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紫蘭花が終わったらどうする?来年も咲かせる手入れと育て方

紫蘭花が終わったら1  庭で満開に咲き誇る美しい紫蘭(シラン)の花と健康な葉の様子。 紫蘭
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こんにちは、My Garden 編集部です。

春の庭を鮮やかに彩ってくれた紫蘭ですが、花がしおれてくると、この後どうすればいいのかなと迷ってしまいますよね。紫蘭花が終わったら、そのまま放っておいても大丈夫なのかな、それとも何か特別な剪定や手入れが必要なのかなと不安に思う方も多いかもしれません。実は、花後のケアは来年も綺麗な花を咲かせるためのとっても大切なステップなんです。花茎を切る場所や、葉をいつまで残しておくべきか、さらにお礼肥の与え方や植え替えの時期など、この時期に気になるポイントはたくさんありますよね。この記事では、私が実際に育てている中で感じたコツや、紫蘭の成長サイクルに合わせたお手入れ方法を分かりやすくお伝えします。正しい知識を知ることで、毎年元気に花を咲かせてくれるようになりますよ。

この記事のポイント

  • 花が終わった後にすぐ行うべき花茎の剪定方法
  • 翌年の開花エネルギーを蓄えるための葉の管理術
  • 株を弱らせないための肥料選びと与えるタイミング
  • 失敗しないための株分けや冬越しの具体的な手順
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紫蘭花が終わったら最初に行う花茎の剪定と管理

紫蘭花が終わったら2  花が終わり、茶色くしおれた紫蘭の花茎と、種ができ始めた様子。

紫蘭の花がひと通り咲き終わると、植物の内部では大きな変化が起きています。これまでは「花を咲かせること」に全力を注いでいましたが、これからは「次世代の準備」へとシフトしていく時期なんです。このタイミングでの介入が、来年の庭の景色を左右すると言っても過言ではありません。まずは、最も基本的で重要な「カット」の作業から深掘りしていきましょう。

花茎を切る場所と生理的な理由

紫蘭の花が最後のひとつまでしぼんできたら、あるいは全体的に観賞価値がなくなったと感じたら、迷わず花茎を根元から切り取ってください。 多くの初心者が「自然に枯れるまで待ったほうがいいのかな?」と考えてしまいがちですが、園芸的な視点で見ると、これはあまりおすすめできません。植物は受粉が成功すると、すぐに種子を作る「生殖生長」というモードに切り替わります。この種子形成には、私たちが想像する以上に膨大なエネルギーが消費されるのです。

紫蘭を育てる楽しみが「毎年の美しい花」にあるのであれば、種に栄養を取らせるのではなく、土の下に隠れている偽球茎(バルブ)に栄養を戻してあげることが何よりも優先されます。バルブは紫蘭にとっての栄養タンクであり、ここがどれだけパンパンに太るかが、来年の花芽の数や大きさを決定づけます。「花が終わったらすぐ切る」という行為は、いわば植物のエネルギー貯金を強制的に増やすための戦略なのです。

私自身の経験からも、早めに花茎を切った株と、そのまま実をつけさせてしまった株では、翌年の芽出しの勢いが明らかに違います。種ができると、バルブはスカスカになりやすく、次の春にひょろひょろの花しか咲かないことも。そうならないためにも、花が終わるサイン(花びらが茶色く丸まってきた頃)を見逃さず、ハサミを入れてあげましょうね。

具体的なカットの手順と注意点

紫蘭花が終わったら3 紫蘭の花茎を株元の地面すれすれの位置で剪定ばさみを使って切り取る作業の様子。

切る場所は、新芽やバルブの頂部を傷つけない範囲で、できるだけ地面に近い位置が理想的です。中途半端に数センチ茎を残してしまうと、その残った部分が梅雨の湿気で腐り、そこから病原菌がバルブ本体に侵入してしまうリスクがあります。また、手で茎を掴んで上に引き抜こうとするのは絶対に厳禁。紫蘭の茎は意外と丈夫で、バルブと強く繋がっているため、無理に引くとバルブごと土から浮き上がってしまい、繊細な根をズタズタに引きちぎってしまうことになりかねません。必ずよく研いだ清潔な刃物を使用しましょうね。

花が終わった直後の剪定は「来年のための投資」です。見た目が少し寂しくなるかもしれませんが、その分、地下のバルブは一生懸命栄養を蓄え始めます。ハサミを入れるときは、来年の春の景色を想像しながら、感謝の気持ちを込めてカットしてあげてください。

剪定に使うハサミの消毒と衛生管理

紫蘭花が終わったら4 紫蘭の剪定に使用するハサミの刃先を火であぶって消毒している様子。

紫蘭の手入れにおいて、私が一番口を酸っぱくして言いたいのが、使用する道具の衛生管理についてです。ラン科の植物は、一度感染すると治療が極めて困難な「ウイルス病」のリスクと常に隣り合わせです。代表的なものにORSV(オドントグロッサム・リングスポットウイルス)やCymMV(シンビジウム・モザイクウイルス)などがありますが、これらは剪定時のハサミに付着した汁液を介して、健康な株へとあっという間に広がってしまいます。

「うちの紫蘭は元気そうだから大丈夫」と油断してはいけません。ウイルスは潜伏期間があることも多く、見た目には分からなくても保菌している場合があります。複数の株を順番に剪定していく際に、ハサミを介してウイルスを媒介してしまうのは、園芸家として最も避けたい事態ですよね。そのため、一株切り終えるごとにハサミの刃先を消毒するという習慣をぜひ取り入れてください。これは紫蘭だけでなく、クリスマスローズやバラなど他の植物を守るためにも非常に大切なマナーです。

消毒の具体的な方法としては、以下のいずれかが効果的です。

  • ライターやバーナーの火で刃先を数秒あぶる(フレーム滅菌)
  • 第三リン酸ソーダの10%水溶液に浸す
  • 高濃度のエタノール(70%以上)で丁寧に拭き取る

家庭で一番手軽なのはアルコール消毒や火であぶることかなと思います。こうしたひと手間が、大切な紫蘭を長く守り続けることに繋がります。最近は手指用のアルコールスプレーをハサミに吹き付けるだけでもかなり効果が期待できます。

また、切り口そのものを清潔に保つことも重要です。切れ味の悪いハサミで茎を潰すように切ってしまうと、細胞が破壊されてカルス(癒傷組織)の形成が遅れ、そこからボトリチス菌(灰色かび病)などのカビが繁殖しやすくなります。スパッと鮮やかな切り口を作ることで、植物自身の回復力を助けてあげましょう。道具を大切に扱うことは、植物を大切に扱うことそのものだと、私はいつも感じています。

光合成を行う葉を切ってはいけない理由

紫蘭花が終わったら5 花茎を剪定した後、光合成のために残された健康で青々とした紫蘭の葉。

花が終わった後の紫蘭の葉は、人によっては「ただの草に見えて美しくない」と感じるかもしれません。しかし、緑色の健康な葉は、秋に自然に枯れるまで絶対に切ってはいけません。 むしろ、花が散ってからの数ヶ月間こそが、葉の「本番」ともいえる時期なのです。この期間、葉は「生産工場」としてフル稼働しています。この重要性を理解すると、葉を大切に扱う気持ちがもっと湧いてくるはずです。

植物の生理学的なメカニズムを考えると、葉は太陽光を浴びて二酸化炭素と水から炭水化物を作り出す唯一の器官です。この光合成によって生み出された「糖」が、導管を通って地下のバルブへと運ばれ、蓄積されていきます。もしここで葉をバッサリ切ってしまうと、紫蘭はエネルギーの供給源を失い、バルブを太らせることができなくなります。その結果、翌年の春にはひょろひょろとした元気のない芽しか出ず、最悪の場合は開花せずに株がどんどん衰退してしまうという悲しい結果を招いてしまいます。

私たちがすべきことは、葉を切ることではなく、一枚でも多くの葉を、できるだけ長く、健康な状態で維持することです。葉が瑞々しい緑色をしているうちは、一生懸命に来年の花の準備をしているんだな、と温かい目で見守ってあげてくださいね。もし黄色く枯れてきた葉を見つけたら、それはもう役割を終えたサインなので、その時だけ根元から取り除けば大丈夫です。葉の寿命を全うさせてあげることが、翌年の開花を100%保証する唯一の方法と言っても過言ではありません。葉の管理は「静かなる準備期間」として楽しんでみてください。

夏の葉焼けを防ぐ日陰の活用と置き場所

紫蘭花が終わったら6 夏の強い日差しから紫蘭を守るために寒冷紗(遮光ネット)がかけられている庭の様子。

紫蘭は自生地では明るい林の縁などに生えていることが多く、適度な日差しを好みます。しかし、日本の近年の夏はあまりにも過酷です。最高気温が35度を超えるような猛暑日や、刺すような強烈な西日に長時間さらされると、紫蘭の葉の組織が熱に耐えきれず破壊されてしまいます。これが「葉焼け」と呼ばれる現象です。葉の一部が白っぽく抜けたり、茶色くカサカサになったりしたら、それは植物からの「もう限界だよ!」というメッセージです。特に鉢植えは地面からの反射熱の影響も受けやすく、非常に厳しい環境になりがちです。

葉焼けした部分は二度と元の緑色には戻りませんし、その面積分だけ光合成の効率が落ちてしまいます。そこで、真夏の間は置き場所を工夫してあげましょう。鉢植えであれば、午前中の柔らかい日が当たり、午後からは日陰になるような場所、あるいは木漏れ日が差すような涼しい木陰がベストポジションです。コンクリートの上に直接置くと照り返しで鉢内の温度が上がりすぎてしまうので、棚の上に置いたり、すのこを敷いたりするのも効果的ですよ。私はよく、他の背の高い植物の陰になる場所に移動させて、自然な日除けを作っています。

地植えで場所が動かせない場合は、市販の「寒冷紗(かんれいしゃ)」や「遮光ネット」を使いましょう。遮光率50%程度のものを選んで、株全体をふんわり覆ってあげるだけで、体感温度がぐっと下がり、葉のダメージを大幅に軽減できます。風通しが悪くならないように、ネットと植物の間に少し空間を作るのがコツです。紫蘭だけでなく、お庭全体の夏越しがぐっと楽になりますよ。

暑さが和らぐ9月頃までは、人間も植物も「無理をしない」ことが大切です。葉のコンディションを保つことは、来年の花芽を焼死させないことと同義です。日々の天気予報をチェックしながら、最適な場所を探してあげてくださいね。少しの手間で、秋まで美しい葉を保つことができますよ。

翌年の花芽を育てるお礼肥と肥料の選び方

紫蘭花が終わったら7 花後の紫蘭の株元に与えられた緩効性化成肥料(お礼肥)の様子。

「お礼肥(おれいごえ)」という言葉を聞いたことがありますか? 文字通り、花を咲かせて目を楽しませてくれた植物に対して、消耗した体力を回復させるために与える肥料のことです。紫蘭にとってのこの時期は、人間に例えるなら「出産後の回復期」のようなもの。適切な栄養補給が、その後の健康状態を大きく左右します。花が終わってから本格的な夏が来るまでの数週間は、バルブが最も栄養を欲しがる「ゴールデンタイム」なのです。

時期は、花が終わった5月下旬から、梅雨明け前の6月中旬頃までが目安です。ここで与える肥料の成分バランスが非常に重要になります。植物の肥料には主に「窒素(N)」「リン酸(P)」「カリ(K)」の三要素がありますが、この時期の紫蘭にはリン酸とカリが多めの配合を選んであげましょう。窒素が多すぎると、葉ばかりが異常に茂ってしまい、軟弱な株になって病気を招きやすくなる「つるぼけ」の状態になることがあるからです。リン酸は「花肥」とも呼ばれ、来年の花芽を形成するのに不可欠な成分なんですよ。

おすすめの肥料タイプ

使い勝手が良いのは、ゆっくり長く効く「緩効性化成肥料」の置き肥です。洋ラン専用として市販されているものは、紫蘭に必要な微量要素もバランスよく含まれているので失敗がありません。さらに、もっと積極的に成長を促したい場合は、10日に1回程度のペースで薄めの「液体肥料」を水やり代わりに併用するのもいいですね。ただし、暑さが本格化する7月以降は、根が休眠状態に入ることがあり、肥料を与えすぎると逆に根を傷める「肥料焼け」を起こすので注意してください。肥料の基礎を学ぶことは、植物との対話の質を高める一歩になります。

肥料の基本的な選び方や成分の詳しい働きについては、(出典:農林水産省『肥料の基礎知識』)を参照すると、より深い公的な知見を得ることができます。自分の庭に合った肥料を正しく選べるようになると、園芸がもっと論理的で楽しくなりますね。私はいつも肥料の袋の裏面をじっくり読み比べて、一番良さそうなものを選ぶ時間が結構好きです。

梅雨から夏にかけての適切な水やり

花が終わった後の紫蘭は、気温の上昇とともに蒸散量(葉から水分が出ていく量)が増えるため、水分管理が忙しくなります。しかし、ただ闇雲に水をあげればいいというわけではありません。特に気をつけたいのが「梅雨」と「真夏」の2つのステージです。この時期の水やりの成否が、根の健康状態、ひいては秋までの株の充実に直結します。植物は水によって栄養を運び、また自らの熱を逃がしているのです。

梅雨時期は、雨が続くことで土が常に湿った状態になりがちです。紫蘭は湿り気を好む一方で、新鮮な空気が根に届かない「窒息状態」を嫌います。鉢植えの場合、長雨に当てすぎると土の中の酸素が欠乏し、根腐れを引き起こす原因になります。雨が何日も続く予報の時は、軒下に移動させるなどの対策をして、土に「乾く時間」を作ってあげることが大切です。鉢を持ち上げて重さを確認する癖をつけると、水が必要かどうかが感覚的に分かるようになりますよ。土の表面が乾くまで、次の水やりはグッと我慢です。

そして梅雨が明けると、今度は乾燥との戦いです。夏場の水やりは、時間帯が命! 「早朝」または「日が落ちて涼しくなった夕方」に行ってください。昼間の炎天下で水をあげると、鉢の中の水がお湯のように熱くなり、デリケートな根を文字通り「煮て」しまうことになります。これは植物にとって致命的なダメージです。鉢を持ってみて軽く感じたり、土の表面が白っぽく乾いていたりしたら、鉢底から水が流れ出るくらいたっぷりと与えましょう。地植えの場合は、根がしっかり張っていれば降雨だけで耐えられることも多いですが、一週間以上雨が降らないような乾燥が続く時は、夕方にたっぷりとマルチングの隙間から染み込ませるように灌水してあげてくださいね。水やりは、植物との大切なコミュニケーションの時間です。

紫蘭花が終わったら知っておきたい株分けと冬越し

紫蘭の魅力は、なんといってもその「強健さ」と「繁殖力」にあります。上手に管理していれば、驚くほど元気に株が広がっていきます。でも、元気すぎて増えすぎた時にどうすればいいのか、また冬の間はどうやって過ごさせればいいのか、先回りして知っておくことで、将来の「どうしよう!」を防ぐことができます。ここからは少し長期的な視点での管理についてお話しします。

根詰まりを防ぐ植え替えの時期と土の選び方

紫蘭花が終わったら8 鉢から抜いた紫蘭の根鉢。根がびっしりと回って根詰まりを起こしている状態。

紫蘭は地生ランの中でも特に根が太く、生育が旺盛な植物です。鉢植えで育てている場合、2年もすれば鉢の中が根とバルブでパンパンに詰まってしまいます。これをそのまま放置すると、新しい根が伸びるスペースがなくなり、養分や水分を吸い上げる力が弱まってしまいます。「最近、花の数が減ったな」「芽が出る場所が鉢の縁に偏っているな」「水がなかなか吸い込まれなくなったな」と感じたら、それは根詰まりのサインです。鉢を割る勢いで根が張ることもあるので、定期的なチェックが欠かせません。

植え替えに最も適した時期は、厳密には「春の芽出し前(3月頃)」または「秋の休眠前(10月〜11月)」です。花が終わった直後の5月〜6月も、不可能ではありませんが、直後に日本の猛暑が控えているため、植え替えのダメージを引きずったまま夏を迎えるのはリスクが高いんです。ですから、花が終わった後の今の時期は「よし、今年の秋か来年の春に植え替えよう!」という計画を立てるにとどめておくのが一番安全かなと思います。私はいつもカレンダーに「紫蘭の植え替え時期!」と書き込んで忘れないようにしています。

土については、紫蘭はあまり土質を選びませんが、基本的には「水はけが良いけれど適度な保水力もある」という贅沢な環境を好みます。私がよく使う配合は、赤玉土(小粒)5:鹿沼土(小粒)2:腐葉土3の割合です。水はけを重視しつつ、腐葉土でバルブを包み込むようなイメージですね。初心者の方であれば、こちらの「プランターの土作りで花を長く楽しむ!基本配合と成功のコツ」でも紹介している基本の配合を参考にしてみてください。清潔で新しい土に更新してあげるだけで、紫蘭は見違えるほど元気になります。植え替えは、植物にとっての「引っ越し」のようなもの。快適な住まいを用意してあげましょう。

紫蘭の年間管理スケジュール表
季節 主な管理・作業内容 水やりのポイント
3-4月 芽出し・植え替え・株分けの適期 土が乾いたらたっぷりと
4-5月 開花期・観賞を楽しむ 花に水がかからないように
5-6月 初夏 花茎切り・お礼肥(おれいごえ) 梅雨の過湿に注意
7-9月 日除け・葉焼け防止・猛暑対策 早朝または夕方にたっぷりと
10-11月 植え替え・株分け(秋の適期) 徐々に回数を減らしていく
12-2月 休眠期・地上部の枯れ葉取り 月に1〜2回、晴れた日の午前に

確実に増やすための正しい株分けの方法

紫蘭花が終わったら9 紫蘭の株分け作業の様子。3つ以上のバルブをつなげて分割された株が並んでいる。

株が大きくなりすぎて手に負えなくなったり、お裾分けしたくなったりした時は「株分け」の出番です。紫蘭は地下でバルブが数珠つなぎになって増えていくので、その繋がりを断ち切ることで新しい個体として独立させることができます。一度コツを掴めば、どんどん仲間を増やすことができますよ。私も最初はドキドキしながらハサミを入れましたが、紫蘭の生命力の強さに助けられて、今ではたくさんの鉢に増やすことができました。

株分けの際は、まず鉢から株を抜き、古い土を優しく落としてバルブの様子をよく観察します。ハサミを入れる時の絶対的なルールは、「一株につき、リードバルブ(今年の新芽がついているバルブ)を含めて3つ以上のバルブをつなげておく」ことです。もしバルブを1つずつバラバラにしてしまうと、それぞれの個体が持っている蓄えが少なすぎます。バルブの中には水分も栄養も詰まっていますが、1球だけでは成長の勢いが極端に落ち、最悪の場合、数年開花しないこともあります。3つ以上セットにすることで、お互いに助け合いながらスムーズに新しい環境に馴染むことができます。

また、葉がついていない古いバルブ(バックバルブ)も、実は水分や栄養を蓄えた重要な予備タンクです。見た目が少しシワシワでも、中身が腐っていない限りは捨てずに新しいバルブと一緒に植え付けてあげてください。これが、確実に来年の花を咲かせるための秘訣です。ハサミの切り口には、癒合剤(トップジンMペーストなど)を塗っておくと、より完璧なケアになりますよ。丁寧に分けた株が、新しい鉢で元気に芽を出す姿を見るのは、園芸家として至福の瞬間です。お友達にプレゼントする時も、この「3球ルール」を教えてあげると親切ですね。

種ができる前に茎を切るメリットと種まきの実態

紫蘭の花が終わった後に放っておくと、ラグビーボールのような形をした実(鞘)がつくことがあります。秋になるとこれが茶色く割れ、中には数万から数十万という気が遠くなるほどの微細な種が入っています。一見、「これを蒔けばもっと増やせるかも!」とワクワクするかもしれませんが、実は紫蘭の種まきは、一般家庭では非常にハードルが高いんです。私もかつて挑戦してみたことがありますが、結果は惨敗でした。

ラン科の植物の種には、自力で発芽するための「胚乳(栄養分)」がほとんどありません。自然界では「ラン菌」という特定の菌と共生し、そこから栄養をもらうことで初めて発芽できるという非常に特殊な仕組みを持っています。家庭の環境で適当にパラパラと蒔いても、適切な菌がそこにいなければ、芽が出る確率は極めて低いのが実情です。プロの生産者は「無菌播種」という、栄養分を配合した寒天培地の上で育てる特殊なラボ技術を使います。種から育てようとすると、開花までに3〜5年もかかってしまいます。

ですから、種を採る明確な目的がないのであれば、やはり「実ができる前に茎を切る」のがベスト。種を作るのに使うエネルギーを、すべてバルブの肥大に回してあげる方が、結果として株が早く大きくなり、翌年の開花も確実になります。「選べるなら、確実なバルブの成長を!」というのが、紫蘭栽培の鉄則ですね。もし実がついてしまったら、それは自然の不思議を観察するチャンスとして一つだけ残し、あとは早めにカットすることをおすすめします。その潔さが、来年の爆発的な開花を呼ぶのです。

地上部が枯れた後の冬越し対策とマルチング

紫蘭花が終わったら10 冬越しのために枯れた紫蘭の株元に腐葉土でマルチング(防寒対策)が施されている様子。

11月も後半になると、あれほど青々としていた紫蘭の葉も次第に黄色くなり、やがて茶色く枯れていきます。初めて育てる方は「枯らしてしまった!」と驚くかもしれませんが、安心してください。これは紫蘭が寒い冬を乗り切るために自ら地上部を捨てて、地下のバルブだけで眠りにつく「休眠」という自然なプロセスです。枯れた葉は放っておくと病原菌の温床になったり、害虫の隠れ家になったりするため、地際で丁寧にカットして周囲を掃除してあげましょう。掃除が終わると、土の下でじっとしているバルブに「おやすみなさい」と声をかけたくなります。

紫蘭は日本の気候によく馴染んでおり、寒さには非常に強い部類に入ります。マイナス3度から5度程度までは耐えられると言われていますが、地面がカチカチに凍結してバルブが直接凍ってしまうと、細胞が破壊されて腐ってしまうことがあります。特に関東以北の寒冷地や、強い寒風が吹き抜けるような場所では、ちょっとした防寒対策をしてあげましょう。株元に腐葉土バークチップを5cmほど厚めに敷き詰めるマルチングをしてあげるだけで、地温が保たれ、バルブを凍結から守ることができます。雪が多い地域では、雪そのものが断熱材になることもありますが、基本的には凍らせないことが肝心です。

鉢植えの場合は、冬の間は日当たりの良い軒下へ。風にさらされすぎるとバルブが乾燥して萎びてしまうので、北風が直接当たらない場所が理想です。休眠中もバルブは生きていますので、土がカラカラに乾ききらない程度に、月に1〜2回は晴れた日の午前中に少量の水を与えて「最低限の潤い」を保ってあげてくださいね。鉢が軽くなりすぎないよう注意しましょう。春になって、この乾いた土からポコッと新芽が顔を出した時の感動は、冬を一緒に乗り越えた人だけの特権です。

紫蘭花が終わったら見直すべき年間の育成計画

紫蘭の栽培は、一年を通したサイクルで見るととても理にかなっています。花が終わった今の時期にしっかりとケアをすることで、秋のバルブ充実、冬の休眠、そして春の劇的な芽出しへと繋がっていきます。園芸の醍醐味は、こうした植物のバイオリズムに自分自身の生活を少しずつ重ね合わせていくことにあるのかな、と私は思います。季節ごとに必要な手助けをしてあげることで、植物は期待以上の美しさで応えてくれます。

もし、自分の庭の紫蘭が「あまり増えないな」とか「葉がすぐに黄色くなるな」と感じているなら、それは水やりや肥料のタイミング、あるいは置き場所のどこかに改善のヒントがあるはずです。この記事の内容をベースに、ぜひあなた自身の庭の環境を観察してみてください。同じ「紫蘭」でも、植えられている場所の風通しや日照条件で、微妙に手入れの仕方は変わってきます。毎日少しずつ表情を変える紫蘭を見守る時間は、きっと心豊かなひとときになるはずです。園芸に「正解」は一つではありませんが、植物の声を聴こうとする姿勢が一番大切です。

最後に、紫蘭を含む様々な植物の健康を維持するためには、季節ごとの正しい環境作りが欠かせません。正確な情報は信頼できる園芸店や専門家の方と共有することで、より確実な解決策が見つかりますよ。それでは、来年の春、あなたの庭にまた美しい紫色の花がたくさん咲くことを、編集部一同心から応援しています!

この記事の要点まとめ

  • 紫蘭の花が枯れ始めたら花茎を早めに切り取る
  • 花茎のカットはバルブの栄養蓄積を優先するため
  • 剪定時は清潔なハサミを使いウイルス感染を防ぐ
  • 緑色の葉は光合成に不可欠なので秋まで残す
  • 夏場の直射日光は葉焼けの原因になるので半日陰へ
  • お礼肥は5月下旬から6月頃に与えるのが効果的
  • バルブを太らせるためにリン酸多めの肥料を選ぶ
  • 真夏の高温期は肥料を控えて根への負担を減らす
  • 水やりは土が乾いてからたっぷりと与えるのが基本
  • 植え替えの適期は新芽が動く春か休眠前の秋
  • 株分けはバルブを3つ以上つけて切り分ける
  • 種から育てるのは難しいため株分けで増やす
  • 冬の枯れ葉は地際から取り除いて清潔を保つ
  • 寒冷地では冬の凍結対策としてマルチングを行う
  • 紫蘭花が終わった後の手入れが翌年の開花を左右する

 

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