こんにちは、My Garden 編集部です。
「つる性植物の女王」と称されるクレマチス。春のバラシーズンに合わせて華やかに咲き誇る姿や、秋の庭をしっとりと彩る姿に憧れて、「いつかは自分の手で育ててみたい」と思っている方は多いのではないでしょうか。しかし、いざ調べ始めると「剪定の仕方が種類によって違う」「突然枯れることがある」「冬越しが難しそう」といった情報が目に入り、「私にはハードルが高すぎるかも…」と二の足を踏んでしまっている方も少なくないはずです。
特に初心者の皆さんを悩ませるのは、「いつ、どこを切ればいいのか分からない」という剪定の複雑さと、「大切に育てていたのに急に枯れてしまった」という立ち枯れへの恐怖心でしょう。でも、安心してください。実は、数あるクレマチスの中には、そうした難しいルールを一切無視できる「育てやすい最強の系統」が存在します。さらに、鉢植えでも管理しやすく、基本の「植え付けルール」さえ守れば、失敗のリスクを劇的に減らすことができるのです。
この記事では、園芸初心者の皆さんが安心してクレマチスデビューを飾れるよう、四季咲き品種の選び方から、失敗しないための具体的な栽培テクニックまで、私の経験をもとに徹底的に解説します。これを読めば、きっとあなたも「これなら私にもできる!」と自信を持って苗を手に取ることができるようになるはずです。
この記事のポイント
- 初心者が選ぶべき剪定が簡単な新枝咲き系統とおすすめ品種
- 失敗を防ぐために最も重要な植え付け時の深植えテクニック
- 四季咲き性を最大限に引き出すための日当たりと肥料管理
- 立ち枯れ病や害虫トラブルへの具体的な予防と対処法
クレマチスの四季咲き品種は初心者にこそおすすめな理由
「クレマチスは上級者向けの花」というイメージを持っている方も多いかもしれませんが、実は四季咲きの品種こそ、これからガーデニングを始める方にぴったりの植物なんです。一季咲きの植物は、一度花が終わると翌年まで葉っぱだけの状態が続きますが、四季咲き品種はその名の通り、春から秋まで繰り返し花を楽しむことができます。しかも、近年改良が進んでいる四季咲き品種の多くは、病気に強く回復力が高いという特徴を持っています。ここでは、初心者の皆さんが最初に知っておくべき系統の選び方や、絶対に失敗しないための品種選びについて詳しくお話しします。
育てやすい最強の系統は新枝咲きにある

クレマチスには世界中で数千を超える品種が存在し、その多様さゆえに「どれを選べばいいのか分からない」と悩んでしまうのが最初のハードルです。しかし、初心者が四季咲き栽培を成功させるための最大のカギは、個々の品種名よりも先に「系統(グループ)」という大きな枠組みを理解することにあります。私が自信を持っておすすめするのは、ズバリ「新枝咲き(しんえださき)」と呼ばれるタイプです。
クレマチスの開花習性には、大きく分けて「旧枝咲き」「新枝咲き」「新旧両枝咲き」の3タイプがあります。例えば、春に一斉に壁面を覆い尽くすように咲く「モンタナ系」などに代表される「旧枝咲き」は、前年に伸びた古い枝に花芽を付ける性質があります。そのため、冬の間に「邪魔だから」といってツルを切ってしまうと、翌年の花芽ごと切り落としてしまうことになり、春になっても全く花が咲かないという悲劇が起こりえます。また、剪定位置の見極めにもある程度の経験と知識が必要で、これが「クレマチスの剪定は難しい」と言われる最大の原因となっています。
対して、「新枝咲き」の最大のメリットは、その名の通り「その年の春に伸びた新しい枝(新梢)に花が咲く」という極めてシンプルな性質にあります。新枝咲きの品種は、冬になると地上部の葉や茎が枯れ込みますが、春になれば地面から新しい芽がタケノコのように勢いよく出てきます。つまり、冬の間は地上部に生きている枝を残す必要がほとんどなく、地際近くでバッサリと剪定してしまっても全く問題がないのです。
「冬にどこで切ればいいのか悩む必要がない」というのは、初心者にとって計り知れない安心材料です。間違って花芽を切ってしまうリスクが構造上ほぼゼロであり、適当に切っても春になれば必ず新芽が出て花を咲かせてくれます。さらに、新枝咲きの品種群(ビチセラ系、インテグリフォリア系、テキセンシス系など)は、原種に近い強健さを残しており、病害虫に対する抵抗力が強いものが多く、生育も極めて旺盛です。万が一、病気などで地上部が枯れてしまっても、株元から新しい枝を吹き返して復活する「回復力」の高さも、私が初心者の皆さんにこの系統を強く推す理由の一つです。
覚えておきたい「新枝咲き」の主要3系統
- ビチセラ系(Viticella):小輪〜中輪で多花性。暑さ寒さに強く、乾燥にもある程度耐えるため、最も育てやすいと言われる「最強の初心者向け系統」です。
- インテグリフォリア系(Integrifolia):木立性から半つる性で、ツルが絡まりにくく扱いやすいのが特徴。四季咲き性が非常に強く、花後の切り戻しで次々と咲きます。
- テキセンシス系(Texensis):チューリップ形やベル形の可愛い花が特徴。うどんこ病に少し注意が必要ですが、非常に人気があります。
鉢植えでも楽しめる四季咲き品種の魅力
「うちはマンションだから広い庭がないし…」と諦めていませんか?実は、四季咲きの新枝咲き品種は、地植えだけでなく鉢植え栽培にも非常に向いています。むしろ、鉢植えだからこそ享受できるメリットも数多く存在します。
まず最大の魅力は、季節や天候に合わせて「環境を最適化できる」という点です。クレマチスは日光を好みますが、近年の日本の猛暑、特にコンクリートの照り返しが厳しい真夏の環境は、植物にとって過酷すぎることがあります。地植えでは一度植えてしまうと移動できませんが、鉢植えであれば、真夏は西日を避けた涼しい半日陰へ、台風の際は風の当たらない軒下へ、そして冬は日当たりの良い南側へと、その時々でベストな環境へ避難させてあげることができます。これにより、立ち枯れや根腐れといったトラブルのリスクを大幅に減らすことが可能です。
また、新枝咲き品種は冬に地上部をバッサリと剪定するため、オフシーズンである冬の間は、鉢植えの姿が非常にコンパクトになります。枯れたツルがフェンスに絡まったまま残ることもなく、鉢をバックヤードや棚の下などに片付けておくことができるので、限られたベランダのスペースを有効活用できます。春になれば新しいオベリスクや支柱をセットして、気分一新でスタートできるのも気持ちが良いものです。
さらに、鉢植え栽培では土壌の管理が容易であることも見逃せません。クレマチスは水はけと水持ちの良い土を好みますが、庭の土質を改良するのは重労働です。鉢植えなら、市販されている「クレマチス専用培養土」を使用することで、最初からプロが配合した理想的な土壌環境でスタートを切ることができます。オベリスク(塔状の支柱)や行灯支柱を使えば、狭いスペースでも高さを活かした立体的なガーデニングが楽しめ、目線の高さで美しい花を愛でることができるのも、鉢植えならではの贅沢な楽しみ方と言えるでしょう。
プリンセス・ダイアナなどの人気品種を紹介

いざ苗を買おうと園芸店に行ったりネットショップを見たりすると、あまりの種類の多さに圧倒されてしまうかもしれません。ここでは、私が実際に育ててみて「これは強健で美しい!」「初心者でも絶対に失敗しない」と実感した、四季咲き性・新枝咲きの鉄板品種を厳選してご紹介します。迷ったら、まずはこの中から好みの色や形を選んでみてください。
| 品種名 | 系統 | 花の特徴と推奨理由 |
|---|---|---|
| プリンセス・ダイアナ (Princess Diana) |
テキセンシス系 | 【不動の人気No.1】 鮮やかな蛍光ピンク色のチューリップ咲き(ベル型)が特徴。花径は4〜6cmと小ぶりですが、多花性で節々に花をつけます。新枝の伸びが良く、フェンスやオベリスクを明るく彩ります。その名の通り気品と愛らしさを兼ね備え、強剪定が可能で管理も楽なため、最初の一株に最適です。 |
| ロウグチ(籠口) (Rouguchi) |
インテグリフォリア系 | 【日本の気候にベストマッチ】 濃いインディゴブルー(青紫色)のベル型で、花弁の縁が少し反り返るのが特徴。日本の小澤一薫氏によって作出された品種で、日本の高温多湿に極めて高い適応力を持ちます。つるが絡まりにくい半つる性で、花後の切り戻しで次々と咲く四季咲き性は最強クラスです。 |
| アラベラ (Arabella) |
インテグリフォリア系 | 【万能のグラウンドカバー】 透き通るような淡い青紫〜藤色の中輪花。つる性ですが自分からは絡みつかないため、誘引が自由自在です。オベリスクに巻き付けても良し、花壇の縁に這わせてグラウンドカバーのように咲かせても良し。「雑草のように丈夫」と称されるほどの強健さを持ち、放任気味でもよく育ちます。 |
| マダム・ジュリア・コレボン (Madame Julia Correvon) |
ビチセラ系 | 【赤系の決定版】 シックなワインレッドの花を無数に咲かせます。ビチセラ系の中でも特に生育旺盛で、病害虫に強く、初心者が適当に剪定しても必ず咲いてくれるほどの生命力を持ちます。洋風の庭はもちろん、和風の庭のアクセントとしても映える深みのある赤色です。 |
| 流星 (Ryusei) |
インテグリフォリア系 | 【スタイリッシュな新品種】 銀色を帯びたような淡いラベンダー色で、先端が少しねじれる野趣あふれる花姿が特徴。近年開発された品種ですが、その洗練された美しさと育てやすさで瞬く間に人気品種となりました。つるが細くしなやかで、あまり大きくならないため、ベランダなどの限られたスペースや小さめのオベリスクに最適です。 |
これらの品種は、いずれも「新枝咲き」であり、花後に切り戻すことで秋まで繰り返し開花する性質を持っています。特に「プリンセス・ダイアナ」や「ロウグチ」は、そのユニークな形状から、バラなどの他の植物と組み合わせても喧嘩せず、お互いを引き立て合う名脇役としても活躍します。「クレマチス=大輪の紫色の花」というイメージを持っている方も、これらの可憐な品種を見れば、きっとその魅力の虜になるはずです。
苗の選び方と購入後の植え替えタイミング

欲しい品種が決まったら、次は苗の購入です。ホームセンターや園芸店で苗を選ぶ際は、以下のポイントをチェックして、元気な株を選びましょう。
- 株元の太さ:ヒョロヒョロと細いものより、鉛筆や割り箸のような太さがあり、がっしりしているもの。
- 節の間隔:間延びしておらず、節と節の間が詰まっているもの。
- 葉の色:黄色っぽくなっておらず、濃い緑色でハリがあるもの。下葉が枯れ上がっていないもの。
- 芽の数:地際から複数の芽やツルが出ているもの(株立ちになっているもの)が理想的です。
そして、苗を購入した後に最も重要なのが「植え替え」です。一般的に流通しているポット苗(特に開花株や2年生苗などの9cm〜12cmポット)は、生産者の元でじっくり育てられているため、ポットの中では既に根が回りきり、パンパンに詰まっている「根詰まり」の状態であることがほとんどです。ポットの底穴から根がはみ出していることもよくあります。
購入後の注意点:すぐに植え替えを!
「花が咲いているから終わるまで待とう」と思うかもしれませんが、根詰まりした状態で放置すると、水切れを起こしやすくなり、株が弱る原因になります。根が呼吸できず、酸素不足に陥ってしまうからです。真夏(8月)と厳寒期を除き、購入したらできるだけ早く、一回りか二回り大きな鉢(5号〜6号鉢程度)や庭に植え替えて、根が伸びるスペースを確保してあげてください。
植え替えに使う土は、市販の「クレマチス専用培養土」が最も手軽で安心です。自分で配合する場合は、「赤玉土(小粒〜中粒)4:鹿沼土3:完熟腐葉土3」の割合を目安に混ぜ合わせます。クレマチスは根が太く、酸素を好むため、通気性の良い鹿沼土や硬質の赤玉土を多めに配合するのがポイントです。また、植え付け時に緩効性肥料(マグァンプKなど)を元肥として土に混ぜ込んでおくと、その後の生育がスムーズになります。
植え付けは深植えにして立ち枯れを防ぐ
このセクションは、本記事の中で最も重要であり、クレマチス栽培の成否を分ける最大のポイントです。クレマチスを植え付ける際は、他の草花とは異なり、必ず「深植え(ふかうえ)」を徹底してください。
一般的な植物の植え付けでは、「深植えは厳禁(茎が腐るため)」と教わることが多いですが、クレマチスにおいては逆です。具体的には、苗のポットの土表面よりも、つるの1節〜2節分(深さにして約5〜10cm)を土の中に埋め込むように植え付けます。一見すると「茎を土に埋めるなんて大丈夫?」と不安になるかもしれませんが、これがクレマチスにとっては生命線となります。
なぜ深植えが必要なのか?その科学的理由
クレマチスは「立ち枯れ病」などの影響で、突発的に地上のつるが壊死してしまうことがあります。もし浅植え(通常の植え方)をしていた場合、株元がやられると、再生するための芽がなくなり、株全体が死んでしまいます。
しかし、深植えをして節を土の中に埋めておくと、土中で保護された節にある「休眠芽」が守られます。万が一、地上部が全滅しても、地中の節から新しい芽(シュート)が再生してくるのです。さらに、土に埋まった節からは新しい根(不定根)が発生し、株立ち(複数のつるが立ち上がること)になりやすく、株全体の寿命も延びます。
深植えの具体的な手順は以下の通りです。
- 深めの鉢(バラ用などの縦長の鉢がおすすめ)を用意し、鉢底石を入れます。
- 用土をある程度入れます。この時、通常の植物よりも土の高さを低く設定し、苗を置く位置を下げます。
- 苗の根鉢(土の塊)を崩しすぎないようにポットから抜き、軽く底面の根をほぐして鉢に据えます。
- つるの1節〜2節が隠れる位置まで、上からたっぷりと用土を被せます。この際、埋める節についている葉は取り除いておくと腐敗防止になります。
- 最後に水を鉢底から出るまでたっぷりと与え、土を落ち着かせます。
この「深植え」は、クレマチスの命を守る最強の保険です。これさえ守っていれば、多少の失敗があっても株は生き残り、翌年にはまた元気な姿を見せてくれるでしょう。
初心者向けクレマチスの四季咲き栽培と剪定のコツ
「育てやすい新枝咲き系統」を選んで「深植え」さえできれば、スタートラインとしては完璧です。ここからは、春から秋まで長く花を楽しむための日々の管理と、皆さんが一番気にされているであろう「剪定」の具体的な方法について解説していきます。
日当たりと風通しを確保して元気に育てる
クレマチスは基本的に、お日様が大好きな「陽樹(ようじゅ)」としての性質を持っています。健全な光合成を行い、次々と花芽を作るためには、1日最低でも4時間以上、できれば半日以上は直射日光が当たる場所で管理するのが理想です。日照時間が不足すると、つるばかりがひょろひょろと徒長して伸びてしまい、花が咲かなかったり、花色が本来の鮮やかさを失ってしまったりすることがあります。
ただし、ここで一つ重要な注意点があります。クレマチスは「葉やつるには日光を当てたい」一方で、「根元(株元)が高温になったり乾燥したりするのは嫌う」という、少しわがままな性質を持っているのです。これを園芸用語で「頭は日向、足元は日陰(頭寒足熱)」と呼びます。自生地では、低木や草むらの中からツルを伸ばして太陽を求めている植物だからです。
特に近年の日本の猛暑では、鉢植えの土の温度が上がりすぎると、根がダメージを受けて生育が止まってしまうことがあります。これを防ぐために、以下の対策を行うことを強くおすすめします。
- マルチングを行う:株元の土が見えないように、バークチップ、腐葉土、ヤシ繊維などを厚めに敷き詰めます。これにより、直射日光による地温上昇と水分の蒸発を防ぎます。泥はね防止になり病気予防にも効果的です。
- 下草を植える:大きめの鉢であれば、クレマチスの株元に背の低い草花(パンジー、ビオラ、アリッサムなど)を一緒に植え込み、自然な日陰を作ってあげるのも有効です。
- 鉢を二重にする:一回り大きな鉢の中にクレマチスの鉢を入れる(二重鉢にする)ことで、空気の層が断熱材となり、鉢内部の温度上昇を緩和できます。
また、風通しの良さも非常に重要です。風通しが悪い場所では湿気がこもり、うどんこ病などの病気が発生しやすくなります。フェンスやオベリスクに誘引する際は、つる同士が密着しすぎないよう、適度に間隔を空けて広げるように誘引してあげましょう。S字を描くようにゆったりと誘引すると、節々に日光が当たり、花数が増える効果も期待できます。
枯れる原因の多くは水切れと肥料不足
「せっかく蕾がついたのに、咲かずに落ちてしまった」「葉が黄色くなって成長が止まった」…そんな経験はありませんか?四季咲きのクレマチスにおいて、生育不良の最大の原因は「水切れ」と「肥料不足」です。
四季咲き品種は、春から秋にかけて何度も新しい枝を伸ばし、花を咲かせるため、驚くほど多くのエネルギーを消費します。いわば「燃費の悪い、大食漢の植物」なのです。そのため、水と肥料は切らさないように管理し続けることが、花を咲かせ続けるための必須条件となります。
水やりのポイント
土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと与えるのが基本です。「毎日コップ一杯」といったちょこちょこ水やりは、根が深く張らず逆効果になります。特に生育が旺盛になる5月〜6月や、気温が高い夏場は、鉢植えの場合あっという間に水切れを起こします。真夏は朝と夕方の1日2回、水やりが必要になることも珍しくありません。水切れを起こすと、つるの先端がお辞儀をするように垂れ下がります。これを見つけたら、すぐに日陰に移してたっぷりと水を与えてください。ただし、常に土が湿っている状態は根腐れの原因になるので、「乾いたらたっぷり」のメリハリを意識しましょう。
肥料管理のスケジュール
肥料は、以下の3つのタイミングで与える「プログラム」を意識しましょう。
- 元肥(もとごえ):植え付け時に、土にゆっくり効く緩効性肥料を混ぜ込みます。これが基本の体力となります。
- 追肥(ついひ):春(3月〜6月)と秋(9月〜10月)の生育期には、1〜2ヶ月に1回、緩効性の固形肥料を株元に置きます(置き肥)。さらに、これに加えて週に1回程度、速効性のある液体肥料(ハイポネックスなど)を水やり代わりに与えると、花つきが劇的に良くなります。
- 夏休み:真夏(7月下旬〜8月)の高温期は、植物も夏バテ気味で根の吸収力が落ちるため、肥料はいったんストップするか、ごく薄い活力剤程度にとどめます。ここで濃厚な肥料を与えると根を傷める原因になります。
剪定は切るだけで咲く新枝咲きなら簡単
「クレマチスの剪定は難しい」という先入観を捨てましょう。今回ご紹介している新枝咲き品種に関して言えば、剪定のルールはたった一つ、「切れば咲く」。これだけ覚えておけば十分です。
新枝咲き品種は、前年の古い枝には花を付けず、その年の春に伸びた新しい枝に花を付けます。したがって、冬(2月〜3月頃)の剪定では、地上部に残っている枯れたように見える古いツルを、地際から2〜3節(地面から5cm〜10cm程度)を残して、すべてバッサリと切除します。枯れている枝はもちろん、仮に芽が吹いている枝があったとしても、思い切って地際近くで切ってしまいます。
「せっかく伸びた枝を切るのはもったいない」「枯れているように見えるけど、もしかしたら生きているかも…」と躊躇してしまいがちですが、ここで心を鬼にして(?)強剪定を行うことが重要です。古い枝を残すと、そこから細くて弱い芽が出てしまい、花のサイズが小さくなったり、株全体の勢いがなくなったりします。逆に、地際近くまで強く切り戻すことで、株元の隠れた芽が刺激され、地面から太くて充実したタケノコのような新芽が勢いよく飛び出してきます。この「リセット」こそが、春に最高のパフォーマンスを引き出す鍵なのです。
この剪定作業は、2月中旬から3月上旬、ちょうど新芽が動き出す直前に行うのがベストです。地際からバッサリ切ることで、古い葉についていた病原菌や害虫の卵を一掃できるというメリットもあります。切った後の株元には、新しい土を少し足してあげたり、肥料をあげたりすると、春のスタートダッシュがさらに良くなります。
花後の切り戻しで二番花を咲かせる方法
四季咲きクレマチスの醍醐味は、春の一番花だけでなく、初夏、秋と何度も花を楽しめることです。そのためには、花が終わった後の「切り戻し(剪定)」という作業が必要になります。花がらを一つ一つ摘むだけでは不十分で、ある程度ダイナミックに枝を切ることで、次の開花スイッチを入れることができます。
具体的な手順は以下の通りです。
- タイミング:一番花が全体の8割ほど咲き終わり、花色が褪せたり雄しべが散り始めたりした頃がベストです。「まだ少し咲いている花があるのにもったいない」と思うかもしれませんが、早めに切ることで株の体力を温存し、次の花への準備を早めることができます。
- 切る位置:株全体の草丈の「半分」から「3分の2」程度の位置で、潔くカットします。必ず、葉がついている節の少し上で切ってください。節に健全な葉と芽(脇芽)があれば、そこから新しいツルが伸びてきます。
- アフターケア:剪定直後に、お礼肥として即効性の液体肥料を与えます。これにより、新しいツルを伸ばすためのエネルギーを補給します。
このように切り戻しを行うと、切った場所の下にある節(葉の付け根)から、新しいつる(側枝)が伸び始めます。品種や気温にもよりますが、剪定から約1.5ヶ月〜2ヶ月後には、その新しいつるに蕾がつき、二番花が開花します。このサイクル(開花→剪定→成長→開花)を繰り返すことで、秋の終わりまで3回、調子が良ければ4回ほど花を楽しむことができるのです。「咲き終わったら半分切る」というシンプルなリズムで、エンドレスな開花リレーを楽しんでください。
冬越し作業と寒肥で翌春に備える
秋が深まり、11月〜12月になると、新枝咲きのクレマチスは葉を落とし、地上部が茶色くなり始めます。これは枯れてしまったのではなく、冬の寒さに耐えるために地上部の活動を停止し、根にエネルギーを蓄える「休眠期」に入った合図です。初心者の場合、ここで「枯れてしまった!」と勘違いして鉢を捨ててしまうケースがありますが、土の中では根がしっかりと生きていますので、絶対に捨てないでください。
本格的な冬が来たら、以下の手順で冬越し作業を行います。
- 冬の強剪定:前述の通り、地際から少し残して枯れたツルを全て切り取ります。掃除も兼ねて、株周りをスッキリさせましょう。
- 寒肥(かんごえ)の施用:12月〜2月の間に、有機質肥料(発酵油かす、骨粉など)や緩効性肥料を与えます。休眠期にじっくりと効く有機質肥料を与えておくことで、土壌微生物が活性化し、春の芽吹きのエネルギー源となります。これは翌春の花数やツルの太さに直結する非常に重要な作業です。
- 水やり:休眠中でも根は生きています。夏場ほどではありませんが、土がカラカラに乾くと根が枯死してしまいます。土の表面が白く乾いたら、暖かい日の午前中に水やりを行いましょう。冬の乾燥は意外と大敵です。
深植えさえしていれば、関東以西の平地であれば特段の防寒対策は不要です。寒冷地の場合は、株元に腐葉土などを厚めに盛って(マルチング)、凍結から根を守ってあげると安心です。
うどんこ病などの病気対策と害虫予防
最後に、クレマチス栽培で遭遇しやすいトラブルと、その対策についてまとめておきます。早期発見・早期対処ができれば、致命的な被害は防げます。
主な病害虫と対策
- うどんこ病:
葉や茎が小麦粉をまぶしたように白くなるカビの一種です。梅雨時や秋口など、湿気が多く風通しの悪い環境で発生します。光合成ができなくなり生育が衰えます。対策:発生初期であれば、重曹を水で薄めたスプレーや、食酢系の特定防除資材で対応できます。蔓延してしまった場合は、早めに専用の殺菌剤(サプロール乳剤など)を使用しましょう。枝透かし剪定をして風通しを良くすることが最大の予防です。 - 立ち枯れ病:
昨日まで元気だった株が、突然くたっとしおれ、数日で枯れてしまう恐ろしい病気です。対策:発見したら、すぐにしおれた枝を地際から切り取ります。感染拡大を防ぐため、ハサミは消毒し、株元にベンレート水和剤などの殺菌剤を灌注(土に染み込ませる)します。ここで「深植え」が効いてきます。地中の節が生きていれば、数週間〜数ヶ月後に再び芽が出てきます。(出典:タキイ種苗『園芸Q&A』) - コガネムシ(幼虫):
「庭のテロリスト」とも呼ばれる害虫です。土の中で根を食い荒らすため、地上部からは見えません。「水やりをしているのにしおれている」「株元がグラグラする」といった場合は、この幼虫を疑ってください。対策:オルトランDX粒剤やダイアジノン粒剤などの土壌混和剤を、予防的に撒いておくのが最も効果的です。成虫が飛来する初夏からは、株元を不織布などで覆い、卵を産ませない物理的防御も有効です。
これらのトラブルは、完全に防ぐことは難しいですが、「風通しを良くする」「清潔な土を使う」「予防的に薬をまく」といった基本を守ることで、被害を最小限に抑えることができます。特にコガネムシの幼虫は、気づいた時には根がほとんどないということもあり得るので、定期的なチェックをおすすめします。
クレマチスの四季咲き栽培で初心者が成功する秘訣
ここまで、クレマチスの四季咲き品種について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。情報量が多くて大変そうに思えたかもしれませんが、要点を絞れば「新枝咲きを選ぶ」「深植えにする」「水と肥料を切らさない」という3つの基本ルールを守るだけです。
クレマチスは、バラと並んで「ガーデニングの女王」と呼ばれるほど、咲いた時の感動が大きい植物です。もし失敗して地上部が枯れてしまっても、諦めずに水やりを続けてみてください。忘れた頃にひょっこりと新芽が出てくる、そんな生命力の強さにきっと驚かされるはずです。ぜひ、あなたのお庭やベランダにクレマチスを迎えて、季節ごとに咲く喜びを味わってみてくださいね。
この記事の要点まとめ
- 初心者は「新枝咲き」系統を選ぶと管理が圧倒的に楽
- 「ビチセラ系」「インテグリフォリア系」が特におすすめ
- プリンセス・ダイアナやロウグチは強健で失敗が少ない
- 苗を購入したら根詰まりを防ぐため早めに植え替える
- 植え付け時は1〜2節を土に埋める「深植え」が絶対ルール
- 深植えは立ち枯れ病からの復活を助ける最大の保険
- 日当たりは半日以上確保し、株元の直射日光は避ける
- 水やりはたっぷりと、肥料は春〜秋まで定期的に与える
- 冬の剪定は地際近くでバッサリ切る「強剪定」を行う
- 花後は株の半分程度で切り戻すと二番花が咲きやすい
- 冬に地上部が枯れても休眠中なので捨てずに管理する
- うどんこ病対策には風通しの良さが重要
- コガネムシの幼虫対策にオルトランなどが有効
- 失敗しても深植えしていれば復活する可能性が高い
- 四季咲きなら秋まで何度も花を楽しめる
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