こんにちは、My Garden 編集部です。
春の訪れとともに、街角や空き地を優しい紫色のグラデーションで彩るムラサキハナナ。ショカツサイやオオアラセイトウという名前でも親しまれていますが、この花が一面に咲き誇る景色を自分のお庭でも再現できたら素敵だと思いませんか。紫花菜の育て方は、植物の性質を理解してしまえばそれほど難しいものではありません。しかし、実際に栽培を始めてみると、種まきの最適なタイミングや、混同されやすいハナダイコンとの違い、そしてアブラナ科特有のアオムシなどの害虫からどう守るかなど、意外と奥が深いことに気づかされます。この記事では、そんな皆様の疑問や不安に寄り添い、初心者の方から中級者の方までが納得できる専門的な知見を交えて詳しく解説していきます。この記事を最後まで読めば、来年の春にはあなたのお庭に美しい紫色の絨毯が広がっているはずですよ。私と一緒に、紫花菜のある豊かなガーデニングライフをスタートさせましょう。
この記事のポイント
- 紫花菜の正確な名前と植物としての基本的な特徴
- 失敗しないための種まき時期と育ちやすい環境の選び方
- アブラナ科特有の害虫から花を守るための具体的な防除法
- 翌年も同じように美しい花を咲かせるための種採取テクニック
初心者でも簡単!紫花菜の育て方と基本の知識
紫花菜の栽培を成功させるための第一歩は、その植物がどのような一生を送るのか、そしてどんな環境を好むのかという「基本」を正しく知ることです。まずは、名前にまつわる興味深いエピソードや、丈夫に育つためのサイクルを詳しく紐解いていきましょう。
ショカツサイやオオアラセイトウなどの別名と特徴

紫花菜(ムラサキハナナ)は、非常に多くの名前を持つことで知られる、エピソード豊かな植物です。植物学上の標準的な和名はオオアラセイトウと言いますが、歴史や文化に詳しい方にはショカツサイ(諸葛菜)という名前のほうが馴染み深いかもしれませんね。この名前は、三国志の英雄である諸葛孔明が、戦地での兵士の食糧として栽培を広めたという伝説に由来しています。この伝説からも分かる通り、非常に強健で繁殖力が強く、どんな過酷な環境でも育つ力強さがこの植物のアイデンティティなんです。中国原産のアブラナ科オオアラセイトウ属に分類され、日本には江戸時代末期から明治時代にかけて渡来したと言われています。現在は帰化植物として日本全国に広がっており、春の風物詩として定着していますね。
外見的な特徴に目を向けると、春に直径2〜3cmほどの十字形の可憐な紫色の花を、茎の先端に総状につけます。花びらは4枚で、菜の花(アブラナ)の色違いのような姿をしているため「紫色の菜の花」という意味でムラサキハナナと呼ばれるようになりました。草丈は一般的に40cmから50cm程度ですが、土壌の栄養状態が良いと大人の腰の高さ近くまで育つこともあります。茎はまっすぐ直立し、上部で細かく枝分かれをしてたくさんの花芽をつけます。また、葉の形もユニークで、根に近い葉は羽のように深く裂けていますが、茎の上の方につく葉は茎を優しく抱きかかえるような形をしています。この野性味あふれるナチュラルな草姿は、整いすぎた花壇よりも、自然な風合いを大切にするイングリッシュガーデンや和風の庭によく馴染みます。単体でポツンと植えるよりも、ある程度の広さにまとめて植えることで、その圧倒的な色彩の美しさがより際立ちますよ。
耐寒性が強く育てやすい秋まき一年草の性質

紫花菜を育てる上で私が最も強調したい魅力は、その驚異的な耐寒性です。多くの冬越し植物が霜除けや防寒対策を必要とする中で、紫花菜は日本の厳しい冬の寒さを屋外で堂々と乗り越えることができます。ライフサイクルとしては「秋まき一年草」または「越年草」に分類されます。秋に発芽した紫花菜は、冬の間は茎を伸ばさず、地面にピタッと葉を広げた「ロゼット」と呼ばれる姿で過ごします。この状態は一見すると成長が止まっているように見えますが、実は太陽の低い冬の光を効率よく浴び、地中深くへ根を伸ばして春の爆発的な成長のためのエネルギーを蓄えている真っ最中なんです。この「冬の寒さに当たる」というプロセスが紫花菜にとっては極めて重要で、一定期間の低温を経験することで、春に花を咲かせるための生理的なスイッチが入る仕組みになっています。
植物生理学的な視点で見ても、紫花菜は環境適応能力が非常に高く、肥料が少ない痩せた土地や、少し放ったらかしにされた場所でも自力で育つたくましさを持っています。そのため、ガーデニング初心者の方が「まずは種から育てる成功体験を積みたい」という時の最初のパートナーとしてこれ以上ないほど適しています。また、一度お庭で開花させてしまえば、こぼれ種によって翌年もまた同じ場所、あるいは少し離れた場所からひょっこりと顔を出してくれることがよくあります。この半野生化するほどの生命力が、忙しくて毎日のお手入れが難しい方にとっても大きなメリットになるはずです。ただし、あまりに広がりすぎて他の植物の居場所を奪ってしまうこともあるので、増えすぎたと感じたら適宜間引きをするなど、優しいコントロールをしてあげるのが長く付き合うコツかなと思います。厳しい寒さを経て、春一番に力強く立ち上がる姿には、毎年元気をもらえますよ。
種まき時期に適した9月から10月の管理方法

紫花菜の栽培をスムーズにスタートさせるための最重要ポイントは、種まきのタイミングです。ベストシーズンは地域によって多少前後しますが、一般的には9月から10月頃です。この時期は日中の最高気温が20度から25度程度に落ち着き始め、人間にとっても過ごしやすい季節ですが、紫花菜の種にとっても発芽に最適な温度なんです。残暑が厳しすぎると発芽率が落ちたり、芽が出ても熱でやられてしまったりするので、少し秋の気配を感じてからまくのが正解ですね。種自体はアブラナ科らしく比較的大きめで扱いやすいため、直接育てたい場所にまく「直まき」が最も失敗が少ない方法です。種をまく場所を15cmほど耕し、種が重ならないようにパラパラと散布しましょう。その後、種が隠れる程度に5mmから1cmほど薄く土を被せます。この「覆土(ふくど)」が実は大切で、紫花菜の種は光を嫌う性質(嫌光性)があるため、しっかり土をかけないと発芽しにくいことがあるんです。
種まきから1週間から10日ほどで小さな双葉が顔を出します。この時期はまだ根が浅く乾燥に弱いため、土の表面が乾かないように優しく、たっぷりと水やりを続けてあげてください。芽が出揃ってきたら、本葉が数枚出たタイミングで「間引き」を行います。隣り合う株同士が触れ合わないように、弱々しい芽から抜いていきましょう。最終的には株の間を20cmから30cmほど空けるように調整します。もし、お気に入りの場所に植えたいからとポットで苗を作ってから移植したい場合は、本葉が2枚から3枚の「若苗」のうちに行うのが鉄則です。紫花菜は成長が早く、すぐに根を伸ばし始めるため、大きくなってからの移植は根を傷めるリスクが高まります。早秋の柔らかい日差しの中で、日ごとに大きくなっていく幼苗を見守るのは、ガーデナーにとって至福のひとときですね。この時期にしっかり根を張らせることが、春の満開への近道となります。
日当たりや半日陰など最適な植栽場所の選び方

紫花菜が多くの人々に愛される理由の一つに、光に対する寛容さ、つまり「場所を選ばない力」があります。もちろん、太陽の光が大好きな植物なので、一日中日が当たる「日向」が理想的ではあります。しかし、紫花菜の真価が発揮されるのは、むしろ他の花が育ちにくい「半日陰」の環境です。お庭の隅や、建物の東側、あるいは大きな木の木陰など、直射日光が数時間しか当たらない場所でも、紫花菜は驚くほど元気に花を咲かせてくれます。これは、春先に木々が芽吹く前の、まだ明るい木漏れ日を利用して成長できるという、彼らが本来持っている野生の知恵によるものです。この性質を利用すれば、お庭のデッドスペースを美しい紫色のスポットに変えることができるんです。
具体的に特におすすめしたい植栽場所は、桜(ソメイヨシノ)の木の根元です。桜の開花時期と紫花菜の満開時期は驚くほどピッタリと重なります。桜の淡いピンク色と、紫花菜の鮮やかな紫色のコントラストは、まさに日本の春を象徴する絶景といっても過言ではありません。また、落葉樹の下などは、冬の間は葉が落ちて日が当たり、開花する春先まで適度な光が得られるため、紫花菜にとって最高の特等席になります。ただし、いくら半日陰に強いと言っても、一日中全く光が入らない「完全な日陰」では、茎が細く長く伸びてしまう「徒長」が起き、自重で倒れてしまったり、花数が極端に減ってしまったりします。少なくとも午前中だけは日が当たる、あるいは明るい日陰であることが、美しい花を楽しむための最低条件かなと思います。風通しが良い場所であることも、湿気を嫌う紫花菜にとっては大切なポイントです。お庭をじっくり観察して、彼らがのびのびと過ごせる場所を見つけてあげてくださいね。
排水性の良い土壌作りと株間の確保による環境整備

紫花菜は非常にタフな植物ですが、唯一と言っていい弱点が「土の過湿(蒸れ)」です。アブラナ科の植物全般に言えることですが、根っこが常に水に浸かっているような状態だと酸素欠乏を起こし、根腐れしてしまいます。そのため、地植えにする場合は、植え付けの1週間ほど前に土壌改良を行っておくのが理想的です。特に粘土質で水はけが悪い土壌の場合は、腐葉土や堆肥を土に2〜3割ほどたっぷりと混ぜ込み、土の中に空気の通り道を作ってあげましょう。これにより土がふかふかになり、余分な水がスムーズに抜けるようになります。また、日本の土壌は雨によって酸性に傾きやすい傾向がありますが、アブラナ科は弱酸性から中性の土を好みます。少量の苦土石灰をあらかじめ散布して土の酸度を調整しておくと、根の張りがさらに良くなりますよ。
次に、意外と見落としがちなのが「株間の確保」です。紫花菜は成長すると想像以上に横にふんわりと広がります。種をまきすぎて芽が密集したままにしておくと、株同士が日光や養分を奪い合うだけでなく、風通しが極端に悪くなってしまいます。風通しが悪いと、後で詳しくお話しする「うどんこ病」や「白さび病」といった病気の温床になってしまうんです。私はいつも、最終的に一株が20cmから30cmの円を描くくらいのスペースを想定して間引きをしています。株と株の間に風が通り、太陽の光が地面に近い葉にまでしっかりと届くような状態を保つことが、病害虫に負けないガッシリとした株を作るための最大の秘訣です。植え付けた直後はスカスカで少し寂しく感じるかもしれませんが、春になればそのスペースは溢れんばかりの花と葉で埋め尽くされます。この「ゆとり」こそが、健全な育成には欠かせない要素なんです。
移植を嫌う直根性への対策と地植えのメリット

紫花菜を育てる上で、これだけは絶対に覚えておいていただきたい生理的な特徴があります。それは、紫花菜が「直根性(ちょっこんせい)」の植物であるということです。直根性とは、大根やゴボウのように太い主根が一本、地中深くへとまっすぐに伸びていく性質のことを指します。この太い根は、植物を支えるアンカーのような役割を果たすだけでなく、深い場所にある水分や養分を吸収するための生命線です。しかし、この直根は非常にデリケートで、一度折れたり傷ついたりすると再生しにくいという弱点があります。そのため、ある程度大きく育った後に掘り起こして別の場所に植え替えようとすると、高確率で根付かずに枯れてしまうんです。これを避けるための最善の策は、最初から最終的な目的地に種をまく「直まき」での栽培です。
直まきをして地植えにすることには、多くのメリットがあります。根が地中の制限なく自由に伸びることができるため、鉢植えに比べて株が何倍も大きく、逞しく育ちます。また、地植えの紫花菜は根が深いところにある水分に自らアクセスできるので、極端な日照りが続かない限り、水やりの手間がほとんどかかりません。まさに、自然のサイクルに任せた「スローガーデニング」の強い味方ですね。もし、どうしても市販のポット苗を購入して植え付ける場合は、ポットから抜く際に絶対に土を崩さないように細心の注意を払ってください。根が見えるほど土を落としてしまうのは、紫花菜にとっては致命傷になりかねません。そっと両手で包み込むようにして、用意した植え穴にそのまま安置してあげるイメージです。根を大切に扱うこと、これこそが紫花菜への最大の配慮であり、春に最高のパフォーマンスを引き出すための鍵となります。自然な環境で、のびのびと根を張らせてあげましょう。
紫花菜の栽培における土壌改良の目安
| 資材名 | 主な役割 | 施用量の目安(1平米あたり) |
|---|---|---|
| 苦土石灰 | 土壌の酸度調整・カルシウム補給 | 100g〜150g(コップ1杯程度) |
| 完熟堆肥 | 土壌微生物の活性化・排水性向上 | 2kg〜3kg(バケツ3分の1程度) |
| 腐葉土 | 保水性と通気性のバランス改善 | 5リットル〜10リットル |
| 緩効性化成肥料 | 初期成長を支える基礎栄養 | 50g〜80g(一握り程度) |
※数値は一般的な目安です。お庭の元の土の状態(粘土質か砂質かなど)に合わせて調整してください。不安な場合は、園芸店で相談してみるのも良いですね。
実践的な紫花菜の育て方と病害虫対策のコツ
基礎を固めたら、いよいよ栽培をより確実なものにするための実践テクニックです。紫花菜をただ咲かせるだけでなく、より美しく、そしてトラブルを最小限に抑えるためのコツを詳しくお伝えします。特にアブラナ科ならではの害虫との賢い付き合い方は、ガーデニングの腕の見せ所ですよ。
元肥の与え方と花付きを良くするリン酸の追肥
紫花菜は本来、野に咲く花のように力強い植物ですので、肥料の与えすぎはかえって逆効果になることがあります。いわゆる「贅沢な暮らし」をさせすぎると、葉っぱばかりが異常に茂ってしまい、肝心の花が少なくなってしまう「つるぼけ」のような状態になりやすいんです。基本となるのは、種まきや植え付けの際に土に混ぜ込んでおく「元肥(もとごえ)」です。私はいつも、牛糞堆肥や緩効性の化成肥料をあらかじめ土に馴染ませておくようにしています。これにより、苗が幼い時期の根張りをスムーズにし、厳しい冬を越すための基礎体力をしっかりと付けさせることができます。
そして、開花のパフォーマンスを一気に引き上げるための秘策が、春先の「追肥」です。2月の終わりから3月にかけて、紫花菜は茎を一気に上へと伸ばす「抽苔(ちゅうだい)」という成長ステージに入ります。このタイミングで、リン酸(P)を多く含む肥料を少量与えてみてください。肥料の成分である窒素(N)、リン酸(P)、カリ(K)のうち、リン酸は別名「実肥・花肥」と呼ばれ、花の数を増やし、色の鮮やかさを増進させる効果があります。逆に、この時期に窒素分の多い肥料を追い足してしまうと、花芽よりも葉の成長にエネルギーが分散されてしまうので、配合バランスには注意が必要ですね。水に溶かして使う液体肥料であれば即効性が高く、植物の反応がすぐに見えるので初心者の方にもおすすめですよ。控えめながらもポイントを突いた肥料管理が、紫花菜本来の凛とした美しさを引き出す近道になります。
アオムシやカブラハバチに有効な薬剤の使い分け

紫花菜栽培において、避けて通れないのが害虫との戦いです。アブラナ科である紫花菜は、モンシロチョウの幼虫であるアオムシにとって最高のご馳走です。また、黒い芋虫のような姿をしたカブラハバチの幼虫もよく発生します。ここで非常に重要な、プロも実践する知識があります。それは、「アオムシに効く薬が、カブラハバチには全く効かない場合がある」という事実です。例えば、自然界に存在する菌を利用した「BT剤」という生物農薬は、チョウやガの幼虫(アオムシ、ヨトウムシなど)には劇的な効果を発揮しますが、ハチの仲間であるカブラハバチには驚くほど無力なんです。この事実を知らずにBT剤だけをまいていると、「薬をまいたのに黒い虫がいなくならない!」とパニックになってしまうことになります。
もし、葉が網目状にボロボロに食い荒らされ、そこに黒い小さな幼虫を見つけたら、それはカブラハバチの仕業です。その場合は、「モスピラン」などのネオニコチノイド系や、幅広いアブラナ科害虫に登録のある薬剤を選択する必要があります。もちろん、お庭に農薬を使いたくない場合は、毎日葉の裏をチェックして卵や幼虫を地道に取り除く「テデトール」が一番ですが、群生させている場合は現実的に難しいこともありますよね。そんな時は、春先に不織布や防虫ネットをトンネル状にかけて、成虫(チョウやハチ)が卵を産み付けるのを物理的にシャットアウトしてしまうのが、最も美しく効果的な予防法になります。害虫の正体を正しく見極めることが、無駄な薬剤散布を減らし、大切な花を効率よく守るための最初の一歩です。
白さび病やうどんこ病を予防する風通しの改善
紫花菜に発生しやすい病気の代表格は、葉に白い粉が吹いたようになる「うどんこ病」と、葉の裏に白い膨らみができる「白さび病」です。これらはカビ(糸状菌)が原因で発生する病気ですが、特に春先の暖かくなってきて、なおかつ雨が続いて湿気が溜まる時期に一気に広がることがあります。病気が進行すると葉が真っ白になり、光合成の能力が落ちて株全体が衰弱してしまいます。こうなると花の寿命も短くなってしまいます。一番の特効薬は、実は農薬ではなく「空気の流れ(Air Flow)」を整えてあげることです。前述した株間の確保に加え、古い下葉が黄色くなって地面に重なっているようなら、迷わず取り除いてあげてください。地面に近い場所は湿気が停滞しやすく、病原菌にとっての最高の温床になってしまうからです。
また、水やりについてもちょっとしたコツがあります。ジョウロで上からドバッとかけるのではなく、なるべく葉に水がかからないように、ノズルを株元に差し込んで静かに与えるのが理想です。葉の上が常に濡れていると、浮遊しているカビの胞子が着地して発芽しやすくなってしまうからですね。もし病気が発生してしまったら、すぐにその葉を摘み取ってゴミ箱へ捨ててください。お庭にそのまま置いておくと、胞子が風に乗って他の健康な株にまで感染を広げてしまいます。初期段階であれば、水で薄めた重曹をスプレーすることで進行を抑えられることもありますが、被害が広範囲に及ぶ場合は、適切な殺菌剤を使用して早めに鎮静化させる決断も大切です。日々の観察が、重症化を防ぐ最強の武器になります。植物の変化にいち早く気づいてあげることが、ガーデニング上達への近道ですよ。
病害虫の防除に関するより具体的な情報や、薬剤の最新の登録状況については、必ず参照元である(出典:農林水産省「農薬登録情報提供システム」)などを確認し、ラベルに記載された使用回数や希釈倍率を厳守してください。安全で楽しい園芸を心がけましょうね。
来年も咲かせるための効率的な種採取と保存方法

紫花菜の栽培において、花が咲き終わった後は「終わりの始まり」です。花びらが散った後、茎には細長い「鞘(さや)」が次々と形成されていきます。この鞘の中には、次の春にまた美しい花を咲かせるための命が詰まっています。種を自分で採取して、翌年に繋いでいくサイクルは、園芸家としてのこの上ない喜びですよね。採種のベストタイミングは、鞘が緑色から茶色く変色し、手で触ると「カサカサ」と乾いた音がするようになった頃です。あまり放置しすぎると、鞘が自然にねじれて弾け、種が地面に飛び散ってしまうので、弾ける直前を見極めて茎ごとバッサリと刈り取るのがコツです。
ここで、My Garden 編集部が実践している、超効率的な脱穀(種取り)の裏技を伝授します。刈り取った茎を、雨の当たらない風通しの良い場所で数日間さらに陰干しして、パリパリの状態にします。その後、大きなブルーシートや新聞紙の上に株を置き、その上からなんと「足で踏む(ふみふみする)」んです!「種が潰れちゃう!」と心配になるかもしれませんが、紫花菜の種は非常に硬くて丈夫なので、人間が踏んだくらいではびくともしません。手で一つ一つ鞘を割るのに比べて何十倍も早く、しかも面白いくらいパラパラと種が出てきます。踏み終わった後は、ザルなどを使って大きな殻を取り除き、最後に軽く息を吹きかけて細かいゴミを飛ばせば、綺麗な種の出来上がりです。完成した種は、湿気を防ぐために茶封筒などに入れ、さらに密閉容器に入れて冷蔵庫の野菜室で保管しておきましょう。自分で命を繋いだ種は、翌年の春に発芽した時の感動もひとしおですよ。
ハナダイコンとの違いを知り楽しむ家庭菜園のコツ

紫花菜を育てていると、ご近所の方から「あ、素敵なハナダイコンが咲いていますね」と声をかけられることがよくあります。実はこれ、日本の園芸界ではよくある「名前の混同」なんです。紫花菜も通称としてハナダイコンと呼ばれることがありますが、植物学上の正式なハナダイコン(Hesperis matronalis)は、同じアブラナ科ではあるものの、ヨーロッパや西アジアが原産の全く別の植物です。本物のハナダイコンは、紫花菜に比べて草丈が非常に高く(1m近くになることも)、何より「夕方から夜にかけて甘い香りを放つ」という最大の特徴があります。紫花菜にはほとんど香りがないので、香りで簡単に見分けることができますね。
家庭菜園を楽しむ上では、どちらも「春を彩る紫の花」として親しんでも全く問題ありませんが、自分で種を購入する際や、より専門的に植物を学びたいときにはこの違いを知っておくと、ガーデニングの視野がぐっと広がります。また、紫花菜は食用にされることもありますが、観賞用として流通している苗や、ご家庭で農薬を使用して育てた場合は、食用に適さないことがあるので注意してください。まずはその視覚的な美しさと、春を告げる健気な姿を心ゆくまで楽しんでいただきたいなと思います。お庭のあちこちから紫色の顔をのぞかせる紫花菜は、まさに春の妖精。その魅力を正しく知り、優しく見守ってあげることこそが、最高のお手入れになりますよ。
紫花菜とハナダイコンの比較表
| 識別項目 | 紫花菜(ショカツサイ) | ハナダイコン(ヘスペリス) |
|---|---|---|
| 原産地 | 中国 | ヨーロッパ・西アジア |
| 草丈の目安 | 30cm〜50cm程度(コンパクト) | 60cm〜90cm程度(高くなる) |
| 花の香り | ほとんどなし(無香) | 夜間に強く甘く香る |
| 葉のつき方 | 上部の葉が茎を抱く | 葉が茎を抱かない |
| ライフサイクル | 秋まき一年草 | 二年草または多年草 |
庭を彩るこぼれ種を活用した紫花菜の育て方のまとめ
ここまで紫花菜の育て方について長々と語ってきましたが、最後にお伝えしたいのは「自然の力に身を委ねる楽しさ」です。紫花菜は、一度お庭の環境に馴染んでしまえば、翌年からは人間が必死に手を貸さなくても「こぼれ種」で勝手に増えてくれる、非常に自立した植物です。花が終わった後、あえて一部の株を刈り取らずに残しておき、自然に種を地面に落とさせる「野放し管理」を試してみてください。すると、次の秋にはまた新しい命が、あなたが思いもよらない場所からひょっこりと顔を出します。この偶然性こそが、自然な庭づくり(ナチュラルガーデン)の醍醐味なんですね。
紫花菜の鮮やかな紫色は、春の青空はもちろん、菜の花の黄色、チューリップの赤、スイセンの白など、お庭に咲くどんな色とも喧嘩せず、美しく調和して全体を引き締めてくれます。手間をかけず、それでいて毎年確実にお庭に彩りを添えてくれるこの花は、忙しい私たちの日常に「心の余裕」と「季節の移ろい」を届けてくれる、かけがえのないパートナーになるはずです。この記事の内容をヒントに、ぜひあなたらしいスタイルで紫花菜を育ててみてください。来年の春、紫色の絨毯の上を爽やかな風が吹き抜け、ミツバチが楽しそうに飛び交う景色を想像するだけで、今からワクワクしませんか。植物との対話を通じて、何気ない毎日の中に小さな感動を見つけていただけたら、私にとってもこれ以上の喜びはありません。なお、具体的な栽培の悩みや、病害虫の深刻なトラブルについては、お近くの園芸店や専門のアドバイザーにも相談しながら、楽しく取り組んでいきましょうね。
この記事の要点まとめ
- 紫花菜はオオアラセイトウやショカツサイという別名を持つアブラナ科の強健な植物
- 日本の厳しい冬を屋外で越せるほど耐寒性が非常に強く初心者向けの秋まき一年草
- 種まきは9月から10月の涼しい時期に行い冬の寒さを経験させることが開花の鍵
- 日向を好むが半日陰でも十分に育つためお庭のデッドスペースの彩りに最適
- 過湿を嫌うため排水性の良い土壌を準備し粘土質の場合は腐葉土等で改良する
- アブラナ科は酸性を嫌うためあらかじめ石灰をまいて酸度を中和しておくと良い
- 太い一本の主根が伸びる直根性のため植え替えを嫌い直まき栽培が推奨される
- 株の間を20cmから30cm空けることが風通しを確保し病気を防ぐための鉄則
- 春先にリン酸分を多く含む肥料を追肥することで花の数と色が格段に良くなる
- アオムシにはBT剤が効くがカブラハバチの幼虫には効かないため注意が必要
- 害虫対策は不織布やネットでの物理的な成虫飛来ガードが最も効果的
- うどんこ病等の予防には下葉の整理をこまめに行い湿気を溜めない管理をする
- 種の採取は鞘が乾燥したタイミングで行い株を足で踏む脱穀法が非常に効率的
- 夜に香るのがハナダイコンで見分けることが可能であり紫花菜はほぼ無香
- 環境に馴染めばこぼれ種で毎年自然に増えていくサステナブルな性質を持つ
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