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フェアリースター種取りはNG?挿し芽や冬越しで確実に増やす方法

フェアリースター 種取り 鉢植えいっぱいに満開に咲く極小輪の園芸品種フェアリースター フェアリースター
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こんにちは、My Garden 編集部です。

小指の爪ほどの小さな花が、株を覆い尽くすように咲き乱れるフェアリースター。その愛らしい姿を毎日眺めていると、「この可愛い花を来年も咲かせたい」「種を取ってたくさん増やせたら素敵だな」と考えるのは、ガーデニングを愛する人ならごく自然な気持ちですよね。特に、秋が深まり花数が少し落ち着いてくる頃になると、「そろそろ種取りの時期かな?」と検索される方がとても増えます。しかし、実際に株の中を覗き込んでみても、なかなか種が見つからなかったり、運良く種が採れて蒔いてみても「あれ、親と同じ花が咲かない…」といった失敗談を耳にしたりすることもあるかもしれません。

実は、フェアリースターは種から育てるのが非常に難しいだけでなく、遺伝的な理由から「種取りには向かない」植物なのです。でも、がっかりしないでください。種取りよりもずっと確実で、親株の可愛さをそのまま受け継ぐことができる「挿し芽」や、お気に入りの株をそのまま翌年まで持ち越す「冬越し」という方法があります。この記事では、なぜ種取りが推奨されないのかという植物学的な理由から、失敗しない挿し芽の極意、そして冬越し管理のコツまで、私の栽培経験を交えて徹底的に解説します。

この記事のポイント

  • フェアリースターの種取りが推奨されない理由と遺伝的なリスク
  • 種よりも確実に同じ花を咲かせるための挿し芽の具体的な手順
  • 冬越しを成功させて翌年も楽しむための温度と管理のコツ
  • 知らないと怖い種苗法や品種登録に関するルールとマナー
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フェアリースターの種取りの注意点と知っておくべきリスク

「種を蒔けば、親と同じ花が咲く」。これはアサガオやヒマワリなどの固定種では当たり前のことですが、現代の園芸品種、特にフェアリースターのような高度に改良された品種においては、必ずしも当てはまりません。むしろ、種を取って育てることは、時間と労力をかけた割に報われない結果になることが多いのです。まずは、なぜフェアリースターの種取りがこれほどまでに難しいのか、そしてどのようなリスクがあるのか、その背景にある植物のメカニズムを詳しく紐解いていきましょう。

先祖返りで花が変わるリスク

フェアリースター 種取り フェアリースターの極小花と先祖返りで巨大化した一般的なニチニチソウの花の比較

一生懸命種を採取し、春を待って種まきをし、ようやく花が咲いたその時。「あれ?私が育てていたフェアリースターと全然違う…」という驚きの現象に直面することがあります。花が妙に大きかったり、色がぼやけていたり、草姿が間延びしていたり。これは園芸用語で「先祖返り」と呼ばれる現象です。

フェアリースターは、サントリーフラワーズがニチニチソウ(Catharanthus roseus)を長年かけて品種改良し、生み出した傑作です。通常のニチニチソウよりも圧倒的に小さな花(極小輪)と、摘芯しなくても自然にドーム状にまとまる草姿は、複数の親品種を掛け合わせる複雑な交配によって固定された形質です。生物学的な観点から少し詳しく説明すると、私たちが購入する苗は、特定の遺伝形質を持つ親同士を交配させた「F1品種(雑種第一代)」や、優れた個体を栄養繁殖で維持している系統に近い性質を持っています。

メンデルの遺伝法則をご存じの方もいるかもしれませんが、こうした交配種から採れた種(F2世代以降)は、親が持っていた遺伝子の組み合わせがバラバラに解かれて再構築されます(遺伝的分離)。その結果、改良によって隠されていた「野生種に近い性質」や「交配前の親の性質」が、リセットされたかのように再び表に出てきてしまうのです。これは植物が生存競争に勝つために、より原種に近い、強健で一般的な形態に戻ろうとする自然な力とも言えます。

種から育てた場合によくある具体的な変異

実際に種から育てた場合、以下のような「ガッカリ」な変化が起きる確率が非常に高いです。

  • 花の巨大化:フェアリースターのアイデンティティである「極小輪」の形質が失われ、普通のニチニチソウのような4cm以上の大きな花に戻ってしまうことが最も多いパターンです。
  • 草姿の乱れ:こんもりと密に茂る「分枝性」が失われ、枝の間隔(節間)が広くなり、ヒョロヒョロと上に伸びる「徒長」した姿になりやすくなります。これでは美しいドーム型になりません。
  • 花色の劣化:親株のような「クリアで鮮やかな発色」が失われ、色が濁ったり、花弁の中心の色が抜けたり、あるいは平凡な薄いピンクや白に戻ったりすることがあります。

つまり、種から育てたとしても、それはもはや「フェアリースター」とは呼べない、名もなき別のニチニチソウになってしまう可能性が極めて高いのです。数ヶ月かけて大切に育てた結果、期待していた姿と違う花が咲いた時のショックは計り知れません。あの愛らしい姿を確実に再現したいのであれば、種取りは最も不確実なギャンブルと言わざるを得ないのです。

種ができにくい生理的な理由

フェアリースター 種取り 花が密集して咲くため種(袋果)が見つけにくく結実しにくいフェアリースターの株元

そもそも、「毎日観察しているのに、種が全然見つからない」「どこに種があるのか分からない」という声も非常に多く寄せられます。実はこれ、あなたの探し方が悪いわけではありません。フェアリースターは、その品種特性として「極めて種ができにくい(不稔性が高い)」植物なのです。

植物にとって、花を咲かせ種を作るという生殖活動は、生命エネルギーを削る一大事業です。通常の植物は、受粉して種ができると「子孫を残す」という生物としての最大の目的が達成されたと判断します。すると、新しい花を咲かせるのを止めてしまったり、種を育てることに養分を集中させるために株全体が老化して枯れてしまったりします。

しかし、私たちガーデナーは「春から秋まで途切れることなく花を楽しみたい」と願いますよね。フェアリースターのような優れた最新の園芸品種は、種を作る能力(稔性)を極力低く抑えるよう改良されているケースが多いのです。種ができない分、光合成で作ったエネルギーを種子形成に回さず、すべて「次の花芽を分化させること」と「枝葉を伸ばすこと」に全振りできるため、あれほどの花数と長い開花期間を実現しているのです。

項目 フェアリースター(改良品種) 一般的なニチニチソウ(固定種)
種のできやすさ 非常にできにくい(高い不稔性) 非常によくできる(放置しても結実)
エネルギー配分 開花と栄養成長に集中 種子形成(生殖成長)に多くを消費
花殻摘みの頻度 自然に落ちるため少なくて済む 種ができる前に頻繁に摘む必要がある

また、物理的な発見の難しさもあります。フェアリースターは花が密集して咲くため、咲き終わった花(花殻)は新しい葉や花の隙間に埋もれて見えなくなってしまいます。もし奇跡的に受粉して、インゲンのような細長い種(袋果)ができたとしても、葉の緑色と同化して非常に見つけにくいのです。さらに厄介なことに、この袋果は熟すと乾燥して自然に弾け、中の種を遠くへ飛ばしてしまう(裂開)性質があります。「いつの間にかできていて、いつの間にか弾けて無くなっていた」というのが実情でしょう。このように、生理学的にも物理的にも、種を採取するのは至難の業なのです。

フェアリースターが枯れる原因

フェアリースター 種取り 鉢皿に水が溜まり土壌過湿により根腐れを引き起こす原因となる環境

種取り以前の問題として、「せっかく買った苗が夏に枯れてしまった」「下の方から葉が黄色くなって落ちていく」という悲しい声もよく聞きます。検索キーワードでも「枯れる」「育たない」は常に上位にあります。フェアリースターは本来、暑さには最強クラスに強い植物ですが、唯一にして最大の弱点があります。それが「土壌の過湿による根腐れ」です。

メーカーの説明などで「湿気に強く改良された」という文言を見かけることがありますが、これを誤解しないでください。これはあくまで「日本の蒸し暑い空気(高い空中湿度)」や「雨による花弁の傷み」に耐性があるという意味です。根っこが長時間水に浸かっている状態は、他の植物同様、あるいはそれ以上に嫌います。

植物の根は、土の粒子の隙間にある酸素を取り込んで呼吸をしています。しかし、土の中が常に水で満たされていると、酸素が追い出されてしまい、根は酸欠状態で窒息してしまいます。これが「根腐れ」のメカニズムです。根が腐ると水を吸い上げられなくなるため、土は濡れているのに植物体は水不足のような萎れ方をして、最終的に枯死します。

特に危険なのが、夏場の水やりの加減と、鉢皿(受け皿)の存在です。「暑いからたっぷりあげなきゃ」と、土が乾いていないのに毎日水をあげたり、鉢皿に水を溜めたままにしたりするのは自殺行為です。フェアリースターに関しては、「土の表面が白っぽくしっかり乾いてから、鉢底から流れ出るまでたっぷりやる」というメリハリ(乾湿のサイクル)が命です。鉢植えの場合、水やり前に鉢を持ち上げてみて、軽くなっているか確認するのもプロのテクニックです。また、梅雨の時期や秋の長雨が続く時は、軒下など雨の当たらない場所に移動させるだけでも、生存率は劇的に向上します。

元気がない時の肥料と対処法

フェアリースター 種取り 肥料切れのサインとして葉の色が薄く黄化したフェアリースターの葉

病気ではないけれど、なんだか花が小さくなってきた、花数が減ってきた、あるいは葉の色が濃い緑色から薄い黄緑色になってきた…そんな「元気がない」状態を感じることはありませんか?その原因の多くは、ズバリ「深刻な肥料不足(スタミナ切れ)」です。

想像してみてください。フェアリースターは、春から晩秋まで、あれだけの数の花を休みなく毎日咲かせ続けるのです。植物にとって花を咲かせるというのは、ものすごいエネルギーを消費する行為です。人間で言えば、半年間毎日フルマラソンを走り続けているようなものです。植え付け時に土に混ぜた元肥だけでは、夏頃には完全にガス欠になってしまいます。

編集部おすすめの「ダブル施肥」テクニック

私はいつも、以下の2種類の肥料を組み合わせて与えることで、秋まで満開をキープしています。

  • ベース(置き肥):ゆっくり長く効く「プロミック」や「マグァンプK」などの固形肥料を、1ヶ月〜2ヶ月に1回、土の上に置きます(追肥)。これが植物の基礎体力を支える「主食」のような役割を果たします。
  • ブースト(液体肥料):即効性のある「ハイポネックス原液」などを規定倍率に薄め、1週間〜10日に1回、水やり代わりに与えます。これが今の開花を爆発させる「栄養ドリンク」になります。

特に、葉の色が薄くなるのは、葉緑素を作るための窒素やマグネシウムなどの微量要素が不足している典型的なサイン(クロロシス)です。この状態で放置すると、光合成能力が落ちてさらに花が咲かなくなる悪循環に陥ります。液肥を与えると、早ければ数日で葉色が濃くなり、花つきが劇的に改善することが多いので、少しでも「元気がないな」と思ったら即座に対応してあげてください。

立ち枯れ病の症状と対策

フェアリースター 種取り 立ち枯れ病により地際の茎が変色し枝の一部が萎れて枯れたフェアリースター

昨日まで元気に咲いていたのに、急に株の一部の枝が萎れ、水をあげても回復せず、数日のうちに株全体が茶色くなって枯れてしまった…。これはニチニチソウ属の宿命とも言える恐ろしい病気、「立ち枯れ病」の可能性が高いです。

原因は、土の中に潜む「リゾクトニア菌」や「フザリウム菌」などのカビ(糸状菌)です。これらの菌は高温多湿を好み、特に水はけの悪い土壌で爆発的に増殖します。菌は茎の地際部分から侵入して植物の血管にあたる「導管」を詰まらせたり、組織を破壊したりします。導管が詰まると、根から吸い上げた水分が上の枝葉に届かなくなるため、土は湿っているのに植物は「水切れ」と同じ状態で枯れていくのです。

厄介なことに、一度発病して茎が変色してしまうと、治療法はほぼありません。薬剤を撒いても手遅れなことがほとんどです。残念ですが、他の健康な植物に感染を広げないよう、土ごとビニール袋に入れて密閉し、可燃ごみとして処分するのが正解です。

最大の対策は「予防」に尽きます。以下の3点を徹底してください。

  1. 清潔な土を使う:以前にニチニチソウや他の植物を植えていた「古い土」には、病原菌が残っている可能性が高いです。必ず新しい清潔な培養土を使用してください。これを「連作障害の回避」と言います。
  2. 水はけを良くする:鉢底石をしっかり入れ、水はけの良い土を選びます。過湿環境を作らないことが、菌の増殖を抑える第一歩です。
  3. 泥はねを防ぐ:水やりの際、土の表面のカビを含んだ泥が跳ね返って茎に付着すると、そこから菌が侵入します。株元にバークチップやヤシ繊維などを敷いて(マルチング)、泥はねを防ぐのも非常に有効です。

フェアリースターの種取りよりも確実な挿し芽と冬越し

ここまでお話ししたように、種取りは「先祖返り」のリスクが高く、そもそも種を採ること自体が困難です。「じゃあ、毎年苗を買うしかないの?」と思われるかもしれませんが、諦める必要はありません。プロの生産者も実践している、親株の遺伝子を100%受け継ぐクローン増殖法「挿し芽(挿し木)」と、株そのものを来年まで生かす「冬越し」という2つのテクニックがあります。少しコツが要りますが、成功した時の喜びはひとしおですよ。

挿し芽で増やす手順と適期

フェアリースター 種取り 挿し芽の成功率を上げるために花と下葉を取り除き調整したフェアリースターの挿し穂

挿し芽(さしめ)とは、茎の一部を切り取って土に挿し、根を出させて新しい株を作る栄養繁殖の方法です。これなら、あの可愛い極小の花も、ドーム状の草姿も、親株と全く同じ遺伝情報を持った「ミニ・フェアリースター」を作ることができます。種まきよりも成長が早く、開花までの期間が短いのも大きなメリットです。

成功の鍵を握るのは「時期(温度)」です。フェアリースターの生育適温は20℃〜30℃ですが、挿し芽の発根には20℃〜25℃くらいが最適です。真夏の30℃を超える猛暑では、発根する前に切り口が腐ってしまったり、蒸散が激しすぎて干からびてしまったりします。逆に寒すぎると代謝が落ちて根が出ません。

【挿し芽のベストシーズン】
5月〜6月:梅雨入り前の湿度が適度にある時期。これから成長期に入るので、成功すれば夏に花を楽しめます。
9月〜10月上旬:真夏の暑さが落ち着いた頃。冬越し用のコンパクトな予備苗を作るのにも最適です。

実践!失敗しない挿し芽の5ステップ

  1. 挿し穂の準備:虫や病気のない元気な枝の先端(天芽)を、5〜7cmの長さで清潔なハサミでカットします。導管を潰さないよう、スパッと切れるハサミを使いましょう。
  2. 下処理(調整):土に埋まる下半分の葉を取り除きます(節の部分から根が出やすいため)。上部の葉が大きい場合は、蒸散(水分の蒸発)を抑えるために半分にカットします。ここが最大のポイントですが、つぼみや花は心を鬼にしてすべて取り除いてください。花を咲かせるエネルギーを、すべて「発根」に回させるためです。
  3. 水揚げ:コップに入れた水に切り口を浸し、1時間ほど吸水させます。この時、二価鉄イオンを含む活力剤「メネデール」を希釈した水を使うと、切り口の保護と発根促進に効果的で、成功率がグンと上がります。
  4. 植え付け:あらかじめ湿らせておいた用土に、割り箸などで穴を開け、切り口を傷つけないように優しく挿します。指で軽く土を寄せて固定し、ぐらつかないようにします。
  5. 管理:直射日光の当たらない、風通しの良い明るい日陰に置きます。土が乾かないようにこまめに霧吹きなどで管理し、約2〜3週間で新しい葉が展開し始めれば発根成功です!

挿し木の成功率を上げる土

フェアリースター 種取り 挿し木の発根に最適な清潔で肥料分のない鹿沼土と赤玉土

「挿し芽をしたけど、すぐに茎が黒くなって腐ってしまった」という失敗の多くは、実は土選びに原因があります。ここで声を大にして言いたいのは、「普通の草花用培養土(肥料入り)は絶対に使ってはいけない」ということです。

根が出ていない切り口にとって、土に含まれる肥料成分は刺激が強すぎます。浸透圧の関係で、植物体から水分が奪われてしまったり、肥料焼けを起こして組織が壊死してしまったりするのです。また、腐葉土などの有機物が多い土は、雑菌が繁殖しやすく、無防備な切り口から細菌感染して腐敗を招きます。

挿し芽には、肥料分が含まれておらず、無菌で清潔、かつ通気性に優れた土が必要です。私が最も信頼しているのは鹿沼土(小粒・細粒)です。鹿沼土は酸性で雑菌が繁殖しにくく、粒の中に無数の穴が開いているため、酸素を好む根の発達には最高の素材です。「赤玉土(小粒)」も優秀です。あるいは、ホームセンターで売られている「種まき・挿し木専用土」を使えば、最初からバーミキュライトやピートモスなどが最適な配合でブレンドされているので間違いありません。ここで数百円をケチらずに専用の土を用意することが、成功への一番の近道です。

冬越しを成功させる温度管理

フェアリースター 種取り 冬越し中の蒸散を抑えるために株全体を短く切り戻し剪定したフェアリースター

本来、ニチニチソウの仲間は低木(または多年草)であり、原産地のマダガスカルなどの熱帯地域では何年も生き続け、大きく木質化していきます。日本で一年草扱いされているのは、単に冬の寒さに耐えられないからに過ぎません。つまり、温度環境さえ人工的に整えてあげれば、お気に入りの株を枯らさずに来年も咲かせることができるのです。

フェアリースターが生存できる限界温度は約5℃と言われていますが、これはあくまで「枯れずに耐えられる」ギリギリのラインです。5℃以下の環境に長時間さらされると、細胞内の水分が凍結したり、生理機能が停止したりして枯死します。葉を落とさず、春にスムーズに再成長させるためには、最低でも10℃以上をキープできる場所が理想的です。

戸外での冬越しは、沖縄などの温暖地を除いてほぼ不可能です。霜に一度でも当たれば、細胞が破壊されて一発でアウトです。11月頃、最低気温が10℃を下回るようになったら、速やかに室内の日当たりの良い窓辺に取り込みましょう。ただし、ここにも落とし穴があります。昼間の窓辺は暖かくて最高なのですが、夜間の窓際は「放射冷却」現象で外気と同じくらい、時にはそれ以上に冷え込むことがあります。夕方になったら、厚手のカーテンを閉めるか、鉢を部屋の中央や高い場所(冷気は床に溜まるため、棚の上などが良い)に移動させるひと手間が、生死を分けます。

冬越し中の水やりと剪定

室内に入れたからといって、夏と同じように世話をしてはいけません。冬の間、日照時間が短くなり温度も下がると、植物は成長をほぼ停止し「休眠モード」に入ります。水を吸い上げる力も極端に弱くなります。この時期に「土が乾いたかな?」と頻繁に水を与えすぎると、吸い上げきれずに鉢の中が常に湿った状態になり、あっという間に根腐れしてしまいます。冬の枯死原因のナンバーワンは寒さではなく、実はこの「冬の水のやりすぎ」なのです。

冬の水やりは「乾かし気味」が鉄則です。土の表面が白く乾いてから、さらに3〜4日、あるいは1週間待ってから与えるくらいで丁度良いでしょう。葉が少ししんなりとお辞儀をしてからあげる、というスパルタ気味の管理でも十分です。与える時は、暖かい日の午前中に、室温に近いぬるま湯を少量与えるのがベストです。

また、室内に取り込む前には、株全体を1/2〜1/3程度の大きさにバッサリと「切り戻し(剪定)」しておきましょう。枝葉を減らすことで、植物体からの水分の蒸散を抑え、活動の鈍った根への負担を大幅に減らすことができます。コンパクトになれば室内の置き場所にも困りませんし、株元の風通しが良くなってカビなどの病気も防げます。もし冬越し中に枯れた葉や、カビ(灰色かび病)が生えた葉を見つけたら、すぐに取り除いて清潔を保ってください。

種苗法と品種登録の禁止事項

フェアリースター 種取り 園芸苗のラベルに記載された種苗法登録品種(PVP)を示すマークと注意書き

最後に、ガーデニングを楽しむ私たちが絶対に知っておかなければならない「法律」のお話です。フェアリースターをはじめとする、メーカーが開発したブランド苗の多くは、長い年月と莫大なコストをかけて開発された知的財産であり、「種苗法」に基づき品種登録されています。

苗についているラベルの裏側などをよく見てみてください。「PVP」というマークや「登録品種」、「出願中」という記載はありませんか?これは、「この品種を開発した人の権利(育成者権)が法的に保護されていますよ」という重要な印です。

絶対にやってはいけないこと(違法行為)

自宅で挿し芽をして増やしたフェアリースターの苗や、万が一採取できた種子を、メルカリやヤフオク、フリマアプリなどで販売することは、種苗法違反となります。これは「業としての譲渡」とみなされ、刑事罰や損害賠償の対象となる可能性があります。また、友人に「増えすぎたからあげるよ」と無償で譲渡することも、厳密には権利侵害となる可能性が含まれています。

2022年の法改正により、登録品種の自家増殖(自分で増やして楽しむこと)についてもルールが厳格化されましたが、現状では「家庭内での個人的・非営利的な利用」の範囲であれば、許諾なしで行っても問題ないとされる運用が一般的です。しかし、そこから一歩でも外に出て「他人に渡す」行為はNGです。

素晴らしい品種を開発してくれたメーカーさんに感謝し、ルールを守って自分の庭の中だけで楽しむ。これが私たちガーデナーの正しいマナーですね。

フェアリースターの種取りのまとめ

ここまで、フェアリースターの種取りや増やし方について、植物学的な背景から法的な注意点まで、かなり深掘りしてお話ししてきました。長くなってしまいましたが、結論としては以下のようになります。

「種取りは、先祖返りのリスクが高く、労力に見合わないためおすすめしません。その代わり、挿し芽や冬越しにチャレンジすることで、お気に入りのフェアリースターを来年も確実に楽しむことができます。」

植物の生理を知り、適切な時期に適切なケアをしてあげること。これができれば、フェアリースターは期待以上のパフォーマンスで応えてくれます。今年の秋は、不確実な種取りではなく、プロも実践する「挿し芽」や、愛着のある株を守る「冬越し準備」で、ワンランク上のガーデニングライフを楽しんでみてはいかがでしょうか。

この記事の要点まとめ

  • フェアリースターの種取りは先祖返りで親と同じ花が咲かないことがほとんど
  • 種ができにくい品種改良がされており採取自体が物理的に非常に困難
  • 種取りよりも挿し芽(挿し木)の方が遺伝的に同じ花を咲かせる確実な方法
  • 挿し芽の適期は温度が20〜25℃になる5月〜6月または9月〜10月上旬
  • 挿し芽には肥料分のない清潔な鹿沼土や赤玉土を使用することが成功の鍵
  • 発根促進剤やメネデールを活用すると、発根率と活着率がグンと上がる
  • 枯れる原因の多くは水のやりすぎによる根腐れ。土が乾くまで待つのが鉄則
  • 元気がない時は肥料切れを疑い、緩効性置き肥と速効性液肥を併用する
  • 立ち枯れ病を防ぐために必ず清潔な新しい土を使い、連作を避ける
  • 冬越しには最低5℃以上が必要だが、春の回復を考えると10℃以上が推奨
  • 冬越し前には株を半分程度に切り戻して蒸散を抑え、根の負担を減らす
  • 冬場の水やりは土が乾いてから数日待つ「乾かし気味」管理を徹底する
  • 夜間の窓際は冷えるので部屋の中央や高い場所に移動させる対策が有効
  • 増やした苗をフリマアプリ等で販売・譲渡することは種苗法で厳しく禁止されている
  • 増殖はあくまで家庭内で個人的に楽しむ範囲に留めるのが最低限のルール
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