こんにちは、My Garden 編集部です。
ガーデニング愛好家にとって憧れの存在であり、「つる植物の女王」とも称されるクレマチス。バラのパートナーとしても人気が高く、その優雅な姿と多様な花色は、見る人の心を掴んで離しません。しかし、その美しい花を毎年咲かせるために避けて通れない作業が「剪定(せんてい)」です。いざハサミを手に取って株の前に立つと、「本当にここで切っていいの?」「もし切りすぎて花が咲かなくなったらどうしよう」と、不安で手が止まってしまうことはありませんか?
私自身も栽培を始めたばかりの頃は、種類によって切り方が全く違うという事実に戸惑い、教科書を片手に恐る恐るハサミを入れていたことを思い出します。特に「強剪定」と呼ばれる、地際でバッサリと切る作業は、まるで大切に育てた植物をダメにしてしまうような錯覚に陥り、なかなか勇気が出ないものです。しかし、実はクレマチスの剪定は「習うより慣れろ」と言いたいところですが、その前に「仕組み」さえ理解してしまえば、決して怖いものではありません。むしろ、植物の生理に基づいた正しい位置でハサミを入れることは、株をリフレッシュさせ、翌シーズンにさらに豪華な花を咲かせるための最高のプレゼントになるのです。
この記事では、難しい園芸用語を並べるのではなく、まるで目の前で図解を見ているかのようにイメージしやすい言葉を使って、剪定のメカニズムや具体的な手順を徹底的にわかりやすく解説します。自分の株がどのタイプなのかを見分ける方法から、万が一失敗した時のリカバリー術まで、初心者の方が自信を持って管理できるようになるための情報を余すところなく詰め込みました。一緒にクレマチスとの対話を楽しみながら、剪定マスターを目指しましょう。
この記事のポイント
- クレマチスの3つの系統(旧枝咲き・新枝咲き・新旧両枝咲き)ごとの明確な剪定基準とメカニズム
- 「1節残す」のか「地際まで切る」のか、迷わないための具体的な位置判断テクニック
- 花が終わった後の「切り戻し」で、シーズン中に二番花・三番花を咲かせるための生理学的アプローチ
- 立ち枯れ病や生育不良を防ぎ、株を長く健康に保つための徹底した衛生管理とアフターケア
クレマチスの剪定を図解で解説!基本と系統別

クレマチスを元気に育て、毎年溢れるような花を楽しむために、剪定は単なる「枝の長さ調整」以上の重要な意味を持っています。それは、株の風通しを良くして病気を防ぐ「予防医療」であり、古い組織を更新して若返りを図る「アンチエイジング」でもあります。しかし、すべてのクレマチスに同じ切り方をしてしまうと、翌年の花芽ごと切り落としてしまうという悲劇が起こりかねません。ここでは、まず基本となる「時期」と「系統」について、その背景にある理由も含めてじっくりと紐解いていきます。
最適な時期はいつ?年間スケジュール
クレマチスの剪定において、カレンダー上の「時期」を把握することは、作業の成功率を飛躍的に高める第一歩です。系統によって多少のズレはありますが、植物の生育サイクルに合わせた「剪定の適期」は、大きく分けて年2回訪れます。なぜその時期なのか、植物の中で何が起きているのかを知ることで、迷いなくハサミを入れられるようになります。
1. 冬から早春の休眠期(2月中旬~3月上旬)

一年の中で最も重要なタイミングが、この「冬の終わりから春の始まり」にかけてです。この時期、クレマチスは寒さに耐えるために地上部の成長を止め、エネルギーのすべてを地下の根に蓄えています。外見は静かに見えますが、地中では春の爆発的な成長に向けて着々と準備が進んでいます。剪定のベストタイミングは、春の暖かさを感じて新しい芽が動き出す直前、つまり「芽出し前」です。このタイミングで古い枝を整理したり、系統によっては地際までリセットしたりすることで、根に蓄えられた膨大なエネルギーを一気に新しい芽に集中させることができます。まだ寒さが残る時期ですが、ふっくらとし始めた芽を確認しながら行う作業は、春の訪れを感じる喜びでもあります。
2. 花後の剪定(5月~8月)
2つ目のタイミングは、花が咲き終わった直後の「花後(はなご)剪定」です。多くの植物は、花が咲き終わると種を作る(子孫を残す)ことに全精力を注ぎ始め、新しい花や枝を作ることを止めてしまいます。これを「生殖成長」と言います。そこで、花が散った直後、または散り始めた段階で種ができる前にカットすることで、植物に「まだ種ができていない!もう一度花を咲かせなきゃ!」というスイッチを入れ、再び「栄養成長(枝葉を伸ばす)」へと切り替えるのです。これを適切に行うことで、四季咲き性のある品種なら年に2回、3回と繰り返し花を楽しむことができます。また、日本の高温多湿な梅雨や真夏を迎える前に枝を減らして風通しを良くすることで、蒸れや病気を防ぐという非常に実用的なメリットもあります。
地域による時期のズレに注意
「2月」や「5月」というのはあくまで目安です。北海道や東北などの寒冷地では、関東以西よりも春の訪れが遅いため、休眠期の剪定も3月下旬~4月上旬にずれ込むことがあります。逆に沖縄や九州の暖地では1月後半から芽が動き出すこともあります。カレンダーの日付よりも、「目の前の株の芽がプックリと膨らんできたかどうか」を基準にするのが、失敗しない最大のコツです。
種類の違いと系統の見分け方

「このクレマチス、どこで切ればいいの?」という疑問の答えは、すべて「その子がどのタイプ(系統)に属しているか」にかかっています。クレマチスは世界中に数千品種が存在すると言われていますが、剪定という観点で見れば、花が咲く枝の性質によって大きく3つのグループに分類できます。自分の株がどれに当てはまるかを知ることが、剪定へのパスポートです。
| 系統(タイプ) | 花が咲くメカニズムと特徴 | 剪定の基本ルール |
|---|---|---|
| 旧枝咲き (モンタナ系、パテンス系、アーマンディ系など) |
前年に伸びて木質化した「古い枝」の節々に、翌春の花芽が形成されます。春に伸びた新芽には花がつきません。早春に咲く大輪種や小花種が多いのが特徴です。 | 弱剪定 (枝を大切に残す) ※冬にバッサリ切ると花がゼロになります。 |
| 新枝咲き (ジャックマニー系、ビチセラ系、インテグリフォリア系など) |
春に地際や古い枝の基部から勢いよく伸びてくる「新しい枝」に花芽を作ります。古い枝は役割を終え、冬には地上部が枯れることが多いです。初夏から秋に咲く品種が中心です。 | 強剪定 (地際近くで切る) ※切ることで新芽の勢いが増します。 |
| 新旧両枝咲き (フロリダ系、ラヌギノーサ系、一部の早咲き大輪系など) |
前年の「古い枝」から出た芽に一番花が咲き、その後伸びた「新しい枝」にも二番花が咲く、ハイブリッドな性質です。両方の性質を持つため、管理次第で長く楽しめます。 | 中間剪定 (バランスを見て切る) ※両方の性質を活かす調整が必要です。 |
もし、タグをなくしてしまって品種名や系統がわからない場合は、冬の間の姿をじっくり観察してみてください。地上部が完全に枯れて茶色くなり、触るとポキポキと簡単に折れてしまうような状態なら「新枝咲き」の可能性が高いです。一方で、冬でも枝が生きていて(木のように硬くなっている)、その節にプックリとした小さな芽が見えるなら「旧枝咲き」か「新旧両枝咲き」でしょう。まずは「切らずに様子を見る」あるいは「先端だけ軽く切る」という安全策をとって、春にどこから花が咲くかを確認するのが確実です。スマートフォンの写真に残しておき、観察日記をつけておくと、来年の剪定に大いに役立ちますよ。
旧枝咲きの位置はどこ切る?弱剪定のコツ
「旧枝咲き」のグループは、主に春の早い時期に豪華な大輪の花や、株を覆い尽くすような可憐な小花を咲かせる品種が多く含まれます。このタイプの最大の特徴は、夏から秋にかけて伸びた枝の中で、すでに翌年の花芽を作り始めている(花芽分化している)という点です。つまり、冬の間に「枯れ枝のように見えるから」といってバッサリと切り落としてしまうと、それは数ヶ月かけて準備された花芽をすべてゴミ箱に捨ててしまうのと同じことになります。「剪定したら花が咲かなくなった」という失敗の多くは、この旧枝咲きに対して強剪定を行ってしまったケースです。
この系統に対する剪定の基本は、枝をできるだけ残す「弱剪定(じゃくせんてい)」です。「剪定」という言葉から連想する「切り詰める」作業というよりは、「整枝(せいし)」や「花がら摘み」に近い感覚を持ってもらうと良いかもしれません。
【図解イメージ】弱剪定の具体的な切断位置

花が咲き終わった後の剪定(5月~6月頃)では、咲き終わった花(花首)から枝を下に辿っていき、「1節~2節」ほど下がった位置で切ります。葉の付け根に小さな芽が確認できれば、そのすぐ上(5mm〜1cm上)で切るのが理想です。長さにして、先端からわずか3cm~5cm程度です。本当に「先っぽだけ」を整えるイメージです。
なぜ1〜2節なのかというと、開花した枝の先端付近の芽は、花を咲かせるためにエネルギーを使い果たしており、次の芽を出す力が弱いことが多いからです。少し下の、まだエネルギーが残っている「充実した芽」まで切り戻すことで、そこから元気な新しい枝が出るのを促します。
また、株の状態に合わせた微調整もプロのテクニックです。もし、株全体を見て「あまり元気がないな」「葉の色が薄いな」と感じる場合は、体力を温存させるために浅く(1節下)で止めましょう。逆に、株が大きくなりすぎて困る場合や、もっと枝数を増やしたいほど元気な場合は、思い切って2〜3節下まで切り戻しても構いません。ただし、モンタナ系のように一度に大量に咲くタイプは、日本の高温多湿に弱い傾向があるため、梅雨入り前に株の内側の混み合った細い枝や、枯れ込んだ枝を間引く「透かし剪定」を行って、風通しを確保してあげることが、夏越しを成功させるための重要テクニックになります。
新枝咲きの強剪定と切り戻しのやり方
一方、「新枝咲き」のグループは、旧枝咲きとは対照的に非常にダイナミックでシンプルです。このタイプは、春になると地際(地面)や、わずかに残った古い枝の基部から、タケノコのように力強い新芽を伸ばし、その新しく伸びた枝(新梢)に花をつけます。つまり、冬に残っている古い枝は、春からの開花にはほとんど役に立ちません。むしろ残しておくと、新芽の邪魔になったり、風通しを悪くして病気の温床になったりすることさえあります。
このタイプに対して行うのが「強剪定(きょうせんてい)」です。初めての方にとって、せっかくここまで伸びたツルをバッサリ切るのは、非常に勇気がいる行為ですよね。「こんなに切ってしまって本当に大丈夫?」「枯れてしまわない?」と不安になる気持ち、痛いほどわかります。でも、安心してください。クレマチスの中でも特に強健なこのグループは、切られることで根が刺激を受け、「やばい!上部がなくなった!早く再生しなきゃ!」と活性化し、より太く勢いのある枝を伸ばす性質があるのです。
春の休眠期に行う強剪定の具体的ステップ

2月〜3月の芽出し直前に行います。地面(または鉢の土面)から見て、ふっくらとした充実した芽を「2つ~3つ」残した位置(地際から5cm~10cm程度)で、古いツルを躊躇なく水平に切り落とします。枯れているように見えても、株元のプックリした芽が生きていれば全く問題ありません。切った後の大量の古いツルは、フェンスなどに絡みついていると外すのが大変ですが、無理に引っ張らず、細かくハサミで刻みながら取り除いていきましょう。
この強剪定には、株のリセット効果だけでなく、花の位置をコントロールできるという大きなメリットもあります。古い枝を残したままにすると、新しい枝がその先から伸びてしまい、花が自分の背丈よりもはるか高い位置で咲いてしまって見えにくい…(これを「腰高になる」と言います)なんてことになりがちです。地際からリセットすることで、目線の高さで花を楽しめるようになります。剪定後は、これから急成長する新芽のために、緩効性の固形肥料を規定量しっかりと与える「お礼肥(おれいごえ)」を忘れないようにしましょう。
新旧両枝咲きの中間剪定の手順

最も判断に迷いやすく、少しテクニカルなのがこの「新旧両枝咲き」です。その名の通り、前年の古い枝から出る芽にも花が咲き(一番花)、その後新しく伸びた枝の先にも花が咲く(二番花)という、二段階の開花システムを持っています。非常に優秀で開花期間も長いのですが、剪定においては「古枝も大事、新枝も大事」というどっちつかずの状態になるため、両方のバランスを取る必要があります。
このグループには「中間剪定」、あるいは「任意剪定」と呼ばれる方法を用います。基本的には、つるの先端から数えて「全体の2割〜3割程度」、あるいは「上から2節〜3節」を切り戻すスタイルが一般的です。これなら、古い枝にある花芽をある程度残しつつ、枝の暴れを抑えることができます。枝の途中にある充実した芽を選んで、その上で切るのがポイントです。
迷った時の考え方:更新剪定(リフレッシュ)
数年育てて株が古くなり、花付きが悪くなってきたと感じたら、思い切って「強剪定」に近い切り方を試すのも一つの手です。新旧両枝咲きは、強剪定しても枯れることはありません(ただし、その春の一番花の開花は遅れるか、花数が減る可能性があります)。
私がよくやるおすすめの方法は、「枝の半分は弱剪定、残りの半分は強剪定」にするという裏技です。これなら、早い時期に咲く花(弱剪定した枝)と、遅れて咲く花(強剪定した枝)の両方を楽しめて、開花リレーが続きます。しかも株の一部をリフレッシュできるので、一石三鳥の効果がありますよ。
失敗しない冬の剪定方法と寒肥
冬の剪定は、来春のクレマチスの姿(樹形)をデザインする設計図のような作業です。葉が落ちて枝だけになっているこの時期は、株全体の構造がよく見えるため、不要な枝を見極める絶好のチャンスでもあります。
まず、新枝咲きのタイプであれば、先ほどお話ししたように迷わず地際でリセットします。一方で旧枝咲きのタイプは、冬の剪定は原則として「行わない」のが正解ですが、完全に放置するわけではありません。枯れてポキポキ折れる死んだ枝、細すぎて頼りない枝、そして「誘引しにくい方向に伸びてしまった邪魔な枝」は、株元や分岐点から綺麗に取り除いておきましょう。こうすることで、春になって新しい葉が展開した時の風通しや日当たりが劇的に改善され、病気のリスクを減らすことができます。
そして、冬の作業の仕上げとして欠かせないのが「寒肥(かんごえ)」です。人間が冬に温かいものを食べて免疫力を高めるように、植物にも冬の間にゆっくりと効く栄養が必要です。特におすすめなのは、土壌改良効果もある「完熟堆肥」や「油かす」、「骨粉」などの有機質肥料です。化学肥料のような即効性はありませんが、土の中の微生物によってゆっくりと分解されてから根に吸収されるため、寒い時期に与えておくことで、ちょうど春の芽吹きに合わせて栄養が届き始めるのです。寒冷地では、株元に腐葉土や藁を敷く「マルチング」をして、根を凍結から守る対策も忘れずに行いましょう。
クレマチスの剪定を図解で実践!花後ケア
ここからは、春の開花ラッシュが落ち着いた後のケアに焦点を当てていきましょう。「花が散ったらおしまい」ではありません。クレマチスのポテンシャルを最大限に引き出し、秋まで長く楽しむためには、花後の適切な処置がカギを握ります。特に「二番花」を咲かせるためのテクニックや、梅雨・夏のトラブル回避術は必見です。
春と秋の花後の剪定で二番花を楽しむ

クレマチスの多くの品種(特に新枝咲きや新旧両枝咲き)には、「四季咲き性」という素晴らしい性質があります。これは、条件さえ整えば春だけでなく、初夏、秋と一年に何度も花を咲かせる能力のことです。この能力を引き出すスイッチとなるのが、花後の剪定です。
植物には「頂芽優勢(ちょうがゆうせい)」といって、枝の先端にある芽(頂芽)を優先的に成長させ、下の脇芽の成長を抑える性質があります。花が咲き終わった枝先をそのままにしておくと、この抑制が働いたままになり、新しい花芽が出にくくなります。そこで、剪定によって先端を切り落とすことで、この抑制(頂芽優勢)を物理的に打破し、下の脇芽に「出番だよ!」と指令を送るのです。これが二番花が咲くメカニズムです。
新枝咲き(ジャックマニー系など)の攻略法
このタイプは回復力が非常に強いため、花が全体の8割ほど咲き終わったら、つるの長さの「半分(1/2)」くらいの位置でバッサリと切り戻します。これくらい深く切ると、新しいつるが伸びてくるまでに30日〜40日ほどかかりますが、その分、しっかりとした太い枝が出て、立派な二番花が咲きます。「もっと早く咲かせたい」という場合は浅く(先端から2〜3節)切れば20日程度で咲きますが、花は小さくなりがちです。秋まで長く楽しむために、1回目は深めに切って株を休ませつつ更新する、というサイクルがおすすめです。
旧枝咲きの場合の注意点
旧枝咲きの品種でも、早めに花首の下1〜2節で切ることで、まれに二番花が咲くことがありますが、基本的には一季咲き(春だけ)のものが多いです。無理に二番花を狙って深く切ると、翌年の花芽形成に悪影響が出ることもあるので、花がらは早めに摘み取り、夏の間の成長(来年のための枝作り)を優先させてあげるのが親心かなと思います。
また、剪定後は再び成長するために多くのエネルギーを消費します。即効性のある液体肥料を1週間〜10日に1回程度与え、スタミナ切れを起こさないようにサポートしてあげましょう。
立ち枯れ病を防ぐ手入れと消毒の重要性
クレマチス栽培で最も恐ろしく、そしてよくあるトラブルが「立ち枯れ病」です。昨日まで青々としていた葉が、朝起きたら突然くたっと萎れ、数日で茶色く枯れ込んでしまう…。この絶望感は何度味わっても辛いものです。原因は主にフザリウム菌などのカビ(糸状菌)ですが、これらは健康な枝には感染しにくく、多くの場合、剪定や強風でついた「傷口」から侵入します。
つまり、剪定という外科手術を行う私たち自身が、病気を媒介してしまうリスクがあるのです。
【重要】ハサミの消毒はプロレベルの必須習慣に

複数の株を連続して剪定する場合、もし1株目が病原菌を持っていたら、ハサミを介して次の株、その次の株へと感染が拡大してしまいます。これを防ぐために、剪定バサミの消毒は絶対に省略しないでください。
高価な専用消毒液を用意する必要はありません。ご家庭にあるキッチンハイターなどの塩素系漂白剤を水で希釈したもの(キャップ1杯を500mlの水に入れる程度)を用意し、一株切るごとに刃先を数秒間浸すか、液を含ませたキッチンペーパーで丁寧に拭き取るだけで十分な効果があります。火で炙る方法は刃の焼きが戻って切れ味が悪くなるのでおすすめしません。また、雨の日は湿度が高く菌が繁殖しやすいため、剪定作業は避け、晴れた乾燥した日に行うのが鉄則です。
伸びすぎたつるや枯れた枝の整理方法

生育期のクレマチスの成長スピードは凄まじく、1日に数センチ、時には10センチ以上も伸びることがあります。忙しくて数日目を離した隙に、つる同士が複雑に絡まり合って、まるで知恵の輪か鳥の巣のような状態になってしまうことは「クレマチスあるある」です。これを放置すると、内側の葉に日が当たらず枯れ上がり(蒸れ)、風通しが悪くなってうどんこ病や害虫(アブラムシやハダニ)の温床になってしまいます。
絡まりすぎて収拾がつかない場合、無理に引っ張ってほどこうとするのはNGです。クレマチスのつるは意外と脆く、簡単に折れてしまいます。まずは冷静に、枯れている下葉を取り除いて視界を確保しましょう。そして、オベリスクやフェンスへの誘引を見直します。つるは放っておくと真上へ真上へと伸びたがりますが、これだと下の方がスカスカになり、花もてっぺんに固まってしまいます。つるを「S字」や「螺旋(らせん)」を描くように、できるだけ水平方向に誘引してあげてください。水平にすることで頂芽優勢が分散され、節々からまんべんなく脇芽が出て、株全体にバランスよく花を咲かせることができます。
古株でどうしても手がつけられないほど絡まっている場合は、構造がわからないまま中心部を切るのは危険です。まずは外側の「明らかに新芽がついていない先端部分」だけを少しずつカットしてボリュームを減らし、風を通してあげるだけでも植物にとっては大きな助けになります。焦らず少しずつ整理していきましょう。
挿し木や植え替え時の根の扱い方
剪定とは直接関係ないように思えるかもしれませんが、実は「根の状態」と「剪定の耐性」は密接に関わっています。根が健康でなければ、強剪定からの回復も遅れてしまうからです。クレマチスの根は、太くて長い「直根性(ちょっこんせい)」の性質を持ち、水分や養分を蓄えるタンクのような役割を果たしていますが、再生能力が低く、一度切れるとなかなか修復しません。
鉢植えで育てている場合、1〜2年で鉢の中は根でパンパンになります(根詰まり)。水やりをしても水が染み込んでいかない、鉢底から根が飛び出している、といったサインが出たら植え替えの合図です。この時、一般的な草花のように古い土を落としたり、根をほぐしたりしてはいけません。
クレマチスの植え替え鉄則:根鉢を崩さない

植え替えは、今の鉢からスポッと抜いて、そのまま一回り大きな鉢に入れ、隙間に新しい土を足す「鉢増し」が基本です。根鉢(根と土の塊)を絶対に崩さないよう、赤ちゃんの頭を撫でるように優しく扱ってください。
また、クレマチス特有の植え付けテクニックとして、「深植え」が推奨されます。地際の1節〜2節を土の中に埋めてしまうのです。こうすることで、万が一立ち枯れ病などで地上部が枯れてしまっても、土の中に埋まった節から新しい芽が出てくる可能性が高くなり、保険になります。もし植え替え中に根がブチブチと切れてしまった場合は、そのダメージ分だけ地上部の枝を剪定して(蒸散を減らして)、バランスを取ってあげるという「緊急手術」を行いましょう。
クレマチスの剪定は図解で見て成功させる
ここまで、クレマチスの系統ごとの剪定方法や、時期による違い、そして花後のケアまで詳しくお話ししてきました。文字数が多くなってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございます。文章で読むと「2節残す」「半分切る」といったルールが少し複雑に感じられたかもしれませんが、実際に愛用のハサミを持って株の前に立ち、「ここが1節目、ここが2節目…」と指差し確認してみると、植物が発しているサインは意外とシンプルだと気づくはずです。
最初は誰もが、せっかく伸びた枝を切ることに恐怖心や罪悪感を抱きます。特に新枝咲きの強剪定は勇気がいります。でも、思い切って切った後に、以前より太く力強い新芽が地面から顔を出した時の感動は、ガーデナーにしか味わえない特権です。失敗しても、クレマチスは私たちが思う以上にタフな植物です。一度の切り間違いで枯れることは滅多にありません。ぜひ今回の記事をガイドライン(地図)にして、あなたの庭のクレマチスと対話し、ハサミを入れる楽しさを味わってくださいね。来春、あなたの庭が満開のクレマチスで彩られることを心から応援しています。
この記事の要点まとめ
- クレマチスの剪定は「旧枝咲き」「新枝咲き」「新旧両枝咲き」の系統特定からすべてが始まる
- 旧枝咲きは前年の枝に花芽があるため、先端を整える程度の「弱剪定」を基本とする
- 新枝咲きは春に地際から伸びる新枝に咲くため、冬に地際2〜3節で切る「強剪定」を行う
- 剪定の最適時期は、株をリセットする「2月~3月の休眠期」と、二番花を促す「5月~8月の花後」の年2回
- 旧枝咲きの花後剪定は、花首から1~2節下の充実した芽の上で切るのが正解
- 新枝咲きの春剪定は、地際から5〜10cm(2〜3節)を残して古いツルを一掃し更新する
- 新枝咲きの花後は、ツルの半分程度(または地際近く)まで切り戻すことで、30〜40日後に二番花が期待できる
- 新旧両枝咲きは、先端から2〜3節を切る「中間剪定」でバランスを保ちつつ、数年に一度は強剪定で更新する
- 冬の剪定で旧枝咲きを誤って深切りすると、翌春の花芽をすべて失い開花ゼロになるので要注意
- 剪定ハサミは病気媒介の主犯になるため、使用前後に塩素系漂白剤などで必ず消毒する習慣をつける
- 立ち枯れ病は剪定の傷口から侵入するため、雨の日の作業は避け、清潔な道具を使用する
- 鉢植えの植え替え時は、根のダメージを防ぐために根鉢を絶対に崩さず、そのまま一回り大きな鉢に移す
- つるが絡まった古株は、まず枯れ葉を整理して構造を確認してから、先端の新芽のない部分から慎重に切る
- 誘引はS字や螺旋を描くように水平方向に行うことで、頂芽優勢を分散させ花数を増やすことができる
- 品種が不明な場合は、冬に地上部が枯れるか観察し、春までは先端のみを整理する軽い剪定で様子を見るのが安全
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