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こんにちは。My Garden 編集部です。
まるでシャンデリアのように、枝垂れる枝の節々から花が咲き誇る姿…。本当に見事な「ラグランジア シャンデリーニ」。ここ数年、ガーデニング界隈ではすごい人気ですよね。私も園芸店で初めてその姿を見た時、従来のアジサイのイメージが覆されるような、その圧倒的な花数と息をのむような華やかさに、思わずうっとりしてしまいました。
でも、いざ自宅でお迎えするとなると、「アジサイって聞くだけで、なんだか育て方は難しいのかな?」「”剪定不要”って聞くけど、本当に何もしなくていいの?昔アジサイを切りすぎて咲かなかったトラウマが…」「もし期待通りに花が咲かない時はどうしよう…」「最近、葉が黄色くなってきたけど、これって病気?」なんて、次から次へといろんな疑問や不安が出てきませんか。
価格も一般的なアジサイの苗より少し高めですし、なにより人気がありすぎて春のシーズン中は入手困難になることもあるくらいです。だからこそ、お迎えしたら絶対に失敗したくない!元気に育てて、あのカタログで見たような美しい姿を、自分の家で毎年楽しみたい!という気持ち、私もすごくよくわかります。
この記事では、そんな「ラグランジア シャンデリーニ」の育て方について、なぜそうするのかという植物としての理由も交えながら、基本的な管理方法(置き場所や水やり)から、植え替えや大切な冬越しのコツ、そして皆さんが特に不安に思いがちな「花が咲かない」「葉が黄色い」といったトラブルの具体的な対処法まで、ポイントを絞ってできるだけ詳しく、わかりやすく解説していきますね。
この記事のポイント
- シャンデリーニの基本的な育て方(置き場所・水やり・肥料)
- 本当に剪定不要?従来のアジサイとの違いとお手入れの真実
- 花が咲かない・葉が黄色い時の具体的な原因と対処法
- 挿し木はNG?購入前に知っておきたい大切なルール
ラグランジア シャンデリーニ 育て方の基本
まずは、シャンデリーニが元気に育ち、たくさんの花を咲かせるための「基本のキ」から、しっかり押さえていきましょう。どんな植物もそうですが、やっぱり毎日の管理が一番大切です。この基本がしっかりできていれば、株が丈夫に育ち、後の花付きやトラブルの少なさに直結しますよ。置き場所、水やり、肥料など、日々の管理で押さえておきたい大切なポイントを一緒に見ていきましょう。
最大の特徴は剪定不要の簡単さ

ラグランジア シャンデリーニの最大の魅力であり、従来のアジサイと決定的に違う革新的なポイントは、なんといっても「剪定不要」という管理の手軽さかなと思います。
「アジサイ=剪定が難しい」というイメージ、ありますよね。それもそのはず、通常のアジサイ(Hydrangea macrophyllaなど、いわゆる旧枝咲き)は、枝の先端にある芽(頂芽)にしか花がつかない「頂芽優勢」という性質が非常に強いことが多いんです。だから、花が終わった後に剪定する位置や時期をほんの少し間違えるだけで、翌年咲くはずだった貴重な花芽を全部切り落としてしまうことになり、結果として「来年まったく咲かない…葉っぱだけ…」なんていう悲劇が起こりがちでした。私も昔、何も知らずに夏以降にバッサリ切りすぎて、翌年葉っぱだけを寂しく眺めた苦い経験があります。
でも、このシャンデリーニは「側芽開花性(そくがかきせい)」という特別な性質を持っています。これは、枝の先端だけじゃなく、枝の途中にある芽(側芽)のほぼすべてに花が咲くポテンシャルがある、ということなんです。まさに「枝という枝、全部が花!」という状態ですね。
だから、もし間違って枝先を切ってしまったり、冬の寒さで枝先が少し枯れ込んだりしても、残った枝の途中から新しい芽が伸びて、そこにちゃんと花を咲かせてくれる可能性が非常に高いんです。この「どこで切っても(比較的)咲きやすい」というのが、「剪定に神経質にならなくて良い」「剪定不要」と言われる、本当に画期的な生物学的な理由なんですね。自然に任せても、枝垂れるように咲くシャンデリアのような樹形が楽しめるのも、大きな魅力です。
もし剪定するなら、時期はいつがいい?
基本的には剪定を行わず、自然に枝垂れるように咲く、そのシャンデリアのような樹形を楽しむのが一番のおすすめです。
ですが、「ちょっと株が大きくなりすぎたな」「ベランダには大きすぎるからコンパクトにしたい」と感じてサイズを調整したい場合は、花が終わった直後(遅くとも7月中旬まで)に切るのが唯一かつ最良のタイミングです。
なぜなら、アジサイの仲間は夏以降に来年の花芽の準備(花芽分化)を始めるから。それ以降の秋や春にバッサリ切ってしまうと、せっかく準備万端だった翌年の花芽までバッサリ切り落としてしまうことになり、その年は「葉は茂るけど花はゼロ」という観葉植物状態になってしまいます。もちろん、株が枯れるわけではないので、翌々年の開花を目指してリフレッシュさせる、という目的ならアリですが、毎年咲かせたいなら切るタイミングは「花後すぐ!」これだけはぜひ覚えておいてくださいね。
最適な置き場所と光の管理
シャンデリーニは、基本的にお日様が好きな植物です。あれだけの数の花を咲かせるためには、光合成によるたくさんのエネルギー(炭水化物)を葉で蓄える必要があります。そのため、半日以上、日の当たる場所が理想的とされています。
特に、午前中の柔らかい光は、植物にとって非常に質が高く、光合成の効率も良いゴールデンタイムです。できるだけ午前中は日が当たる、東向きの場所などが最高ですね。日照不足は、後述する「花が咲かない」原因のナンバーワンと言ってもいいくらい重要なので、できるだけ明るい場所を選んであげましょう。暗すぎると、枝がひょろひょろと間延び(徒長)する原因にもなります。
夏の強すぎる日差しには注意

ただし、人間も真夏の日差しがキツイように、シャンデリーニも日本の夏の強烈な直射日光、特にジリジリと照りつける西日はちょっと苦手です。
強すぎる光と熱は、葉が持つ光合成のキャパシティを超えてしまい、活性酸素が発生して葉の組織が壊れ、チリチリに焼けてしまう「葉焼け(Leaf scorch)」を起こすことがあります。こうなると光合成ができなくなるばかりか、見た目も悪くなり、株全体が弱る原因にもなります。
夏場は、強い直射日光を避けられる半日陰や、明るい日陰(例えば落葉樹の木陰や、建物の東側、あるいは午前中だけ日が当たる場所など)に移動させてあげるのがおすすめです。地植えで移動が難しい場合は、園芸用の「寒冷紗(かんれいしゃ)」などで30%〜50%ほど遮光してあげるだけでも、葉のダメージは全然違いますよ。
「風通し」と「置き場所」の重要性

「光」と同じくらい、いえ、もしかしたらそれ以上に大事かもしれないのが「風通し」です。
空気がこもるジメジメした場所は、梅雨時や夏場に湿度が必要以上に高くなり、株が蒸れてしまいます。これは、カビが原因の病気(特にアジサイの大敵である「灰色かび病」など)や、カイガラムシ・ハダニといった害虫が発生しやすくなる最悪の環境なんです。
また、適度な風通し(そよ風)は、葉の表面から水分が蒸発する「蒸散」を穏やかに助けます。蒸散が活発になると、根から新しい水や養分(特にカルシウムなどの微量要素)を吸い上げる力も強くなるので、株全体が元気に、病気に強く育つんです。
コンクリートの輻射熱に要注意!
特に鉢植えで育てている場合、夏場にコンクリートやタイルの上に直接鉢を置くのは絶対に避けたほうが良いです。日中の照り返しと、夜になっても冷めない輻射熱で、鉢の中の温度が想像以上に高くなり(時には50℃を超えることも)、大切な根がお湯で煮えるような状態(根焼け)になってしまう危険があります。
これを防ぐには、レンガやポットフット(鉢底用の台)、あるいは「すのこ」の上に乗せて、鉢底と地面の間に空気の層(風の通り道)を作ってあげるだけでも、熱の影響をかなり軽減できますよ。二回り大きな鉢にすっぽり入れて二重鉢にするのも効果的です。
基本の水やりと肥料のコツ
アジサイの仲間(Hydrangea)は、その学名の語源がギリシャ語の「水の器(Hydor=水、angeion=器)」とも言われるくらい、お水を好む植物として知られています。シャンデリーニも例外ではなく、特に開花期は葉がたくさん茂る分、葉から蒸散する水分量も相応に多くなるので、水切れには特に注意が必要ですね。
水やりのタイミングと量
水やりの基本中の基本は、もう耳にタコかもしれませんが「土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと」です。このシンプルな原則には、深い理由があります。
「乾いたら」がなぜ重要か?

まだ土が湿っているのに毎日律儀にあげてしまうと、土の中の隙間(孔隙)が常に水で満たされてしまいます。植物の根も私たちと同じで「呼吸」をしており、酸素が必要なんです。土がずっと水浸しだと、根が呼吸できずに「酸素欠乏(Hypoxia)」に陥り、窒息して腐ってしまいます。これが「根腐れ」の正体です。ですから、一度乾かして土の中に新鮮な空気を送り込む「乾湿のメリハリ」が、健康な根を保つ最大のコツなんです。(土の表面を指で触ってみて、乾いているのを確認するのが確実ですね)
「鉢底からたっぷり」はなぜ重要か?
これは、鉢の中の古い水や、根の呼吸などで発生したガス(二酸化炭素など)、不要な老廃物を、新しい水で押し出す「ガス交換」と「デトックス」のためです。ちょろちょろと表面だけ湿らせる水やり(腰水も同様)を続けていると、土の中に老廃物や塩類が溜まり、根の環境が悪化してしまいます。
季節ごとの水やりメリハリ術
- 生育期(春〜秋):土の表面が乾いたらたっぷり。特に夏場は乾燥が非常に早いので、朝の涼しい時間帯にまず一度。夕方チェックして乾いていれば、葉の熱を冷ます意味でもう一度あげる(朝夕の2回)が必要になるかもしれません。
- 休眠期(冬):地上部は枯れ、生育期ほど水を吸わなくなります。この時期に生育期と同じペースであげると過湿で根腐れします。灌水頻度をぐっと下げ、土の表面が乾いてから数日待つくらい、「乾燥気味」に管理するのがコツです。これにより株が引き締まり、耐寒性も高まります。
肥料はいつ、何をあげる?
あれだけの花を休む間もなく咲かせるわけですから、やっぱりたくさんのエネルギー(栄養=肥料)が必要です。適切な時期に適切な肥料をあげることで、花付きが格段に良くなり、翌年の株の体力も維持できます。
肥料の与え方スケジュール
- 元肥(もとごえ):植え付けや植え替えの時に、土にあらかじめ混ぜ込んでおく「ベースとなる肥料」です。マグァンプKのような、ゆっくり長く(約1年)効くタイプの緩効性肥料がおすすめです。
- 追肥(ついひ):生育が活発になる春(新芽が動き出す3月〜4月頃)と、花が終わり株が体力を消耗した後の「お礼肥え」として秋口(9月〜10月頃)に、緩効性の固形肥料(置くだけのタイプ)を株元に施します。2〜3ヶ月に1回が目安ですね。
- 液体肥料(液肥):生育期(春〜秋、特に花が咲く前〜咲いている最中)には、固形肥料に加えて、1週間〜10日に1回程度の速効性がある液体肥料(ハイポネックスなど)を、水やり代わりに与えるとさらに生育が旺盛になり、花付きも良くなります。
もし、「葉ばかりが異常に大きくて、青々と茂っているのに、花が全然咲かない」という場合は、葉や茎を育てる「窒素(N)」が多すぎるサインかもしれません。これは「蔓ボケ(つるボケ)」と呼ばれる状態で、植物が栄養成長(体づくり)ばかりに偏って、生殖成長(花芽形成)をサボっている状態です。体内ホルモンのバランス(ジベレリン過多など)が崩れているとも言えます。
その時は、花や実を育てる「リン酸(P)」や、根を丈夫にし光合成を助ける「カリウム(K)」が多めの肥料(P-K比率の高い肥料)に切り替えて、植物体内の栄養バランスを取ってあげるのが良い方法だと思います。
植え替えの時期と土の選び方

特に鉢植えで育てている場合、これは避けて通れない大切な作業です。ずっと同じ鉢で育てていると、2〜3年もすれば鉢の中は根っこでパンパン、カチカチになってしまいます。これが「根詰まり(Root bound)」という状態です。
根詰まりすると、新しい根を伸ばすスペースがなくなり、養水分を吸収する効率が著しく低下します。これが、水やりをしてもすぐに土が乾いて水切れしやすくなったり、肥料をあげているのに葉が黄色くなったり、株全体の生育がピタッと鈍くなったりする直接的な原因になります。
だいたい2年に1回くらいを目安に、根鉢を3分の1ほど優しくほぐし(黒ずんだ古い根は整理し)、一回り大きな鉢に新しい土で植え替えてあげる(鉢増しする)のがおすすめです。これにより根がリフレッシュされ、再び元気に養分を吸い上げられるようになります。
時期としては、植物へのダメージ(ストレス)が最も少ない休眠期の冬(12月〜2月頃)が最適です。もし冬の作業を逃してしまった場合は、花が終わった後の梅雨時期でも大丈夫ですよ。
どんな土を使えばいい?
土選びは、ガーデニングの成功を左右する非常に重要なポイントですが、あまり難しく考えず、市販の「アジサイ専用の培養土」を使うのが一番簡単で安心です。アジサイが好む弱酸性の土性やpHに調整されており、必要な肥料分も最初から含まれていることが多いです。シャンデリーニは花色が土壌pHに左右されにくい品種ですが、アジサイが好む土壌環境であることには変わりありません。
もしご自身で配合(ブレンド)する場合は、「水はけ(排水性)」と「水もち(保水性)」が絶妙なバランスで両立していることが命です。水はけが悪いと根腐れし、水もちが悪すぎるとすぐに水切れしてしまいます。
自家製培養土の配合例
あくまで一例ですが、以下のような配合が一般的です。もし土作りに挑戦される場合は、「培養土、初心者の選び方。失敗しない基本ガイド」の記事も参考にしてみてくださいね。
- 赤玉土(小粒)6〜7割:土の骨格となり、保水性・保肥性を担います。
- 腐葉土 3〜4割:土に養分と微生物を供給し、ふかふかにします。
この基本配合に、排水性と通気性をさらに高めるために「パーライト」や「軽石(日向土など)」を全体の1割程度加えると、より根腐れしにくい、高品質な園芸用土になるかなと思います。
寒冷地での冬越しの注意点

ラグランジア シャンデリーニは、アジサイの中でも耐寒性は比較的高い方とされており、公式情報でも耐寒ゾーンはUSDA Zone 5(マイナス28.8℃程度まで耐えうる)とされています。そのため、東北や北海道の一部を除く、日本の多くの地域で屋外での冬越しが可能です。
ただし、単に気温が低いことよりも、もっと気をつけたいのが「冬の乾いた寒風」と「日中の融解と夜間の急激な凍結の繰り返し」です。
強い寒風に常にさらされると、せっかく翌春に咲くために準備されていた花芽や、休眠中の枝の表皮から水分が一方的に奪われ、凍結乾燥(フリーズドライのような状態)になって枯死してしまうことがあるんです。これが「春になっても芽が出ない」「枝先だけ枯れて、根元からしか芽吹かない(結果、花が咲かない)」という悲しい結果につながる大きな原因の一つです。
特に寒冷地や、冬に「〇〇おろし」のような強い風が吹き抜ける場所で育てる場合は、以下のような対策をしてあげると、翌年の花付きが格段に良くなり安心です。
寒風・凍結から花芽を守る冬越しの工夫
- 鉢植えの場合:
- 最も簡単なのは、強風の当たらない軒下や、玄関先、風除室などに移動させることです。
- それが難しい場合や、寒さが非常に厳しい地域では、鉢ごと二回り大きな鉢(発泡スチロールの箱でもOK)に入れ、隙間にバークチップや腐葉土、落ち葉などを詰めて保温する「二重鉢」も効果的です。
- 地植えの場合:
- 不織布や寒冷紗などで株全体をふんわりと覆い、風や霜が直接当たるのを防ぎます(ぐるぐる巻きにしすぎると蒸れるので注意)。
- 株元(根元)を、腐葉土やバークチップ、わらなどで10cmほど厚く覆う「マルチング」をして、地面の急激な凍結から大切な根を守ります。
ちなみに、雪が多い日本海側の地域では、積雪が布団代わりになって、逆に一定の温度と湿度で花芽を優しく守ってくれるので、雪の下になった方が花芽が傷まないことも多いです。ただ、その場合は重い雪で枝が折れないようにだけ、雪囲いなどの注意が必要ですね。少しの手間ですが、これで春の咲きっぷりが全然違ってくると思いますよ。
ラグランジア シャンデリーニ 育て方の悩み解決
基本の育て方をしっかり実践していても、実際に育ててみると「あれ?なんだか調子が悪そう…」「マニュアル通りにやっているはずなのに、うまくいかない」といったお悩みが出てくることもありますよね。植物は生き物ですから、環境によって様々なサインを出してきます。ここでは、シャンデリーニ栽培でよくあるお悩みや、知っておくべき大切なルールについて、Q&A形式で詳しく解説していきます。
花が咲かないときの原因4つ

丹精込めて育てて、春の一番の楽しみにしていた花が咲かないと、本当にがっかりしますし、「何がいけなかったんだろう」と不安になりますよね。シャンデリーニで花が咲かない場合、考えられる主な原因はだいたい以下の4つに絞られることが多いかなと思います。ご自身の管理方法と照らし合わせて、当てはまるものがないか確認してみてください。
【要確認】花が咲かない原因セルフチェックリスト
ご自身の管理方法と照らし合わせて、当てはまるものがないか確認してみてください。
| 原因 | チェックポイントと詳しい解説 |
|---|---|
| 1. 剪定時期の間違い | (最重要)秋〜春先(特に冬)に、枝を短く切ってしまいませんでしたか?
シャンデリーニは旧枝咲きのアジサイの仲間で、花芽は前年の夏〜秋に枝(の側芽)に作られます。花が終わった後ならまだしも、秋や冬、春先に「邪魔だから」と枝を短く切り戻してしまうと、その年に咲くはずだった花芽をすべて切り落としたことになります。これが咲かない最大の原因であることが多いです。 |
| 2. 日照不足 | 一日中、薄暗い日陰になる場所に置いていませんか?
花芽を作る(花芽分化)には、光合成によって作られる炭水化物(糖)のエネルギーが大量に必要です。暗すぎると株は生きているだけで精一杯になり、葉は茂らせても、子孫を残すための「花」を咲かせる余力がなくなってしまいます。(植物体内のC/N比=炭水化物/窒素比が低くなりすぎるためです) |
| 3. 肥料のアンバランス | 葉っぱばかりが異常に大きく、青々と茂っていませんか?
これは「基本の水やりと肥料のコツ」でも触れた、葉を育てる「窒素(N)」が多すぎる「蔓ボケ(つるボケ)」の状態です。植物が栄養成長(体づくり)ばかりに偏り、生殖成長(花芽形成)をサボっているサイン。花芽分化を促す「リン酸(P)」や「カリウム(K)」を含む肥料に切り替える必要があります。 |
| 4. 冬の管理ミス | 冬場、寒風に枝をさらし続けて、枝先が枯れ込んでいませんか?
上記「寒冷地での冬越しの注意点」で詳しく触れた通り、花芽が冬の乾いた寒風によって「凍結乾燥」で枯死してしまった可能性があります。特に「枝先だけ咲かないで、根元の方から出た新しい枝にだけ咲いた」という場合は、これが強く疑われます。 |
この4つのどれかに当てはまることがほとんどです。特に「剪定時期」は、シャンデリーニがいくら剪定に強いといっても、花芽ができた後に切れば当然咲かなくなります。この「花芽はいつできるのか?」という植物のライフサイクルを理解することが、毎年たくさんの花を楽しむための最大の秘訣ですね。
葉が黄色くなるのはなぜ?
元気だった葉が黄色く変色してくると、「病気かな?」「枯れちゃうのかな?」とすごく心配になりますよね。この「クロロシス」という現象にも、実はいくつか異なる原因が考えられます。どの葉から(古い葉か?新しい葉か?)、どのように(全体的か?葉脈だけ残すか?)黄色くなっているか、よく観察してみてください。
1. 根詰まり・根腐れ
症状:主に株元の古い葉(下葉)から黄色くなり、だんだん元気がなくなり落葉していく。水やりをしても葉がシナっとしている。
原因:最も多い原因の一つです。鉢植えで何年も植え替えていないと「根詰まり」を起こし、根が新しい水を吸えなくなります。また、水のやりすぎや土の水はけが悪くて、土がずっとジメジメしていると「根腐れ」の危険も。どちらも根がうまく機能できず、必要な栄養や水を吸えなくなっている緊急サインです。
対策:まずは鉢底の穴から根が飛び出していないかチェック。水やりの頻度を見直し、土の表面がしっかり乾いてからあげるように徹底します。もし根腐れが疑われる場合は、「根腐れの原因と対処法!症状の見分け方と復活のコツ」も確認してみてください。根本的な解決には、適期(冬または花後)に植え替えて、黒ずんで腐った根を取り除き、新しい土と大きな鉢で根が伸びる環境をリセットしてあげる必要があります。
2. 肥料切れ(特に微量要素)

症状:葉脈(葉のスジ)は緑色を保っているのに、その間(葉肉)が黄色っぽく色が抜けたようになる。(葉脈間クロロシス)
原因:特に鉢植えは、水やりのたびに土の中の栄養(特に水に溶けやすい微量要素)が流れ出てしまいがちです。これは、葉緑素(クロロフィル)を作るのに必要な「マグネシウム(苦土)」や「鉄」などの微量要素が不足している典型的なサインです。窒素(N)が不足しても葉は全体的に黄色っぽくなります。
対策:定期的な追肥が不可欠です。マグネシウムや鉄などを含む活力剤(リキダスなど)や、微量要素入りの液体肥料を規定通りに施用すると、比較的早く改善が見られる場合があります。緩効性肥料も忘れずに施しましょう。
3. 自然な新陳代謝(生理現象)
症状:株元のごく一部の古い葉(一番下の葉など)だけが黄色くなり、やがて自然にポロっと落ちる。
原因:株全体が元気で、先端からは新しい芽がどんどん伸びている場合、これは病気ではありません。植物が新しい葉や花にエネルギーと養分を集中させるため、役目を終えた古い葉を自ら落とす自然な新陳代謝(生理落葉・Senescence)です。
対策:特に心配は不要です。株全体の活力が維持されていれば、問題ありません。黄色くなった葉は、見た目が悪ければ取り除きましょう。
花が茶色くなる?薬害と病気
せっかく咲いた純白(またはライムグリーン)の繊細な花が、シミのように茶色く変色してしまうのは、本当に悲しいですよね。美観が一気に損なわれてしまいます。これには大きく分けて2つの原因が考えられます。
1. 薬害(Phytotoxicity)
原因:春になると出てくるアブラムシなどの虫除けや、病気の予防・治療のために殺虫剤・殺菌剤をスプレーした時、その薬剤が原因で花びらが焼けてしまう(薬害)ことがあります。特に、花びらは葉よりも表皮が薄くデリケートで、薬剤の影響を非常に受けやすいんです。
高濃度の薬剤(濃すぎた)、推奨されていない薬剤(例えばオーガニック系でも竹酢液や木酢液なども濃度によっては薬害が出ます)、あるいは真夏の高温時に散布したりすると、花びらの細胞が壊死して茶色く変色するリスクが非常に高まります。
対策:まず、花が開いている時期の薬剤散布は、できるだけ避けるのが無難です。やむを得ない場合(例えばアブラムシが大量発生した場合など)は、規定の希釈倍率を厳守するか、むしろ少し薄めに希釈し、早朝や夕方の涼しい時間帯に、花になるべくかからないように葉の裏などを中心に散布する、といった細心の配慮が必要ですね。「アブラムシの簡単な駆除方法!手作りから予防まで
」で薬剤を使わない方法を試すのも手です。
2. 灰色かび病(Botrytis blight)
原因:これはカビ(真菌の一種、Botrytis cinerea)による伝染性の病気です。特に梅雨時期や秋の長雨など、低温・多湿の状態が続くと爆発的に発生しやすくなります。花びらに水がしみたような小さな斑点ができ、そこから急速に灰色〜茶色のカビが広がって、花全体が腐ったように枯れていきます。
対策:この病気を防ぐには、何よりも「風通し」です。予防が第一です。枝葉が混み合っている場所があれば軽く整理し、株内部の風通しを良くします。水やりの際は花に直接水がかからないように株元にあげ、そして咲き終わった花(花がら)は病原菌の温床になるので、こまめに摘み取って、株の周りを清潔に保つ(衛生管理=Sanitation)ことが最大の予防になります。
挿し木は禁止?PVP品種の注意点

「こんなに素敵だから、お友達にも分けてあげたいな」「挿し木で簡単に増やせるなら、たくさん育ててみたい」と思う方もいるかもしれません。アジサイは一般的に挿し木が容易な植物ですから、そう考えるのも自然なことだと思います。でも、ここで絶対に知っておかなければならない、法律に関わるとても大切な注意点があります。
ラグランジア シャンデリーニは、購入した際のラベル(タグ)にも必ず記載がありますが、「PVP」というマークが付いた、種苗法(しゅびょうほう)に基づく「登録品種(または登録出願中品種)」です。これは、長い年月と多大なコスト、そして情熱をかけてこの素晴らしい品種を開発した育種者(開発者)の権利(知的財産権)を、法律で保護するための国際的なルールです。
法律違反になる可能性のある行為(厳守)
このPVPマークが付いている品種(登録品種)は、権利者の許可なく「業(仕事)」として増殖(挿し木や株分けなど)する行為が、種苗法によって厳しく禁止されています。
さらに、「業として」でなくても、個人が趣味で増やした場合であっても、増殖した苗(挿し木で増やしたものなど)を、許可なく他人に販売したり、たとえ無償(無料)であっても譲渡(人にあげること)したりする行為も、権利者の権利を侵害するものとして禁止されています。
最近はフリマアプリやオークションサイトなどを通じた個人間のやり取りも厳しく監視されており、「知らなかった」「友達にあげるだけだから」では済まない深刻な事態になる可能性があります。絶対にやめましょう。
私たち園芸を愛する者は、あくまで個人が正規ルートで購入した株を、ご自身の自宅の庭やベランダで楽しむ範囲にとどめるべきです。増やしたものを他人に渡したり売ったりしないよう、法律と育種者の多大な努力と権利を守って楽しむことが、園芸文化の発展を支える大切なマナーですね。正確な情報や詳細については、農林水産省の公式ホームページなどで必ず確認することをおすすめします。
価格と入手困難な理由とは
ラグランジア シャンデリーニ、園芸店や通販サイトで見かけると「やっぱりちょっと高いな…」「小さな苗なのに結構するな…」と感じることもありますよね。市場価格を見ると、だいたい3.5号から4.5号くらいの、まだ開花前の小さなポット苗であっても、概ね2,500円〜4,000円(送料別)くらいで推移していることが多いかなと思います。
この価格設定には、ちゃんとした、そして納得のいく理由があります。
- PVP(品種登録)品種であること: 上記で詳しく説明した通り、これは世界に一つしかない新品種であり、その開発にかかった莫大なコスト(研究開発費)や、権利を保護するためのライセンス料が価格に反映されています。
- 生産に高度な技術と時間がかかること: シャンデリーニのような品種は、ウイルスフリー(病気のない)苗を生産するため、メリクロン(組織培養)といった高度な技術で増やされます。そこから開花株として出荷できるサイズになるまでには、専門の生産者さんの元で厳格な管理下に置かれ、長い育成期間(コスト)がかかっています。
- 圧倒的な人気と高い需要: その革命的な美しさと育てやすさから人気が非常に高く、世界中で需要が急増しています。しかし、上記の通り生産に時間がかかるため、需要に対して供給が追いついていない(=希少価値が高い)面があります。
これらの理由から、特に春のガーデニングシーズン最盛期(4月〜6月頃)には、ネット通販などでは「入手困難」「即日売り切れ」と表記されることも珍しくありません。
確かに最初の初期投資額は他の一般的なアジサイより高いかもしれません。ですが、適切に管理すれば何年も生き続け、年々株が充実して大株に育ち、毎年数百輪もの圧倒的な花を咲かせてくれるそのパフォーマンスを発揮します。そう考えると、その感動を毎年味わえる分、長期的な投資対効果(コストパフォーマンス)は非常に高い、価値ある植物なのかなと私は思います。
ラグランジア シャンデリーニ 育て方の総まとめ
今回は、今大人気の「ラグランジア シャンデリーニ」の育て方について、基本的なポイントから、剪定の考え方、植え替え、そして「咲かない」「葉が黄変する」といった、皆さんが不安に思うであろうトラブルの対処法まで、できるだけ詳しくご紹介しました。
「剪定不要」という画期的な手軽さが最大の魅力のシャンデリーニですが、その素晴らしいポテンシャルを最大限に引き出して、毎年あの息をのむような花景色を楽しむには、やっぱりいくつかの大切な「コツ」がありましたね。
シャンデリーニ栽培 成功のための3つの鍵
- 光と風のエンジニアリング(環境整備): 基本は日当たりが好き。でも日本の夏は日陰へ。そして「風通し」が病気を防ぎ、株を元気にする上で超重要!鉢植えは夏の「輻射熱」にも細心の注意を。
- 剪定時期の絶対厳守(花芽の理解): 基本はしなくてOK。もし切るなら「花後すぐ(7月中旬まで)」を絶対に守る!花芽ができる秋・冬・春に切ったら、その年は絶対に咲きません。
- PVPルールの遵守(法律とマナー): これは法律で保護された大切な品種です。挿し木で増やしたものを、販売したり他人に無償で譲ったりする行為は、絶対にダメ。
これらのポイントを押さえつつ、一番大切なのは、やっぱり植物の状態を日々よく観察してあげること。「土は乾いてないかな?」「葉の色はおかしくないかな?」「虫はついてない?」と、ちょっとした変化に気づいて対応してあげること(=日々の観察)こそが、ラグランジア シャンデリーニの育て方で一番の秘訣かもしれません。
ぜひ、お庭やベランダの主役として、あの息をのむようなシャンデリア咲きの見事な花を、毎年咲かせてみてくださいね。その感動は、きっと格別ですよ。
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