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こんにちは。My Garden 編集部です。
アジサイの常識を根底から変えた「ラグランジア」、本当に、本当に魅力的ですよね。従来のアジサイが、どんなに立派に育っても枝の「先端」にだけ花がつく宿命を持っていたのに対し、ラグランジアは枝につく「すべて」の芽から花が咲くという、まさに革命的な性質(側芽開花性)を持っています。その結果として生まれる、株全体が花で覆い尽くされる圧倒的な花数、そのボリューム感たるや…。私も初めて満開の株を実物で見たとき、思わず「これは…アジサイじゃないみたいだ」と息を呑むほど感動しました。
そんなラグランジア、もちろん鉢植えでもそのコンパクトな葉と相まって、こんもりと可愛らしく、そして豪華に楽しむことができます。ですが、ガーデナーなら誰もが一度は夢見るのではないでしょうか。「せっかくなら、お庭に地植えにして、もっと大きく、もっとのびのびと、あの溢れんばかりの花を咲かせてみたい!」と。
でも、いざ「ラグランジアを地植えにしよう」と決意し、スコップを手に取ろうとすると、次から次へとたくさんの不安や疑問が湧いてきませんか?
「そもそもアジサイの仲間だけど、本当に地植えで大丈夫? アジサイって水切れしやすいイメージがあるけど…」「植える時期はいつがベストなの? 春? 秋?」「最適な場所はやっぱり半日陰じゃないとダメ? うちの庭、西日しか当たらないかも…」「うちの庭の土、カチカチの粘土質だけど育つかな…土の準備はどうしよう」「梅雨の長雨で根腐れしない?」「逆に、真夏のあの猛暑、夏越しできるの?」「冬越しは何か特別なことが必要なの?」「剪定しなくてもいいって聞くけど、それって本当? もしお化けみたいに大きくなりすぎたらどうすればいいの?」…などなど、心配事は尽きませんよね。
この記事では、そんなラグランジアの地植えに関するあらゆる疑問や不安を一つひとつ丁寧に解消できるよう、失敗しないための「万全の準備」から、植え付けた後の「年間を通じた管理方法」まで、私のこれまでの経験も踏まえながら、どこよりも分かりやすく、そして詳しく、徹底的に解説していきますね。
- ラグランジアの地植えに最適な「時期」と、絶対に失敗しないための「苗の状態」とは?
- お庭のどこに植えるべき? 失敗しない場所選びと、花色も自在に操る土づくりの全知識
- ブライダルシャワーやクリスタルヴェールなど、人気品種ごとの地植え管理のコツと特性
- 過酷な夏越し・厳しい冬越しはどうする? 季節ごとの管理と、気になる「剪定」の考え方
ラグランジアの地植えで失敗しない準備
ラグランジアの地植えを成功させるには、苗を植え付けるその日よりも、それまでの「準備」が、実はいちばん大切だと言っても過言ではありません。むしろ、成功の9割は準備で決まる、と私は思っています。ここで焦ってプロセスを飛ばしたり、手を抜いてしまったりすると、後で「元気がなくなっちゃったかも…」「数年経っても花が咲かない…」なんていう、取り返しのつかない悲しい結果になりかねませんからね。ラグランジアがその驚くべきポテンシャルを最大限に発揮できるよう、元気に、そして末長く根付くための最高の環境を、一緒に作っていきましょう。
地植えの時期と失敗しない苗選び

ラグランジアを地植えにするベストな時期、それは植物の生育サイクルにおいて、大きなストレスがかかりにくい春か秋です。具体的には、本格的な成長が始まる前の春(3月~4月)か、地上部の成長が一段落し、根を張ることに集中できる秋(10月~11月)が最適ですね。
それぞれの時期にメリットと、注意点があります。
- 春植えのメリット・注意点:これから気温が上がっていく成長期にすぐ入るため、根の活着(土に馴染むこと)がスムーズに進みやすいのが最大のメリットです。しかし、根が十分に広がる前に梅雨の過湿シーズンや、いきなり真夏の猛暑・乾燥シーズンに突入するリスクもあります。植え付け直後の水管理には少し気を使う必要がありますね。
- 秋植えのメリット・注意点:地上部の成長が止まり、気温も涼しくなって蒸散(葉から水分が蒸発すること)が減るため、根がじっくりと土に馴染むための時間的猶予を持てるのが良い点です。ただし、寒さが厳しい地域(寒冷地)での秋植えは、根が十分に張る前に土が凍結する厳しい冬が来てしまうと、株がダメージを受けて失敗することもあります。ご自身のお住まいの地域の気候を考えて、春植え(安心)か秋植え(根張り優先)かを選ぶと良いかなと思います。
そして、この「時期」と同じくらい、いえ、ガーデニング初心者の方にとってはそれ以上に重要なのが「苗の状態」です。
【最重要警告】ベビー苗(小さいポット苗)の即地植えは絶対にNGです!
春や秋に園芸店やホームセンターに行くと、9cmや10.5cm(3号~3.5号)の小さな黒いビニールポットに入った「ベビー苗」がたくさん並んでいますよね。お値段も手頃で、その可愛らしさから、すぐにでもお庭の主役として植えたくなる気持ちは、痛いほど分かります。
ですが、これを購入してすぐに地植えにするのは、失敗への最短ルートになってしまいます。絶対にやめてください。
なぜなら、これらのベビー苗は、まだ根っこがポットの中で十分に張っておらず、株全体の体力も全くない、人間で言えば「赤ちゃん」や「幼児」の状態だからです。根系の発達が未熟ということは、水分や養分を自力で広範囲から吸収する能力が極端に低いことを意味します。
そんな無防備な状態で、いきなり環境の変化が激しいお庭(地植え)に放り出すと、どうなるでしょうか?
ほんの数日雨が降らないだけでも「極度の乾燥」に陥り、逆に梅雨時には「過湿」で根が呼吸できなくなります。急激な「温度変化」や、お庭の土が持つ「土壌pHの変動」など、あらゆるストレスに全く耐えられず、あっけなく枯れてしまう可能性が非常に高いんです。
では、どうすれば良いのでしょうか? 答えはシンプルです。購入した初年度は「鉢植えでじっくりと育苗(いくびょう)する」こと。これこそが、遠回りに見えて、実は成功への一番の近道です。
まずは、買ってきたポット(例:9cm)よりも一回りか二回り大きな鉢(例:15cm~18cm=5号~6号鉢)に、水はけの良い培養土で植え替えてあげます。そして、その鉢で1年間、あるいは最低でも半年間、日当たりや水やり、肥料をしっかり管理しながら「育てる」んです。
この1年間は、ラグランジアが地植えという新しい環境で、広大な大地に根を張り、生きていくための「体力づくり」と「根っこづくり」の最重要期間。いわば「育苗フェーズ」ですね。
このフェーズを経て、鉢の中で根がびっしりと回り(根鉢が形成され)、茎も緑色から茶色っぽく硬く「木質化」し、株全体として体力が充実した「若木」の状態になってから、満を持して翌年の春か秋に、準備万端のお庭に植え付けてあげましょう。これが、ラグランジアの地植えを成功させるための、一番確実で、一番大切なステップだと私は強く思います。
最適な場所は半日陰

ラグランジアは「日向~半日陰」で育つと公式でも紹介されています。これは「日光は好きだけど、強すぎるのは苦手」という意味ですね。日本の気候、特に近年の「酷暑」「猛暑」とも言える過酷な夏の暑さを考慮すると、「午前中は柔らかい日が3~4時間ほど当たり、午後は直射日光が当たらない明るい日陰になる場所」が、間違いなくベストポジションだと断言できます。
もちろん、花をたくさん咲かせるためには光合成が必要なので、一日中まったく光が差さない真っ暗な日陰(例:家の北側の壁際や、大きな常緑樹の真下など)では、枝がひょろひょろと間延びし、花付きが極端に悪くなってしまいます。これはNGです。
しかし、それ以上に絶対に避けたいのが、真夏の強すぎる直射日光、特に「西日」です。

なぜ西日がダメかというと、午後の日差しは気温が上がりきった中で照りつけるため、植物にとって最も過酷だからです。強い日差しは葉の温度を急上昇させ、植物が持つ水分以上に蒸散させてしまい(高温障害)、結果として葉がチリチリに焼けてしまう「葉焼け」を起こします。
また、ラグランジアの繊細な花弁は、強い直射日光に晒され続けると、美しい色を保てず、すぐに傷んで茶色く変色してしまう「花焼け」も起こしやすいんです。せっかくの花がすぐに汚くなってしまうのは、とても悲しいですよね。
地植え場所のベストポジション(具体例)
- 最適(A+): お家の東側や、東向きの斜面。午前中の3~4時間、優しい朝日が当たる場所。
- 適(A): 落葉樹(例:ヤマボウシ、カエデ、ハナミズキなど)の株元。→これは「自然の遮光カーテン」として理想的です。夏は葉が茂って直射日光を遮る木陰になり、冬は葉が落ちて休眠中の株元に暖かい日差しが届きます。
- 要対策(B): 南向きで一日中日が当たる場所。→植え付けは可能ですが、夏場のマルチング(後述)や、株元への西日除け(下草を植えるなど)が必須です。
- 避ける(C): 西日がガンガン当たる場所。コンクリートの照り返しが強い場所。室外機の熱風が当たる場所。一日中暗い北側の壁際。
もし「どうしても西日が当たる場所にしか植えるスペースがない…」という場合は、夏の間だけでも30%~50%程度の「寒冷紗(遮光ネット)」を西側に張って日差しを和らげてあげたり、ラグランジアの西側に、あえて背が高くなる別の耐暑性が強い植物(例:コニファーや常緑樹など)を植えて、物理的に西日をブロックする「植栽計画」が必要になりますね。
土壌とpH調整。青やピンクの出し方
アジサイの仲間であるラグランジアも、基本的は水を好む植物です。適度な湿り気がある土壌を好みます。しかし、それは「水はけが良い(排水性が高い)」という大前提があってこその話。
「水が好き」=「ジメジメした場所が好き」と誤解してはいけません。根っこも私たち人間と同じように「呼吸」をしているため、酸素が必要です。水はけが悪く、雨が降った後にいつまでも水たまりができるようなジメジメした土壌(特に粘土質)では、土の中の酸素がなくなり、根が窒息してしまいます。これが致命的な「根腐れ」の原因です。
地植えにする場所の土が、スコップを入れてもなかなか刺さらないほど硬かったり、掘った土がベタベタの粘土質だったりする場合は、面倒でも必ず、徹底的に「土壌改良」を行ってください。
基本の土づくり(根圏の酸素供給)

まずは、植え付ける場所(育苗した苗の根鉢)の、最低でも2倍以上の幅と深さ(目安:最低でも直径50cm×深さ50cm)の大きな穴を掘ります。そして、掘り上げた庭土(元々の土)に対して、3割~4割ほどの量の「完熟腐葉土や堆肥」と、水はけを良くするための「赤玉土(小粒~中粒)」や「鹿沼土」、「パーライト」などを混ぜ込みます。(例:庭土6:腐葉土3:赤玉土1)。
この作業によって、土の粒子がくっつき合い、大小様々な隙間(団粒)ができる「団粒構造」の土が完成します。このフカフカの土こそが、水はけが良く(排水性)、かつ適度に水分や肥料分を保ち(保水性・保肥性)、さらに根が呼吸するための酸素も十分にある(通気性)、植物の根にとって理想的なベッドになりますよ。ラグランジアの根が元気に伸びていくための、大切なステップです。
花色をコントロールするpH調整

さて、ここからがガーデナーの探究心をくすぐる、科学の時間です。「クリスタルヴェール」や「オーロランジュ」といった品種は、土壌のpH(酸度)と、土の中に溶け出している「アルミニウムイオン」をどれだけ根から吸うかによって、花色が劇的に変わります。
地植えは、雨水の影響(日本の雨は弱酸性です)や、周囲の土壌、家の基礎やブロック塀のコンクリート(アルカリ性)からの成分の溶出など、様々な要因でpHが変動しやすいため、鉢植えのように完璧に色をコントロールするのは難易度が格段に上がります。でも、土づくりの段階である程度デザインし、方向性を決めることは可能です。
「今年は青だったけど、来年は石灰を撒いてピンクに挑戦してみよう」と、毎年色を変えて楽しむのも、地植えならではの醍醐味かもしれませんね。
地植えでのpH調整と花色コントロール(目安)
| 目指す花色 | 目標pH | 調整方法と資材 | ワンポイント(作用機序と注意点) |
|---|---|---|---|
| 鮮やかな青
(酸性+Al) |
酸性
(pH 5.0~5.5) |
|
作用: 土壌を酸性に傾けることで、土の中に元々含まれているアルミニウムを「溶け出しやすい形(イオン化)」にします。
補足: 日本の土壌は火山灰土(弱酸性)が多く、元々青が出やすい傾向があります。より確実に青くしたい場合、根付いた後に「ミョウバン水」(焼ミョウバン1gを水500mlに溶解)を2~3週間に1回(計2~3回)株元に撒くと、アルミニウムイオンを直接補給できるため効果的です。 |
| 鮮やかなピンク
(アルカリ性-Al) |
中性~アルカリ性
(pH 6.0~6.5) |
|
作用: アルミニウムを吸わせないことが重要。石灰類は土壌のpHをアルカリ性に傾け、アルミニウムが溶け出さない形に「固定化」します。
注意点: 石灰は土壌にゆっくりと溶け出し、化学反応を起こすため、効果が出るまで数ヶ月単位の時間がかかります。植え付けの最低でも1~2ヶ月前、できれば半年前から土に混ぜておく計画性が必要です。 |
ブライダルシャワーの育て方

ラグランジアシリーズの火付け役であり、その人気を不動のものにした純白の「ブライダルシャワー」。もしあなたが「ラグランジアの地植えは初めてで、ちょっと不安…」というなら、私は迷わずこの品種を一番におすすめします。
その最大の理由は、もうお分かりかもしれませんが、土のpHに花色がほとんど左右されないことです。
ブライダルシャワーは基本的には白花で、咲き始めは清涼感のあるライムグリーン、そして満開時には純白、咲き進むにつれてアンティークカラーの淡いピンクへと移ろうタイプ。つまり、前述したような「青にするか、ピンクにするか」という厳密なpH管理や、それに伴う資材の準備を気にする必要がほとんどないんです。
これは、土壌環境が変わりやすく、pHコントロールが難しい地植えにおいて、計り知れないほど大きなアドバンテージであり、「初心者への優しさ」でもありますよね。
「最適な場所は半日陰」「排水性の良い土づくり」という、ラグランジア栽培の2つの基本さえしっかり守ってあげれば、地植えのポテンシャルを最大限に活かせます。
ラグランジアが持つ「葉が小さいこと(省エネな蒸散抑制)」と、地植えのメリットである「根を広く深く張れること(高い吸水能力)」が組み合わさることで、ブライダルシャワーは非常に水切れに強く、病気にも強く、ローメンテナンスで本当に丈夫な株に育ってくれますよ。咲き進んだ時の、あのなんとも言えない「淡いピンク」をより綺麗に発色させたい場合は、過度な酸性土壌(青花用土)を避け、中性~弱酸性の一般的な草花用培養土をベースに土づくりをすると、自然で柔らかな色彩の遷移が楽しめるかなと思います。
クリスタルヴェールの色の管理
「クリスタルヴェール」や、その改良品種である「クリスタルヴェール2」の魅力は、なんといっても土のpH(とアルミニウム)によって、澄み渡るようなブルーから、愛らしいクリアなピンクへと劇的に変化する、その繊細で透明感のある花色にありますよね。
前述の通り、地植えで花色を完璧に管理するのは、鉢植えよりも格段に難しくなります。毎年降る雨の量、雨水が運んでくる成分、ご近所の庭から流れてくる肥料成分、家の基礎やブロック塀から溶け出すコンクリートのアルカリ成分…本当に様々な要因が複雑に絡み合って、土壌のpHは変化し続けますから。
でも、その「思い通りにならなさ」こそが、地植えの面白さであり、奥深さでもあると私は思います。「あ、今年は酸性に傾いたみたいで、綺麗な青が出たね」「去年撒いた石灰がようやく効いてきたのか、全体的にピンクっぽくなってきた!」と、植物と土壌の化学反応(ケミストリー)を毎年楽しむ…そんな「上級者向けの楽しみ方」ができる品種ですね。
もし「どうしても理想の色(例えば真っ青)にしたい!」という場合は、鉢植えの時と同じように、pH調整済みの専用培養土で植え穴を満たし、さらに毎年継続的にミョウバン水(青)や苦土石灰(ピンク)で、土壌に積極的に介入していく必要があります。
ちなみに、改良品種である「クリスタルヴェール2」は、初代に比べて「枝数」がより多くなるように改良され、個々の枝も強健になり、「根の張り」も強化されているそうです。(出典:PW(Proven Winners)Japan ラグランジア特設サイト) これは、地植え派にとっては非常に嬉しい改良点です。根張りが良いということは、地植え直後の根付き(初期活着)が早まり、その後の乾燥耐性も上がることを意味します。また、枝数が多く強健ということは、雨や花の重みで枝がだらしなく垂れる(枝垂れ・倒伏)のを抑制し、より立体的な美しい樹形を維持しやすくなる、ということですね。
ラグランジア地植えの年間管理術
無事に植え付け(定植)が完了し、ラグランジアが新しいお家(お庭)に馴染んでくれたら、いよいよガーデナーとして最も楽しい「成長を見守る」時間が始まります。地植えのラグランジアは、鉢植えに比べて管理が格段にラク(ローメンテナンス)になります。「植えっぱなしOK」なんて言葉も聞きますが、それは「何をしても大丈夫」という意味では決してありません。その驚異的なポテンシャルを最大限に引き出し、毎年たくさんの花を咲かせてもらうためには、季節ごとに押さえておきたい「ちょっとした管理のコツ」があります。年間を通じたお世話の方法を見ていきましょう。
植え付け後の水やりと肥料
地植え管理の基本中の基本、まずは最も重要な「水やり」と「肥料」から見ていきましょう。
水やり(メリハリが超大事)
- 活着期(植え付け直後~数週間、あるいは翌シーズンまで):まだ根が新しい土に完全に馴染んでおらず、広範囲から水を吸えない、最も不安定な時期です。この時期に水切れさせてしまうと、致命的なダメージになりかねません。土の表面が乾いたら、鉢植えに水やりするのと同じ感覚で、たっぷりと水を与えてください。
- 安定期(完全に根付いた後):地中深くまで根がしっかり張った後は、鉢植えのように毎日毎日水やりをする必要は全くありません。基本的には降雨まかせで大丈夫です。これが地植えの最大のメリットであり、ラクな点ですよね。ただし、ここで「甘やかしすぎない(=中途半端な水やりをしない)」のが、丈夫な株を育てる上での最大のポイントです。「乾燥したかな?」と心配になって、毎日ジョウロで地表面だけを濡らすような水やりをしていると、根が「あ、水は上の方で貰えるんだ」と勘違いしてしまい、地中深くまで伸びていかなくなります。その結果、地表の土が乾いただけですぐにしおれる、乾燥に非常に弱い「浅根性」の株になってしまうんです。地植えの株に水やりをする時は、「土の奥深くまで染み込め!」と念じながら、ホースやジョウロで時間をかけてたっぷりとあげる。そして、次にあげるのは土の表面がしっかり乾いてから。このメリハリが、根を深く強く育てます。
- 例外(真夏の高温乾燥期):さすがの地植えでも、真夏に何週間も雨が降らず、土がカラカラに乾いている時は水切れしてしまいます。葉がしおれて元気がないようなら、気温が低い朝か夕方の涼しい時間帯に、前述の通り「たっぷりと」水やりをしてください。(日中のカンカン照りの時間帯に水やりをすると、水がすぐにお湯になって根を煮てしまう「湯水」になる危険があるので、絶対に避けてくださいね)
肥料(開花後の「お礼肥」が最重要)

ラグランジアは、あの「枝すべてが花」になるという性質上、開花に莫大なエネルギー(養分)を使います。地植えで土の中の養分を吸えるといっても、それだけでは毎年あのパフォーマンスを維持するのは困難です。花付きが悪くなったり、株が弱ったりしないよう、適切なタイミングで肥料(エネルギー)を補給してあげましょう。
肥料のタイミングは年2回(+α)が基本です
- 春の肥料(芽出し肥・追肥): 3月~6月頃冬の休眠から目覚め、新芽が勢いよく動き出し、たくさんの花を咲かせるための大切なエネルギー補給です。3月頃の芽出しの時期に、ゆっくり長く効く粒状の「緩効性肥料(N-P-Kのバランスが取れたもの、例:8-8-8など)」を株元(幹から少し離れた、枝葉が広がっている範囲の真下あたり)にパラパラと撒きます。さらに、開花前の4月~6月は、株の体力をブーストするために「即効性のある液体肥料」を1~2週間に1回、水やり代わりに与えるのも、花房を大きく立派にするのに非常に効果的です。
- お礼肥(花後): 7月~9月頃ここが全作業の中で最も重要です!星5つです! なぜなら、ラグランジアを含むアジサイの仲間は、花が終わった直後の夏(7月頃)から秋(9月頃)にかけて「来年咲くための花芽」を枝の中で作り始める(花芽分化)からです。この「来年の準備」をしている最も大切な時期に肥料が切れてしまう(栄養飢餓状態になる)と、花芽が十分に育たず、「翌年の花数が激減する」「花房が小さくなる」という最悪の結果に直結します。花が終わったら「今年もたくさん咲いてくれてありがとう!来年もよろしくね!」の気持ちを込めて、必ず「お礼肥」として緩効性肥料をあげてください。この肥料が、来年の花を決めると言っても過言ではありません。
夏越しのコツと葉焼け対策
日本のジメジメとした高温多湿の夏は、多くの植物にとっても、私たちガーデナーにとっても試練の季節ですよね。しかし、朗報です。ラグランジアは、その生まれ持った素晴らしい特性のおかげで、従来のアジサイよりも格段に「夏越しがラク」な品種と言えます。
その最大の秘密は、やはり、あの小さな葉っぱにあります。「ブライダルシャワー」の育て方でも触れましたが、ラグランジアの葉のサイズは、従来のアジサイ(例:ガクアジサイなど)の約4分の1程度しかないそうです。葉が小さい(葉の表面積が小さい)ということは、イコール、葉から水分が蒸発していく量(蒸散量)が少ないことを意味します。
つまり、ラグランジアはガソリンタンク(体内の水分)の消費量が少ない、「超・省エネ設計」の地上部を持っているんですね。
この「省エネな地上部」と、地植えにすることによる「根を深く広く張って、地中深 くの水分までアクセスできる強力な地下部」という、まさに最強のタッグが組まれることで、ラグランジアは鉢植えとは比べ物にならないほど水切れしにくくなり、夏越しがグッと楽になるんです。
とはいえ、油断は禁物。夏越しの最大のコツは、準備段階の「場所選び(半日陰)」に尽きますが、植え付けた後の管理でもできることがあります。
夏の管理ポイント(おさらいと追加)
- 場所: 「半日陰」が絶対条件。強すぎる西日や、コンクリート・アスファルトの照り返し、室外機の熱風が直撃する場所は、植物にとって地獄です。絶対に避けてください。
- 葉焼け対策: 場所がどうしても動かせない場合は、寒冷紗(遮光ネット、遮光率30%~50%程度)で夏の間だけでも日差しを和らげてください。葉焼けは美観を損ねるだけでなく、光合成の効率を著しく下げ、植物の体力を奪います。
- 水やり: 安定期に入れば基本不要ですが、乾燥が何週間も続く場合は「朝夕の涼しい時間帯」に「たっぷりと」与えること。
- 夏のマルチング: 株元の土を腐葉土やバークチップで覆う「マルチング」は、冬越しだけでなく夏越しにも非常に有効です。直射日光による地表面の乾燥を防ぎ、地温が上がりすぎるのを抑制して、根を守る効果があります。
これらの対策を講じて、日本の厳しい夏を一緒に乗り切ってもらいましょう。
冬越しと霜よけのポイント

ラグランジアは耐寒性も比較的強く、品種によってはマイナス15℃程度(耐寒性ゾーン7a)まで耐えられるとされています(例:「オーロランジュ」など)。そのため、かなり寒い地域を除き、北海道南部から九州まで、日本全国のかなり広い地域で地植えでの冬越しが可能です。
まず知っておいていただきたいのは、アジサイの仲間は基本的に「落葉樹」であるということです。つまり、冬になると気温の低下とともに葉が黄色く紅葉し、やがてすべて落葉して「枯れ枝」のような状態になります。ガーデニング初心者の方は「大変!枯れちゃった!」と心配になるかもしれませんが、これは春に備えて休眠している正常な生理現象です。春になれば、その枝の節々からちゃんと可愛い新芽が出てくるので、安心してくださいね。
ただし、注意したい点が2つあります。それは、「冬の乾燥した寒風」と「遅霜(おそじも)」です。
- 冬の乾燥した寒風: 休眠中とはいえ、枝は生きています。雪が降らない地域で、乾燥した冷たい風(例:関東の「からっ風」など)が常に吹き付ける場所に植えていると、枝から水分が奪われすぎてしまい(乾燥ストレス)、枝の先端が枯れ込む(枝枯れ)原因になることがあります。
- 遅霜: 春になって新芽が動き出した後(3月~4月頃)に、いきなり氷点下に冷え込んで霜が降りると、動き出したばかりの柔らかい新芽が凍ってしまい、大きなダメージを受けることがあります。
冬越しのひと工夫:「マルチング」と「霜よけ」
地植えの株にとって、冬越しで最も有効で簡単な対策が、やはり「マルチング」です。
秋の終わりに、株元(根元)の土の表面を、「腐葉土」や「バークチップ」、「ワラ」などで厚めに(5cm~10cmほど)覆ってあげる作業のこと。この「お布団」をかけてあげることで、以下のような絶大なメリットがあります。
- 保温効果: 土がカチカチに凍結する(土壌凍結)のを防ぎ、地中の大切な根を保護します。
- 保湿効果: 冬の乾燥した寒風から土の水分が過剰に奪われるのを防ぎます。
- 霜柱防止: 霜柱が立って、まだ浅い根が持ち上げられて切断されてしまうのを防ぎます。
雪が多い日本海側の地域などでは、積もった雪が自然と最高の「お布団(マルチング)」代わりになってくれるので、特に何もしなくても大丈夫なことが多いですね。むしろ、雪が少ない(または降らない)のに、寒風が吹き荒れる太平洋側の地域こそ、この人為的なマルチングが非常に有効だと私は感じます。
また、地植え1年目の冬でまだ株が小さい場合や、特に寒さが厳しい地域で、春先に「遅霜注意報」が出たような夜は、株全体に「不織布」などをふんわりとかけてあげる(霜よけ)と、新芽を守ることができ、より安心ですね。
剪定は不要?花が終わったら
さあ、ラグランジアの管理について、最も多くの方が関心を持つ「剪定」の話です。ラグランジアの最大の魅力であり、園芸界にとって革命的なポイントは、もう何度も言いますが、「原則、剪定が不要」なことです!
「アジサイ=剪定が難しい、面倒くさい」というイメージが、私たちガーデナーには強く刷り込まれていますよね。従来のアジサイは、夏(花後)に翌年の花芽ができるため、剪定する時期(花後すぐの7月中)や、剪定する位置(花芽のすぐ上)を1mmでも間違えると、「翌年まったく花が咲かない…」という取り返しのつかない大失敗につながりました。私もこれで何度涙を飲んだことか…。
しかし、ラグランジアは「側芽(そくが)」といって、枝の途中にあるすべての芽(葉の付け根)に、花が咲く能力を秘めています。だから、極端な話、いつどこで切っても(例えば真冬に切っても、春先に切っても)、残った枝のどこかしらから芽が伸びて、その年の初夏にはちゃんと花が咲いてくれるんです。この安心感、ガーデナーにとってどれほど革命的か、お分かりいただけますでしょうか。
基本的には、剪定は一切行わず、そのまま自然樹形に育てて、枝が優雅にしだれる「カスケード樹形(滝のような形)」を楽しむのが、ラグランジアのポテンシャルを最も引き出す楽しみ方だとされています。
ですから、「花が終わったら」まずやるべきことは、剪定バサミを握ることではなく、肥料袋を手に取って「お礼肥」をあげることです(大事なことなので、これで4回目ですね!)。
咲き終わった花(花がら)の扱いについては、完全にお好みで決めて大丈夫です。
- パターン1:アンティークカラーを楽しむそのまま残しておくと、やがてアンティークカラー(ブライダルシャワーなら淡いピンクやライムグリーン)に変化していきます。その色の移ろいを秋まで楽しむのも、とても素敵です。
- パターン2:早めにカットする色が褪せてきたら、花首のすぐ下でカットします。これにより、花がらを作るための余計なエネルギーを消費させず、株の体力を温存させることができます。また、ラグランジアは従来のアジサイと違って茎にワタ(髄)がなく、水揚げが非常に良いという特性も持っています。早めにカットして「切り花」としてお部屋で楽しむのも、地植えで爆発的に咲かせた人だけの特権ですね。
大きくなりすぎを防ぐには

「剪定不要」とはいうものの、地植えにして環境がピッタリと合うと、ラグランジアは私たちの想像をはるかに超えるスピードで大きく成長することがあります。「シャンデリーニ」という品種は、愛知県での試験データによると、春に植えた小さなベビー苗が、わずか1年後には樹幅約80cmもの立派な株に成長したという驚異的な記録もあるようです。
「お庭のスペースには限りがあるし、さすがに大きくなりすぎた…」「通路にはみ出してきて困る」「もう少しコンパクトに、こんもりとしたドーム状に仕立てたい」…もちろん、そういう場合もありますよね。
安心してください。ラグランジアは「剪定不要」であると同時に、「いつ切っても咲くからこそ、剪定が自由」なアジサイでもあります。(「剪定不要」=「剪定禁止」では全くありません!)
ですから、大きくなりすぎを防ぐために、もちろん剪定してコンパクトに仕立て直すことも可能です。
コンパクトにする「切り戻し剪定」のベスト時期
もし株全体をバッサリと小さく「切り戻し」たい場合は、花が終わった直後から、遅くとも晩夏(9月中旬頃)までに行ってください。
「あれ? いつ切っても咲くんじゃないの?」と疑問に思うかもしれません。確かにいつ切っても咲きますが、花芽分化の時期(夏~秋)にバッサリ切ってしまうと、その時点で準備していた花芽を大部分切り落とすことになります。もちろん、切った下から新しい芽が出てきて、そこにまた花芽ができますが、タイムラグが生じるため、どうしても翌年の花数は減ってしまう可能性があります。
翌年の花数を最大限に保ちつつコンパクトにするなら、「花後すぐ」に切るのがベスト。「コンパクトにする剪定は、夏が終わる前までに」と覚えておくと良いですね。
(ちなみに、冬の休眠期に、明らかに枯れている枝(枯れ枝)を根元から整理したり、内側に向かって伸びている不要な枝(内向枝)を間引く「透かし剪定」は、いつ行っても大丈夫ですよ。風通しが良くなり、株元まで光が当たるようになるので、むしろ推奨されます)
ラグランジア地植え成功の鍵
ここまで、ラグランジアの地植えについて、準備段階の熱意から、植え付け後の具体的な管理方法まで、かなり詳しく解説してきました。いかがでしたでしょうか。
鉢植えのように毎日の水やりの手間や、夏場の「あっ!水切れさせた!」というヒヤヒヤ感から解放され、植物本来の圧倒的な成長力と、株全体を埋め尽くすほどの言葉を失うような花数を引き出せる「地植え」は、ラグランジアという革命的な植物の魅力を最大限に楽しむための、最も合理的で、最も持続可能な育て方だと私は心の底から思います。
最後に、これまでの長い解説を、ラグランジア地植え成功のための「三か条」として、シンプルにまとめておさらいしますね。
ラグランジア地植え 成功の三か条
- 焦らず「育苗」:ベビー苗(小さいポット苗)は、絶対にすぐに地植えにしない。購入初年度はグッと我慢し、鉢で1年間しっかり育て、根と体力が充実した「若木」になってから、満を持して翌年に地植えデビューさせること。この「待つ勇気」が成功を生みます。
- 最適な「環境」:場所は「半日陰(特に西日を避ける)」、土は「排水性(水はけ)」を最優先に土壌改良すること。この初期設定(植え付け場所の選定と土づくり)が、その後の管理のラクさを100%決定します。
- 花後の「お礼肥」:剪定のことを考えるよりも、「お礼肥」のことが100倍大事です。花が終わったら(7月~9月)、翌年の素晴らしい花を咲かせるためのエネルギー補給(緩効性肥料)を、絶対に、絶対に忘れないこと。
この3つのシンプルなポイントをしっかり押さえれば、きっとあなたのお庭でも、ラグランジアが毎年「これでもか!」というほどあふれる花を咲かせ、梅雨時の憂鬱を吹き飛ばし、道行く人の目をも楽しませる「生きた芸術作品」となってくれるはずです。
ぜひ地植えにチャレンジして、ダイナミックなラグランジアの本当の姿を、そしてローメンテナンスで持続可能な素晴らしいガーデニングライフを楽しんでみてくださいね。
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