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こんにちは。My Garden 編集部です。
冬の室内を上品な華やかさで彩ってくれるシクラメン。赤やピンク、白といった鮮やかな花と、ハート形の美しい葉のコントラストは本当に魅力的ですよね。毎日大切にお世話をしていたはずなのに、ある日ふと見ると、生き生きとしていた緑色の葉の一部が黄色く変色していたり、全体的に元気がなくなってぐったりしていたりすることはありませんか?
「もしかして、このまま枯れてしまうの?」「昨日までは元気だったのにどうして?」と、不安に感じてしまう瞬間だと思います。
実は、シクラメンの葉が黄色くなるという現象(黄変)には、実にさまざまな理由が隠されています。ついつい可愛くて水をやりすぎて根が呼吸できなくなっていたり、良かれと思って与えた肥料が逆に根を傷つけていたり、あるいは目に見えない病気や小さな害虫が静かに忍び寄っていることもあります。しかし、すべての黄変が「悪い兆候」というわけではありません。春から夏にかけての時期であれば、それはシクラメンが日本の過酷な暑さを生き抜くために、自ら葉を落として眠る準備を始めた「正常な生理現象」である可能性も非常に高いのです。
原因がわからずに慌てて水を与えてトドメを刺してしまったり、まだ十分に復活できる元気な株を「もうダメだ」と諦めて捨ててしまったりするのは、とてももったいないことです。植物は言葉を話せませんが、葉の色や状態で雄弁にメッセージを伝えています。大切なのは、その「無言のサイン」を正しく読み解き、適切な手を差し伸べることです。
この記事では、葉が黄色くなる原因を今の症状から的確に見分け、それぞれの状況に応じたベストな復活方法と、プロも実践するケアの手順を、初心者の方にもわかりやすく、かつ詳しく解説していきます。
この記事のポイント
- 今の葉や株の状態から、考えられる原因をチャートですぐに診断できる
- 「根腐れ」や「肥料焼け」など、やってしまいがちな失敗と具体的な回復方法
- 黄色くなった葉を処理する際、絶対にやってはいけないNG行動と正しい手順
- 季節に合わせた夏越しの準備や、厄介な病害虫への具体的な対処法
シクラメンの葉が黄色くなる原因と診断

シクラメンの葉が変色してしまったとき、それが緊急対応を要するSOSなのか、それとも季節の移ろいによる自然な変化なのかを見極めることが、再生への第一歩です。原因は大きく分けて「生育環境のミスマッチ」「生理的なサイクル」「病気や害虫」の3つに分類されます。
ここでは、栽培者がよく遭遇する症状別に、その裏にある原因を深掘りして解説していきます。ご自宅のシクラメンを横に置いて、じっくりと観察しながら読み進めてみてくださいね。
水やりの失敗による根腐れの症状

まず最初に疑うべきは、やはり「水やり」の問題です。「水やり3年」と言われるほど奥が深いものですが、シクラメン栽培において最も頻繁に起こる枯死の原因は、乾燥ではなく水のやりすぎによる「根腐れ」です。
植物の根は、ただ水を吸っているだけでなく、土の粒の間にある酸素を取り込んで「呼吸」をしています。しかし、土が常に水浸しでジメジメしていると、土の中の空気が押し出されて酸素がなくなり、根が酸欠状態に陥ります。やがて根の細胞が壊死し、窒息して腐ってしまうのです。これが根腐れのメカニズムです。
もし、葉が全体的に黄色くなり、同時に葉を支える茎(葉柄)がふにゃふにゃとして株元に元気がなく、鉢の縁にだらりと倒れ込むような症状が見られる場合は要注意です。特に特徴的なのが、「昼間はぐったりとしおれているけれど、夜になると少しだけシャキッと戻る」という挙動です。これは、根が傷んで吸水力が落ちているため、葉からの蒸散が活発な昼間に水分供給が追いつかず、蒸散が減る夜間にわずかに水分バランスが回復している証拠であり、根腐れの初期症状である可能性が高いです。
ここで勇気を出して、株元の球根(塊茎)を指で軽く触ってみてください。健康な球根は石のように硬いですが、どうでしょうか?
【危険なサイン:即座に対応が必要です】
もし球根が「ぶよぶよ」と柔らかく沈み込んだり、指で押すと皮がむけて中からドロっとした組織が出てきたりする場合は、残念ながら根腐れが根だけでなく球根の内部まで進行しています。ここまでくると復活は極めて難しく、腐敗菌が周りに広がる前にお別れをする判断が必要になることもあります。
逆に、土の表面だけでなく指を第一関節まで入れた中の土までカラカラに乾いていて、株全体がクタクタにしおれている場合は、単なる「水切れ(水不足)」です。この場合は、鉢底から流れ出るくらいたっぷりと水を与えて、直射日光の当たらない涼しい場所に置いて休ませてあげれば、半日ほどで驚くほどシャキッと復活することが多いですよ。
肥料不足や肥料焼けのサイン
肥料もシクラメンの葉色に大きく影響します。シクラメンは秋から春まで長期間にわたって次々と花を咲かせるため、非常に多くのエネルギーを消費する「食いしん坊」な植物です。そのため、肥料切れを起こしやすい反面、焦って与えすぎると逆効果になることもあります。見分けるポイントは、葉のどの部分が、どのように黄色くなっているかという点です。
肥料不足の場合

肥料が不足してくると、植物は生き残るために、体内の古い葉に含まれる栄養素(特に窒素やマグネシウムなど植物体内を移動しやすい成分)を分解し、これから成長する新しい芽や花へと転送します。その結果、下のほうにある古い葉から色が抜けていくのです。
- 葉の縁(ふち)から黄色くなる: これはカリウム(K)不足の可能性が高いです。カリウムは根の張りや病気への抵抗力を高める重要な成分です。主に株の外側にある古い葉の縁から黄色くなり、やがて茶色く枯れ込んでいきます。
- 葉脈は緑色で、その間が黄色くなる: マグネシウム(Mg)不足の特徴的な症状です。「クロロシス」とも呼ばれます。葉脈の緑色が網目のようにくっきりと浮き出るため、比較的見分けやすい症状です。光合成に必要な葉緑素が作れなくなっている状態です。
これらの症状が見られた場合は、即効性のある液体肥料を水やりの代わりに規定量(通常は1000倍〜2000倍希釈)で与えると、比較的早く改善が見込めます。固形肥料よりも液体肥料の方が吸収が早いため、トラブル時は液肥がおすすめです。
肥料焼けの場合

逆に、固形肥料を一度に大量に置いたり、規定より濃い液体肥料を与えたりした直後(数日以内)に、急に葉が全体的に黄色くなったり、葉先がチリチリと焼けたように枯れ込んだりした場合は「肥料焼け」を疑いましょう。
これは、土壌の肥料濃度(塩分濃度)が急激に高まったことで、「浸透圧」の原理が働き、根から水分を吸収するどころか、逆に根の水分が土壌へと奪われてしまう現象です。野菜を塩漬けにすると水分が抜けるのと同じことが、根で起きていると考えてください。いわば、根が「脱水症状」を起こして干からびてしまっている状態です。
この場合の対処法は「土壌の洗浄」です。すぐにたっぷりの水(いつもの水やりの3〜5倍の量)を鉢底から勢いよく流れるほど与え、土の中に溜まった過剰な肥料成分を物理的に洗い流してください。その後は、新芽が動くまで肥料はストップし、活力剤などで様子を見ます。
灰色かび病などの病気を見分ける

もっとも注意したいのが、カビや細菌による「病気」です。特に日本のような湿気が多い環境や、梅雨時の長雨、あるいは冬場の結露しやすい窓辺では、どうしてもカビが発生しやすくなります。
シクラメンで最もポピュラーかつ厄介なのが「灰色かび病(ボトリチス病)」です。葉の表面というよりは、株元の葉柄(葉の茎)や花柄、球根の頂部など、湿気がこもりやすい場所に注目してみてください。もし、茶色く変色して水っぽくなり、そこに灰色のカビのようなふわふわしたものが発生していたら、この病気で間違いありません。
これはボトリチス・シネレアというカビ(糸状菌)の一種で、枯れた葉や花がら、落ちた花粉などを栄養源として繁殖し、そこから健康な葉や茎へと感染を広げていきます。放置すると数日で株全体が腐ってしまうこともあります。(出典:農林水産省 関東農政局『主な花きの病害虫発生・防除予察』)
【即処分が必要なケース:軟腐病】
もし、株全体から「腐った玉ねぎのような強烈な嫌な臭い」がして、茎の根元がドロドロに溶けている場合は、細菌性の「軟腐病(なんぷびょう)」の可能性が非常に高いです。これはカビではなく細菌(バクテリア)による病気で、非常に伝染性が高く、一度発病すると有効な治療薬はありません。残念ですが、他の植物に感染が広がるのを防ぐため、ハサミなどは使わず、鉢ごとビニール袋に入れて密閉し、即座に可燃ごみとして処分する必要があります。
休眠や夏越し前の自然な変色

「病気でも水やりミスでもなさそう…」という場合、一度カレンダーを確認してみてください。もし今の時期が4月〜6月頃であれば、それはシクラメンが夏の休眠に入る準備をしている「自然な現象」かもしれません。
シクラメンは地中海沿岸などが原産で、冷涼な気候を好む植物です。日本の高温多湿な夏はシクラメンにとって過酷すぎるため、気温が上がってくると、自ら葉を落として活動を停止し、球根だけの状態になってじっと夏をやり過ごそうとする「休眠」という生存戦略をとります。
この時期に葉が黄色くなって徐々に数が減っていくのは、枯れているわけではありません。葉に残っている栄養分やエネルギーを球根に回収し、これから来る暑い夏に備えてエネルギーを貯蓄しながら眠る支度をしている証拠なのです。
チェックポイント
葉が黄色くなっても、株元の球根を触ってみて硬く締まっていて元気であれば、それは正常なサイクルです。ここで焦って「元気がないから」と水をやりすぎたり、肥料を与えたりすると、逆に球根を腐らせてしまうので注意しましょう。
ハダニなどの害虫が原因の場合

最後に、よーく葉っぱを近づいて観察してみてください。黄色というより、葉の色が全体的に抜けて白っぽくぼやけていたり、表面に「白いカスリ状の細かな斑点」が見えたりしませんか?
それは「ハダニ」の仕業かもしれません。ハダニは体長0.5mm以下と非常に小さいため、肉眼では見つけにくいですが、主に葉の裏側に寄生して口針を突き刺し、植物の汁(栄養)を吸い取ります。吸われた部分は葉緑素が抜けて白くなるため、遠目には葉が黄色く、あるいは白っぽく生気がないように見えるようになります。
ハダニは「高温乾燥」を好みます。そのため、雨の当たらないベランダや、冬場に暖房が効いて空気がカラカラに乾燥した室内では、天敵もいないため爆発的に増殖しやすいのです。
ハダニの確認方法
疑わしい葉の裏側を、ティッシュペーパーや白い紙でサッと拭いてみてください。もしティッシュに赤や茶色のシミがついたら、それが潰れたハダニの体液です。
ハダニを見つけたら、まずは強めのシャワーの水圧で葉の裏側を重点的に洗い流してください。ハダニは水に弱く、簡単に流されるため、初期段階ならこれだけでも十分に効果があります。被害がひどく広範囲に及ぶ場合は、ハダニ専用の殺ダニ剤の使用も検討しましょう。ただし、同じ薬剤を使い続けると抵抗性がつくため、種類の違う薬剤をローテーションするのがコツです。
シクラメンの葉が黄色い時の対処法
原因がある程度絞り込めたら、次は具体的な対処法に移りましょう。特に「黄色くなってしまった葉をどう処理するか」は、その後のシクラメンの運命を左右するほど重要です。間違ったお手入れは、傷口から病気を招く原因にもなるので、プロも実践する正しい手順をマスターしましょう。
黄色い葉をハサミで切るのは厳禁
ここで一番大切なことをお伝えします。黄色くなった葉や、咲き終わった花(花がら)を見つけたとき、ハサミを使って茎の途中からチョキンと切るのは絶対にNGです!
「えっ、いつもハサミで切っていたかも…」という方も多いかもしれません。なぜダメなのか、それには明確な理由があります。シクラメンの茎は水分を多く含んでいて柔らかいため、ハサミで切った断面はなかなか乾きません。途中で切って残された茎(切り株のような部分)はやがて茶色く腐り始めますが、この湿って腐った部分が、カビや細菌にとって格好の「培地(エサ場)」になってしまうのです。
この腐った部分から灰色かび病などの病原菌が侵入し、茎を伝って球根本体まで腐らせてしまうリスクが非常に高いのです。つまり、ハサミで切る行為は、わざわざ病気の入り口を作っているようなものなのです。
正しい葉の取り方と除去手順

では、どうすればいいのでしょうか?正解は「根元から手でひねり取る」ことです。ハサミを使わず、手で引き抜くのがシクラメン栽培の鉄則です。
【正しい葉の抜き方:ツイスト&プル】
- 黄色くなった葉の茎の根元(球根にできるだけ近い部分)を、親指と人差し指でしっかりつまみます。茎の途中を持つと千切れてしまうので注意してください。
- そのまま、軽く左右にねじるように(ひねりながら)、スッと手前に引っ張ります。力任せに引っ張るのではなく、ねじるのがコツです。
- すると、球根の付け根にある「離層(りそう)」という部分から、「プチッ」という感触とともに、きれいに細胞が離れて抜けます。
この方法なら、腐敗の原因となる茎が残らず、球根に余計な傷をつけません。また、引き抜いた跡は植物の自己修復機能ですぐに乾燥してコルク状の「かさぶた」になり、病原菌が侵入しにくくなります。黄色い葉だけでなく、咲き終わった花や、結実してしまった種も、同じ方法でこまめに取り除いてあげてくださいね。
株を復活させる置き場所の改善
環境ストレスで葉が黄色くなっている場合は、置き場所を変えるだけで劇的に復活することがあります。シクラメンは「光」と「温度」に対してとても敏感です。
- 葉焼けしている場合(白っぽく変色): 直射日光が強すぎるかもしれません。特に西日や、春先の急に強くなる日差しは危険です。レースのカーテン越しのような、柔らかい光が当たる場所に移動させましょう。
- 徒長して色が薄い場合(ひょろひょろ): 逆に日照不足で、光合成が十分にできていないサインです。茎が間延びして倒れやすくなっているなら、もう少し明るい窓辺や、ガラス越しの日向に移して様子を見ます。
- 温度管理の徹底: シクラメンにとっての快適温度は15℃〜20℃くらい。人間が室内で「少し肌寒いかな」と感じるくらいの場所が、実は一番元気よく育つ環境です。暖房の温風が直接当たる場所は、極度の乾燥と高温ストレスになり、一気に葉がダメになるので絶対に避けてください。
夏越しさせるための適切な管理
春から夏にかけて葉が黄色くなってきた場合は、無理に緑に戻そうとせず、自然の流れに任せて「夏越し」の準備に入りましょう。夏越しには大きく分けて2つの方法があります。ご自身のライフスタイルや経験に合わせて選んでみてください。
| 方法 | 管理のポイントとメリット |
|---|---|
| ドライタイプ
(休眠法) |
【初心者向け:失敗が少ない】
葉が黄色くなってきたら、徐々に水やりの回数を減らし、最終的に完全にストップします。残った葉もすべて取り除き、土もカラカラに乾かして、球根だけの状態にします。雨の当たらない風通しの良い日陰で、秋(9月頃)まで一切水をやらずに断食状態でそっとしておきます。 メリット: 水やりが不要で管理が楽。高温多湿による球根の腐敗リスクが最も低いです。 |
| ウェットタイプ
(非休眠法) |
【上級者向け:花が早い】
直射日光の当たらない涼しい半日陰(屋外の軒下など)に移動させますが、休眠させないため水やりは続けます。黄色い葉だけをこまめに取り除き、緑の葉はできるだけ残します。薄い肥料も継続して与えます。 メリット: 根が生きているため、秋になるとすぐに成長を再開し、開花が早く、花数も多くなる傾向があります。 |
どちらの方法を選ぶにしても、黄色い葉をいつまでも付けたままにしておくと、梅雨時期の湿気がこもって球根が腐る最大の原因になります。見つけ次第きれいに取り除き、株元をスッキリさせておくことが成功の鍵です。
シクラメンの葉が黄色いのを防ぐ管理

最後に、これからの予防についてです。シクラメンを長く、美しく楽しむための秘訣は、実はとてもシンプルです。
それは「土は乾かし気味に、空気は湿らせ気味に」というバランスを意識することです。
- 水やりのメリハリ: 「なんとなく毎日あげる」のは厳禁です。必ず「土の表面が白っぽくしっかり乾いてから」、午前中にたっぷりとあげます。鉢皿に溜まった水は必ず捨てて、根腐れを防ぎましょう。底面給水鉢の場合は、タンクの水がなくなり、土が少し乾いてから水を足すのがコツです。
- 葉水(はみず)で保湿: 暖房などで空気が乾燥する時期は、時々霧吹きで葉っぱ(特に裏側)に水をかけてあげると、ハダニ予防になります。ただし、夜間に濡れたままだと灰色かび病の原因になるので、朝の暖かい時間帯に行うのがベストです。
- 葉組み(はぐみ)を行う: 葉がたくさん茂っている場合は、中心部に光と風が通るように、手で葉を外側に広げて、中央の蕾に日光を当てる「葉組み」という作業をしてあげると、日光不足による黄変や、内部の蒸れを防げます。
そして何より、黄色い葉や枯れた花をこまめに取り除いて、株元の風通しを良くしておくこと。これだけで病気のリスクはぐっと下がります。「ちょっと黄色くなってきたかな?」と気づいたときに早めに対処して、元気なシクラメンを長く楽しんでくださいね。
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