PR

ラベンダーの花が終わったらどうする?剪定や夏越しと活用法

ラベンダー 花が終わったら1 満開のラベンダーと園芸用ハサミ、手袋 ラベンダー
記事内に広告が含まれています。
PR

こんにちは、My Garden 編集部です。

初夏の風に揺れる美しい紫色の花穂と、心を穏やかにしてくれる爽やかな香り。ラベンダーは私たちガーデナーにとって、憧れであり、また癒やしの存在でもあります。しかし、満開の時期を過ぎ、鮮やかだった花色が少しずつあせ始め、茶色が目立つようになってくると、「さて、これからどうすればいいのだろう?」と迷ってしまうことはありませんか。せっかく手塩にかけて育てたのだから、来年もまた元気に咲いてほしいと願うのは当然のことです。

実は、ラベンダーにとって日本の高温多湿な夏は、私たちが想像する以上に過酷な環境です。原産地である地中海の乾燥した涼しい気候とは真逆の環境下で、花が終わったあとの「剪定」「水やり」「追肥」といった管理を適切に行えるかどうかが、その株が夏を生き残れるか(夏越しできるか)を決定づけると言っても過言ではありません。この時期の適切な手入れは、単なる園芸作業ではなく、愛する植物のための「救命措置」なのです。

また、剪定で刈り取った花をただ捨てるのではなく、ドライフラワーや挿し木として活用する方法を知っていれば、ラベンダーのある暮らしはもっと豊かで楽しいものになります。この記事では、ラベンダーの花が終わった直後の具体的な管理テクニックから、その恵みを生活に取り入れるアイデアまで、初心者の方にも分かりやすく、かつ深掘りして徹底解説します。

この記事のポイント

  • 品種ごとの適切な剪定時期と、失敗しない切り戻しの具体的ルール
  • 夏枯れや根腐れを確実に防ぐための、水やりと肥料の厳格な管理法
  • 剪定した枝を無駄にしない、挿し木での増殖やドライフラワー作成のコツ
  • 来シーズンも満開の花を咲かせるための、年間を見通した栽培スケジュール
PR

ラベンダーの花が終わったら行う剪定と夏越し

ラベンダー 花が終わったら2 花が終わって茶色くなり剪定が必要な状態のラベンダーの株

ラベンダーの花が終わったら、まず最初に取り組むべき最重要課題、それが「剪定」と「栽培環境の緊急見直し」です。ラベンダーの原産地である地中海沿岸地域は、夏は雨が少なく乾燥しており、気温も日本ほど上がりません。対して日本の夏は、亜熱帯のように高温かつ多湿です。この気候の決定的なミスマッチにより、ラベンダーは開花で体内のエネルギーを使い果たした直後に、最も苦手な「高温多湿」という敵と戦わなければなりません。

もし、花が終わった状態で剪定をせず放置してしまうと、残った花穂や密集した枝葉が湿気を抱え込み、株内部が蒸し風呂のような状態になります。これは「蒸れ」と呼ばれ、カビや病原菌の温床となるだけでなく、植物の呼吸を阻害し、下葉から枯れ上がっていく原因となります。品種ごとの特性に合わせたタイミングで勇気を持ってハサミを入れ、風通しを劇的に良くしてあげることが、ラベンダーの命を守り、来年へ繋ぐための唯一の道なのです。

剪定時期はいつ?品種別のタイミング

ラベンダー 花が終わったら3 イングリッシュ系、フレンチ系(ストエカス)、ラバンディン系のラベンダーの花の形状比較

「ラベンダー」と一口に言っても、実は世界中には多くの品種が存在し、日本で流通しているものだけでもいくつかの主要な系統に分かれています。それぞれ「花が終わった」と判断すべき時期や、剪定の緊急度(どれくらい急いで切るべきか)が異なります。適切な管理を行うためには、まずご自宅の庭や鉢に植わっているラベンダーがどのタイプ(系統)であるかを正確に把握することが、夏越し成功への第一歩です。

例えば、北海道の富良野などのラベンダー畑で見られる「イングリッシュ系(コモンラベンダー)」は、香りが素晴らしく人気がありますが、暑さにはめっぽう弱いという弱点があります。そのため、本格的な梅雨入り前の長雨が始まる頃、あるいは気温と湿度が急上昇する前に剪定を終わらせておくことが、生存率を大きく左右します。「まだ花が咲いているからもったいない」と躊躇しているうちに梅雨に入ってしまうと、その湿気だけで致命傷になることもあるのです。

一方で、ウサギの耳のような苞(ほう)が特徴のストエカス系や、大型になるラバンディン系は、比較的暑さに強いですが、成長スピードが早いため別の注意が必要です。以下の表を参考に、お手持ちの品種に最適なタイミングを見極めてください。

系統名(代表品種) 開花時期 剪定のタイミング 緊急度と理由
ストエカス系
(フレンチラベンダー、アボンビューなど)
4月~5月 一番花が終わったらすぐ
(5月~6月上旬)
【高】
開花時期が早く、その後の枝の成長も非常に旺盛です。花が終わったら直ちに剪定し、梅雨が来る前に株全体のボリュームを減らして風通しを確保しないと、内部から蒸れて枯れ込みます。
アングスティフォリア系
(イングリッシュ系、ヒッドコート、おかむらさきなど)
5月下旬~6月 梅雨入り前~湿度が上がる前
(6月~7月上旬)
【極高】
最も高温多湿に弱いため、雨が続く前に剪定を完了させることが「生存」に直結します。花が少し残っていても、梅雨入り宣言が出たら切り戻すくらいの決断が必要です。
ラバンディン系
(グロッソ、スーパーセビリアンなど)
6月下旬~7月 花穂の収穫と兼ねて実施
(7月頃)
【中】
暑さに強く強健ですが、株が大型化しやすいため、放置すると株元の風通しが悪くなります。花穂の収穫と同時に剪定を行い、夏に向けたスリムな体型に整えます。

四季咲きの品種について
デンタータ系(レースラベンダー含む)などの四季咲き性品種は、特定の「旬」に限らず、温度さえあれば年間を通して開花します。これらは花が終わって茶色くなった花茎を見つけ次第、こまめに根元から切ることで、常に美しい状態を保てます。ただし、真夏は株の体力を温存させるために、あえて蕾のうちに摘み取って「夏休み」させてあげるのも、長く楽しむためのテクニックです。

どこで切る?切り戻しの位置と方法

ラベンダー 花が終わったら4 ラベンダーの花後の剪定位置を示す図解。葉と新芽の上で切るポイント

いざハサミを持ってラベンダーの前に立つと、「どこまで深く切っていいのだろう?」「切りすぎて枯らしてしまったらどうしよう」と不安になるものです。花後の剪定には、大きく分けて花穂だけを摘む「花がら摘み」と、株の形を整える「切り戻し(強剪定)」がありますが、この梅雨前の時期に行うのは、夏を乗り切るための「透かし剪定(弱剪定)」です。

この剪定の目的は明確に二つあります。一つは、種子形成(生殖生長)へのエネルギー浪費を強制的にストップさせ、自身の根や茎葉を維持するため(栄養生長)に体力を使わせること。もう一つは、植物ホルモン(オーキシン)の流れを変えて「頂芽優勢」を打破し、株元の低い位置にある脇芽の成長を促して「足元のスカスカ化」を防ぐことです。

具体的な切断位置は、「葉が付いている節の2~3節下」、あるいは「元気な新芽がちょこんと顔を出している位置のすぐ上」です。ここが最大のポイントです。花穂のすぐ下で茎だけを切っても、残った長い茎はいずれ枯れ込み、そこから腐敗菌やカビが侵入して、健全な枝まで巻き添えにして枯らしてしまう恐れがあります。必ず「葉」がある健全な部分まで切り戻してください。

また、高さの調整だけでなく、株の「中身」を減らすことも重要です。株の内側を覗き込み、日光が当たらずにひょろひょろと伸びた細い枝、枯れて茶色くなった枝、そして地面に這うように伸びている下枝を根元から取り除きます。これらは泥はねによる病気感染のルートになったり、風の通り道を塞いで蒸れの原因になったりします。剪定後の理想的な姿は、上から見たときに地面がチラチラと見え、横から見たときに風がスッと通り抜けるような「逆三角形(盃型)」です。

ラベンダー 花が終わったら5 ラベンダーの木質化した茶色い茎と緑色の茎の境界。強剪定の注意点

【重要】茶色い木質部だけで切らないでください
ラベンダーの株元は年数が経つと、まるで樹木のように茶色く硬く「木質化(Old Wood)」します。初心者が陥りやすい最大の失敗は、この「葉が全くない茶色い棒のような部分」でバッサリと切ってしまうことです。ラベンダーの古い枝には、隠れた芽(潜伏芽)が少なく、葉のない部分で切ると新しい芽が出ずに、その枝ごと枯死してしまう可能性が極めて高いです。どれだけ切りたくても、必ず「緑色の葉」や「小さな新芽の膨らみ」が残っている位置でハサミを止めること。これがラベンダー剪定の鉄則中の鉄則です。

肥料はお礼肥だけで夏は与えない

ラベンダー 花が終わったら6 ラベンダーの株元に少量のお礼肥(緩効性肥料)を与えている様子

満開の花を咲かせ、素晴らしい香りを届けてくれたラベンダーは、その開花プロセスで体内の養分を大量に消費し、言わば「お腹が空いて疲れ切った状態」にあります。そのため、剪定が終わった直後(6月頃)に、その労をねぎらい、減った体力を速やかに回復させる目的で「お礼肥(おれいごえ)」を与えます。

この時に選ぶべき肥料は、葉や茎をどんどん伸ばす「窒素(N)」が控えめで、根の張りや病気への抵抗力を高める「リン酸(P)」や「カリ(K)」が強化された緩効性肥料です。ハーブ専用の肥料や、草花用の緩効性化成肥料を、規定量よりも少なめに株元にばら撒きます。「少なめ」にするのは、これからやってくる過酷な夏に備えるためです。

そして、ここで絶対に守らなければならない、生死を分けるルールがあります。それは「梅雨入りからお盆明け(8月下旬)までの高温期は、肥料を一切与えてはならない」ということです。園芸に熱心な方ほど「元気がないから」と肥料をあげたくなりますが、これは逆効果です。

日本の夏のような高温時、ラベンダーは生命維持のために代謝を抑え、半休眠のような状態になります。この時期に土壌の肥料濃度が高いと、根は肥料成分を吸収するために無理やり呼吸量を増やさなければならず、ただでさえ暑さで消耗している株に致命的な代謝ストレスを与えてしまいます。また、土の浸透圧が高まることで根が水分を吸えなくなる「肥料焼け」も起こしやすくなります。夏場に肥料をやることは、夏バテで胃腸が弱っている人間に、脂っこいステーキを無理やり食べさせるようなものです。夏は「水」と「活力剤(肥料成分を含まないもの)」だけで耐え忍ぶのが正解です。

肥料管理の鉄則カレンダー

  • 6月(花後すぐ):体力回復のための「お礼肥」を少量与える(必須)。
  • 7月~8月中旬(酷暑期):固形肥料・液体肥料ともに完全ストップ。どうしても元気がない場合は、メネデールやリキダスなどの植物活力剤を規定より薄めて与える。
  • 9月下旬(彼岸過ぎ):涼しくなり、新芽が動き出したら「秋の追肥」を開始し、次の成長を促す。

枯れるのを防ぐ夏越しの水やり

ラベンダー 花が終わったら8 高温多湿を防ぐためラベンダーの株元へ静かに行う夕方の水やり

ラベンダー栽培において、夏場の水やりほど難しく、かつ重要な作業はありません。「ラベンダーは乾燥を好む」という情報を鵜呑みにして水を極端に控えすぎて枯らしてしまう「水切れ枯死」や、逆に心配で毎日水をあげてしまい根を腐らせる「過湿枯死」が後を絶ちません。成功の鍵は「メリハリ」と、科学的な根拠に基づいた「時間帯」の選択です。

まず、基本の水やりルールは「土の表面が完全に乾いて白っぽくなっているのを確認してから」です。指で土を少し掘ってみて、中まで乾いているか確認するのも良いでしょう。そして、いざ与えるときは、鉢底から水がジャーっと流れ出るまでたっぷりと与えます。中途半端に「コップ1杯だけ」のような水やりを続けると、鉢の中の古い空気(二酸化炭素)が排出されず、新鮮な酸素が根に届かないため、根が窒息して弱ってしまいます。

そして、夏場に最も注意すべきなのが「水やりの時間帯」です。絶対に避けるべきなのは、日中の気温が高い時間帯や、まだ気温が下がりきっていない夕方前の水やりです。この時間に水を与えると、鉢の中に溜まった水分が強烈な太陽熱や地熱で温められ、あっという間にお風呂のような温度(40度以上)になります。これが根の細胞を煮て破壊する「高温障害」を引き起こし、朝は元気だった株が、夕方には急にふにゃふにゃに萎れて枯れてしまう原因となります。

水やりは必ず早朝の日の出前(朝5時〜6時頃)か、完全に日が落ちて気温が下がった夜(20時以降など)に行いましょう。また、ホースやジョウロで頭からシャワーのように水をかけるのも厳禁です。密集した葉の間に水が溜まると蒸れの原因になり、水滴がレンズとなって葉焼けを起こすこともあります。株元の土へ、静かに優しく水を注ぐようにするのがプロの育て方です。

挿し木で株を増やし更新する手順

ラベンダー 花が終わったら11 ラベンダーの挿し木の手順。挿し穂の調整と下葉処理の方法

ラベンダーは「木本性(もくほんせい)」の植物、つまり低木です。草花とは違い、数年経つと株元がゴツゴツと木質化し、樹形が乱れやすくなります。また、日本の気候では突然の「立ち枯れ病」などで、昨日まで元気だった親株を突然失うリスクも常にあります。そんな「もしも」の時の保険として、また将来的な株の若返り(更新)用として、花後の剪定で切り落とした枝を使って「挿し木(クローン増殖)」をしておくのが、賢いガーデナーの常識です。

ラベンダーの挿し木は、コップの水に挿しておく「水挿し」よりも、最初から土に挿す「土挿し」の方が、切り口への酸素供給がスムーズで成功率が高いとされています。以下の手順で、ぜひ来年のための予備苗を作ってみてください。

  1. 挿し穂の選別と準備(5月~6月がベスト)
    花後の剪定で出た枝の中から、まだ茶色く木質化していない、若くて充実した緑色の枝を選びます。細すぎる枝や、花が咲いていた直下の茎は避け、勢いのある側枝を使うのがコツです。これを7~10cmほどの長さに切り揃えます。
  2. 水揚げと切り口の調整
    水を吸い上げる面積を広げるため、切り口をよく切れるカッターナイフなどで斜めにスパッと切り直します(ハサミだと導管を潰してしまうことがあるため、カッターが推奨されます)。その後、1時間ほど水を入れたコップに挿して、植物の隅々まで水を吸わせます(水揚げ)。
  3. 下葉の処理
    土に埋まることになる部分(下3分の1程度)にある葉は、手で丁寧に取り除きます。葉が土に触れたり埋まったりすると、そこから腐敗菌が繁殖しやすくなるためです。また、残った上部の葉が大きすぎる場合は、蒸散(葉からの水分蒸発)を抑えるために、葉を半分にカットするのも有効なテクニックです。
  4. 用土の準備と挿入
    肥料分の入っていない清潔な土(バーミキュライト、パーライト、赤玉土小粒、または市販の挿し木専用土)を用意します。ここで肥料入りの培養土を使うと、切り口が肥料負けして腐る原因になります。割り箸などで土に穴を開け、挿し穂を傷つけないように優しく挿します。この時、切り口に「ルートン」などの発根促進剤を薄くまぶしておくと、発根率が劇的に向上します。
  5. 管理と鉢上げ
    挿し終わったらたっぷりと水を与え、直射日光の当たらない、風通しの良い明るい日陰で管理します。土が乾かないように霧吹きなどで湿度を保つ必要がありますが、過湿によるカビにも注意が必要です。順調にいけば約1ヶ月ほどで発根し、新しい小さな芽が動き出します。それを確認したら、肥料入りの培養土を入れたポットに移植(鉢上げ)し、通常の苗として育てていきます。

鉢植えと地植えの置き場所管理

剪定や水やりといった「お世話」だけでなく、ラベンダーが置かれている「物理的な環境」を整えてあげることも、夏越し成功率を高めるための極めて重要な要素です。人間がエアコンの効いた部屋で休むように、ラベンダーにも涼しい環境を提供してあげましょう。

鉢植えの場合:移動と断熱

ラベンダー 花が終わったら9 ポットフィート(鉢台)を使用して地面の熱から守られているラベンダーの鉢植え

鉢植えの最大のメリットは「移動できること」です。長雨が続く梅雨の時期は、雨の当たらない軒下やベランダの奥に避難させましょう。また、真夏の直射日光、特に午後からの強烈な西日は植物にとって過酷すぎます。午後は日陰になるような建物の東側や、遮光ネット(寒冷紗)の下などが理想的な避暑地です。

さらに注意したいのが「地面からの輻射熱(ふくしゃねつ)」です。コンクリートやタイルの上に鉢を直置きすると、照り返しの熱が鉢に直接伝わり、根が高温で茹で上がってしまいます。「ポットフィート」「レンガ」、あるいは「フラワースタンド」を使って鉢を地面から数センチでも浮かせ、鉢底の通気性を確保することで、鉢内温度の上昇を劇的に防ぐことができます。

地植えの場合:マルチングでの防御

地植えの場合は移動ができませんが、「マルチング」という技法で環境を改善できます。株元の土の上に被覆資材を敷くことをマルチングと言いますが、ラベンダーの場合は素材選びが生死を分けます。腐葉土やバークチップなどの有機質マルチは、保水性が高く、分解される過程で熱を持つこともあるため、日本の高温多湿な夏では「蒸れ」の原因になり推奨されません。

おすすめは、水はけが良く、熱を反射する「白い砂利」や「軽石」、あるいは「わら」です。これらを株元に敷くことで、白い色が太陽光を反射して地温の上昇を抑えるとともに、雨による泥はねを防ぎ、土壌由来の病原菌が葉に付着するリスクを減らすことができます。特に泥はね防止は、枯れ込み病の予防に絶大な効果があります。

ラベンダーの花が終わったら楽しむ活用法

花が終わったあとのラベンダーは、ただの「燃えるゴミ」として処分してしまうには、あまりにも惜しい魅力と機能を持っています。剪定した花茎や葉には、私たちの心を癒やす精油成分(フィトケミカル)がたっぷりと残っているからです。ここでは、収穫したラベンダーを最後の最後まで無駄なく使い切り、日々の暮らしを香り豊かに彩るための具体的なアイデアと、プロ直伝のテクニックをご紹介します。

ドライフラワーにする乾燥のコツ

ラベンダー 花が終わったら10 輪ゴムで束ねて逆さに吊るし乾燥させているラベンダーのドライフラワー作り

ラベンダーの活用法として最もポピュラーかつ基本的なのが、ドライフラワー作りです。雑貨店で売られているような、鮮やかな青紫色と強い香りを残すためには、漫然と干すのではなく、「収穫のタイミング」「スピード乾燥」という二つの鉄則を守る必要があります。

まず収穫時期ですが、実は花が完全に開いた「満開」の状態はドライフラワーには不向きです。満開の花は、乾燥中にポロポロと花粒が落ちやすくなる「花落ち」が激しく、また香り成分も揮発して弱くなっています。ベストなタイミングは、まだ蕾(つぼみ)の状態、あるいは花穂の下の方の小花が1~2個咲き始めた「咲き始め」の頃です。この時期に収穫することで、ガクが花弁をしっかり保持し、濃厚な香りを内部に閉じ込めたまま乾燥させることができます。

乾燥させる際は、蒸れやすい下葉を取り除き、10本程度の小束にして輪ゴムできつく縛ります。麻紐などはおしゃれですが、乾燥が進むと茎の水分が抜けて細くなるため、隙間ができて抜け落ちてしまうことがあります。輪ゴムなら茎の収縮に合わせて縮んでくれるので、しっかりと束をキープできます。

干す場所は、直射日光の当たらない、風通しの良い日陰を選びます。紫外線は花の色素を破壊し、茶色く退色させてしまうため厳禁です。さらに美しく仕上げる裏技として、扇風機やエアコンの除湿風が当たる場所に吊るすのがおすすめです。自然乾燥でダラダラと時間をかけるよりも、数日~1週間以内の短期間で一気に水分を抜くことで、生花に近い鮮やかな紫色をそのまま残すことができます。

香りを生かすポプリや虫除け

乾燥させた花穂から花粒を指でしごき落とせば、ポプリとしてさらに多様な用途に使えます。お気に入りのガラス瓶に入れてインテリアにしたり、通気性の良いコットンやオーガンジーの袋に入れて「サシェ(匂い袋)」にしたりすれば、場所を取らずにどこでも香りを楽しめます。

ラベンダーの香り成分である「酢酸リナリル」や「リナロール」には、優れた鎮静作用があり、交感神経の興奮を抑えてリラックスさせる効果があることが科学的にも広く知られています。厚生労働省の「統合医療」情報発信サイト(eJIM)においても、ラベンダーの精油(アロマセラピー)や経口摂取が、不安症の改善や睡眠の質の向上に対して有益である可能性が示唆されています(出典:厚生労働省eJIM『ラベンダー』)。

さらに面白いことに、この芳香成分は人間にとっては「癒やし」ですが、多くの昆虫にとっては「嫌悪すべき臭い」として作用します。特に蚊、ハエ、ダニ、そしてゴキブリなどは、リナロールやカンファーといったテルペン系の香りを本能的に避ける傾向(忌避活性)があります。そのため、ラベンダーのサシェをクローゼットやタンスに入れれば衣類の防虫剤代わりに、靴箱に入れれば消臭と防虫の二役を、そしてキッチンのシンク下などの暗所に置けばゴキブリ対策としても期待できます。化学殺虫剤を使いたくない場所でも、人にも環境にも優しい「天然の防虫剤」として安心して活用できるのです。

食用(ハーブティー・クッキー)にする場合の注意
自家製のラベンダーでハーブティーやクッキーを作りたい場合は、品種選びが極めて重要です。香りが甘くマイルドな「イングリッシュ系(コモンラベンダー)」が食用(カリナリー)に適しています。一方で、フレンチ系やラバンディン系は「カンファー(樟脳)」の含有量が多く、薬品のようなツンとした香りと強い苦味があるため、食用にはあまり向きません。クラフト用と食用で品種を使い分けるのが、上級者の楽しみ方です。

二度咲きさせる手入れと品種

通常、ラベンダーの開花は春から初夏にかけての年1回だけですが、近年の品種改良は目覚ましく、「アロマティコ」「センティヴィア」「長崎Lav3」といった一部のイングリッシュ系改良品種や、もともと四季咲き性の強い品種は、上手にお世話をすれば秋にもう一度花を咲かせることができます。これを「二季咲き(にきざき)」と呼びます。

二度咲きを成功させるための最大のコツは、春の一番花を満開になるまで楽しまず、早めに収穫・剪定してしまうことです。具体的には「5分咲き~7分咲き」くらいのタイミングで切ってしまいます。これにより、植物が種子を作るために莫大なエネルギーを使うのを未然に防ぎ、温存された体力を次回の花芽形成(秋の花)に回させることができるのです。また、花茎を切る際に、株元から伸び始めている新しい側枝や脇芽を傷つけないように注意しましょう。これらが秋に花を咲かせる主役になります。

そして、過酷な夏を耐え抜き、気温が下がり始めて生育が再開する8月下旬~9月上旬頃に、緩効性肥料を追肥することで、秋の開花スイッチを入れます。暖地では10月~11月頃に、春よりは少し小ぶりですが、色が濃く香りの高い秋のラベンダーを楽しむことができるでしょう。

冬越しに向けた秋の強剪定

過酷な日本の夏を無事に乗り越え、涼しい風が吹き始めた秋(温暖地では9月下旬~11月、寒冷地では春の雪解け後)には、翌年のための樹形作りとして「強剪定」を行います。

この時期の剪定は、夏の蒸れ防止のための「透かし剪定」とは異なり、株全体のプロポーションを整えることが主目的です。株の高さの3分の1から半分程度まで大胆に切り戻し、全体をこんもりとした半球状(ドーム型)に刈り込みます。こうすることで、冬の間に雪が積もっても枝が重みで裂けるのを防ぎ(雪害対策)、翌春に新芽が一斉に吹き出した際に、密度が高く、まん丸とした美しい花姿になります。

特にフレンチ系ラベンダーは、春に花芽ができるイングリッシュ系とは異なり、秋から冬にかけて花芽の準備をすることが多いため、秋のうちに剪定を済ませておくことが必須です。春になってから深く切ると、せっかく準備された花芽を全て落としてしまうことになるので注意が必要です。

木質化した株の更新と寿命

どれほど大切に育てていても、ラベンダーは年数を重ねると株元が木のようにゴツゴツと硬くなり(木質化)、下葉が枯れ落ちて「足元がスカスカ」の状態になりがちです。これは植物の生理現象であり、ある程度は避けられません。しかし、木質化が進みすぎると萌芽力(新しい芽を出す力)が弱まり、強剪定からの回復ができずに突然枯れてしまうことがあります。

木質化した古い枝(Old Wood)からは新しい芽が出にくいため、葉のない位置まで無理に深く切ることは、そのまま枝の死を意味します。もし株元から「ひこばえ」と呼ばれる若くて勢いのある芽が出ている場合は、古くなった主幹を根元からノコギリなどで切り取り、その若い芽を新しい主役に据える「更新剪定」が可能です。

とはいえ、ラベンダーの株自体の寿命は、日本の気候下では一般的に5年~10年程度と言われています。株が老化して花つきが悪くなったり、形が乱れて回復不能になったりする前に、前述した挿し木を毎年少しずつ行って新しい苗を作っておき、親株が弱ってきたらスムーズに世代交代させる計画を持つことが、美しいラベンダーガーデンを永続させる秘訣です。

ラベンダーの花が終わったら翌年の準備を

「ラベンダーの花が終わったら」というタイミングは、私たちにとっては花のシーズンの終わりに見えますが、植物にとっては翌年の満開に向けた長い旅のスタートラインでもあります。一見すると、花後の剪定は「せっかく伸びた枝を切り落とす」というネガティブで残酷な作業に見えるかもしれません。しかし、それは日本の蒸し暑い夏という最大の試練からラベンダーを守り、次の春にまた素晴らしい香りと色を届けてもらうための、愛情ある「投資」なのです。

剪定した枝をドライフラワーやポプリにして、その香りを余すことなく楽しみつつ、株をゆっくり休ませてあげてください。秋になり、涼しい風が吹き始めた頃、濃い緑色の元気な葉が茂っている姿を見れば、あの暑い夏の日に行った手入れが報われた喜びをきっと感じられるはずです。植物の生理リズムに寄り添い、季節に合わせた適切な管理を行うことで、ラベンダーのある香り豊かな暮らしを、ぜひ長く楽しんでください。

この記事の要点まとめ

  • 花後の剪定は蒸れを防ぎ、高温多湿な日本の夏を越すための最重要作業
  • イングリッシュ系は梅雨入り前、フレンチ系は花後すぐに剪定し、手遅れを防ぐ
  • 剪定位置は必ず葉が残っている節の上で行い、枯死を招く木質部だけの切断は避ける
  • 肥料は花後に少量のお礼肥を与え、根腐れしやすい真夏は完全にストップする
  • 水やりは早朝か夜間の涼しい時間に行い、日中の高温障害を回避する
  • 鉢植えは軒下やスタンドを使って風通しを確保し、地面からの熱を遮断する
  • 剪定した枝は捨てずに挿し木にして、株の更新や予備苗作りに活用する
  • ドライフラワーは満開前(蕾~咲き始め)に収穫し、扇風機等で短期間乾燥させる
  • ラベンダーの香りはリラックス効果だけでなく、天然の防虫効果も期待できる
  • 一部の品種は早期剪定と秋の追肥を行うことで、秋にも花を楽しむ二季咲きが可能
  • 秋には強剪定を行って株をドーム状に整え、雪害対策と翌春の樹形作りを行う
  • 木質化した古株は無理に切らず、計画的に挿し木苗で世代交代を進める
  • 地植えの夏場のマルチングは、蒸れやすい腐葉土を避け、白い砂利や軽石を使用する
  • 食用利用には香りの良いイングリッシュ系品種を選び、観賞用と使い分ける
  • 適切な時期の管理が、翌年の美しい開花につながる循環型の園芸を楽しむ
タイトルとURLをコピーしました