こんにちは、My Garden 編集部です。
ガーデニングでダリアを育てていると、ある日ふと気づくことがあります。「あれ? この太い茎、中が空っぽじゃない?」と。せっかく丹精込めて育てたダリアの茎が、まるでストローのようにスカスカになっているのを見て、驚きとともに不安を感じた経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。特に、初めてダリアを育てる方にとっては、そのポッカリと開いた穴は衝撃的ですよね。
「もしかして病気なの?」「虫に食べられちゃった?」と心配になりますし、雨が降った後にその空洞に水が溜まって、そこから茎が腐ってしまうんじゃないかと気が気じゃありませんよね。実際に、切り戻しをした後にポッカリと開いた穴をどう処置すれば正解なのか、あるいは茎が黒っぽく変色しているのは危険なサインなのか、判断に迷う場面は多々あります。インターネットで検索しても、意外とこの「茎の穴」に特化した詳しい対策が見つからなくて困った、という声もよく耳にします。
でも、安心してください。実はこの「茎の空洞構造」は、ダリアが大きく成長するために獲得した立派な「仕様」であり、それ自体は決して異常なことではないんです。ただ、その構造ゆえに起きやすいトラブルがあるのも事実。正しい管理方法さえ知っていれば、この空洞と上手に付き合いながら、ダリアを元気に咲かせ続けることができます。
この記事のポイント
- ダリアの茎がなぜ空洞になるのか、その植物学的な理由と構造上のメリット
- 空洞部分に侵入して悪さをする害虫やアリへの、具体的で効果的な撃退法
- 雨水による茎の腐敗を完璧に防ぐための、アルミホイルを使った裏技や水抜き手術の手順
- 茎が黒く変色した際、それが「病気」なのか「品種の個性」なのかを見分ける決定的なポイント
本記事では、私自身の栽培経験も交えながら、ダリアの茎が空洞になるメカニズムと、それに伴うリスクを回避するための実践的なテクニックを、どこよりも詳しく、分かりやすく解説していきます。これを読めば、もうダリアの茎を見て不安になることはありません。
ダリアの茎が空洞になる理由とリスク管理

ダリアを育てていると、外見はあんなに太くて立派な茎なのに、切ってみると中がスカスカで驚かされますよね。「栄養不足なのかな?」「土が悪かったのかな?」と心配される方もいますが、まずはなぜこのような構造になっているのか、そしてその構造ゆえに発生しやすいトラブルについて、根本から紐解いていきましょう。
ダリアの茎が空洞になる原因とは?
ダリアの茎を切ってみると、まるで竹のように中が空洞になっていることに気づきます。これは病気や生理障害ではなく、ダリアが成長する過程で自然に発生する健全な現象です。園芸書などではあまり詳しく語られませんが、これは植物が生きていくための非常に合理的な戦略の結果なのです。
植物学的な視点から少し詳しくお話しすると、これは「髄(ずい)」と呼ばれる茎の中心組織の消失によるものです。若い苗の頃は茎の中も細胞で詰まっていますが、急速に背を伸ばして成長するにつれ、中心部の髄細胞が周囲の成長スピードに追いつけずに崩壊したり、あるいはエネルギー効率を優先して意図的に空洞化させたりします。
なぜそんなことをするのでしょうか? それは「軽量化」と「強度」の両立のためです。限られた栄養分(バイオマス)を使って、できるだけ太く、背の高い茎を作るには、中身をギチギチに詰めるよりも、外側を固めてパイプ状にした方が効率が良いのです。これは建築現場で使われる足場のパイプや、自然界ではイネ科の竹と同じ原理ですね。「断面二次モーメント」という物理学的な数値を大きくすることで、同じ質量の材料でも、中実の棒より中空のパイプの方が曲げに対する抵抗力が強くなるのです。
中を空洞にすることで、ダリアは巨大な花を支えるための太さを確保しつつ、風に吹かれてもしなやかに揺れて折れにくい、強靭な構造を獲得しています。つまり、あの空洞はダリアが厳しい自然環境で生き残るために進化した「勲章」のようなものなのです。
しかし、この植物としての「賢い戦略」が、私たちガーデナーにとっては少し厄介な問題を引き起こします。それが「雨水の滞留」です。自然界では茎が折れない限り空洞が外に露出することはありませんが、園芸では「切り戻し」や「花がら摘み」で私たちがハサミを入れるため、パイプの口が上を向いて開いてしまうことになるのです。これが、これから解説する様々なトラブルの入り口となってしまいます。
節(ふし)の部分は詰まっています

ここで一つ重要な補足があります。茎全体が上から下まで、一本の長いトンネルのように筒抜けになっているわけではありません。葉っぱが出ている「節(ノード)」の部分には、「隔壁(かくへき)」と呼ばれる硬い仕切りがあり、ここで空間が完全に区切られています。
つまり、ダリアの茎は「長いひとつのパイプ」ではなく、「節ごとに区切られた小部屋の積み重ね」になっているんです。この構造を知っておくことが、後述する剪定位置の判断や、水抜き処理を行う上で非常に重要になります。
空洞に虫がいるときの対処法

「茎の穴から、おがくずのような粉が出ている」「なんとなく茎に穴が開いている気がするし、その上の葉が急に元気なくなった」……そんな時は、残念ながら空洞の中に虫が入り込んでいる可能性が極めて高いです。特に厄介なのが、茎の内側から組織を食べてしまう「穿孔性(せんこうせい)害虫」の幼虫たちです。
ダリアの茎は、外敵から身を守るシェルターとしては最高物件です。温度変化が少なく、湿度も保たれ、しかも壁自体がエサになるわけですから、虫にとっては天国です。もし虫の侵入に気づいたら、悠長に構えている時間はありません。彼らは茎の内部という「安全地帯」にいるため、外から一般的な殺虫スプレーを撒いても、薬剤が届かずにほとんど効果がないからです。
食害が進むと、その部分から上の維管束(水や養分の通り道)が破壊され、ある日突然、茎がポッキリと折れたり、青々としていた葉が一気に萎れて枯れたりします。「昨日は元気だったのに!」という急変は、たいていこの内部食害が原因です。
具体的な対処手順とテクニック
では、具体的にどう戦えばいいのでしょうか。私の経験上、有効な手段は以下の3ステップです。

- 被害箇所の特定: まずは観察です。フラス(虫の糞)が出ている穴や、茎の色が一部だけ変色している部分を探します。フラスは新しいものほど色が鮮やかで湿っています。
- 物理的な捕殺(針金戦法): 穴から細い針金などを差し込み、奥にいる幼虫を突き刺して駆除します。少し残酷に聞こえるかもしれませんが、これが最も確実で植物へのダメージが少ない方法の一つです。針金の先端を少し曲げておくと、中で引っかかりやすくなります。手応えがあれば成功です。
- 外科手術(切り戻し): 針金が届かない場合や、すでに茎がボロボロになっている場合は、被害を受けている部分よりも下の、「まだ茎が硬くて健康な節」の少し上で思い切って切り落とします。「せっかく伸びたのに…」と躊躇してしまいますが、幼虫を残すと株全体が枯れるリスクがあります。切り落とした茎の中に幼虫がいるはずなので、必ず捕殺して処分してください。
予防が最大の防御です
一度茎の中に入られてしまうと、駆除は非常に困難で、手術も植物にストレスを与えます。そのため、植え付け時や生育初期に「オルトラン粒剤」などの浸透移行性殺虫剤を株元に撒いておくことが何より重要です。
この薬は根から吸収されて植物全体に行き渡り、ダリアの樹液自体を「虫が食べると死んでしまう毒入りのジュース」に変える効果があります。これにより、茎に侵入しようとかじった瞬間に幼虫を退治することができます。転ばぬ先の杖として、オルトランは必須アイテムと言えるでしょう。
アリが空洞に侵入する理由と対策
ダリアの周りや茎の上を、アリが忙しそうに行列を作って歩いているのを見かけることはありませんか? ふと見ると、切り戻した茎の空洞の中にアリが出入りしていて、「まさか巣を作ってる!?」とゾッとした経験、私もあります。
実はアリにとって、ダリアの茎の空洞は雨風をしのげる最高の物件なんです。特に「クロオオアリ」などは、枯れたり空洞化したりした植物の茎に巣を作る習性があります。放置しておくと、空洞内部をさらに削って巣を拡張し、茎の強度を著しく低下させてしまいます。最悪の場合、茎の中に卵を産み付けられ、ダリアがアリのマンションと化してしまうことも…。
しかし、アリが集まる最大の理由は他にあります。それは「アブラムシ」です。ダリアの柔らかい新芽にはアブラムシがつきやすく、彼らが出す甘い汁(甘露)を目当てにアリが集まってきます。アリはアブラムシをテントウムシなどの天敵から守るガードマンの役割をしているため、アリがいるということは、ほぼ確実にアブラムシも大量発生していると考えた方が良いでしょう。
効果的なアリ対策:巣ごと叩くのが正解
アリを見かけたとき、スプレー式の殺虫剤をシューッとかけたくなりますが、それは一時しのぎにしかなりません。なぜなら、目に見えているアリはほんの一部で、巣には女王アリや無数の幼虫が控えているからです。以下の手順で根本解決を目指しましょう。
- アブラムシを絶つ: まずは、アリを呼び寄せる「ご馳走(甘露)」を断ちます。アブラムシ専用の殺虫剤などで、新芽についているアブラムシを徹底的に駆除します。餌がなくなれば、アリも自然と寄り付かなくなります。
- ベイト剤(毒餌)の活用: これが最も効果的です。「スーパーアリの巣コロリ」や「アリアトール」などの置き型毒餌タイプを、アリの行列の近くや株元に設置します。働きアリに毒餌を巣へ持ち帰らせることで、茎の中に潜む女王アリや幼虫ごと、コロニー全体を一網打尽にできます。特に液状タイプの毒餌(アリメツなど)は、吸蜜性のアリによく効きます。
- 巣穴への直接攻撃NG: 茎の穴に直接殺虫スプレーを噴射するのは避けましょう。植物への薬害(化学火傷のような症状)が出る恐れがありますし、驚いたアリが散らばって、別の場所に巣を作ろうとするなど逆効果になることもあります。
茎に穴が開くメイガ被害の特徴
茎にポッカリと穴を開けて侵入する代表的な害虫が、メイガ類(フキノメイガやアワノメイガなど)の幼虫です。ガーデニング用語では、茎の髄(芯)を食べることから「ズイムシ」や「シンクイムシ」とも呼ばれ、ダリア栽培における最大級の天敵の一つです。
彼らの特徴は、非常に貪欲な食欲です。孵化したばかりの小さな幼虫が茎に穴を開けて侵入すると、そこから下に向かって、あるいは上に向かって、柔らかい髄の部分や空洞の内壁をバリバリと食べ進みます。侵入された穴からは、「フラス」と呼ばれる木屑や粉のような糞がポロポロと排出されます。株元に不思議な粉が落ちていたら、頭上にある茎のどこかに穴が開いている証拠です。
被害が進行すると、食害された部分の茎はペラペラの薄皮一枚の状態になり、少しの風で折れてしまいます。また、内部の維管束が切断されるため、水が上に上がらなくなり、花や蕾がついた先端部分だけが急に「クタッ」と萎れてしまうのが特徴的な症状です。「水やりをしたのに復活しない」という場合、根腐れか、このズイムシ被害のどちらかであることが多いですね。
戦い方:見つけたら即断即決
ズイムシ被害を見つけたら、迷っている暇はありません。以下の対処を行ってください。
- 捕殺: 前述の「針金攻撃」か、カッターで茎を縦に少し切開して幼虫を取り出す方法で物理的に排除します。
- 切り戻し: 被害がひどい場合は、泣く泣く切り戻します。
- 成虫対策: そもそも卵を産ませないことが重要です。成虫(蛾)が飛来して卵を産み付けないよう、定期的に「スミチオン乳剤」などの殺虫剤を散布して防除することも大切です。特に夜間に飛来するので、防蛾灯などは家庭では難しいですが、夕方の見回りは有効です。
茎が折れた場合の修復テクニック

台風の翌朝や、手入れ中にうっかりホースを引っ掛けてしまって、大切に育てていたダリアの太い茎がポッキリ……。目の前が真っ暗になる瞬間ですが、諦めるのはまだ早いです! 完全に切断されて地面に落ちてしまった場合は難しいですが、皮一枚でも繋がってぶら下がっている状態なら、ダリアの驚異的な生命力で復活させられる可能性が高いんです。
植物には「形成層」という再生能力の高い組織があり、ここが密着していれば、人間が骨折した骨を繋ぐように、傷口を修復して再び水や養分を通すことができます。時間との勝負ですので、見つけたらすぐに以下の手順で緊急手術を行いましょう。
緊急手術:茎の接合手順
- 位置合わせ: 折れた部分をそっと持ち上げ、元の位置に丁寧に戻します。断面がパズルのようにピッタリ噛み合うように調整してください。ここでズレていると癒合しません。
- 固定(テーピング): 「接ぎ木テープ(ニューメデールなど)」があればベストですが、なければ強力な「ダクトテープ」や「ビニールテープ」、最悪の場合はセロハンテープでも構いません。傷口を完全に覆うように、少し強めに引っ張りながらグルグルと巻きつけ、密閉・固定します。隙間があると乾燥して細胞が死んでしまうので、密閉がカギです。
- 補強(添え木): テープだけでは自重でまた折れてしまうので、折れた箇所の上下に添え木(細い支柱や割り箸など)をあてがい、麻紐やビニールタイでしっかりと縛って固定します。人間で言うところの「ギプス」をするイメージです。
うまくいけば、1週間〜10日ほどで組織が癒合(ゆごう)し、萎れていた葉がシャキッと復活します。特に草丈が高くなる「皇帝ダリア」などは風で折れやすいですが、この方法で何度も危機を乗り越えた事例があります。
ただし、復活後もその部分は強度が弱いままなので、支柱によるサポートは収穫(冬の掘り上げ)まで外さないようにしてください。また、折れた部分から病原菌が入らないよう、トップジンMペーストなどの癒合剤を塗ってからテープを巻くと、さらに成功率が上がります。
ダリアの茎の空洞を守る栽培テクニック
ここからは、空洞構造を持つダリアを病気や腐敗から守り、長く楽しむために私たちができる、より具体的でプロフェッショナルなケア方法をご紹介していきます。日々のちょっとした手間で、トラブルは劇的に減らせます。
茎が黒いのは病気?腐敗との違い
「ダリアの茎が地際から黒くなっているんですが、これって病気でしょうか?」という相談をよく受けます。茎の黒変は非常にドキッとする症状ですが、実は「心配ない黒」と「危険な黒」の2パターンが存在します。この見極めを間違えると、健康な株を捨ててしまったり、逆に病気の株を放置して畑全体を全滅させてしまったりすることになります。冷静に観察しましょう。
パターン1:品種特性(安心な黒)
まず、安心できるケースから。ダリアには「銅葉(ブロンズリーフ)」や「黒軸(くろじく)」と呼ばれる、遺伝的に色素が濃い品種群が存在します。有名な「黒蝶(こくちょう)」や「NAMAHAGE ノアール」、「エタニティ」などが代表的です。これらの品種は、健康な状態でも茎が黒紫色や焦げ茶色をしています。これは「アントシアニン」という色素によるもので、紫外線から身を守る役割も果たしています。
見分けるポイントは「硬さと臭い」です。触ってみてカチカチに硬く、表面にツヤがあり、顔を近づけても植物特有の青っぽい匂いしかしなければ、それは品種由来の美しい「個性」ですので全く問題ありません。
パターン2:軟腐病(危険な黒)

一方で、絶対に警戒しなければならないのが「軟腐病(なんぷびょう)」などの細菌性の病気です。原因菌(Pectobacterium carotovorum)は高温多湿を好み、傷口から侵入します。
この場合、黒変した部分は水を含んだようにグズグズに柔らかくなり、触ると指が沈むほど脆くなっています。そして最大の特徴は臭いです。鼻を突くような、生ゴミが腐ったような強烈な悪臭がします。この臭いがしたら、ほぼ間違いなく軟腐病です。
| 特徴 | 品種特性(黒軸・銅葉) | 病気(軟腐病など) |
|---|---|---|
| 茎の硬さ | カチカチに硬い・ハリがある | ブヨブヨ・ドロドロに軟化 |
| 臭い | 無臭(植物の匂いのみ) | 強烈な腐敗臭(悪臭) |
| 進行速度 | 変化なし(成長に伴う) | 急速に広がる(1〜2日で倒れる) |
もし悪臭を伴って黒く腐っている場合は、残念ながら治療法はありません。細菌が土の中に広がるのを防ぐため、涙を飲んで株ごと土と一緒に掘り上げ、ゴミ袋に入れて密封処分してください。放置すると隣の株にも感染します。(出典:タキイ種苗『病害情報 軟腐細菌病』)
空洞化で茎が茶色く変色する理由
生育後期、特に秋口になると、茎の下の方(地際に近い部分)が茶色く変色し、表面がザラザラとしてくることがあります。「枯れてきたのかな?」と心配になりますが、これは多くの場合「木質化(もくしつか)」と呼ばれる自然現象です。
ダリアは草本植物(草)ですが、大きく成長して重くなった体を支えるために、茎の細胞壁をリグニンという成分で強化し、まるで木の幹のように硬く変化させることがあります。これを木質化と言います。触ってみて非常に硬く、爪が立たないほどで、乾いた感じであれば、株が充実している証拠ですので心配いりません。むしろ、しっかりと体を支える準備ができている健康な証です。
ただし、茶色く変色した部分に「灰色のカビ」がふわふわと生えていたり、水が染みたように柔らかくなっていたりする場合は、「灰色かび病(ボトリチス病)」の疑いがあります。この病気は湿気を好むため、葉が混み合っている場所で発生しやすいです。この場合は、変色した部分を取り除き、殺菌剤(ベンレートやダコニルなど)を散布して対処する必要があります。下の方の葉をむしって、風通しを良くして湿気を逃がしてあげることも重要な予防策です。
茎が腐るのを防ぐ水抜きの手順

梅雨の長雨や、台風による激しい雨の後、切り戻した茎の空洞に水が溜まってしまうことがよくあります。先ほど説明したように、ダリアの茎は「節」に仕切りがあるため、入った雨水は下まで抜けずに、コップの水のように節の上に溜まってしまいます。
「水くらい平気でしょう?」と思うかもしれませんが、これが意外と危険なんです。夏場の直射日光下では、この溜まった水がお湯のように高温になり、茎を内側から「茹でて」しまうことになります。また、水が腐って酸素がなくなり、嫌気性菌(酸素が嫌いな菌)である軟腐病菌などの温床となり、そこから一気に腐敗が広がる原因にもなります。
もし、茎を軽く振った時に「チャプチャプ」と音がしたり、光に透かして水位が見えたりした場合は、迷わず緊急の外科手術「ドレナージ(水抜き)」を行いましょう。
水抜き(ドレナージ)の具体的ステップ
- 道具の準備: キリ、ドリル(細いビット)、あるいは先端の尖ったナイフを用意します。感染を防ぐため、使う前にライターの火で炙るか、アルコール消毒液で拭いて必ず消毒しておきましょう。
- 穴を開ける位置: 水が溜まっている節の「すぐ上」、つまり空洞の底にあたる部分を狙います。節の下だと水が残ってしまうので、底のギリギリを狙うのがコツです。
- 穿孔(せんこう): 茎の横から慎重に穴を開けます。反対側まで貫通させる必要はなく、内部の空洞に届けばOKです。穴が開くと、中から水がツーっと勢いよく流れ出てきます。
- 事後処理: 水が抜けきれば、内部が乾燥して腐敗のリスクは激減します。開けた穴はそのままで構いません。心配な場合は殺菌剤をスプレーしておきましょう。
アルミホイルで空洞の蓋をする方法
切り戻しや仕立て直しで太い茎をバッサリ切った際、直径2〜3cmもの大きな空洞が剥き出しになることがあります。「ここに雨が入ったら終わりだ…」と直感的に分かりますよね。そんな時は、物理的に「蓋(キャップ)」をしてあげるのが最も親切で確実な対策です。
専用の「支柱キャップ」なども市販されていますが、サイズが合わないことも多いです。そこで私がおすすめするのは、どこの家庭にもある「アルミホイル」を使った方法です。これが安くて、簡単で、しかも効果絶大なんです。
アルミホイル・キャップの作り方とメリット

- アルミホイルを10cm四方くらいの大きさにカットします。
- 切り口を覆うように被せ、茎の側面に沿ってギュッと握り、密着させます。
- 風で飛ばされないよう、輪ゴムや麻紐で口元を縛って固定します。
アルミホイルの最大のメリットは「遮光性」です。サランラップやビニール袋でも防水はできますが、透明だと太陽光を通してしまい、内部が温室のように高温になって蒸れてしまいます。アルミホイルなら光を反射し、温度上昇を抑えつつ、雨水の侵入を完璧に防いでくれます。
【超重要】必ず乾燥させてから蓋をする!
これが最大の失敗ポイントです。雨の日や、切り口から樹液が出ている濡れた状態で蓋をしてしまうと、内部の湿度が100%になり、逃げ場のない湿気でサウナ状態となり、カビが大発生します。
切り戻しは必ず「晴天が続く日の午前中」に行い、切り口がカラカラに乾いたのを確認してから(できれば翌日以降に)アルミホイルを被せるようにしてください。もし乾く前に雨が降りそうなら、傘をさすなどして一時的にしのぎ、晴れてから改めて処置しましょう。
空洞を見せない茎を切る場所の正解
「そもそも、茎の空洞に水が入らないように切ればいいのでは?」その通りです。実は、ハサミを入れる位置を数センチ変えるだけで、空洞リスクを劇的に減らすことができるんです。これを知っているだけで、管理の手間がグッと減りますよ。
1. 花がら摘みの場合:ガクのすぐ下で切る(中実部分)

花が咲き終わって切る時は、花首の長い茎をどこで切るか悩みますよね。正解は「花の下にあるガク(総苞)のすぐ下」です。実は、花に近い茎の先端部分は、花を支えるために維管束が集中していて中身が詰まっており、空洞になっていない(中実である)ことが多いのです。
ここで切れば、切断面に穴が開かないので、雨水が入る心配はゼロです。花茎が長く残って不格好に見えるかもしれませんが、枯れてから根元で折り取るのが植物にとっては一番安全です。
2. 切り戻しの場合:節の少し上で切る(隔壁利用)

草丈を低く抑えるために茎を途中で切る場合は、どうしても太い茎を切るので空洞が出てしまいます。この時は、必ず「節の1〜2cm上」で切るようにしましょう。
前述の通り、節の部分には硬い隔壁(仕切り)があります。節のすぐ上で切れば、仮に切り口から水が入ったとしても、そのすぐ下にある隔壁がストッパーとなり、水が株の深部まで落ちるのを防いでくれます。これを逆に「節の下」や「節と節の真ん中」で切ってしまうと、深い深い井戸を作ることになり、腐敗リスクが跳ね上がります。浅いカップにするか、深いコップにするか、その差は歴然ですよね。
ダリアの茎の空洞対策まとめ
ここまで、ダリアの茎の空洞に関する様々な情報をお伝えしてきました。一見すると欠点に思える空洞も、ダリアが生き抜くための大切な構造です。私たち人間が少し手を貸してあげるだけで、トラブルは未然に防ぐことができます。最後に、今回の記事の要点をリストにまとめましたので、困った時のチェックリストとしてご活用ください。
この記事の要点まとめ
- ダリアの茎の空洞は、軽量化と強度を両立させるための自然な成長プロセスである
- 茎全体が筒抜けなのではなく、節の部分には隔壁があり個室のように分かれている
- 茎の穴からおがくずのような粉(フラス)が出ていたら、メイガの幼虫がいる確実なサイン
- 害虫予防には、植え付け時にオルトラン粒剤をまくのが最も効果的で楽な方法
- アリが行列を作っている場合は、アブラムシの駆除と同時にベイト剤(毒餌)を設置する
- 強風などで茎が折れても、皮一枚繋がっていればテープで固定して修復できる
- 茎が黒くても、硬くてツヤがあり無臭であれば、「黒蝶」などの品種特性の可能性が高い
- 不快な悪臭を伴う、ドロドロとした黒い腐敗は「軟腐病」なので、即座に株ごと処分する
- 茎の下部が茶色く硬くなるのは「木質化」であり、株が充実している証拠
- 茎内部に水がチャプチャプ溜まったら、節の上にドリル等で穴を開けて排水(ドレナージ)する
- 太い茎を切った後の蓋には、遮光性と密着性に優れたアルミホイルが最適
- アルミホイルで蓋をする際は、必ず切り口を完全に乾燥させてから行う(蒸れ防止)
- 花がら摘みは、空洞がない「ガクの直下」で行うのが最も安全な切り方
- 切り戻しをする際は、水の侵入を最小限に抑えるため「節の少し上」で切る
- 日々の水やりついでに茎の様子を観察し、変化に早く気づくことが一番の対策になる
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