こんにちは、My Garden 編集部です。
冬の窓辺を華やかに彩ってくれたシクラメンですが、気温が上がってくると「葉が黄色くなってきた」「ぐったりして元気がない」といった変化に不安を感じる方も多いのではないでしょうか。日本の夏はシクラメンにとって非常に過酷な環境ですが、適切な知識を持って接してあげれば、室内でも十分に乗り切ることが可能です。ネット上では、シクラメンの夏越しを室内で行う際の失敗を防ぐ方法や、万が一枯れそうになったときの復活の手順、また葉組みといった特有のケアについて調べている方が非常に多く見受けられます。今回は、非休眠法や休眠法といった二つの選択肢から、最適な置き場所、そして水やりの加減まで、初めての方でも安心して取り組めるように分かりやすくお伝えします。私と一緒に、大切なシクラメンを次の冬にも咲かせるための準備を始めましょう。
この記事のポイント
- 株の健康状態に合わせた非休眠法と休眠法の最適な選び方
- 直射日光を避けた明るい窓辺での温度管理とエアコンの活用法
- 蒸れや根腐れを徹底的に防ぐための水やりと葉組みのテクニック
- 秋の開花をスムーズに迎えるための植え替えと肥料のタイミング
シクラメンの室内での夏越しを成功させるコツ
シクラメンを室内で夏越しさせるためには、まずその生理的な特性を理解することが非常に重要です。シクラメンは本来、涼しい気候を好む植物であり、日本の高温多湿な環境は大きなストレスとなります。室内管理では「温度」「光」「風」の三要素をいかにコントロールするかが、成功への分かれ道となります。ここでは、具体的なステップと論理的な根拠に基づいた管理術を深掘りしていきましょう。
非休眠法で葉を残して夏を越す管理方法
非休眠法(ウェットタイプ)は、夏の間もずっと葉を維持させ、光合成を継続させることで球根を肥大させる手法です。この方法の最大の魅力は、なんといっても秋になってからのスタートダッシュが早いことです。休眠させないことで根の機能が維持されるため、11月から12月という早い時期に再び美しい花を楽しむことができます。株全体が一回り大きく成長し、翌シーズンの花数も格段に増える傾向にあります。
活動を止めない生理学的メリットと光合成
この手法を選ぶ場合、植物は常に「活動状態」にあります。そのため、夏の間も適切な光量と水分、そして微量の栄養を必要とします。生理学的な観点で見ると、葉が緑を保っている限り光合成が行われ、そのエネルギーが球根(塊茎)に蓄えられます。これにより、秋に気温が下がった瞬間、エネルギーを消費することなくスムーズに花芽形成へと移行できるのです。また、根が一度も枯死しないため、秋の植え替え後の吸水が非常にスムーズという利点もあります。
室内管理における徒長(とちょう)のリスク管理

室内で非休眠法を実践する際に最も注意すべきは、日光不足による「徒長」です。暑さを避けて部屋の奥に置きすぎると、シクラメンは光を求めて茎を長く伸ばしてしまいます。こうなると株全体のバランスが崩れ、秋になっても自立できないほど弱々しい姿になってしまいます。これを防ぐためには、直射日光を遮りつつも、植物が「ここは十分に明るい」と感じる光量を確保しなければなりません。私は、午前中だけレースのカーテン越しに光が入る場所を定位置にしています。また、室内は外よりも空気が停滞しやすいため、サーキュレーターを回して常に葉の表面の湿気を飛ばす工夫をしています。この「光」と「風」のバランスが、非休眠法を成功させるための生命線といっても過言ではありません。少し手間はかかりますが、冬に豪華な花を咲かせるための努力だと思えば、日々の観察も楽しくなりますよ。
休眠法で球根を休ませる手順とメリット

休眠法(ドライタイプ)は、水を断つことで意図的に地上部を枯らし、球根のみの状態で夏を過ごさせる方法です。これはシクラメンの自生地である地中海沿岸の「乾季をやり過ごす」という生存戦略を再現したものです。日本の酷暑を乗り切る上で、最も失敗が少なく、かつ理にかなった方法といえるでしょう。代謝を極限まで抑えるため、高温による消耗を最小限に食い止めることができます。
自生地のサイクルを家庭で再現する
シクラメンの原産地では、夏に雨がほとんど降らず、植物は休眠することで過酷な乾燥と暑さをしのぎます。この特性を利用するのが休眠法です。6月に入り、花が終わって葉が自然と黄色くなり始めたら、水やりの回数を段階的に減らしていきます。例えば、週に2回だったものを1回、さらに10日に1回と減らし、最終的には完全にストップします。葉がカラカラに乾いたら丁寧に取り除き、鉢ごと風通しの良い涼しい暗所へ移動させます。このとき、無理に葉をむしるのではなく、植物が自然に葉の栄養を球根へ回収し終わるのを待つのが理想的です。このサイクルを尊重することで、球根には次のシーズンのためのエネルギーがしっかりと充填されます。
徹底した乾燥が球根を病気から守る
休眠法の最大のメリットは、夏場の最大の敵である「軟腐病」のリスクをほぼゼロにできる点です。細菌は水分がない場所では活動できません。室内で非休眠法を行う自信がない場合や、長期間の旅行などで管理が途切れる可能性があるなら、迷わず休眠法を選んでください。デメリットとしては、秋に目覚めてから根を張り直す必要があるため、開花が1月以降と遅れがちになること、また小さな球根だと乾燥しすぎてしまうことが挙げられますが、大株であれば非常に安全な方法です。休眠中の鉢には、間違えて家族が水をあげないように「おやすみ中」と書いたメモを添えておくのも私の個人的なコツです。成功すれば、秋に水を一滴あげた瞬間から、驚くような生命力で新芽が芽吹く感動を味わえますよ。
室内での夏越しに失敗しない株の見極め方
夏越しを始める5月から6月にかけて、自分のシクラメンにどちらの方法が適しているかを正しく判断することが、成功の第一歩です。植物の状態を無視して無理に「非休眠法」を強いると、暑さに耐えきれず枯死させてしまう可能性が高まります。逆に、まだ元気いっぱいの株を無理やり「休眠」させるのも、植物にとっては大きな負担です。ここでは、判定のポイントを整理してみましょう。
葉の数と新芽の勢いをチェックする
まずは、現在の葉の様子をじっくり観察してください。5月末の時点で、葉が青々と20枚以上茂り、株の中央を覗き込んだ時にマッチ棒の先のような小さな新しい葉芽が次々と確認できるなら、その株は「非休眠」で夏を越せる体力があります。逆に、葉が全体的に黄色っぽくなり、新しい芽が見当たらず、触ると葉がポロッと取れてしまうような状態なら、植物自身が「もう休みたい」というサインを出しています。この場合は、迷わず休眠法へ移行しましょう。人間の都合で決めず、植物の意向を汲み取ってあげることが大切です。
球根の「硬さ」は健康の最終確認

最も重要なのは、指で球根を軽く押してみることです。カチカチに硬ければ、夏を越すための体力が十分に備わっています。しかし、もし少しでも「ぶよぶよ」としていたり、皮が浮いているような感触があったり、変な汁が出ている場合は要注意です。それはすでに過湿や病気で内部が傷んでいるサインであり、夏越し以前に緊急治療が必要なケースかもしれません。元気な株であれば、適切な室内管理によって美しい緑を保ったまま夏を越すことができます。私自身、毎年この見極めには時間をかけます。無理をさせないことが、翌年の開花への最短距離だからです。以下のマトリクスも参考にしてみてくださいね。
| チェック項目 | 非休眠法(ウェット)向き | 休眠法(ドライ)向き |
|---|---|---|
| 葉の状態 | 青々と茂り、数が多い。葉に張りがある。 | 黄変が目立ち、自然と落ち始めている。 |
| 新芽の有無 | 中央から次々と新しい芽が出ている。 | 新芽の動きが全く見られない。 |
| 球根の硬さ | パンと張って石のように硬い。 | 硬さはあるが、活動的な勢いは感じられない。 |
| 栽培者の環境 | 冷房完備で毎日こまめに観察できる。 | 管理を楽にしたい。留守が多い。 |
最適な置き場所とエアコンの風への対策

室内での夏越しにおいて、置き場所選びは成否の8割を決めると言っても過言ではありません。シクラメンの生育適温は一般的に5℃から20℃とされており、25℃を超えると徐々に生理活動が乱れ、30℃を超えると深刻なヒートストレスを受けるリスクが急上昇します。そのため、日本の真夏ではエアコンの恩恵を受けることが大前提となりますが、そこには植物にとって過酷な「乾燥」という別の課題が待ち受けています。
光の質をコントロールする工夫
「室内=暗い場所でも良い」という考えは間違いです。特に非休眠法の場合、光合成を行わせる必要があります。しかし、夏の直射日光は強烈すぎて「葉焼け」を一瞬で引き起こします。理想的なのは、東向きや南向きの窓際から1〜2メートル離れた場所で、厚手のレースカーテン越しに光が入るスポットです。ガラス窓は意外と熱を通すので、窓のすぐ近くは避けたほうが良いでしょう。もし光量が足りないと感じる場合は、植物用のLEDライトを補助的に使うのも一つの方法かなと思います。私は、鉢のすぐ横に温度計を置き、日中の最高気温が30度を超えない場所を「聖域」として決めています。
エアコンとサーキュレーターの賢い運用
エアコンの冷気は非常に乾燥しています。この冷たい風が直接株に当たると、シクラメンの葉は気孔を閉じて呼吸を止め、最悪の場合はそのまま枯れ込みます。風向は必ず上向きかスイングにし、植物に直接当たらないように配慮してください。一方で、全く風がない状態も「蒸れ」の原因となるため、サーキュレーターを併用して室内の空気を優しく循環させることが不可欠です。空気の層が停滞すると、葉の周りに湿った熱がこもり、カビ病が発生しやすくなります。常に「高原のそよ風」が吹いているようなイメージを室内で再現してあげてください。
根腐れを防ぐ水やりのタイミングとコツ
室内での夏越しにおいて、最も多くの人が挫折するのが「水やりの塩梅」です。夏は水分がすぐに蒸発しそうに感じますが、エアコンが効いた室内は湿度が高くなりがちで、意外と土は乾きません。それなのに「暑そうだから」と毎日水をあげてしまうと、鉢の中は常に泥沼のような状態になり、根が酸素欠乏を起こして窒息死してしまいます。これが「根腐れ」の正体です。
観察眼を養う「指先チェック」と「重量チェック」

水やりのタイミングは、カレンダーではなく「土と植物の声」を聞いて判断します。まずは、鉢土の表面を指で第一関節くらいまで差し込んでみてください。表面が乾いていても、中がひんやり湿っているなら、まだ水やりの必要はありません。また、プラスチック鉢であれば、水を含んだ状態と乾いた状態の「重さ」を覚えておくのが非常に有効です。ふわっと軽くなったときが、シクラメンが水を求めているタイミングです。室内は外よりも土の乾きが緩やかなので、週に2回程度で十分なことも多いです。「迷ったらあと1日待つ」くらいの慎重さが、夏越し成功のコツです。
クラウン(球根の頂部)を聖域として守る

水を与える手法にも細心の注意を払いましょう。シクラメンの球根は、中央が少し窪んだ形をしています。ここに水が溜まってしまうと、そこから細菌が入り込み、一晩で球根全体が溶けてしまう「軟腐病」を引き起こします。水は必ず葉を少し持ち上げて、鉢の縁から静かに土に直接届くように注いでください。底面給水鉢(鉢の底に水を溜めるタイプ)を使っている場合でも、夏場はタンクの水を控えめにするか、たまに上から水をかけて土の中のガス交換を促してあげたほうが、根の健康を保ちやすいと私は感じています。受け皿に溜まった水は、1分以内に捨てるのが鉄則。この小さな規律の積み重ねが、秋の美しい花へと繋がります。
風通しを良くする葉組みの具体的なやり方
シクラメンを愛でる人にとって、最も「園芸をしている」と感じさせてくれる作業が「葉組み(はぐみ)」です。これは単に見た目を整えるだけでなく、株の寿命を左右するほど重要なメンテナンスです。シクラメンの葉は中心から放射状に密集して生えますが、そのままにしておくと中心部に光が届かず、せっかくの花芽が死んでしまいます。また、密集地帯は風が通らないため、湿気がこもりやすく、カビの温床となってしまいます。
光の通り道を作るテクニック

葉組みのやり方は非常にロジカルです。株の中央にある小さな葉や新芽を隠している大きな葉を、優しく外側の葉に引っ掛けるようにして外へと広げていきます。こうして球根の頂部(クラウン)を露出させ、上からの光が直接当たるように「光の窓」を作ってあげます。これによって新しい芽が刺激を受け、次々と健やかな葉や蕾が形成されるようになります。力任せに行うと茎が折れてしまうので、植物とダンスをするように、柔軟な茎を選んで少しずつ移動させてあげましょう。私は週に一度、お茶を飲みながらゆっくりこの作業をするのが夏の楽しみになっています。
清掃とセットで行う病気予防
葉組みをする際には、黄色くなった葉や、枯れかけた花茎を完全に取り除く「清掃」もセットで行いましょう。このとき、ハサミを使うのは絶対に避けてください。ハサミの刃には目に見えない雑菌が付着しており、そこから感染症が広がるリスクがあるからです。茎の根元を指でしっかりつまみ、少しひねりながら「シュッ」と上に引き抜くのが正しい作法です。これによって傷口が最小限になり、植物の治癒力ですぐに塞がります。室内は外に比べて風による自然な清掃効果が期待できないため、こうした手動のメンテナンスが非常に大きな意味を持ちます。中心部に風が通るようになったシクラメンは、見た目にも涼しげで、夏を乗り越える力強さを取り戻してくれますよ。
夏を越えた後の植え替えと土選び
過酷な夏を無事に乗り越え、9月に入って朝晩の涼風を感じるようになると、シクラメンが冬に向けた再始動の準備を始めます。このタイミングで行う「植え替え」は、夏の間、高温に耐え抜いた土をリフレッシュし、新しい根が元気いっぱいに伸びるためのスペースを確保する極めて重要な作業です。ここでの失敗は、せっかくの夏越しの努力を台無しにしてしまうため、慎重に進めていきましょう。
「浅植え」こそがシクラメンの生命線

植え替えの最大の注意点は、植え付ける「深さ」です。一般の草花と同じように、球根を完全に土に埋めてしまう「深植え」は、シクラメンにとって自殺行為に等しいものです。球根の肩の部分が土の表面から1/3、あるいは半分ほど露出している「浅植え」を徹底してください。これによって、水やり時の冠水を防ぎ、球根の呼吸を助け、腐敗菌の侵入を物理的にシャットアウトできます。植え替え直後はグラグラして不安に感じるかもしれませんが、根が伸びてくればすぐに安定します。この「少し不格好に見えるくらいの浅さ」が、シクラメンを長生きさせる秘訣なのです。
土の配合にこだわり、鉢を欲張らない
使用する土は、何よりも「水はけ(排水性)」を最優先に選んでください。初心者の方は、調整済みの「シクラメン専用培養土」を使うのが最も失敗が少なくておすすめかなと思います。自分で作りたいこだわり派の方は、赤玉土(小粒)6、腐葉土3、パーライトまたはピートモス1、といったバランスが良いでしょう。また、鉢のサイズを一気に大きくしすぎるのも厳禁です。今の鉢よりも一回り(直径3cm程度)大きい鉢にするか、根を整理して同じサイズの鉢に戻します。大きすぎる鉢は土が乾きにくく、根腐れを招く原因になるため、シクラメンの成長スピードに合わせたサイズ選びを心がけましょう。植え替えは、曇りの日の涼しい時間帯に行うのが、植物への負担が少なくて済む私の小さなこだわりです。
| 植え替えのステップ | 作業の詳細と注意点 |
|---|---|
| 1. 抜取りと根の確認 | 鉢から優しく抜き、根が白ければ健康。茶色い部分はハサミを使わず整理。 |
| 2. 土の準備と底石 | 鉢底石をしっかり敷き、水はけを確保。元肥(緩効性肥料)を少量混ぜる。 |
| 3. 植え付け | 「浅植え」を徹底し、球根の上部を必ず露出させる。 |
| 4. 最初の水やり | 鉢底から透明な水が出るまでたっぷりと。その後、数日は半日陰で休ませる。 |
シクラメンを室内で夏越しさせる際の悩み解決
室内での夏越しは、言わばシクラメンとの「知恵比べ」のようなものです。教科書通りにいかないことも多く、ふとした瞬間にトラブルが発生して慌ててしまうこともあるでしょう。ここでは、栽培者が直面しがちな具体的な悩みに対して、実用的な解決策を提案していきます。この記事が、あなたのシクラメンを救う一助になれば嬉しいです。
枯れた状態から復活させる秋のメンテナンス

「朝起きたら全部の葉が萎れていた」「うっかり旅行中に水を切らしてミイラのようになってしまった」……そんな状況を目の当たりにすると、ショックで投げ出したくなるかもしれません。しかし、シクラメンは驚くほどのレジリエンス(回復力)を秘めた植物です。地上部がどれほど無残な姿になっていても、土の下の球根さえ生きていれば、そこから不死鳥のように復活させることが可能です。
生存確認!「球根」を優しく押してみてください
まずは生死の判別をしましょう。球根を指で軽く押してみて、石のようにカチッと硬い、あるいは弾力があるなら、まだ希望の光は消えていません。中が空洞のようにペコペコしていたり、嫌な臭いがして崩れたりする場合は残念ですが、硬さがあるなら休眠スイッチが深く入っているだけです。この「根性のある球根」を救い出すのが、秋のメンテナンスの役割です。枯れた葉や茎は雑菌の温床になるので、この時点で全てきれいに抜き取り、清潔な状態にしてあげてください。
段階的な覚醒プロセスの実践
復活させるための「水やり再開」には、少しテクニックが必要です。いきなりドバドバと水をあげると、眠っていた球根が溺れて腐ってしまうことがあります。まずは霧吹きで土の表面を軽く湿らせる程度から始め、数日おきに少しずつ量を増やしていきます。これを「呼び水」と言います。室内の明るい場所に置き、20度前後の快適な温度を保ってあげれば、早ければ1週間、遅くとも1ヶ月以内には、球根の頂点から愛らしい緑の新芽が顔を出します。この新芽を見つけたときの喜びは、一度経験すると園芸の虜になってしまうほどの感動ですよ。焦らず、シクラメンが自力で目覚めるのを優しくサポートしてあげましょう。
ガーデンシクラメンを室内で管理する注意点
「ガーデン」の名を冠するシクラメンは、一般的な品種よりも耐寒性が強く、地植えもできるタフなイメージがあります。しかし、こと「耐暑性」に関しては、普通のシクラメンと大きな差はありません。むしろ、野性味が強い分、狭い鉢の中での蒸れや、室内の急激な環境変化には敏感に反応することがあります。ガーデンシクラメンを室内で夏越しさせるには、その野生の性質を理解した配慮が必要です。
光の欲求不満を解消してあげる
ガーデンシクラメンは普通のシクラメンよりもさらに日光を欲しがります。室内管理をしていると、どうしても光量が不足し、葉の色がどんどん薄くなってしまうことがよくあります。また、光を求めて株が左右にパカっと割れてしまう「株割れ」も室内で起こりやすい現象です。これを防ぐには、最低でも1日4時間はしっかりと明るい場所に置くこと。そして、光が一方向からだけ当たらないように、定期的に鉢をクルクルと回してあげる「鉢回し」を行ってください。これで360度まんべんなく光が当たり、引き締まった美しい株姿を維持できます。
水はけ重視の土壌改良
ガーデンシクラメンは、もともと水はけの良い屋外の土壌に適応しています。そのため、室内の一般的な観葉植物用の土だと、水持ちが良すぎて根腐れを起こすリスクがあります。植え替えの際は、軽石やパーライトを2割ほど多めに混ぜ込んで、水が「スッ」と抜ける環境を作ってあげましょう。また、肥料もあまり多くを必要としません。夏場は完全に切り、秋からも薄めの液肥を時々あげる程度で十分です。野生に近い分、甘やかしすぎない管理が、結果としてガーデンシクラメンを最も健康に育ててくれると私は考えています。
軟腐病やホコリダニから株を守る予防法
夏場の室内管理で、物理的な暑さ以上に恐ろしいのが病害虫です。特に「軟腐病」と「シクラメンホコリダニ」は、シクラメン栽培における二大厄災と言えます。これらは一度蔓延すると治療が極めて難しいため、発生させないための「鉄壁の防御」を築くことが何よりも優先されます。日々の小さな清掃と観察が、最強の農薬になるのです。
軟腐病:清潔さと乾燥が最強の盾

軟腐病は細菌によって球根が溶ける病気ですが、その感染源は「傷口」と「過湿」です。夏場の植え替えや葉組みをする前には、必ず自分の手を石鹸で洗い、使う道具を消毒する習慣をつけてください。また、室内で最も危険なのは、水やり後にエアコンを止めて外出する際などの「蒸れ」です。空気が動かない高温多湿な状態は、細菌にとっての天国です。たとえ外出中であっても、サーキュレーターだけは弱風で回し続けることを強くおすすめします。土には「ダコニール」や「ベンレート」などの殺菌剤を定期的に散布して、バリアを張っておくのも有効な防衛策ですね。
ホコリダニ:乾燥を好む見えない敵への対策
新芽がカチカチに硬くなって、いくら待っても展開してこない……。そんな時は、目に見えないほど小さなホコリダニが寄生している可能性が高いです。ホコリダニは乾燥した室内が大好きで、新芽の柔らかい組織を食い荒らします。これを防ぐには、週に一度、霧吹きで「葉の裏」に水をかける「葉水」が効果的です。ダニは水に弱いため、これだけで発生をかなり抑えられます。ただし、このときも球根のてっぺんには水をかけないように、ノズルの向きに気をつけてください。もし、すでに被害が出ている場合は、市販の殺ダニ剤(ケルセンやカネマイトなど)を、卵にも効くように1週間おきに3回ほど連続で散布しましょう。見えない敵だからこそ、先手必勝の対策が重要です。
夏の肥料制限と適切な活力剤の使い方
植物が弱っているのを見ると、つい「栄養のある肥料をあげれば元気になるのでは?」と考えてしまいがちですが、夏場のシクラメンに対してそれは逆効果です。気温が25度を超えると、シクラメンは自己防衛のために代謝を最低限に抑えます。この「夏休み中」に無理やりご飯(肥料)を流し込むと、根の周りの浸透圧が変わり、逆に植物内の水分を吸い取られてしまう「肥料焼け」を引き起こします。夏は、シクラメンを「断食」させる時期なのです。
「肥料」と「活力剤」を使い分ける知識
肥料はお休みしますが、シクラメンの体力を底上げしてくれる「活力剤」は上手に活用したいアイテムです。肥料が「ご飯」なら、活力剤は「栄養ドリンク」のようなもの。窒素・リン酸・カリの三要素がほとんど含まれていないため、夏場の根に負担をかけずに細胞を活性化してくれます。私は、2週間に一度、規定の倍以上に薄めた活力剤(リキダスやメネデールなど)を水やり代わりに与えています。これによって、猛暑による細胞のダメージを軽減し、秋に芽吹くためのエネルギー源を保護できる感覚があります。あくまで「おまじない」程度の控えめな量が、夏にはちょうどいいですね。
秋、空腹のシクラメンに贈る最初の一杯
肥料を再開するのは、9月中旬以降、最低気温が安定して20度を切り、シクラメンの目がパッチリ覚めて(新しい葉が複数枚伸びてきて)からです。まずは通常の1/4程度の薄い液体肥料から開始し、2週間ごとに少しずつ濃度を上げていきます。焦って最初から濃い肥料をあげると、せっかく出始めた新芽が焼けてしまうので、シクラメンの「食欲」の回復を待ちながら進めましょう。じっくりと体力を戻してあげた株は、11月を過ぎる頃には見事な花芽を蓄え、冬の間ずっとあなたを癒やしてくれるはずです。この「引きの管理」ができるようになれば、あなたも立派なシクラメンマスターです!
シクラメンの室内での夏越しに向けたまとめ
シクラメンの室内での夏越しは、決して「難解なパズル」ではありません。植物が今何を求めているのか、暑がっていないか、喉が乾いていないか……そういった小さなサインに寄り添うことが、何よりのコツです。もちろん、お住まいの地域や住宅環境によって最適な方法は少しずつ異なりますので、この記事をガイドラインにしつつ、ご自身の環境に合わせた「自分流の管理術」を見つけていってください。もし判断に迷ったときは、無理をせず園芸店などの専門家のアドバイスを仰ぐのも賢い選択です。来シーズン、あなたの手で夏を越させたシクラメンが、再び美しい花を咲かせることを心から願っています!
この記事の要点まとめ
- 夏越し成功の第一条件は室内温度を30度以下に保つこと
- 元気な株は非休眠法で早く咲かせ弱った株は休眠法で守る
- 非休眠法は秋の開花が早まるが蒸れと徒長に厳重注意が必要
- 休眠法は6月から断水し涼しい冷暗所で球根を完全に休ませる
- 直射日光は葉焼けの元なのでレースのカーテン越しで管理する
- エアコンの冷風が直接当たると株が乾燥し弱るため風向きを調整
- サーキュレーターを活用し常に微風を送って湿気を逃がす
- 水やりは土の表面が乾いてから鉢の縁に静かに注ぐのが鉄則
- 球根中央の凹み(クラウン)に水が溜まると腐敗の原因になる
- 定期的な葉組みで株の中心に光と風を届けて病気を予防する
- 夏の間は肥料をストップし活力剤を薄く与える程度に留める
- 9月下旬の涼しくなった時期に浅植えでリフレッシュの植え替えを行う
- 黄色くなった枯れ葉はハサミを使わず手でひねり抜いて清潔に保つ
- 軟腐病は細菌感染なので高温多湿を避けることが最大の防御となる
- シクラメンの夏越しは日々の観察と愛情ある放置のバランスが重要
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