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ミルフル地植えのコツ!冬越しと満開にする育て方

ミルフル 地植え 地植えで満開に咲き誇るフリル咲きビオラ「ミルフル」。春の庭でこんもりとドーム状に育った成功例のイメージ。 ミルフル
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こんにちは。My Garden 編集部です。

フリルのついた花びらがドレスのように重なり合い、見る人を魅了してやまないサントリーフラワーズの傑作ビオラ「ミルフル」。秋の園芸店で、あの上品で色とりどりの苗を見かけると、ついつい手が伸びてしまいますよね。「今年はどんな色をお迎えしようか」と胸をときめかせている方も多いのではないでしょうか。

一般的に、このようなブランドビオラは鉢植えやハンギングバスケットで大切に育てられるイメージが強いですが、実は「地植え」にすることで、鉢植えでは味わえないダイナミックな魅力を発揮してくれることをご存知でしょうか?地面に制限なく根を張ったミルフルは、植物本来の野性味と力強さを取り戻し、春には圧倒的なボリュームの「色の絨毯」をお庭に出現させてくれます。

しかし、「地植えにすると、雨や泥はねで繊細な花が傷んでしまうんじゃないか」「冬の厳しい寒さや霜柱で枯れてしまわないか」といった不安をお持ちの方も少なくないはずです。確かに、移動ができる鉢植えとは異なり、地植えには地植え特有のリスクと、それを回避するためのテクニックが存在します。

今回は、そんなミルフルの地植えについて、土作りの配合から植え付けの深さ、そして春に満開のピークを迎えるための詳細な管理方法まで、私自身の数々の失敗談や成功体験も交えながら、初心者の方にも分かりやすく、そして徹底的に解説していきます。

この記事のポイント

  • 地植えの成功率を劇的に高める「水はけの良い土」の黄金配合比率
  • 冬の冷たい強風や霜柱の被害から根を守るための「深植え」テクニック
  • マイナス5℃の寒波や、ミルフルを狙う特有の害虫から株を守る具体的な対策
  • 春に近所の方が驚くほど花を咲かせるための、プロ直伝の肥料と切り戻し術
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ミルフルの地植えで失敗しない土作りと植え方

ミルフルを地植えにする際、最も時間と労力をかけるべきなのが、最初の「環境作り」です。鉢植えであれば、日当たりが悪ければ移動させ、寒ければ軒下に取り込むことができますが、地植えは一度植えてしまったら、二度と場所を動かすことができません。植物にとって、そこが一生を過ごす「定住の地」となるのです。

だからこそ、苗を植える前の「場所選び」と「土作り」が、その後の半年の生育を決定づけると言っても過言ではありません。ここで手を抜いてしまうと、どんなに良い肥料を与えても、どんなに丁寧に手入れをしても、健康に育てることは難しくなります。まずは、ミルフルが最高に居心地が良いと感じるベッド(土壌)を用意してあげましょう。

排水性を良くする土の配合

ミルフル 地植え ミルフルの地植えに最適な土の配合比率。水はけを良くする赤玉土6対腐葉土4の割合を示した用土の材料。

地植え栽培において、ミルフルを枯らせてしまう最大の原因をご存知でしょうか?それは、寒さでも病気でもなく、実は長雨による「根腐れ」なのです。

ミルフルの根は非常に繊細で、呼吸のために多くの酸素を必要とします。常に土がジメジメと湿った状態で、土の粒子の隙間が水で埋め尽くされていると、根は酸欠状態に陥り、やがて窒息して壊死してしまいます。一度根腐れを起こすと、水を吸い上げる力が失われるため、地上部は水切れしたようにしおれ、そこから回復させることは極めて困難です。

特に日本のお庭、関東地方などの土壌は「関東ローム層」と呼ばれる火山灰土壌がベースになっていることが多く、そのままだと粘土質で水はけが悪い傾向があります。雨上がりにいつまでも水たまりが残るような場所は、ミルフルにとって過酷な環境と言えるでしょう。

そこで、植え付ける前に必ず土壌改良を行います。私が長年のガーデニング経験の中で辿り着いた、ミルフルに最適な土の「黄金比率」は以下の通りです。

おすすめの土の配合(体積比)

赤玉土(小粒〜中粒):6

赤玉土は、関東ローム層の土を乾燥させて粒状にしたもので、園芸の基本となる土です。この土の最大の特徴は、粒と粒の間に適度な隙間ができることです。この隙間が空気の通り道となり、根に酸素を供給する「肺」のような役割を果たします。全体の6割をこの赤玉土にすることで、物理的な骨格を作り、水はけを確保します。

腐葉土:4

広葉樹の落ち葉を発酵・熟成させた腐葉土は、土壌に有機物を供給し、土をふかふかにする役割があります。スポンジのように水分を保つ「保水性」と、余分な水を流す「排水性」を併せ持ち、さらに土の中の有益な微生物の住処となって、病気になりにくい土壌環境を作ります。

この「赤玉土6:腐葉土4」という配合は、土壌学で言うところの「三相分布(固相・液相・気相)」のバランスを最適化する組み合わせです。水はけを良くしつつ、必要な水分はしっかりキープするという、相反する機能を両立させることができます。

具体的な土作りの手順

  1. 穴を掘る: 植え付け予定の場所に、苗のポットの大きさよりも二回りから三回りほど大きな穴(深さ30cm、直径30cm程度)を掘ります。
  2. 土の選別: 掘り上げた土が粘土質で重い場合は、その半分ほどを庭の他の場所に移動させるか処分し、代わりに新しい赤玉土と腐葉土を投入します。元々の土が比較的良い状態なら、腐葉土を3〜4割混ぜ込むだけでも十分です。
  3. 酸度調整: 日本の土壌は、雨の影響でカルシウムなどが流出し、酸性に傾いていることがほとんどです。ビオラやパンジーはpH6.0〜6.5程度の弱酸性から中性を好みます。植え付けの2週間ほど前に「苦土石灰(くどせっかい)」を1平方メートルあたり100g程度(一握り強)パラパラと撒き、土によく混ぜ込んでおきましょう。これにより、根が肥料成分をスムーズに吸収できるようになります。

この一手間をかけるだけで、植え付け後の根の張りが劇的に変わり、春の株の大きさに驚くほどの差が出ます。

風で倒れない深植えのコツ

ミルフル 地植え ミルフルの深植え手順の断面図。強風や霜柱対策として、ポットの土表面より2〜3cm深く土を被せて植え付ける方法。

園芸の教科書やインターネットの一般的な解説記事を読むと、ほとんどの植物において「ポットの土の表面と地面の高さを揃えて植える(並植え)」、あるいは「少し高めに植える(高植え)」が基本だと書かれています。しかし、秋から冬にかけてミルフルを地植えする場合に限っては、私はあえて「深植え(ディープ・プランティング)」を強くおすすめしています。

「深植えにすると茎が埋まって腐ってしまうのではないか?」と不安に感じる方もいらっしゃるかもしれません。確かに、湿度の高い梅雨時期や夏場に深植えをするのは御法度ですが、これから乾燥した冬に向かう時期においては、深植えには明確な2つのメリットがあるのです。

メリット1:強風による物理的ダメージの防止

地植えの環境は、鉢植えとは異なり、建物の壁際などを除いて風を遮るものが少ないケースが大半です。特に日本の冬は、「空っ風」と呼ばれる乾燥した強い北風が吹き荒れる季節でもあります。もし、教科書通りに浅く植えてしまうと、強風を受けるたびに株元が振り子のようにグラグラと揺さぶられてしまいます。

植物の根、特に水分や養分を吸収する最前線の「根毛(こんもう)」は、顕微鏡レベルの微細な組織であり、非常に切れやすい性質を持っています。株が風で揺れるたびに、せっかく伸びかけた新しい根毛がブチブチと物理的に切断されてしまうのです。これでは、いつまで経っても株が地面に定着(活着)せず、成長がストップしてしまいます。深植えにして株元を土で固定することで、アンカー効果が生まれ、風による揺れを最小限に抑えることができるのです。

メリット2:霜柱(しもばしら)による浮き上がり対策

寒冷地や関東の冬において、地植えの最大の敵の一つが「霜柱」です。夜間の気温が氷点下になると、土壌中の水分が凍結して柱状の氷となり、土の表面を数センチも持ち上げる現象が起こります。

この霜柱の力は凄まじく、植え付けたばかりで根の張りが浅い苗を、土ごと地上へ押し上げてしまうことがあります。朝になって氷が溶けると、苗は土から浮き上がった状態で取り残され、根が剥き出しになってしまいます。この状態で冷たい寒風にさらされると、根はあっという間にフリーズドライ状態になり、枯死してしまいます。深植えにして、苗の根鉢の上部を1〜2cmほど新しい土で覆うように植え付けることで、霜柱が発生しても根が直接外気に触れるリスクを大幅に低減できるのです。

実践!深植えの手順

植え穴に苗を置いたら、ポットの土の上面が地面より2cm〜3cm程度低くなるように調整します。その上からふんわりと土を被せ、最後に株元の土を両手で優しく、しかししっかりと押さえて(鎮圧して)、苗を安定させてください。この時、一番下の葉っぱが少し土に埋もれてしまっても構いません。活着を優先しましょう。

大きく育てる株間と混植

ミルフル 地植え 地植えにおけるミルフルの適切な株間。成長を見越して苗同士の間隔を20cmから30cm空けて配置した植え付け直後の様子。

ミルフルを地植えする際、ついやってしまいがちな失敗ランキングの上位に入るのが「苗を詰めすぎて植えてしまうこと(密植)」です。購入したばかりの秋の苗は、まだ小さくて可愛らしいサイズなので、広い花壇にポツン、ポツンと植えるのは、なんだか隙間だらけで寂しく感じるものです。

しかし、ここで誘惑に負けてはいけません。ミルフルは環境さえ整えば、春には一株で直径30cm〜40cm、時にはそれ以上の巨大なドーム状に成長するポテンシャルを秘めています。私たちは親しみを込めて、そのボリューム感を「アヒルの背中のよう」と表現することもありますが、それくらい立派に育つのです。

そのため、隣の株とは最低でも20cm〜30cm程度の間隔(株間)を空けるようにしてください。これは、苗のポット2つ分から3つ分のスペースに相当します。

もし株間を狭くしすぎてしまうと、春になって大きく育った時に、隣同士の葉っぱが重なり合い、お互いの成長を阻害してしまいます。株の内側の日当たりが悪くなり、風通しも遮断されるため、株の中が蒸れて「灰色かび病」が発生したり、下葉が黄色く枯れ込んだりする原因になります。「今はちょっとスカスカして寂しいかな?」と思うくらいが、将来の爆発的な成長を見越したベストな距離感なのです。

寂しさを埋める「混植(コンパニオンプランティング)」

ミルフル 地植え ミルフルとスイートアリッサムの混植例。株元の土をカバーし、泥はね防止と見栄えを良くするコンパニオンプランティング。

「それでもやっぱり、土が黒々と見えているのは寂しいし、見栄えが悪い」という方には、他の植物との「混植」を強くおすすめします。特に、ミルフルの成長を邪魔せず、地面を這うように広がるグランドカバープランツとの相性は抜群です。

おすすめ植物 特徴とメリット
ヒメツルニチニチソウ

(ビンカ・ミノール)

常緑の艶やかな葉が美しく、春には青や白の可憐な花を咲かせます。つるが伸びて地面をカバーしてくれるので、雨の日の泥はねを防止し、ミルフルの花を汚れから守ってくれます。
ベロニカ

「ミッフィーブル」

クリーム色の斑が入った明るい葉が特徴で、冬の寂しくなりがちな花壇をパッと明るくしてくれます。春に咲く爽やかな青い小花は、ミルフルの華やかな色合いと最高のコントラストを生み出します。
スイートアリッサム 定番の組み合わせですが、やはり最強のパートナーです。白い小花がカーペットのように広がり、主役であるミルフルの色を引き立てます。こぼれ種で増えるのも嬉しいポイントです。

これらの植物をミルフルの株と株の間のスペースに植えることで、見た目の寂しさを解消できるだけでなく、土の表面からの水分蒸発を防ぎ、地温の低下を和らげる「生きたマルチング」としての機能的なメリットも得ることができます。まさに一石二鳥のテクニックと言えるでしょう。

花を増やす肥料の選び方

ミルフルは「多花性(たかせい)」といって、次から次へと休むことなくたくさんの花を咲かせる性質を持っています。私たち人間にとって、マラソンを走り続けるようなもので、花を咲かせるという行為は植物にとって莫大なエネルギーを消費する大仕事です。

そのため、ミルフルはいわば「大食漢」な植物であり、肥料切れを起こすと途端に正直な反応を見せます。花数が減る、花が小さくなる、葉の色が薄くなるといったサインが出始めたら、それは「お腹が空いた」という悲鳴です。特に地植えの場合、鉢植えとは違って、雨が降るたびに土の中の肥料成分が地下深くへと流亡(リーチング)してしまいやすいという特徴があります。したがって、鉢植え以上にしっかりとした施肥計画が必要になります。

植え付け時の「元肥(もとごえ)」が勝負を決める

ミルフル 地植え ミルフルの植え付け時に元肥を施す様子。リン酸を含む緩効性肥料を植え穴の土全体に均一に混ぜ込む土壌改良の作業。

まず、植え付けの際には必ず元肥を施しましょう。ここで選びたいのが、植物の根を育て、花付きを良くする成分である「リン酸(P)」が多く含まれている緩効性肥料です。私は長年、「マグァンプK(中粒)」を愛用していますが、これには理由があります。

植物の三大栄養素である「窒素・リン酸・カリ」のうち、窒素とカリは水に溶けやすく、土の中で比較的自由に移動できるのですが、「リン酸」という成分は土の中であまり移動しないという厄介な性質を持っています。つまり、植え付けた後に土の上にパラパラと撒くだけでは、土の表面に留まってしまい、肝心の根っこまで届かない可能性が高いのです。

ですから、植え穴を掘った際、掘り上げた土全体に肥料を均一に混ぜ込み、根が伸びていった先々で直接肥料成分に触れられるようにすることが非常に重要です。この「土に混ぜ込む」というひと手間ができているかどうかで、春の花数に雲泥の差が出ます。

追肥のタイミングと種類の使い分け

元肥だけでなく、生育期間中は定期的な「追肥(ついひ)」も欠かせません。地植えであっても、1週間〜10日に1回程度、液体肥料を水やりの代わりに与えると効果的です。

  • 冬の間(12月〜2月): 気温が低く成長が緩やかな時期は、2週間に1回程度、標準より少し薄めた液体肥料を与えて体力を維持させます。
  • 春の成長期(3月〜5月): 気温が上がり、次々と蕾が上がってくる時期は、肥料の消費量がピークに達します。1週間に1回、規定倍率の液体肥料をたっぷりと与え、スタミナ切れを防ぎましょう。

植え付け時の摘心は不要

園芸に詳しい方や、YouTubeなどで勉強されている方ほど、「苗を買ってきたら、まずは摘心(ピンチ)をして枝数を増やさなければならない」という固定観念をお持ちかもしれません。摘心とは、茎の先端をカットすることで、植物の「頂芽優勢(ちょうがゆうせい)」という性質を打破し、脇芽の発生を促して株をこんもりさせるテクニックです。

しかし、ミルフルの場合、植え付け時の摘心は基本的には不要です。これにはメーカーによる明確な育種背景があります。

サントリーフラワーズの公式情報にも明記されている通り、ミルフルやフィオリーナといった同社のブランド苗は、遺伝的に分枝力(枝分かれする力)が極めて強く改良されています。つまり、人の手でハサミを入れなくても、自然に脇芽が出て、勝手にこんもりとした美しいドーム状の樹形に育つようにプログラムされているのです。

(出典:サントリーフラワーズ『ミルフル 花苗』

むしろ、これから寒くなる10月〜11月の時期に摘心を行ってしまうことには、大きなデメリットがあります。それは「開花の遅れ」です。摘心をするということは、今まさに咲こうとしている蕾や花芽を切り落としてしまうことを意味します。気温が低下していく中で、再び花芽を形成して開花するまでには、想像以上の時間がかかります。

秋に摘心をしてしまうと、年内はほとんど花が見られず、緑の葉っぱだけの状態で冬を越すことになりかねません。せっかく秋から春まで長く楽しめるのがミルフルの魅力なのですから、まずはハサミを入れずにそのまま植え付けて、花を楽しみながら根をしっかりと張らせる(活着させる)ことを最優先にしてください。

例外的に摘心をした方が良いケース

ただし、購入した苗が極端に間延び(徒長)してヒョロヒョロしている場合や、株の形が著しく崩れている場合に限り、整枝の意味で軽く先端をカットして植え付けるのは有効です。苗の状態を見て判断しましょう。

ナメクジの被害と駆除方法

ミルフル 地植え ナメクジによる食害を受けたミルフルの花。花弁がかじられ、粘液の跡が残っている典型的な被害の様子。

さて、ミルフルを地植えする際に、避けては通れない深刻な問題があります。それは「ナメクジ」による食害です。私の観察経験や、SNS上での多くのガーデナーさんの報告によると、ナメクジは他の一般的なビオラやパンジーよりも、なぜかミルフルを選んで集中的に食べる傾向があるのです。

その理由は科学的には解明されていませんが、あの特徴的なフリルの柔らかく繊細な食感や、ミルフル特有の甘い香り、あるいは糖度の高さなどが、ナメクジを強く誘引している可能性があります。美食家なナメクジたちにとって、ミルフルは最高級のデザートなのかもしれません。

こんな症状はナメクジのサイン!

  • せっかくきれいに咲いた花のフリル部分だけが、ボロボロにかじり取られている。
  • 花びらや葉っぱの上、あるいは株周りの地面に、キラキラと光る銀色の粘液の跡(這い跡)が残っている。
  • 昨日は咲いていたはずの花が、一晩で跡形もなく消えている。

ナメクジは基本的に夜行性なので、昼間に見回りをしても姿が見えないことが多く、「いつの間にか花がなくなっている!誰の仕業?」と驚くことになります。地植えの場合、地面と接しているため、鉢植え以上にナメクジの侵入が容易であり、被害の拡大も早いです。

効果的な防除テクニック

被害が出てから対処するのではなく、「植え付けと同時に予防する」のが鉄則です。花が食べられてからでは遅いのです。

  1. 粒剤タイプの駆除剤:ナメクジ退治」「スラゴ」などの名称で販売されている粒状の薬剤を、株の周りにパラパラと撒いておきます。これが最も手軽で確実な方法です。特に雨や湿気に強いタイプを選ぶと、地植えでも効果が長持ちします。
  2. ビールトラップ: 小さなお子様やペットがいて薬剤を使いたくない場合は、空き容器(プリンのカップなど)に飲み残しのビールを入れ、地面と同じ高さになるように埋めておきます。ナメクジはビールの発酵臭に強烈に引き寄せられ、中に入って溺死します。ただし、こまめな交換が必要で、見た目もあまり良くないのが難点です。

せっかくの美しいフリルが無惨な姿になる前に、必ず「転ばぬ先の杖」としての対策をしておきましょう。

ミルフルを地植えした後の管理と冬越しの方法

無事に植え付けが終わっても、それでゴールではありません。むしろ、そこからが本当のスタートです。特に日本の冬は、地域によっては氷点下の冷え込みや乾燥した強風など、植物にとっては過酷な環境になることがあります。ミルフルを春まで元気に維持し、満開の花を咲かせるための管理ポイントを解説します。

冬の水やりは午前中に

ミルフル 地植え 冬場のミルフルへの正しい水やり方法。凍結を防ぐため、晴れた日の午前中に株元へたっぷりと水を与えている様子。

冬場の水やりには、絶対に守るべき鉄則があります。それは「晴れた日の午前中にたっぷりと行うこと」です。「そんなの当たり前でしょう?」と思われるかもしれませんが、これを徹底できるかどうかが、冬越しの成否を分けるのです。

もし、仕事から帰ってきた夕方や夜に「あ、水をやるのを忘れていた」と思って水やりをしてしまうと、どうなるでしょうか?土の粒子と粒子の隙間に水分がたっぷりと充満した状態で、夜間の氷点下の気温を迎えることになります。水は空気よりも熱を伝えやすく、また凍ると体積が増える性質があります。その結果、土壌全体がカチカチに凍結し(凍土)、根の細胞が物理的に破壊されたり、窒息状態になったりしてしまいます。これが「冬の根腐れ」の正体です。

午前中の、できるだけ早い時間(9時〜10時頃)に水を与えることで、日中の太陽と風の力で余分な水分を蒸発させ、重力によって水を地下へと排水させる時間を稼ぐことができます。そして、夕方までには土の表面が乾き、土壌内の水分量が適度に下がった状態で夜を迎えるのが理想的です。

また、冬場は植物の成長活動が鈍くなり、蒸散量も減るため、夏場のように毎日水をやる必要はありません。土の表面が白っぽく乾いているのを指で触ってしっかりと確認してから、数日に一度、あるいは一週間に一度程度でも十分な場合があります。「乾いたらやる」という基本を、より慎重に実践してください。

「しおれ」か「凍結」かを見極める

冬の朝、ミルフルがぐったりとしていることがあります。これは「水切れ」の場合もありますが、多くは寒さで細胞内の水分が凍っている状態です。この時に慌てて水をやると逆効果になることがあります。日が昇って気温が上がれば自然に戻る場合は「凍結」、昼過ぎになっても戻らない場合は「水切れ」と判断しましょう。

霜柱と寒風を防ぐ冬越し

ミルフルはパンジーやビオラの仲間であり、本来は耐寒性が高く、丈夫な植物です。雪の下になっても耐えるほどの強さを持っていますが、それでも限界はあります。一般的に、気温がマイナス5℃を下回ると、細胞内の水分が凍結し、生理的な障害が発生するリスクが高まると言われています。

強い寒波が来た翌朝、庭に出てみると、ミルフルの葉や花が「シナシナ」になって、まるで茹でた野菜のように透き通って黒ずんでしまっていることがあります。これは、細胞内の水分が凍ってしまった状態です。初めて見ると「枯れてしまった!もう駄目だ!」とショックを受けるかもしれませんが、諦めないでください。

これは一時的な凍結状態であることが多く、日が昇って気温が上がれば、解凍されて細胞が再び水を吸い上げ、元のシャキッとした姿に戻ります。ただし、この「凍結と解凍」のサイクルを毎日のように繰り返すと、植物にとっては大きな体力を消耗することになり、徐々に弱っていってしまいます。

不織布(ふしょくふ)による防寒対策

ミルフル 地植え 寒波対策としてミルフルに不織布をベタがけしている様子。霜や冷たい北風から株を守る物理的な防寒方法。

天気予報で「今夜は強い寒波が来る」「最低気温がマイナス5℃以下になる」といった予報が出た場合は、物理的な防寒対策を行いましょう。ホームセンターや100円ショップで売られている園芸用の「不織布」を、ふんわりと株全体に被せる「ベタがけ」が最も有効です。

不織布は光を通すので、かけっぱなしでも光合成を阻害しにくく、冷たい風や放射冷却による急激な温度低下を和らげてくれます。四隅を石やピンで留めて飛ばされないようにすれば、簡易的な温室のような効果が得られます。

また、建物の「軒下」に近い場所に植えている場合は、家からの放熱や屋根による放射冷却の遮断効果で、露地よりも数度気温が高く保たれることがあります。植え場所を選ぶ際に、北風が直接当たらない場所を選ぶのも立派な防寒対策です。

絶対禁止事項

凍っている株を見て「かわいそうだから」と、お湯やぬるま湯をかけるのは絶対にやめてください。急激な温度変化で細胞壁が破壊され、本当に枯れてしまいます。自然に解凍されるのを待つのが正解です。

花が咲かない原因と対策

地植えにしたミルフルが、「葉っぱばかりモリモリと茂って、全然花が咲かない…」という悩みに直面することがあります。株自体は元気そうで、緑色は濃いのに、肝心の花芽が上がってこない。この場合、主に2つの原因が考えられます。

1. 日照不足

ビオラやパンジーは、何よりも「お日様」を愛する陽性植物です。花芽を作り出すためには、十分な光合成が必要です。もし、植えた場所が建物の陰で一日中日が当たらない場合や、大きな常緑樹の下で日陰になっている場合は、どうしても花付きは悪くなります。半日以上、できれば直射日光が当たる場所が理想です。地植えの場合は移動ができないため、周囲の木の枝を剪定するなどして、少しでも光が当たる工夫をしてみましょう。

2. 肥料バランスの崩れ(窒素過多)

良かれと思って肥料をあげすぎている場合、特に「窒素(N)」成分が多い肥料を与え続けていると、植物は「体を大きくすること」にエネルギーを使いすぎてしまい、子孫を残すための「花を咲かせること」を後回しにしてしまいます。これを園芸用語で「木ボケ(きぼけ)」や「ツルボケ」と呼びます。

葉っぱが巨大化し、色が濃い緑色をしているのに花が咲かない場合は、この可能性が高いです。対策としては、一時的に窒素を含む肥料をストップし、「リン酸(P)」や「カリウム(K)」が中心の肥料(開花促進用の液肥など)に切り替えて様子を見てください。これにより、植物のスイッチが「成長」から「生殖(開花)」へと切り替わり、再び蕾が上がり始めることがあります。

春に満開にする切り戻し

ミルフル 地植え ミルフルの正しい切り戻し位置。枯死を防ぐため、必ず葉や芽が残っている節の上で茎をカットする剪定のポイント解説。

冬の間は寒さに耐えながらゆっくりと成長していたミルフルも、2月下旬から3月に入り気温が上昇してくると、一気に成長スピードが加速します。このタイミングで、株の形が乱れてきたり、茎が伸びすぎて(徒長して)ヒョロヒョロになってきたりすることがあります。

そんな時は、思い切って「切り戻し」を行うチャンスです。これは必須作業ではありませんが、適切に行うことで春の最盛期(フルブルーム)に、隙間なく花が咲き誇る「超満開」の状態を作り出すことができます。

失敗しない切り戻しのルール

茎をカットする際は、必ず「葉っぱや元気な芽が残っている節(ふし)の上」で切るようにしてください。

ビオラなどの草花は、葉が一枚もない丸坊主の状態(強剪定)にしてしまうと、光合成ができなくなり、新しい芽を出す体力が残っていないため、そのまま枯れてしまうリスクがあります。必ず「光合成をするための葉」を残すのがコツです。

切り戻しを行うと、一時的に花がなくなって寂しくなりますが、焦る必要はありません。カットされた刺激で、残した節から新しい脇芽が複数出てきて、枝数が倍増します。その結果、2〜3週間後には、以前よりもさらに密度が高く、こんもりとしたボリューム満点の株姿で復活してくれます。切り戻しの直後には、ご褒美として液体肥料を与えて、新芽の成長をサポートしてあげましょう。

灰色かび病と花がら摘み

ミルフルの最大の特徴であり魅力である「豪華なフリル」ですが、実はこれが病気のリスクを高める要因にもなり得ます。花びらが複雑に重なり合っているため、雨水や朝露が溜まりやすく、一度濡れるとなかなか乾かないのです。

湿った状態が長く続くと、枯れた花びらや傷んだ葉に「ボトリチス菌」というカビの胞子が着生し、茶色く腐って灰色のカビが生える「灰色かび病」が発生します。この病気は非常に感染力が強く、放っておくと健康な茎や葉にも次々と感染し、株全体を溶かすように枯らしてしまいます。地植えは雨を避けることができないため、特に注意が必要です。

「花がら摘み」は最高の予防策

灰色かび病を防ぐ一番の方法は、こまめな「花がら摘み」です。咲き終わってしぼんだ花は、種ができる前に早めに取り除きましょう。この時、花びらだけをむしり取るのではなく、花茎(かけい)の付け根から指でつまんでひねり取る、あるいはハサミで根元からカットするのが正解です。茎を中途半端に残してしまうと、その残った茎が腐って病気の温床になるからです。

また、株元の黄色くなった古い葉っぱや、枯れ落ちた葉も、見つけ次第取り除いてください。株の内部の風通しを良くすることで、湿度を下げ、病原菌が繁殖しにくい環境を保つことができます。地植えガーデニングは、こうした日々の小さなメンテナンスの積み重ねが、春の圧倒的な美しさに繋がるのです。

ミルフルを地植えで長く楽しむまとめ

いかがでしたでしょうか。フリルのある優雅な花びらが地面いっぱいに広がり、春風に揺れる姿は、本当に圧巻の一言に尽きます。地植えは鉢植えよりも環境のコントロールが難しく、少しハードルが高く感じるかもしれませんが、今回ご紹介したポイントを押さえれば、決して難しいことではありません。

土作り 赤玉土6:腐葉土4の割合で、水はけと保水性を両立させる。酸度調整も忘れずに。
植え方 風対策と霜柱対策のために、あえて「深植え」にする。株間は将来を見越して20〜30cm確保。
寒さ対策 -5℃以下になる日は不織布などで保護。水やりは必ず晴れた日の午前中に行い、凍結を防ぐ。
害虫対策 ナメクジが好んで集まるため、植え付けと同時に粒剤やビールトラップで予防する。
春の管理 徒長したら葉を残して切り戻し、液肥を与えてラストスパートをかける。花がら摘みで病気を防ぐ。

「土作り」で根の住処を整え、「深植え」で物理的に守り、「寒さと害虫」への備えをしておく。これだけで、ミルフルは驚くほど元気に育ってくれます。植物は、手をかけた分だけ必ず応えてくれます。皆さんの庭に植えられたミルフルが、厳しい冬を乗り越え、春の光の中で満開の笑顔を見せてくれることを、My Garden 編集部一同、心から応援しています。

ぜひ、今年は鉢植えだけでなく、地植えでのミルフル栽培にチャレンジして、あなただけの素敵なガーデンを作ってみてくださいね。

※記事内の情報は一般的な目安です。お住まいの地域の気候や環境によって生育状況は異なります。薬剤を使用する際は説明書をよく読み、ご自身の責任においてご使用ください。

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