こんにちは、My Garden 編集部です。
ラベンダーを育てていると、どうしても悩んでしまうのが剪定のタイミングと切る位置ではないでしょうか。せっかく綺麗に咲いてくれたラベンダーも、手入れを間違えて枯れてしまったら悲しいですよね。特に木質化が進んだ株や花後の処理など、どの時期にどこまで切れば良いのか迷ってしまうことはよくあります。「切りすぎたら枯れるんじゃないか」「でも切らないとボサボサだし…」と、ハサミを持ったまま株の前で固まってしまった経験、私にもあります。
失敗して枯らすのが怖くて、ついつい切り戻しを躊躇してしまう方も多いかもしれません。でも、ラベンダーにとって適切な剪定は寿命を延ばし、翌年も元気に花を咲かせるために欠かせない作業なんです。この記事では、ラベンダーの剪定に関する基本的な知識から、具体的な切断位置、そして失敗を防ぐためのポイントまでを詳しく解説していきます。
この記事のポイント
- ラベンダーの剪定で切るべき正確な位置と新芽の見極め方
- 季節ごとに異なる剪定の目的と具体的なカットの方法
- 木質化した古い枝を扱う際の注意点と再生のためのテクニック
- 種類による剪定方法の違いと失敗からのリカバリー策
ラベンダー剪定でどこを切るか?失敗しない基本位置

ラベンダーの剪定において最も重要なのは、植物の生理に基づいた「正しい切断位置」を知ることです。やみくもにハサミを入れるのではなく、なぜそこで切るのかという理由を理解すれば、もう迷うことはありません。ここでは、基本的な剪定のルールと、成長段階に合わせた位置の見極め方について解説します。
失敗しない剪定時期と切る場所の基本
ラベンダーの剪定で失敗しないためには、まず「切ってはいけない場所」と「切るべき場所」を明確に区別することが大切です。ラベンダー栽培における最大の躓きポイントは、一般的な草花(一年草や宿根草)と同じ感覚で、茎だけの状態にしてしまうことにあります。基本的なルールとしてこれだけは絶対に覚えておいていただきたいのが、「必ず緑色の葉や芽が残っている位置で切る」ということです。
ラベンダーは「草」ではなく「木」である
ラベンダーは植物学的には「常緑低木」、つまり小さな「木」に分類されます。苗のうちは草のように見えますが、成長するにつれて茎の根元から徐々に茶色く硬くなっていきます。これを「木質化(もくしつか)」と呼びます。一度木質化した古い枝は、樹皮が厚くなり、新しい芽を作るための組織(不定芽)が形成されにくくなるという特性を持っています。
そのため、まだ緑色の葉がついている部分を残さずに、茶色い枝だけの状態(強剪定のやりすぎ)にしてしまうと、光合成ができなくなるだけでなく、成長点が完全に失われてしまい、そのまま枯れ込んでしまうリスクが非常に高いのです。これを「切りすぎによる枯死」と呼び、多くのガーデナーが一度は経験する失敗です。
剪定の黄金ルール:命綱を残す
ハサミを入れる位置よりも下に、必ず「緑色の葉」もしくは「小さな新芽(脇芽)」が確認できること。これがラベンダーの生存を保証する唯一の命綱になります。迷ったら「葉があるところまでしか切らない」を徹底してください。
目的と時期で変わる「切る深さ」

また、剪定と一口に言っても、その目的や時期によって切るべき「深さ」は全く異なります。「いつ」「何のために」切るのかを理解していないと、翌年の花芽を落としてしまったり、冬の寒さで傷めてしまったりする原因になります。大きく分けると、以下の3つのパターンがあります。
| 剪定の種類 | 実施時期 | 主な目的 | 切る位置と強度の目安 |
|---|---|---|---|
| 透かし剪定 (間引き) |
梅雨入り前 (5月下旬~6月上旬) |
湿気対策・病気予防・日照確保 | 強度:弱~中 枝の付け根から根元で切る。 量は全体の30%~40%程度減らす。 |
| 花後剪定 (弱剪定) |
花が終わりかけの頃 (初夏) |
体力温存・夏越し対策・形状維持 | 強度:中 花茎の付け根、または 葉のある節の上で切る。 |
| 強剪定 (更新剪定) |
冬~早春 (2月下旬~3月上旬) |
株の若返り・樹形リセット・木質化抑制 | 強度:強 株全体の1/2~2/3まで。 ただし必ず芽の上で切る。 |
このように、時期によって「守りの剪定(透かし)」と「攻めの剪定(強剪定)」を使い分けることが重要です。特に初心者のうちは、リスクの低い「花後剪定」や「透かし剪定」から慣れていき、株の状態を見極められるようになってから、大胆な「強剪定」に挑戦することをおすすめします。
花後の剪定は新芽の上で切るのがコツ

花が咲き終わった後の剪定、いわゆる「花がら摘み」や「弱剪定(刈り込み)」は、株の体力を温存し、過酷な夏を乗り切るために欠かせない作業です。植物にとって開花し種子を作るプロセスは、莫大なエネルギーを消費します。種ができる前に花を切り落とすことで、そのエネルギーを根や茎の強化に回すことができるのです。
具体的な切断位置の特定手順
この時、「茎のどこで切ればいいの?」と迷う方が多いのですが、基本は花茎をたどって下に降りていき、しっかりとした葉(本葉)が付いている節の少し上で切るのが正解です。花がついている茎(花茎)はひょろ長く、葉がついていない区間がありますが、そこで切るのではなく、もう少し下の「葉があるエリア」まで戻って切るのがポイントです。
- 観察(Look):咲き終わった花穂の下へ視線を移します。
- 探索(Search):花茎だけのツルツルした部分を指でなぞりながら下へ進み、最初に葉(本葉)が出ている部分を見つけます。
- 決定(Decide):その葉の付け根(節)からさらに1~2節分くらい下、もしくは元気な新芽がちょこんと顔を出している位置を探します。この時、全体のバランスを見て高さを揃える意識を持つと仕上がりが綺麗です。
- 切断(Cut):確認した新芽や葉の約5mm~10mm上でカットします。
目的による切り方の違い
花後の剪定には、大きく分けて二つのシチュエーションがあります。目的に応じて微調整しましょう。
- ドライフラワーやポプリとして収穫する場合:
香りが最も強くなる「開花直前~満開(2分~8分咲き)」の時期に行います。茎を長く残してバンドル(束)にしたい場合は、花茎の付け根付近で切ります。しかし、その後に株の形を整えたい場合は、収穫と同時に葉を数枚つけた状態で少し深めに切ってしまっても構いません。 - 花が終わった後の整理(花がら摘み)の場合:
花色があせて茶色くなってきたら速やかに行います。特に四季咲き性のあるフレンチラベンダーや一部のイングリッシュ系品種の場合、早めに花を切ることで植物ホルモンのバランスが変わり、二番花、三番花の蕾が上がりやすくなります。
大量の株を扱う場合のテクニック
もし、お庭にラベンダーが大量に植わっていて、一本一本丁寧に切るのが困難な場合は、園芸用の刈り込みバサミやヘッジトリマーを使って、株全体の形を整えるようにザクザクと刈り込んでも(シェイプカットしても)大丈夫です。

注意:葉をゼロにしないこと
機械や大きなハサミで刈り込む場合も、必ず「切り口の下に緑の葉が残っている深さ」に留めることが重要です。ドーム型(半球状)を目指して刈り込みますが、深く切りすぎて葉を残さずに茎だけにしてしまうと、光合成工場を閉鎖することになり、株が一気に弱ってしまいます。
脇芽を確認して節の上でカットする方法

より丁寧に、そして確実に美しい樹形を作りたいなら、「脇芽(わきめ)」の存在を確認しながら一枝ずつ剪定することをおすすめします。これは外科手術のように繊細な作業ですが、ラベンダーの健康状態を劇的に向上させることができます。
「節」と「脇芽」の構造を理解する
植物の茎には「節(ふし)」と呼ばれる、葉が生えている(または生えていた)ポイントがあります。茎と葉の間には「節間(せっかん)」があります。ラベンダーの場合、この節の葉の付け根部分(葉腋・ようえき)に、次の成長の起点となる「脇芽」が潜んでいます。肉眼では小さな緑色の突起に見えたり、すでに小さな葉が展開していたりします。
植物には「頂芽優勢(ちょうがゆうせい)」という性質があり、茎の先端(頂芽)がある限り、そこからオーキシンというホルモンが出され、下の脇芽の成長を抑制しています。剪定によって先端を切り落とすことで、この抑制が解除され、脇芽が一斉に伸び出して枝数が増える仕組みになっています。
ミリ単位の切断位置が成否を分ける
ハサミを入れる位置は、この脇芽(または葉の付け根)の上5mm~10mmが理想的です。なぜこの数ミリが重要なのでしょうか。詳細を見てみましょう。
| 切る位置 | 植物への影響とリスク |
|---|---|
| 脇芽のギリギリ上 (0mm~2mm) |
危険:乾燥して脇芽自体が干からびたり、ハサミの刃圧で芽の組織を傷つけてしまうリスクがあります。芽が死ぬと、その枝は次の下の節まで枯れ下がります。 |
| 適切な位置 (5mm~10mm) |
最適:切り口が乾燥して少し縮んでも(枯れ込み)、脇芽には影響が及びません。植物が自然に防御層(壁)を作り、病原菌の侵入を防ぎやすくなります。これを「コンパートメント化」と呼びます。 |
| 脇芽から遠い (20mm以上残す) |
不適切:残った長い茎(スタブ/残し茎)は維管束の流れが止まり、やがて枯死して腐ります。ここがカビ(特にボトリチス菌など)の侵入口となり、株全体を腐らせる原因になります。 |
ハサミの角度と質も重要
切る際は、茎に対して垂直に切るのが基本ですが、太い枝の場合は雨水がたまらないように、少し斜めに切るテクニックもあります(水が流れ落ちるように)。また、切れ味の悪いハサミで押し潰すように切ると、導管が潰れて水を吸い上げられなくなったり、傷口の細胞が壊死して治りにくくなったりします。必ずスパッと切れる清潔な剪定バサミを使用し、断面をきれいに保つことも、「どこを切るか」と同じくらい重要な要素です。
梅雨前の透かし剪定で切るべき枝の選び方

日本でラベンダーを育てる上で、避けて通れない最大の難関が「梅雨」と「夏の高温多湿」です。地中海沿岸原産のラベンダーにとって、日本の蒸し暑さは命取りになります。気象庁のデータを見ても、6月から7月の日本は平均湿度が極めて高く、この環境下でラベンダーの内部が蒸れると、あっという間に弱ってしまいます。(参考:気象庁『世界の天候データツール』)
そこで必要になるのが、5月下旬~6月上旬に行う「透かし剪定」です。これは長さを短くするのではなく、混み合った枝を減らして風通しを良くする作業です。
どの枝を切ればいい?選定の基準(トリアージ)
透かし剪定では、切るべき枝を選別する「トリアージ」が重要です。健康な枝を残し、株に悪影響を与える枝を優先的に除去します。以下のような枝を見つけたら、躊躇なくハサミを入れてください。
- 枯死枝(こしし):完全に茶色く変色し、ポキポキと折れる枝。病原菌の温床になるため最優先で除去します。
- 逆さ枝(さかさえだ):株の外側へ向かわず、株の内側に向かって伸びている枝。中心部の通風を遮り、日当たりを悪くします。
- 下垂枝(かすいし):地面に垂れ下がって土に接している、または接しそうな枝。雨の日の泥はねによって、土壌中の病原菌(疫病菌など)が葉に付着し、感染症を引き起こすリスクが高いため切除します。
- 交差枝(こうさえだ):他の枝とクロスして擦れ合っている枝。風で擦れて傷がつくと、そこから病気が入ります。また、混雑の原因にもなります。
- ひこばえ・細弱枝:株元からひょろひょろと出ている細い枝。主枝になる見込みが薄い上に栄養を浪費し、株元の通気性を悪くします。
「切り戻し」ではなく「間引き」を意識する
透かし剪定の最大の特徴は、切る位置です。枝の途中で切る(切り戻し)と、そこからまた脇芽が出て余計に混雑してしまうことがあります。そのため、不要な枝は「付け根」や「分岐点」から元そのものを断つように切るのが鉄則です。
目指すべきゴール:吸い込みを作る
剪定後の理想的な状態は、株を真横から見た時に、向こう側の景色が背景としてチラチラと透けて見える程度です。これを園芸用語で「吸い込みを作る」と表現することがあります。全体の枝数の30%~40%を減らすイメージで、株の中まで風が通り抜けるようにしてあげましょう。これにより、株元の土が乾きやすくなり、根腐れのリスクも大幅に下がります。
強剪定の切り戻し位置と高さの目安

株を若返らせ、崩れてしまった樹形をリセットするための「強剪定(きょうせんてい)」は、ラベンダー栽培における一大イベントです。実施時期は、ラベンダーが休眠から目覚めて成長を始める直前の2月下旬~3月上旬(寒冷地では雪解け後の4月頃)がベストです。
高さの目安は1/2から2/3
強剪定では、思い切って株の高さの1/2から2/3程度まで切り詰めます。普段の剪定よりもかなり深く切ることになります。「こんなに小さくして大丈夫?」と不安になるかもしれませんが、適切な時期であればラベンダーは強い回復力を見せてくれます。低い位置で剪定することで、重心が下がり、倒伏や株割れを防ぐ効果もあります。
絶対的な基準は「高さ」ではなく「芽の位置」
ここで注意しなければならないのは、「地面から何センチ」や「全体の半分」といった数値的な目安はあくまで参考であり、絶対的な切断ラインは「株の状態」によって決まるという点です。
具体的には、剪定する枝一本一本に対して以下の確認を行います。
- 株の内側を手で押し広げ、木質化した太い枝の下の方を覗き込みます。
- 古い枝の表面に、プクッとした「小さな芽(萌芽)」や、冬を越した「若い葉」が存在するかを探します。
- 確認できた「一番下の芽」の約5mm~1cm上を、その枝の切断ラインとします。
この位置で切ることで、残された一番下の芽に根からの栄養が全集中し、春の訪れとともに勢いのある新しい枝(シュート)として急成長します。これが、こんもりとした美しいドーム型を作るための第一歩です。
芽が見当たらない場合の対処法
もし、切りたい高さよりも下に全く芽が見当たらない枝があった場合、どうすれば良いでしょうか。その枝を途中で切ると、成長点がなくなるため枯死します。選択肢は二つです。
- 枝抜き(推奨):その枝は再生能力が低いと判断し、根元(分岐点)から完全に切り落として、他の元気な枝にスペースを譲る。通気性も良くなります。
- 温存(リスクあり):他の枝を切って株元に日光を当てることで、将来的に芽吹くことを期待し、その枝だけは葉のある高い位置で切って残しておく。見た目は少し悪くなりますが、芽が出るのを待つ作戦です。
無理に丸坊主にするのではなく、芽のある位置に合わせて枝ごとに高低差をつけるのも、株を維持するための賢いテクニックです。
木質化したラベンダー剪定はどこを切るべきか
ラベンダーを数年育てていると必ず直面するのが「木質化(もくしつか)」の問題です。根元の茎が茶色く太くなり、樹皮がめくれてまるで古木のようになってくる現象です。これは植物が体を支えるために細胞壁にリグニンという物質を蓄積させる自然な生理現象ですが、園芸的には「下葉が枯れ上がる」「形が悪くなる(腰高になる)」といった悩みの種になります。この木質化した株をどう剪定するかで、ラベンダーの寿命は大きく変わります。
木質化した茶色い枝の切断位置と注意点

よく「ラベンダーの茶色いところは切ってはいけない」と言われますが、これは半分正解で半分間違いです。正しくは、「茶色い部分だけを残して切ってはいけない」です。
なぜ茶色い枝だけ残すと枯れるのか?
若い緑色の枝(Green wood)は、組織が活発で節ごとに潜在的な芽を持っています。しかし、木質化した古い枝(Brown wood/Old wood)は、樹皮が厚くなり、休眠芽が退化または消失している場合が多いのです。植物にとって、葉は光合成でエネルギーを作る工場であり、芽は新しい組織を作る建設現場です。葉も芽もない茶色い棒の状態にされると、ラベンダーはエネルギーを作ることも、新しい枝を作ることもできず、根に蓄えられた養分を使い果たして枯死してしまいます。
木質部を切る際の手順
木質化した部分を切り戻して株を小さくしたい場合は、以下の手順を徹底してください。
- 切りたい枝の下の方をよく観察する。
- 木質化した茶色い樹皮の隙間から、小さな緑色の芽が出ているか確認する。
- もし芽があれば、その芽の上で切断可能です。この場合、木質化した部分で切ることになりますが、下に芽(成長点)があるので再生します。
- もし芽がなければ、その位置で切ることはできません。もっと上の方の、葉がある緑色の部分まで切る位置を上げてください。
一か八かの強剪定は避ける
「枯れてもいいから小さくしたい」といって、芽のない木質部でバッサリ切る方がいますが、ラベンダー(特にイングリッシュ系)でこれが成功する確率は低いです。運良く不定芽が出ることもありますが、多くはそのまま枯れ込みます。リスクを冒すよりは、形が悪くても生き残らせる方を選ぶのが賢明です。
種類別の剪定位置とフレンチ系のコツ
ラベンダーと一口に言っても、その種類によって成長スピードや剪定に対する耐性は大きく異なります。自分の育てているラベンダーの種類を把握し、その特性に合わせた「マイクロマネジメント」を行うことが上級者への第一歩です。
イングリッシュ系(コモンラベンダー)
代表品種:ヒッドコート、マンステッド、富良野など
香りが強く耐寒性に優れますが、高温多湿には弱いです。木質化しやすいですが、古い木質部からの萌芽力(芽を吹く力)は中程度~やや弱めです。強剪定の際は、安全マージンを大きくとり、株の1/3~1/2程度を残すのが無難です。絶対に葉を全部落とすような切り方は避けてください。
ラバンディン系(L. x intermedia)
代表品種:グロッソ、スーパーセビリアンなど
イングリッシュ系とスパイクラベンダーの交配種で、大型になり成長が非常に旺盛です。このタイプは剪定に対して非常に強く、萌芽力も旺盛です。放っておくとすぐに巨大化して株割れしたり、蒸れて中心部がハゲたりしやすいので、強剪定の時期には思い切って株の1/3程度の高さまで深く切り詰めることが推奨されます。「切りすぎたかな?」と思うくらいで丁度よいことが多いです。すぐにワサワサと茂ってきます。
フレンチ系・ストエカス系
代表品種:アボンビュー、キューレッドなど
ウサギの耳のような苞葉(ほうよう)が特徴で、春早くから開花します。この系統の最大の注意点は「花芽分化の時期」です。フレンチ系は秋に翌年の花芽を作ることが多いため、秋以降に深く剪定すると、翌春の花が咲かなくなってしまいます。
フレンチ系の剪定タイミング
一番花が終わった直後(5月~6月)に、株の全体を1/2~2/3程度に切り戻す「強めの花後剪定」を行い、この時期に樹形をリセットします。秋以降は、伸びすぎた枝を整える程度の軽めの剪定に留めるのが、毎年花を咲かせる秘訣です。
枯れた株の切り方と復活させる対処法
「一部の枝が枯れてしまった」「株元の葉がなくなってスカスカ」といった状態からのリカバリー方法について解説します。
枯死枝の除去と癒合剤
明らかに枯死している枝(色が灰色~茶褐色で、曲げると弾力がなくポキッと折れる枝)は、復活することはありません。それどころか、腐敗菌が繁殖して健全な部分へ感染を広げるリスクがあります。見つけ次第、緑色の生きている組織が見える分岐点まで戻って切るか、根元から完全に除去してください。太い枝を切って切り口が大きくなる場合は、殺菌剤入りの癒合剤(トップジンMペーストなど)を塗って保護すると、そこからの枯れ込み(ダイバック)を防ぐことができます。
「土寄せ」による株の若返り術

下葉が枯れ上がり、木質化した茎が長く露出してしまった株(ハイレグ状態)には、「土寄せ(盛り土)」というテクニックが有効です。
土寄せの手順と原理
ラベンダーの茎は、土に触れて湿度が保たれると、そこから不定根(ふていこん)という根を出す性質があります(取り木と同じ原理)。
- 株元の枯れ葉やゴミをきれいに掃除します。
- 木質化した茎の下部が埋まるように、水はけの良い用土(赤玉土や腐葉土のブレンド)を株元に盛り上げます。深植えにするようなイメージです。
- 適度な湿り気を保つことで、埋まった茎から発根が促され、さらにその付近から新しい枝(シュート)が発生しやすくなります。
これにより、実質的な根の位置が高くなり、株の重心が安定すると同時に、若々しい枝への更新が期待できます。ただし、水はけの悪い土でやると茎が腐るので、必ず清潔で排水性の良い土を使用してください。
丸坊主で枯れる失敗を防ぐ切り方の秘訣
「剪定したらそのまま枯れてしまった」という失敗談の多くは、いわゆる「丸坊主剪定」が原因です。いくら強剪定の時期だからといって、葉を一枚も残さずに棒状にしてしまうのは、ラベンダーにとってあまりに過酷です。
リスク分散の「二段階剪定」
失敗を防ぐためには、一度に全てを解決しようとしないことです。いきなり目標の高さまで切るのではなく、段階を踏むことをおすすめします。
ステップ1(予備剪定):
まずは目標よりも少し高い位置、必ず葉が残る位置で全体を切り戻します。そして、株の内側に日光が当たるように透かし剪定を行います。
ステップ2(観察と仕上げ):
日光が当たるようになると、刺激を受けた古い枝の途中から、新しい芽が吹いてくることがあります。数週間~1ヶ月してこの新芽を確認できたら、その芽の上まで切り下げるという「二段階方式」をとれば、枯らすリスクをほぼゼロに抑えることができます。
剪定後のアフターケア
剪定直後の株は、人間で言えば手術後のような状態です。切り口から水分が蒸散しやすくなっていますし、急に直射日光が当たるようになった幹は日焼け(サンバーン)を起こしやすいです。
強剪定の後は、強い寒風が当たらない場所に置くか、鉢植えなら数日間は半日陰で休ませてあげましょう。また、肥料はすぐに与えず、新芽が動き出してから与えるのがセオリーです(弱った根に肥料は逆効果です)。水やりも、葉が減って吸水量が減っているため、土が乾いたのをしっかり確認してから与えるように調整しましょう。
挿し木で株を更新する際の枝の選び方
どんなに適切な剪定を繰り返しても、ラベンダー(特にイングリッシュ系)の寿命は一般的に10年~15年程度と言われています。老木になると、木質化が極度に進んで株元が空洞化したり、花付きが悪くなったりするのは避けられません。いつか来る寿命に備えて、剪定枝を利用して新しい株を作っておく「株の更新」を習慣にしましょう。
挿し穂に最適な枝の条件
剪定で切り落とした枝は、そのままゴミにするのではなく、挿し木の材料として再利用できます。挿し木に使う枝(挿し穂)には、以下の条件を満たすものを選んでください。
- 若くて充実した枝:木質化していない、緑色で張りのある枝。花がついていない枝(または花芽ができる前の枝)が発根しやすいです。
- 健全な枝:病斑や変色がなく、アブラムシなどがついていない枝。
- 長さ:先端から7cm~10cm程度確保できるもの。下半分の葉を取り除いて土に挿します。
剪定と挿し木の黄金サイクル
梅雨前の透かし剪定や、春の強剪定で出た枝を挿し木しておけば、親株が夏越しや冬越しに失敗して枯れてしまった場合の保険になります。また、若い株の方が花の色も鮮やかで香りも強いため、3~5年サイクルで株を更新していくのが、常に美しいラベンダーガーデンを維持するプロのコツでもあります。挿し木については、より詳しい手順を解説した記事もありますので、ぜひ参考にしてみてください。
まとめ:ラベンダー剪定はどこを切るかが寿命を決める
ラベンダーの剪定は、単に形を整えるだけでなく、株の健康と寿命を左右する重要な手入れです。「どこを切るか」に迷ったら、まずは「緑の芽」を探すことから始めてみてください。植物が発している「ここからなら再生できるよ」というサインを見逃さないことが、長く付き合っていく秘訣です。
この記事の要点まとめ
- 剪定位置の基本は、必ず緑色の葉や新芽(脇芽)が残っている節のすぐ上。
- 新芽から5mm~10mm上を切ると、芽を傷つけず枯れ込みも防げる。
- 木質化した茶色い部分のみを残して切ると、萌芽せず枯死するリスクが高い。
- 花後の剪定(弱剪定)は、花茎をたどり、本葉がある節の少し上でカットする。
- 梅雨前の「透かし剪定」では、枝の途中ではなく、不要な枝を付け根から間引く。
- 冬~早春の「強剪定」は株の1/2~2/3まで切るが、必ず最下部の芽を確認する。
- イングリッシュ系は高温多湿に弱いため、葉を残す剪定を徹底する。
- ラバンディン系は成長が早いため、深く強めに切り戻しても回復しやすい。
- フレンチ系は花後すぐに剪定し、秋以降の強剪定は避ける(花芽を切らないため)。
- 木質化が進んだ株は、土寄せをして茎からの発根を促す再生法も有効。
- 丸坊主にすると光合成ができなくなるため、常に葉を残す意識を持つ。
- 枯れた枝や病気の枝は、放置せず早急に根元から取り除く。
- 剪定は晴れた日に行い、清潔なハサミを使用することで病気を防ぐ。
- 不安な場合は、一度に深く切らず、芽吹きを確認しながら段階的に切り戻す。
- 老朽化した株は、剪定枝を利用した挿し木で株の更新(世代交代)を図る。
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