない地植え環境で、パワーデイジーに最高のパフォーマンスを発揮させたいなら、排水性(水はけ)と通気性の確保には徹底的にこだわってください。
パワーデイジーの根は、過度な湿気を嫌います。常に水を含んでジメジメした状態が続くと、根が呼吸できずに窒息死(根腐れ)を起こしやすくなります。理想的なのは、水をあげた時にサッと土に染み込み、余分な水がすぐに地下へ抜けていくような、団粒構造の発達した土壌環境です。
もしご自宅の庭土が粘土質で、雨が降るといつまでも水たまりが残るような場所や、スコップが入らないほど硬い土壌なら、植え付け前の土壌改良が必須作業となります。面倒に感じるかもしれませんが、ここでのひと手間がその後の生育を劇的に変えます。
土壌改良の具体的レシピ

植え付け予定の場所を、直径・深さともに30cm〜40cmほどしっかりと耕します。掘り上げた土に対して、以下の資材を混ぜ込んでください。
- 腐葉土や完熟堆肥(土の量の3割〜4割): 土をふかふかにし、微生物を活性化させます。
- パーライトや軽石の小粒(土の量の1割〜2割): 物理的な隙間を作り、圧倒的な水はけを確保します。特に粘土質の土には効果絶大です。
- 苦土石灰(規定量): 日本の土壌は酸性に傾きがちなので、植え付けの2週間ほど前にパラパラと撒いて混ぜ込み、酸度を中和しておくと根の張りが良くなります。
最強の排水対策:レイズドベッドと高畝
土壌改良資材を混ぜ込むだけでなく、さらに効果的なのが、物理的に植える位置を高くする方法です。レンガや枕木で囲いを作って土を入れる「レイズドベッド」や、畑のように土を盛り上げる「高畝(たかうね)」にして、周囲の地面より10cm〜20cmほど高い位置に植え付けます。
こうすることで、重力の働きによって余分な水分がスムーズに下へと抜けやすくなり、梅雨時期の長雨や近年のゲリラ豪雨の際も、根が水没して酸欠になるのを防げます。また、高畝にすると土の表面積が増えて空気に触れる面積が広がるため、酸素を多く取り込めるようになり、根の健康維持に非常に効果的です。特に冬の寒さが厳しい地域では、土の中の水分が凍結しにくくなるという断熱効果もあるため、まさに一石二鳥、三鳥のプロのテクニックなんですよ。
寒さに強い?地植えでの耐寒性について

「冬の庭は寂しいから、黄色い花で明るくしたい」という方にとって、パワーデイジーの耐寒性は非常に魅力的なポイントです。メーカーの公式情報によると、マイナス15℃程度まで耐えられる(耐寒性ゾーン7b相当)とされています。これは、パンジーやビオラといった冬の定番植物と比較しても全く遜色のない、一般的な草花としては驚異的な数値です。
実際、私が関東地方(平野部)で地植え栽培した際の実体験をお話しすると、冬の間に数回雪が積もるような日がありましたが、特別な防寒対策をしなくても余裕で越冬しました。厳寒期(1月〜2月)になると、葉の一部や茎が寒さに反応して赤銅色(ブロンズ色)に変色することがあります。これを見て「枯れてしまったのでは!?」と心配される方が多いのですが、安心してください。
これは「アントシアニン」という赤い色素を植物自らが作り出し、細胞内の糖度を高めて凍結を防ぐための、いわば「天然のコート」を着ている状態です。紅葉と同じ原理の生理現象であり、株自体が枯れているわけではありません。株の中心にある成長点さえ生きていれば、春になって気温が上がり始めると同時に、また瑞々しい緑色の新芽が展開し、赤かった葉も徐々に緑色に戻るか、新陳代謝で入れ替わっていきます。
ただし、マイナス15℃というのはあくまで「株が死滅しない限界値」であり、常にその気温でも元気に花を咲かせ続けるという意味ではありません。強い霜に毎日直接当たると、花びらが傷んで茶色くなったり、蕾がギュッと閉じて開かなくなったりすることはあります。それでも、根と株元さえ生きていれば、春を待つ宿根草としての強さは本物です。
北関東や東北南部など、雪は少ないけれど乾燥した冷たい季節風(からっ風)が吹き荒れる地域では、体感温度が下がりすぎて「凍結乾燥」を起こすリスクがあります。このような場所では、株の北側に風除けを作ったり、後述するマルチングを行ったりする等の「ちょっとした優しさ」をプラスするだけで、越冬の成功率と春の芽吹きの良さを劇的に高めることができます。
カレンデュラパワーデイジーを地植えで楽しむ管理法
一度地植えしてしまえば、鉢植えほど毎日のように水やりを気にする必要はありませんし、毎年のように根詰まりを気にして植え替える手間もありません。しかし、「植えっぱなしで完全放置」で良いかというと、やはり最低限のケアは必要です。植物と対話し、季節に応じた適切な手入れをしてあげることで、より長く、よりたくさんの花を楽しむことができます。
地植え後の水やりと肥料の与え方
地植えの場合、しっかりと根付いてしまえば、基本的には自然の降雨だけで育ちます。植物自らが地中深くへ根を伸ばし、自力で水分を探しに行く力を信じましょう。過保護に毎日水をあげすぎると、根が甘えて地表近くに留まってしまい、逆に乾燥に弱い株になってしまいます。ただし、例外的に水やりが必要なタイミングが2つだけあります。
1. 植え付け直後の2週間:
まだ根が土に馴染んでおらず、自力で水を吸う力が弱いため、土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えて乾燥を防ぎます。
2. 真夏の高温乾燥期:
梅雨明け以降、雨が全く降らずに猛暑日が続くような場合です。夕方になっても葉がくたっと萎れて戻らないようであれば、明らかな水切れのサインです。この場合、日中のカンカン照りの時間に水をあげると、土の中で水がお湯のようになって根を煮てしまい、致命傷になります。必ず朝の涼しい時間帯か、夕方日が落ちてからたっぷりと行うようにしましょう。
そして、パワーデイジーの栽培で最も重要なのが「肥料(ごはん)」です。不稔性で春から冬まで常に花を咲かせ続けるこの植物は、いわば「燃費の悪い高性能スポーツカー」のようなものです。燃料(肥料)が切れると、途端に走れなくなってしまいます。肥料切れのサインは、花数が減る、花が小さくなる、葉の色が全体的に薄い黄緑色になる、といった形で現れます。
| 時期 | 肥料の種類 | 頻度と方法 |
|---|---|---|
| 植え付け時 | 緩効性肥料(マグァンプKなど) | 土に規定量をしっかりと混ぜ込む。これがベースになります。 |
| 春(3月〜6月) | 緩効性固形肥料 + 液体肥料 | 成長最盛期。月に1回固形肥料を株元にばら撒く。さらに2週間に1回液肥を与えると花付き抜群。 |
| 夏(7月〜8月) | (基本なし) | 暑さで消耗しているため、強い肥料は逆効果。活力剤(リキダスなど)程度に留める。 |
| 秋(9月〜11月) | 緩効性固形肥料 + 液体肥料 | 再び成長期。春と同様にしっかりと肥料を与え、冬越しへの体力をつけさせる。 |
| 冬(12月〜2月) | (なし) | 休眠に近い状態なので肥料は不要。 |
地植えの場合は、雨で肥料成分が流亡しやすい側面もあります。植物の様子を観察しながら、「ちょっと元気がないな」「葉色が薄いな」と感じたら、即効性のある液体肥料をサッと与えるなど、柔軟に対応するのがコツです。
地植えでの冬越しの方法と雪対策

耐寒性が強いとはいえ、土壌がカチコチに凍ってしまうような過酷な環境では、さすがに根がダメージを受けます。特に、土に含まれる水分が凍って体積が増え、地面が持ち上がることで植物の根を引きちぎってしまう「霜柱(しもばしら)」現象は、冬の地植え植物にとって最大の敵です。
寒冷地や霜が強い地域で地植えにする場合は、本格的な冬が来る前(12月頃)に、株元の地面を何かで覆う「マルチング」という作業を強くおすすめします。腐葉土、バークチップ、もみ殻、あるいは藁(わら)などを、株の周りに厚さ5cm〜10cmほど敷き詰めてください。こうすることで、地面に分厚い羽毛布団をかけるような断熱効果が生まれ、地温の急激な低下を防ぎ、霜柱の発生を抑制することができます。春になれば腐葉土などはそのまま土に還る肥料になるため、撤去の手間もありません。
また、「雪」に関してはどうでしょうか?実は、雪そのものはそれほど怖いものではありません。雪の下は0℃付近で温度が安定しており、冷たい外気や乾燥した風から守られる「かまくら」のような状態になるため、意外と植物は安全に過ごせます。雪解けとともに、元気な姿を見せてくれることが多いです。
むしろ危険なのは、「雪は降らないけれど、マイナス5℃〜10℃の乾燥した寒風が直接吹き付ける」ような環境です。このような場所では、植物から水分が奪われ続け、給水もできないために「凍結乾燥(フリーズドライ)」という状態で枯れてしまうことがあります。これを防ぐためには、ホームセンターで売っている農業用の「不織布(パオパオなど)」を株の上にふわりと被せて四隅をピンで留め、風除けをしてあげると非常に効果的です。
夏越し対策と地植えでの蒸れ防止
実は、地中海沿岸原産のカレンデュラにとって、日本の冬よりも遥かに過酷なサバイバル環境なのが、高温多湿な「日本の夏」です。パワーデイジーは品種改良によって耐暑性が飛躍的に向上していますが、それでも35℃を超える連日の猛暑や、夜温が25℃を下回らない熱帯夜は、植物にとって大きなストレスになります。特に地植えの場合、地面からの照り返しによる熱気と、地面から立ち上る湿気が株元にこもりやすくなります。
夏越しの最大のポイントは、涼しい環境を作ること、つまり「風通しの確保」です。梅雨入り前あたりに、一度株の中を覗いてみてください。枝が混み合ってジャングルのようになっていませんか?地面に触れて枯れかけている下葉はありませんか?
もし混み合っているようなら、躊躇なくハサミを入れて「透かし剪定」を行いましょう。混み合った枝を間引いて、株の内側に風が通り抜けるトンネルを作ってあげるイメージです。また、地面に接している下葉は、泥はねによる病気の感染源になりやすいので、全てむしり取ってしまい、株元(足元)をスッキリさせておきます。
また、ここでも冬と同じく「マルチング」が活躍します。株元をバークチップや藁などで覆っておくと、真夏の強烈な直射日光が地面に当たるのを防ぎ、地温の上昇を抑える効果があります。根が感じる温度を数度下げるだけでも、植物の夏バテ防止には大きな効果があります。西日が強く当たる場所や、コンクリートの照り返しが強い場所などは特に注意が必要ですので、よしず等で日陰を作ってあげるのも植物への最高の優しさですね。
地植え株の切り戻しと剪定のコツ

地植えで順調に育つと、嬉しい反面「大きくなりすぎて形が乱れてきた」「通路を塞いでしまった」「隣の植物を飲み込んでしまった」という悩みが出てくるかもしれません。そんな時は、可哀想がらずに、思い切って「切り戻し(剪定)」を行いましょう。パワーデイジーは萌芽力(ほうがりょく:新しい芽を出す力)が非常に強いので、切ることを恐れる必要はありません。
大規模な切り戻しにおすすめの時期は、湿度が高くなる前の「梅雨入り前(5月下旬〜6月上旬)」です。この時期に、株全体の高さを現在の半分から3分の1くらいまでバッサリと刈り込んでしまいます。まるで散髪するように、丸く形を整えながら切っていきます。葉がほとんど残らなくなっても、茎の節(葉が出ていた跡)さえあれば、そこから新しい芽が必ず出てくるので大丈夫です。
この強剪定には2つの大きなメリットがあります。
- 夏越し対策: 株をコンパクトにして枝数を減らすことで、風通しが劇的に良くなり、夏の蒸れや病気を物理的に防ぐことができます。
- 株のリフレッシュ: 古くなって木質化した枝を更新させることで、若返り効果が期待できます。秋になると、新しく伸びた健康で勢いのある枝に、驚くほどたくさんの花が一斉に咲き誇ります。
剪定をせずに伸ばし放題にしていると、秋の花付きが悪くなったり、株の中心がハゲてきたりします。まるで春がもう一度来たかのような秋の満開を楽しむためにも、梅雨前のカットは必須作業と考えましょう。そして、切り戻した後には、新しい芽を出すためのエネルギー補給として「お礼肥(追肥)」をあげるのを忘れないでくださいね。
花柄摘み(がらつみ)について
種はできませんが、枯れた花(花柄)をそのままにしておくと、雨に濡れてドロドロに腐敗し、カビ(灰色かび病)の最大の温床になります。美観を保つためだけでなく、病気予防のためにも、茶色くなった花はこまめに摘み取りましょう。花だけをちぎるのではなく、花茎の付け根から切り取ると、見た目も綺麗で次の花が上がりやすくなります。
花が咲かない原因と地植えの対処法
せっかく地植えしたのに「葉っぱばかり青々と茂って巨大化するのに、肝心の花が全然咲かない」あるいは「花数がすごく少ない」という相談をよく受けます。その原因の9割は、「日照不足」か「肥料バランスの崩れ」のどちらかです。
原因1:日照不足
パワーデイジーは、その名の通り太陽のパワーが大好きです。花を次々と咲かせるには、大量の光合成エネルギーが必要です。1日最低でも4時間、できれば6時間〜8時間以上の直射日光が当たる場所が理想的です。「明るい日陰」や「建物の北側」、あるいは「落葉樹の下(冬は日が当たるが、夏は葉が生い茂って木陰になる場所)」では、どうしても光量不足となり、植物は「今は花を咲かせる体力がない」と判断して花芽を作るのを止めてしまいます。もし日陰に植えてしまっている場合は、思い切って日向に移植するか、周りの木の枝を剪定して日当たりを改善する必要があります。
原因2:窒素(N)過多による「蔓ボケ」
肥料の選び方も重要です。肥料には主に窒素(N)、リン酸(P)、カリ(K)の3要素が含まれていますが、このうち「窒素」は葉や茎を大きくする成分です。窒素分が多い肥料を与えすぎると、植物は「今は体を大きくする成長期だ!」と勘違いしてしまい、生殖成長(花作り)を後回しにして、ひたすら葉っぱだけを茂らせるようになります。これを園芸用語で「蔓ボケ(つるぼけ)」と言います。
葉が異常に大きく、色が濃い緑色をしていて元気そうなのに花が咲かない場合は、この窒素過多の可能性が高いです。対処法としては、一旦肥料を与えるのをストップして土の中の窒素が消費されるのを待つか、花付きを良くする「リン酸(P)」成分が多めの肥料(バットグアノや、開花促進用の液肥など)に切り替えて、植物に「そろそろ花を咲かせる時期だよ」と合図を送ってあげてください。
原因3:根詰まりや株の老化
地植えでも、何年も植えっぱなしにしていると、株元の土が固まりすぎて根が伸びなくなったり、株自体が老化して花付きが悪くなったりすることがあります。数年に一度は、スコップを入れて根を切るように耕して空気を供給したり(エアレーション)、堆肥をすき込んで土を若返らせる作業も有効です。
挿し木は禁止?増やし方の注意点

パワーデイジーを育てていると、その丈夫さと美しさに感動し、「もっと増やして庭中に植えたい」「友達にも分けてあげたい」と思うのが園芸ファンの自然な人情ですよね。実際、パワーデイジーは挿し木(さしき)で簡単に根が出る植物です。しかし、ここで一つ非常に重要な、法律に関わる話を知っておく必要があります。
カレンデュラ・パワーデイジー(品種名:Kercalsun)は、種苗法(しゅびょうほう)に基づき農林水産省に登録された「登録品種(PVP)」です。
登録品種とは、開発者(ブリーダー)が長い年月と多額の費用、そして膨大な労力をかけて作り出した新しい品種に対して、知的財産権(育成者権)が認められている植物のことです。音楽や映画に著作権があるのと同じですね。法律により、権利者の許可なく増やした苗を他人に譲渡(無料であっても不可)したり、フリマアプリや道の駅などで販売したりすることは厳しく禁止されています。違反すると、損害賠償請求や、最悪の場合は刑事罰の対象となることもあります。「近所の人にお裾分け」といった軽い気持ちの行為も、法律上は権利侵害となり、トラブルの元になるため絶対に避けましょう。
では、自宅の庭で自分だけで楽しむために増やすのはどうでしょうか?
以前の法律では自家増殖は原則自由でしたが、近年の法改正により状況は変化しつつあります。現状の運用として、家庭園芸の範囲で、自分の庭の中で楽しむために挿し木をする行為までが厳しく取り締まられるケースは稀ですが、基本的には「登録品種の増殖には許諾が必要」というスタンスであることを理解しておく必要があります。
私たち園芸愛好家ができる最大のマナーは、「増やして使い回すのではなく、必要な分だけ正規の苗を購入すること」です。私たちが苗を購入する代金の一部は、開発者へのロイヤリティとして還元されます。それが次の素晴らしい新品種を開発するための資金となり、結果として私たちのガーデニングライフがより豊かになることに繋がるのです。ぜひ、育種家の方々への敬意と応援の気持ちを込めて、正規店で元気な苗をお迎えしてくださいね。
カレンデュラパワーデイジーを地植えで満喫しよう
カレンデュラ パワーデイジーは、従来の「キンセンカ」のイメージを覆す、非常にタフで優秀なハイブリッド品種です。地植えにすることで、そのポテンシャルは最大限に発揮され、春から冬まで長くお庭を明るく照らしてくれます。
少しの水はけの良い土作りと、たっぷりとした日当たりの確保、そして成長を見越した適切な株間。この3つのポイントさえ押さえれば、初心者の方でも見事な景観を作ることができるはずです。特に秋植えで冬を越し、春に満開になった時の感動はひとしおです。ぜひ、あなたのお庭にもこの「太陽のような花」を地植えして、四季折々の変化を楽しんでみてくださいね。
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