こんにちは、My Garden 編集部です。
夏のガーデニングシーンを彩り、まるで妖精が舞うような極小の可愛らしい花を無数に咲かせてくれたフェアリースター。その愛らしい姿に毎日癒やされていた分、季節が巡り寒さが忍び寄ると、「このまま枯らしてしまうのはあまりにも惜しい」「なんとかして冬を越させ、来年もあの満開の笑顔に会いたい」という切実な想いが込み上げてくるものです。
一般的にフェアリースターを含むニチニチソウの仲間は「春まき一年草」として扱われることが多く、日本の冬の厳しさには耐えられないとされています。しかし、それはあくまで「屋外で放置した場合」の話であり、植物の生理メカニズムを正しく理解し、適切な環境さえ整えてあげれば、冬を越し、翌春にはさらに大きく成長した姿を見せてくれることは決して不可能ではありません。
いざ冬越しに挑戦しようと決意しても、「剪定は具体的にいつ、どの位置で切ればいいの?」「室内では日当たりと温度、どちらを優先すべき?」「水やりは『控えめ』と言うけれど、具体的にどれくらい?」といった疑問や不安が次々と湧いてくることでしょう。私自身もガーデニングを始めたばかりの頃は、良かれと思って肥料を与えすぎて根を傷めたり、寒さを気にするあまり窓辺の結露で病気を招いたりと、数え切れないほどの失敗を重ねてきました。そんな苦い経験から学んだのは、植物はただ漫然と管理するのではなく、「なぜそうするのか」という理由を知ることが成功への近道だということです。この記事では、私が試行錯誤の末にたどり着いた、実践的かつ論理的な冬越し管理のテクニックと、陥りやすいトラブルの回避法を余すことなく詳細に解説します。
この記事のポイント
- 冬越し成功率を劇的に高める「温度」と「光」の黄金バランスと置き場所の正解
- 失敗しないための最適な「剪定時期」と、植物の体力を温存する具体的な切り戻しテクニック
- 多くの人がやりがちな「水やり」や「肥料」のNG行動と、根腐れを防ぐ究極の水管理術
- 寒さで弱った株のSOSサインの見極め方や、恐ろしい「灰色かび病」を完全ブロックする衛生管理
失敗しないフェアリースターの冬越し方法
フェアリースターを翌年も咲かせるためには、熱帯マダガスカル原産というルーツを持つこの植物にとって、日本の厳しい冬がいかに過酷であるかを理解し、それを乗り越えるための環境を人工的に作り出す必要があります。単に「家の中に入れれば安心」というわけではありません。光、温度、水、そして風通しという4つの要素を、冬特有の植物の生理状態に合わせて最適化することが求められます。ここでは、私が実際に毎年実践し、高い生存率を維持している基本的な管理のステップと、プロも意識している細かなテクニックについて、初心者の方にもわかりやすく、かつ深く掘り下げて解説していきます。
冬越し前の剪定時期と切り戻し位置

冬越しに向けて、多くのガーデナーが最初に直面し、そして最も迷う難問が「剪定(切り戻し)」です。「せっかく青々とした葉が茂っているのに、ハサミを入れるのは可哀想」「切ったことが原因で、そのまま枯れてしまったらどうしよう」という不安、痛いほどよくわかります。しかし、植物生理学の観点から申し上げますと、適切な時期に行う剪定は、フェアリースターが冬を生き抜くための「エネルギー温存策」として、極めて合理的かつ有効な手段なのです。
植物は、葉の面積が広ければ広いほど、呼吸や蒸散によって多くのエネルギーと水分を消費し続けます。春から秋の成長期であれば、根も活発に動いているため問題ありませんが、冬になり地温が下がって根の活動が低下すると、地上部が必要とする水分や養分を根が供給しきれなくなります。その結果、株全体のバランスが崩れ、徐々に衰弱してしまうのです。あらかじめ地上部をカットして体積を減らしておくことは、いわば「冬眠モード」への切り替えスイッチのようなものであり、根への負担を劇的に軽減させる効果があります。
ここで生死を分ける最も重要なポイントは、その「タイミング」です。私が強く推奨しているのは、最低気温が15℃を下回る前、具体的には「10月中旬まで」に準備剪定を完了させることです。なぜ10月中旬なのでしょうか?それは、この時期であれば日中の気温がまだ20℃近くまで上がる日が多く、植物の体内活性(代謝)が十分に高いためです。剪定という行為は植物にとって「怪我」ですが、活性が高い時期であれば、切り口に「カルス」と呼ばれる未分化細胞の塊を素早く形成し、傷口を自己修復することができます。しかし、これが11月に入り気温が急激に低下してから深く切ってしまうと、代謝が落ちているため傷口がいつまでも塞がらず、そこからカビや細菌が侵入したり、枝が枯れ込んだりして、冬越し前の体力を奪い切ってしまうのです。
剪定の具体的な手順と成功のための鉄則
- 時期の厳守:遅くとも10月下旬まで、理想は10月中旬です。天気予報で「来週から寒くなる」と聞いてからでは遅い場合があります。
- カットする位置:株全体の高さの1/3から1/2程度を残してカットします。地際でバッサリ切るのではなく、ある程度の高さを残すのがコツです。
- 「葉」を必ず残す:これが最大のポイントです。冬の間も植物は微弱ながら光合成を行い、生命維持に必要なエネルギーを作り続けます。葉を一枚も残さない「丸坊主」の強剪定にしてしまうと、エネルギー工場を失った株は呼吸ができず、そのまま枯死する確率が格段に上がります。必ず葉が付いている節の上(5mm〜1cm)で切ってください。
- 癒合剤の活用:もし太い枝を切る場合は、切り口に「トップジンMペースト」などの癒合剤を塗布することをおすすめします。これにより、水分の過剰な蒸発と病原菌の侵入を物理的にシャットアウトできます。
もし、仕事が忙しかったりして剪定のタイミングを逃し、すでに11月後半や12月になってしまった場合はどうすれば良いでしょうか?その場合は、「何もしない(切らない)」のが正解です。伸びすぎて邪魔に見えても、寒くなってからの剪定はリスクしかありません。冬の間は、明らかに枯れている茶色い枝や、カビの原因になる花がらを取り除く程度の「サニテーション(衛生管理)」に留めましょう。不格好に伸びた枝の仕立て直しは、桜が散り、気温が安定して上昇してくる翌春(4月〜5月)に行えば、そこから爆発的に新芽が吹いてくるので全く問題ありません。
室内に入れる気温と置き場所の条件

フェアリースターは、開発元のサントリーフラワーズの公式情報によれば「耐寒温度は約5℃」とされています。しかし、この数字を鵜呑みにして「5℃までは外で大丈夫」と考えるのは非常に危険です。これはあくまで「枯れずに耐えられる限界(生存限界温度)」であり、美しく健康な状態で冬を越せる温度ではないからです。私の長年の栽培経験上、気温が10℃を下回ると、植物は防衛反応として葉を黄色くして落とし始め、生育活動をほぼ停止させます。
そのため、私が室内に入れるデッドラインとして設定しているのは「最低気温10℃」です。天気予報を毎日チェックし、夜間の予想最低気温が一桁(9℃以下)になりそうな日が一日でもあれば、迷わずその日の夕方までに室内に取り込みます。「昼間は20℃あるからまだ大丈夫」という油断が、夜間の冷え込みで株に決定的なダメージを与える原因になります。
室内に取り込んだ後の「置き場所」選びも、冬越しの成否を左右する重要なファクターです。基本的には「日当たりが良く、かつ昼夜の温度差が少ない場所」が理想です。多くの人は「日当たり」を重視して南向きの窓辺に置きますが、実はここには大きな落とし穴があります。晴れた冬の日の昼間、南向きの窓辺はポカポカと暖かく、時には25℃を超えることもありますが、日が落ちた途端に「放射冷却現象」によって急激に冷え込みます。ガラス一枚隔てた外気とほぼ変わらない温度、場合によっては0℃近くまで下がることもあり、この「昼と夜の激しい温度差(ヒートショック)」が植物にとって大きなストレスとなるのです。
夜間の冷え込み対策:窓辺の生存戦略

日中は窓辺でたっぷりと日光浴をさせても構いませんが、夕方以降は以下のいずれかの対策を行うことを強くおすすめします。
- 場所移動(推奨):日没とともに、窓から1メートル〜1.5メートルほど離した部屋の中央寄りや、ダイニングテーブルの上などに移動させます。床(フローリング)は冷気が溜まりやすいので、必ず台や椅子の上に置いて、床からの冷えを防ぎます。
- 断熱層を作る:毎日移動させるのが大変な場合は、窓と鉢の間に厚手のカーテン(遮光カーテンなどは断熱性が高いです)をしっかりと引き、隙間を作らないようにします。さらに、鉢の周りを段ボールや発泡スチロールの板で囲ったり、気泡緩衝材(プチプチ)を鉢に巻いたりして、冷気を物理的に遮断する工夫が有効です。
また、エアコンやファンヒーターの温風が直接当たる場所は、絶対に避けてください。暖房の風は植物にとって「極度に乾燥した熱風」であり、人間で言えばドライヤーの風を全身に浴び続けているようなものです。葉の気孔から水分が強制的に奪われ、あっという間にパリパリに乾燥してしまいます。サーキュレーターなどで部屋の空気を優しく循環させることは、温度ムラをなくし病気を防ぐ上で非常に有効ですが、風が植物に直撃しないよう、風向きを壁や天井に向けるなどの配慮が必要です。
屋外での冬越しは可能か解説

「家の中にどうしても鉢を置くスペースがない」「家族が土を室内に入れるのを嫌がる」といった事情で、屋外での冬越しを検討せざるを得ない方もいらっしゃるでしょう。結論から正直にお伝えすると、関東以北の地域(寒冷地〜中間地)において、フェアリースターの屋外冬越しは極めて困難であり、生存率は限りなく低いと言わざるを得ません。フェアリースターの原種であるニチニチソウは、一年を通して高温多湿な熱帯マダガスカルが故郷であり、日本の冬の寒さ、特に細胞を破壊する「霜」や「凍結」には全く耐性がないからです。
しかし、南関東以西の太平洋側や九州・四国の沿岸部など、冬でもめったに雪が降らず、霜も降りないような温暖な地域(暖地)であれば、いくつかの厳重な物理的対策を講じることで、生き残る可能性はゼロではありません。これはあくまで「枯れるリスクを承知の上でのチャレンジ」となりますが、私が試した中で比較的効果が高かった「鉄壁ガード術」をご紹介します。
屋外冬越しのための鉄壁ガード術
屋外で越冬させる場合、防ぐべき敵は「北風」「霜」「底冷え」「凍結」の4つです。これらを完全にシャットアウトする要塞のような環境を作る必要があります。
屋外管理の必須条件(自己責任でお願いします)
- 場所選びの徹底:北風が建物によって完全に遮られる、南向きの軒下が絶対条件です。冷たい雨や雪が当たらない場所を選んでください。
- 底冷え対策(断熱):コンクリートやタイルの上に鉢を直接置くと、地面からの猛烈な冷気で根が凍ってしまいます。必ず木製のすのこ、発泡スチロールの厚板、またはフラワースタンドなどの上に置き、地面から離してください。
- マルチング:株元の土が凍らないよう、腐葉土、バークチップ、ヤシ繊維(ココファイバー)などを厚さ3cm〜5cmほど敷き詰め、根のための布団をかけてあげます。
- 二重被覆(ダブルレイヤー):夜間は不織布や園芸用苗カバーの上から、さらに毛布や厚手のビニール袋、プチプチなどを被せて二重にします。ただし、日中に日が当たると内部が蒸し風呂状態になり枯れてしまうため、朝になったら外側の覆いを外し、通気性のある不織布だけにするなどのこまめな調整が毎日必要です。
- 断水気味に管理:植物の体内に水分が多いと、細胞液が薄まり凍りやすくなります。水を極限まで切り、樹液の濃度を高める(凝固点降下)ことで、耐寒性をアップさせます。
ここまで徹底しても、数年に一度の大寒波が襲来すれば、一晩で枯れてしまうリスクは常にあります。「もし枯れてもともと、生き残ったらラッキー」というくらいの覚悟を持って挑戦するか、やはり安全確実な室内での管理を再検討されることをおすすめします。
冬の水やり頻度と乾燥気味な管理

冬越しの失敗原因を調査すると、寒さによる凍死以上に多いのが、実は「水のやりすぎ」による根腐れです。夏の間、フェアリースターは旺盛に成長し、毎日のように水を欲しがりましたが、冬になるとその吸水量は劇的に低下します。気温が低いために蒸散(葉からの水分放出)が減り、成長もほぼ止まっているため、植物自体が水をほとんど必要としていないのです。
この生理状態を無視して、夏と同じ感覚や「土が乾いた気がする」という曖昧な感覚で水を与え続けると、鉢の中はずっと湿ったままの「過湿状態」になります。冷たい水に長時間浸かり続けた根は、酸素不足で呼吸ができずに窒息し、やがて細胞が壊死して腐ってしまいます。さらに、夜間の冷え込みで鉢内の水分が冷やされ、根に「冷水浴」をさせ続けることで、植物の体温を奪い、弱らせてしまうのです。
私は冬の間、「土の表面が完全に乾いて白っぽくなってから、さらに3〜4日、寒さが厳しい時期は1週間ほど待ってから」水やりをするようにしています。目視だけでなく、実際に指を土に第一関節くらいまで挿してみて、中までパサパサに乾いているか確認したり、鉢を持ち上げてみて「驚くほど軽い!」と感じるまで待ったりするのが確実です。「葉が少し萎れてお辞儀をしてきたかな?」というサインが出てから与えるくらいでも、冬場は決して遅くありません。むしろ、それくらいスパルタに管理した方が、根が水を求めて強く張り、耐寒性が高まります。
| 水やりの項目 | 冬の管理の鉄則 | 理由・メカニズム |
|---|---|---|
| タイミング | 土が芯まで乾いて数日後 | 常に湿っていると根が呼吸できず、土壌病原菌も繁殖しやすくなります。 |
| 時間帯 | 暖かい日の午前中(9時〜11時) | 夕方にやると夜間の冷え込みで土中の水が冷え、根を傷めます。昼過ぎだと夕方までに水が切れず凍結のリスクがあります。 |
| 水温 | 室温程度のぬるま湯(約15〜20℃) | 冷たい水道水(特に寒冷地では5℃以下になることも)は根にショックを与えます。汲み置きの水やお湯を足した水を使いましょう。 |
| 量 | 鉢底から出るまでやる必要なし | 通常は「たっぷりと」が基本ですが、乾きにくい冬はコップ半分〜1杯程度で根元を湿らせるだけの「控えめ水やり」の方が安全な場合があります。 |
そして、基本中の基本ですが、受け皿に溜まった水は必ずその場ですぐに捨ててください。これを放置すると、根腐れ一直線だけでなく、鉢周りの湿度を上げてカビの原因にもなります。数分放置するだけでも土が余分な水分を吸い戻してしまうので、徹底しましょう。
冬の肥料は不要?活力剤の活用
「なんだか葉色が悪いし、元気がないから肥料をあげて励まそう」。その親心、とてもよくわかりますが、冬のフェアリースターにとっては逆効果、場合によっては命取りになる「毒」となってしまうことをご存知でしょうか。
肥料は植物にとっての「食事(カロリー)」です。成長期にはたくさんの食事が必要ですが、活動を停止して冬眠に近い状態にある冬に無理やり食事を与えられても、植物はそれを消化吸収できません。土の中に消費されずに残った肥料分は、土壌の浸透圧を高め、逆に根から水分を奪い取る「肥料焼け(濃度障害)」を引き起こします。また、窒素分が多い肥料を与えると、植物が季節を勘違いをして無理に成長しようとし、ひょろひょろと白っぽく軟弱な芽を出してしまいます。この軟弱な組織は寒さに極端に弱く、病原菌にとっても侵入しやすい格好の餌食となってしまうのです。
そのため、冬の間(11月〜3月頃)は、固形肥料も液体肥料も基本的には一切ストップします。秋に置いた緩効性の固形肥料がまだ土の上に残っている場合は、すべて取り除いておきましょう。
活力剤は「サプリメント」として有効

肥料を与える代わりに私が積極的に活用しているのが、「リキダス」や「メネデール」といった植物活力剤です。これらは肥料成分(チッソ・リンサン・カリ)をほとんど含まず、鉄分やミネラル、アミノ酸、微量要素などを主成分としています。人間で言えば、スタミナをつける「カツ丼(肥料)」ではなく、体調を整える「ビタミン剤やサプリメント(活力剤)」のようなものです。
活力剤には、根の張りを助けたり、光合成をサポートしたり、寒さや乾燥に対する細胞のストレス耐性を高めたりする効果が期待できます。水やりの際に、規定の倍率よりもさらに薄めに希釈して与えることで、肥料焼けのリスクを冒さずに、植物の基礎体力を底上げすることができます。「肥料はNG、活力剤はOK」。この決定的な違いを覚えておくと、冬越しの成功率がぐっと上がります。
挿し木苗を作って室内で越冬させる

ここまでは親株(大きな鉢)をそのまま冬越しさせる方法をお伝えしましたが、現代の住宅事情において「大きな鉢をいくつも室内に入れるスペースがない」というのは切実な悩みです。そんな時に私が実践しているのが、秋のうちに「挿し木」を行って小さな苗を作り、省スペースで冬越しさせる「コンパクト冬越し術(バックアップ苗作り)」です。
挿し木で作った若い苗は、老化が進んだ親株に比べて細胞が若く、環境の変化に順応しやすいというメリットがあります。また、3号ポット(直径9cm)程度の小さなサイズであれば、窓辺のちょっとした隙間や、本棚の空きスペースなどでも十分に管理できます。これは単なる省スペース対策だけでなく、親株が枯れてしまった時のための「保険」としても非常に有効です。
コンパクト冬越し(挿し木)の完全スケジュール
- 適期(9月下旬〜10月上旬):気温が20℃〜25℃ある時期に行います。寒くなってからでは発根しません。
- 穂の準備:太くて元気な枝を、先端から7cm〜10cmほどの長さでカットします。下の方の葉を取り除き、水を入れたコップに1時間ほど挿してしっかりと「水揚げ」をします。
- 挿し床の準備:肥料分のない清潔な土(赤玉土小粒、バーミキュライト、または市販の挿し木専用土)を用意します。割り箸などで土に穴を開けてから、枝の切り口を傷めないように優しく挿します。
- 発根管理:直射日光の当たらない明るい日陰で、土が乾かないように霧吹きなどで管理します。順調にいけば2〜3週間ほどで発根します。
- 鉢上げと冬越し:新しい葉が展開し始めたら発根成功のサインです。根を崩さないようにそっと抜き取り、草花用培養土を入れた3号ポットに植え替えます。あとは親株と同じように室内で冬越しさせます。
「親株の冬越しに挑戦しつつ、念のために挿し木苗も数本作っておく」。この二段構えの戦略をとることで、万が一親株が冬の寒さに負けてしまっても、挿し木苗が生き残っていれば、翌春にそれを植え広げて再び楽しむことができます。場所も取らずリスクヘッジにもなる、まさに一石二鳥の賢い方法と言えるでしょう。
フェアリースターの冬越しで起きるトラブル
どれだけ教科書通りに丁寧に管理していても、植物は生き物ですから、予期せぬトラブルや変化はつきものです。葉が落ちたり変色したりするとパニックになってしまいがちですが、冷静に原因を見極めれば対処できることも多いです。ここでは、冬越し中によく遭遇する「困った症状」とその原因、そして具体的なレスキュー方法について詳しく見ていきましょう。
葉が落ちる原因は寒さか水不足か
室内に取り込んでしばらくすると、それまで緑色だった葉が黄色くなってパラパラと落ち始めることがあります。「えっ、何か間違った?」と焦りますが、まずはその落ち方と葉の状態をよく観察してみてください。これには大きく分けて2つの原因があります。
1. 環境変化による生理的な落葉(植物のリストラ)
屋外の日当たりの良い場所から、どうしても光量の落ちる室内へ移動したことで、植物は「今の少ない光量では、これだけ多くの葉を維持するエネルギーがない」と判断します。そこで、エネルギー収支を合わせるために、光合成効率の悪い古い葉や影になっている葉を自ら落とす「リストラ(自己剪定)」を行います。これは植物が生き延びるための賢い戦略であり、ある程度は仕方のないことです。茎の色が鮮やかな緑色で、先端の新芽がしっかりしていれば、過度に心配する必要はありません。落ちた葉を片付けながら見守りましょう。
2. 低温障害または水切れ
もし、窓辺で夜間に冷気に晒されている場合、寒さによるダメージ(低温障害)で葉が全体的に黄変して落ちることがあります。この場合は、冷気対策が不十分ですので、より暖かい場所への移動や断熱強化が必要です。
一方、葉が黄色くなる前に、緑色のまましなしなに萎れて、パリパリに乾燥して落ちる場合は「水不足」の可能性が高いです。冬は乾燥気味に管理するのが基本ですが、暖房の効いた部屋などでは意外と土の乾きが早く、気づかないうちに極度の乾燥状態になっていることがあります。土の中までカラカラになっていないか確認し、もし乾きすぎていたら、暖かい日の午前中にたっぷりと水を与えて様子を見ましょう。
灰色かび病を防ぐ風通しと掃除

冬の室内管理において、寒さ以上に恐ろしいのが「灰色かび病(ボトリチス)」という病気です。この病原菌は低温多湿(気温20℃前後、湿度高め)を好み、風通しの悪い場所で猛威を振るいます。まさに、冬の閉め切った室内や、保温のためのビニールカバーの中は、彼らにとって天国のような増殖環境なのです。
感染のきっかけとなるのは、多くの場合「不衛生な環境」です。枯れて落ちた葉や、咲き終わってポトリと落ちた花がらが、湿った土の上に放置されていると、そこから灰色のモコモコとしたカビが発生します。このカビが大量の胞子を飛ばし、元気な茎や葉に付着して感染を広げ、最終的には株全体を溶かすように腐らせてしまいます。一度蔓延すると治療は困難です。
サニテーション(衛生管理)で病気をブロック!
- こまめな掃除:株元に落ちた葉や花がらは、毎日チェックしてピンセットなどで丁寧に取り除きます。「見つけたら即捨てる」が鉄則です。枯れた葉は病原菌の巣窟です。
- 風の通り道を確保:サーキュレーターや扇風機を使って、部屋の空気を常に動かしておきます。ただし、植物に直接風を当てるのではなく、壁や天井に向けて風を送り、部屋全体の空気が淀まないようにするのがコツです。空気の動きがある場所では、カビの胞子は定着しにくくなります。
- ディスタンス:鉢と鉢を隙間なく並べると、その間で湿気がこもります。葉が触れ合わない程度に間隔を空けて置きましょう。
薬剤を使う場合は、予防効果のある「ダコニール1000」や、治療効果も期待できる「ベンレート水和剤」などが有効ですが、室内での散布は抵抗がある場合も多いでしょう。まずは環境を整え、カビの発生源を断つことが最大の防御策となります。
枯れた株の復活判断と確認方法

冬の厳しい寒さや乾燥により、葉がすべて落ちてしまい、ただの茶色い棒のような姿になってしまった…。これはもう枯れてしまったのでしょうか?実は、まだ諦めるのは早いです。フェアリースターを含む低木状の性質を持つ植物は、地上部の葉がなくなっても、茎の内部と根が生きていれば、春になって暖かくなると再び芽吹く強靭な生命力を持っています。
本当に枯死してしまったのか、それとも休眠状態でじっと耐えているだけなのかを見極める方法は、「茎の状態」を確認することです。
生存確認チェックリスト
- 茎の色:茎が緑色を保っていれば、光合成能力が残っており、確実に生きています。
- 茎の弾力:見た目が茶色く木質化していても、指で軽く曲げてみて弾力があり、しなるようであれば、内部の組織は生きています。逆に、ポキッと簡単に折れたり、スカスカで指で潰れてしまったりする場合は、その枝はすでに枯れています。
- 断面チェック:どうしても分からない場合は、枝の先端を少しだけハサミで切ってみてください。断面(形成層)が瑞々しい緑色や白っぽさがあれば生存、茶色く乾いていれば枯死です。
もし生きている反応があれば、葉がなくても水やりを(蒸散がないため頻度はさらに控えめにして)続けましょう。春になり、気温が20℃を超えてくる頃、枯れ木のように見えた枝の節々から、小さな緑色の芽がプクリと顔を出した時の感動は、冬越しの苦労をすべて吹き飛ばしてくれます。その瞬間まで、信じて待ちましょう。
日当たり不足による徒長の対策
暖かい室内で管理していると、植物は「春が来た」と勘違いをして成長を始めようとすることがあります。しかし、室内は屋外に比べて圧倒的に光量が足りません。その結果、植物は光を求めて茎をひょろひょろと長く伸ばしてしまいます。これを「徒長(とちょう)」と呼びます。
徒長した株は、節の間隔が間延びして見た目が悪くなるだけでなく、細胞壁が薄く組織が軟弱で病気にかかりやすくなり、自重で倒れやすくなります。「格好悪いから切りたい」と思うかもしれませんが、冬の間にバッサリ切るのは傷口のリスクが高いので我慢しましょう。徒長した茎にも葉がついていれば、それは貴重な光合成工場です。
対策としては、できるだけ明るい窓辺に置くことはもちろんですが、最近普及している「植物育成用LEDライト」を活用するのも非常に有効です。アマゾンやホームセンターなどで数千円で手に入るスポットライト型のLEDを、日中8時間〜10時間ほど照射してあげるだけで、光量不足を補い、徒長を抑え、がっしりとした健康な株を維持することができます。もし徒長してしまっても、春になって外に出すタイミングでしっかりと切り戻しを行えば、そこから脇芽がたくさん出て、またこんもりとした美しい姿に仕立て直すことができます。焦らず、春を待ちましょう。
来年も楽しむフェアリースターの冬越し
フェアリースターの冬越しは、正直なところ「簡単」とは言えません。温度管理や水やりの加減など、少しの手間と毎日の気配りが必要です。「一年草」として割り切って毎年新しい苗を買い換えるのも一つの賢い選択ですが、手をかけて厳しい冬を越させた株には、買ったばかりの苗にはない愛着と、太く育った幹ならではの風格、そして圧倒的な花数が待っています。
あまり神経質になりすぎて、毎日ハラハラしながら管理するのは精神衛生上よくありません。「植物の本来持っている生命力を信じて、最低限の環境だけ整えてあとは見守る」くらいのスタンスが、案外うまくいったりするものです。もし失敗しても、それはまた次のガーデニングへの貴重な経験値になります。ぜひ、この記事を参考に、無理のない範囲で冬越しチャレンジを楽しんでみてください。(出典:サントリーフラワーズ『フェアリースター』公式ページ)
この記事のまとめ
- フェアリースターの冬越しは室内管理が基本であり、「光」と「10℃以上の温度」の確保が成功の絶対条件となる
- 剪定は植物の活性が高い「10月中旬」までに済ませ、寒くなってからの強剪定は枯死の直接原因になるため避ける
- 室内に取り込む目安は最低気温10℃。昼夜の温度差を防ぐため、夜間の窓辺の冷え込みにはカーテンや移動で対策する
- 屋外での冬越しは関東以北では困難だが、暖地であれば軒下や二重被覆、マルチングで生存する可能性はある
- 冬の水やりは土が完全に乾いてから数日待つ「乾燥気味」を徹底し、根腐れと凍結を防ぐ
- 水やりの時間は暖かい午前中を選び、冷たい水道水ではなく室温程度の「ぬるま湯」を与える
- 冬の間は肥料を与えると逆効果になるためストップし、代わりに活力剤で根のストレスを軽減する
- 親株の冬越しスペースがない場合は、秋のうちに挿し木苗を作って「コンパクト冬越し」でリスク分散する
- 葉が落ちてもパニックにならず、茎の色や弾力を確認して生存していれば諦めずに管理を続ける
- 灰色かび病を防ぐため、落ち葉や花がらはこまめに除去し、サーキュレーターで空気を循環させて湿度を下げる
- 徒長しても冬の間は切らずに温存し、春暖かくなってから切り戻して形を整える
- 春に新芽が出れば冬越し成功。一回り大きな株に成長し、より多くの花を楽しめる喜びが待っている
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