こんにちは、My Garden 編集部です。
紫色の美しい花と癒やしの香りで人気のあるラベンダーですが、日本の高温多湿な気候で地植えにするのは少しハードルが高いと感じていませんか。実際、私も最初は枯らしてしまわないか不安でしたし、何度か失敗も経験しました。しかし、ラベンダーの性質を深く理解し、日本の風土に合わせた「環境づくり」さえ徹底すれば、誰でも地植えで大きく育てることができるんです。
ラベンダーの育て方や初心者でも失敗しない地植えのコツ、そして適切な時期や水やりの加減に関する情報を整理しておけば、憧れのラベンダー畑のようなお庭を作ることは十分に可能です。この記事では、私が実際に試して効果を感じた方法や失敗しないためのポイント、そしてなぜその作業が必要なのかという理由まで掘り下げて詳しくご紹介します。
この記事のポイント
- 日本の気候に合った品種選びが成功の9割を決める
- 水はけの良い「高畝」を作ることが枯らさない秘訣
- 肥料は控えめにし過保護に育てないことが重要
- 梅雨前と冬の剪定が寿命を延ばすカギとなる
ラベンダーの育て方で初心者が地植えを成功させる要点
ラベンダーを地植えで楽しむためには、これまでの草花栽培の常識を少しだけ変える必要があります。一般的なお花は「お水と肥料をたっぷりあげて可愛がる」のが正解ですが、ラベンダーの場合は「環境を整えたら、あとは少し突き放して見守る」というスタンスが大切かもしれませんね。まずは、植え付ける前の準備段階で勝負のほとんどが決まってしまう重要なポイントを解説します。
暑さに強い品種や種類の選び方

地植えで失敗しないための最初にして最大のステップは、品種選びです。多くの初心者がホームセンターの園芸コーナーで、花が咲いているポット苗をなんとなく見た目の可愛さだけで選んでしまいがちですが、これが最初の落とし穴です。ラベンダーには明確な「系統(グループ)」があり、それぞれ生まれ育った環境が違うため、日本の夏に対する「耐暑性」や雨に対する「耐湿性」が全く異なります。日本の一般的な平地(特に関東以西の温暖地)で地植えにするなら、私は迷わず「ラバンディン系」をおすすめします。
私たちが「ラベンダー」と聞いて真っ先に思い浮かべる、香りが強く可憐な「イングリッシュラベンダー(コモンラベンダー)」は、実は北海道の富良野のような冷涼で乾燥した気候を好む種類です。本来、標高の高い地域や緯度の高い地域で育つ植物なんですね。そのため、東京や大阪のような、夏の夜温が25℃を下回らず、湿度が80%を超えるような環境では、植物としての生理機能が停止してしまいます。地植えにすると蒸れてしまい、夏越しができずに枯れてしまう「一年草」のような扱いになってしまうことがほとんどです。「イングリッシュ系を地植えしたい」という相談をよく受けますが、暖地ではプロでも難しい挑戦になるため、鉢植えで管理して夏は日陰に移動させるのが賢明です。
一方で私が強く推奨するラバンディン系は、耐寒性に優れたイングリッシュラベンダーと、標高の低い暑い場所でも育つスパイクラベンダーを掛け合わせた交配種(ハイブリッド)です。この系統は「雑種強勢(ヘテロシス)」といって、両親の良いところを受け継ぎ、日本の過酷な気候変動に対して非常に高い適応能力を持っています。病気にも強く、成長スピードも早いため、初心者が最初に育てるラベンダーとして最適解と言えるでしょう。
初心者におすすめの品種とその特徴
| 品種名 | 特徴とおすすめ理由 |
|---|---|
| グロッソ (Grosso) |
ラバンディン系の王様とも言える超定番品種です。とにかく強健で、病気にも強く、地植えにすると1〜2年で直径1メートル近い見事な大株に育ちます。花穂が長く濃い紫色で、香りにカンファー(樟脳)成分を含むためスッキリとした清涼感があります。花が崩れにくいので、ポプリやドライフラワー、ラベンダースティック作りにも最適です。 |
| フェノメナル (Phenomenal) |
比較的新しい品種ですが、その名の通り「驚異的」な強さを誇ります。グロッソ以上に高温多湿に強く、またラバンディン系の弱点であった「冬場の枝折れ」や「株割れ」が起きにくいのが特徴です。株が自然と球状にまとまりやすく、剪定の手間も少し軽減されるため、現代の気候にマッチした最強のラベンダーとも呼ばれています。 |
| スーパーセビリアンブルー | 鮮やかな青紫色の花を持ち、耐暑性が非常に強い品種です。グロッソなどに比べると比較的小型でまとまりやすいため、あまり広いスペースが取れない庭や、花壇の縁取り(ボーダーガーデン)にも適しています。花色も美しく、観賞価値が高いのが魅力です。 |
また、ウサギの耳のような飾り(苞葉)がついた「ストエカス系(フレンチラベンダー)」も比較的暑さに強いですが、こちらは逆に寒さにやや弱い(耐寒マイナス5℃程度)傾向があります。関東以南の平地なら地植えで越冬できますが、強い霜が降りる地域や寒冷地では防寒対策が必要になります。年間を通して一番管理が楽で、失敗のリスクが低いのは、やはりラバンディン系と言えるでしょう。見た目の好みだけで選ぶと、環境に合わずにすぐ枯れてしまうこともあるので、まずは「自分の住んでいる地域の気候で無理なく育つ品種」を選ぶことが成功への近道かなと思います。
日当たりと風通しが良い場所の選定
品種が決まったら、次は植える場所の選定です。ラベンダーは「お日様」と「風」を何よりも愛する植物です。植え場所を選ぶ際は、「1日最低でも6時間以上、できれば半日以上直射日光が当たる場所」を確保してあげてください。午前中だけ日が当たる東向きの場所か、一日中日が当たる南向きの場所が理想的です。
日照不足になるとどうなるかというと、植物は光を求めて茎を伸ばそうとするため、ヒョロヒョロと間延びした「徒長(とちょう)」という状態になります。徒長した株は細胞壁が薄く組織が軟弱になり、少しの雨風で倒れやすくなるだけでなく、病気や害虫への抵抗力も著しく低下してしまいます。「うちは少し日陰だから…」という場合は、地植えではなく鉢植えにして、日当たりの良い場所に移動できるように管理する方が、結果的に長く楽しめるはずです。
そして、日当たりと同じくらい、あるいは日本の夏においてはそれ以上に重要なのが「風通し」です。ラベンダーの故郷である地中海沿岸は、乾燥した風が常に吹き抜ける環境です。一方で日本の夏は、湿度が高く空気が重たく滞留します。この「蒸れ」こそがラベンダーの最大の敵です。塀や壁のすぐ近く、他の植物が密生して空気が動かない場所、四方を建物に囲まれた中庭などは避けてください。理想は、周囲が開けていて、常に空気が流れているオープンなスペースです。

エアコンの室外機前は「死のゾーン」
植栽スペースとして空いていることが多いのが「エアコンの室外機周り」ですが、ここはラベンダーにとって最も危険な場所です。夏場は熱風が、冬場は乾燥した冷風が直接吹き付けるため、植物に急激なストレスを与えます。人工的な風は植物の蒸散活動を乱し、極度の乾燥を引き起こして枯れ込ませる原因になります。「室外機の前しか空いていない」という場合は、風向きを変えるルーバーを取り付けて風を上へ逃がすか、その場所への地植えは諦めてください。
また、地面からの「照り返し」にも注意が必要です。コンクリートやアスファルトの近くは、真夏には表面温度が50℃を超え、夜になっても熱が逃げません。ラベンダーは夜間の涼しさを好むため、夜も熱帯夜が続くような場所では体力を消耗し尽くしてしまいます。できるだけコンクリートから離すか、後述するマルチングで地温上昇を防ぐ工夫が必要になります。
酸度調整を行う土作りと石灰の配合

日本の土壌でラベンダーを育てる際、避けて通れないのが「土壌酸度(pH)」の調整です。ラベンダーは地中海の石灰岩質土壌で進化した植物であり、弱アルカリ性(pH 6.5〜7.5程度)の土を好みます。しかし、日本は雨が多い気候のため、土の中のアルカリ分(カルシウムやマグネシウム)が雨水と共に流出しやすく、放っておくと自然に「酸性」へと傾いていく性質があります(出典:農林水産省『土壌の酸性化と改良』)。
酸性の土壌では、ラベンダーは根から必要な栄養素(特にリン酸やマグネシウム)をうまく吸収できず、生育不良に陥ってしまいます。また、酸性土壌ではアルミニウムが溶け出し、これが根の成長を阻害することもあります。そのため、植え付けを行う最低でも2週間前には、苦土石灰(くどせっかい)を土に混ぜ込んでおく必要があります。「石灰ならなんでもいいの?」と思われるかもしれませんが、私は断然「苦土石灰」をおすすめします。
その理由は、苦土石灰が「酸度の矯正」だけでなく、「ミネラルの補給」も同時に行えるからです。苦土石灰には、カルシウム(石灰)とマグネシウム(苦土)が含まれています。カルシウムは植物の細胞壁を強くして病気にかかりにくくし、マグネシウムは光合成を行う葉緑素の核となる重要な成分です。ラベンダーはこの両方を多く必要とするため、苦土石灰はまさに一石三鳥の最強資材なのです。
具体的な土作りの手順は以下の通りです。
- 植え付けの2週間前:
1平方メートルあたり約100g〜200g(大人の手で軽く2握り程度)の苦土石灰を土に撒き、スコップで深さ20cm〜30cmくらいまでしっかりと耕して混ぜ込みます。石灰と窒素肥料を同時に混ぜると化学反応を起こしてアンモニアガスが発生し、根を傷めることがあるため、まずは石灰だけを混ぜて馴染ませる期間を設けます。 - 植え付けの1週間前〜当日:
腐葉土や堆肥などの有機物と、水はけを良くするパーライトなどを混ぜ込みます。元肥を入れる場合はこのタイミングで行います。
すぐに植えたい場合の裏技:有機石灰
「2週間も待てない!今日苗を買ってきてしまった!」という場合は、反応が穏やかで根を傷めにくい「有機石灰(カキ殻石灰など)」を使用しましょう。これなら、植え付け当日に肥料や苗と一緒に混ぜ込んでも障害が出にくく、カルシウム分もしっかり補給できます。ただし、酸度を調整する効果が出るのは苦土石灰よりもゆっくりなので、毎年少しずつ撒いて長期的な視点で土壌改良を続けることが大切です。
苗を植え付ける最適な時期は何月か
苗を植え付けるタイミングは、ラベンダーがその後の過酷な季節(夏や冬)を乗り越えられるかどうかを決める、重要なスタートラインです。地域によって多少前後しますが、一般的にベストシーズンとされるのは、春の暖かさを感じ始める3月〜5月(特に4月頃)です。
なぜ春が良いのかというと、理由は「根の成長」にあります。植物の根が新しく伸びるためには、ある程度の地温が必要です。3月〜4月に植え付けると、梅雨入りまでの約1〜2ヶ月間、穏やかな気候の中でじっくりと根を張らせる(活着させる)ことができます。この時期に大地にしっかりと根を広げた株は、地下深くから水分を吸い上げる力がつき、真夏の猛暑や乾燥にも耐えうる体力を獲得できるのです。逆に、梅雨直前や真夏に植え付けると、根が張る前に高温多湿のストレスに晒され、あっという間に蒸れて枯れてしまうリスクが高まります。
関東以南の温暖な地域であれば、秋の9月下旬〜11月上旬も適期の一つです。秋植えのメリットは、地上部の成長が緩やかになる時期に、エネルギーを根の伸長に集中させられることです。冬の間も地中深くでは根が少しずつ活動を続けるため、翌春のスタートダッシュが良く、春植えよりも一回り大きく育つことが期待できます。
秋植えの注意点:霜柱による「浮き上がり」
ただし、秋植えにはリスクもあります。植え付けが遅れて根が十分に張っていない状態で本格的な冬を迎えると、霜柱(しもばしら)によって土が持ち上げられ、根が切断されたり、苗ごと地上に浮き上がってしまったりすることがあります。特に耐寒性がやや低いストエカス系やデンタータ系を秋に植える場合は、寒風対策や後述するマルチングなどの防寒が必須となるため、初心者のうちはリスクの低い「春植え」からスタートするのが無難でしょう。
ホームセンターで苗を選ぶ際は、以下のポイントをチェックしてください。
- 株元の葉:下の方の葉が茶色く枯れ上がっていないか。蒸れている株は避けましょう。
- 葉の色:緑色が濃く、徒長しておらず、がっしりとしているか。
- 根の状態:ポットの底穴から白い根が少し見えているくらい元気なものが良い苗です。逆に、土の表面に苔が生えているような苗は、長期間売れ残っていて根詰まりしている可能性が高いので避けたほうが良いでしょう。
根腐れを防ぐ高畝での植え方の手順
私が日本の地植えでラベンダーを成功させるための「最大の秘訣」であり、これをやるかやらないかで生存率が劇的に変わると確信しているのが、土を盛り上げて植える「高畝(たかうね)」(レイズドベッド)の採用です。日本の多くの庭土は粘土質で水はけが悪く、平坦な地面にそのまま穴を掘って植えると、長雨の際に植え穴がバケツのように水たまりになり、根が水没して酸素欠乏を起こし窒息してしまいます。これが「根腐れ」の正体です。
そこで、地面より高い位置に植えることで物理的に排水性を確保します。具体的には、植えたい場所に土を盛り、周囲より15cm〜20cmほど高い「小山」や「マウンド」を作ります。こうすることで、重力の働きで余分な水が速やかに下へと流れ落ち、根の周りを常に空気が通る「好気的」な状態に保つことができます。これは、水はけの良い斜面に自生している野生のラベンダーの環境を再現することにもつながります。
失敗しない高畝植えのステップバイステップ

- 土壌改良(ブレンド):
元の庭土を耕し、そこに腐葉土を3割、そして水はけを良くするための「パーライト」や「軽石(小粒〜中粒)」を2〜3割たっぷりと混ぜ込みます。粘土質の土なら、さらに川砂を加えるのも効果的です。「少し水はけが良すぎるかな?」と思うくらいザラザラした土質にするのがコツです。 - 高畝の造成:
改良した土を使って、直径40〜50cm、高さ15cm〜20cm程度のしっかりとした丘を作ります。複数の株を列にして植える場合は、株間を60cm〜100cm(グロッソなどの大型品種は広めに)空け、かまぼこ型の長い畝(うね)を作ります。 - 水極め(みずぎめ):
ポット苗は植え付けの1時間前にバケツの水に浸し、気泡が出なくなるまで十分に吸水させておきます。これにより、植え付け後の水切れを防ぎ、スムーズに活着させることができます。 - 植え付け(浅植え厳守):
畝の頂上に穴を掘り、苗を植えます。この時、最も重要なのが「浅植え」です。ポットの土の表面が、畝の表面よりも少しだけ出るか、同じ高さになるようにします。深植えにして茎の地際部分(クラウン)を土に埋めてしまうと、そこから腐りやすくなるので絶対禁物です。 - 無機質マルチング:
植え付け後、株元の土の表面に有機質(腐葉土や藁)ではなく、無機質の「砂利」「軽石」「化粧石」などを敷き詰めます。これにより、雨による泥はねを防いで病気を予防し、株元の湿気を抑え、さらに太陽光を反射して株の内側にも光を届ける効果があります。

この「土壌改良+高畝+砂利マルチ」の3点セットこそが、日本の高温多湿環境に対する最強の防御策となります。一度作ってしまえば、数年にわたってラベンダーを守り続けてくれますよ。
地植えラベンダーの育て方と初心者が行う年間管理
無事に植え付けが終わったら、あとは日々の管理ですね。とはいえ、ラベンダーは「手がかからない」のが魅力の一つ。むしろ、手をかけすぎることが失敗の原因になることも多いのです。ここでは、季節ごとの具体的なお世話について、私の経験を交えながらお話しします。
地植え後の水やり頻度とタイミング
地植えの場合、水やりの基本哲学は「定着までは過保護に、定着後はスパルタに」です。植え付けから2週間〜1ヶ月程度は、まだ根が周囲の土に伸びていないため、土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えます。この期間の水切れは致命傷になりかねないので注意が必要です。
しかし、一度根が周囲の土壌にしっかりと活着(定着)してしまえば、話は全く別です。ラベンダーの根は驚くほど深く広く地中へ伸び、自力で水分を探し出す能力に長けています。そのため、定着後は基本的に「自然の降雨のみ」で十分に育ちます。私も地植えのラベンダーには、よほどの日照りが1ヶ月以上続かない限り、ホースで水をやることはありません。「少し冷たいかな?」と思われるかもしれませんが、過保護に水を与えることは、ラベンダーを甘やかし、ひ弱な株にしてしまう原因になります。
水やりの判断基準としては、明確なサインがあります。それは「朝の時点で葉が萎れているかどうか」です。夏の日中に葉が垂れ下がっているのは、暑さで蒸散を抑えるための生理現象(自己防衛)である場合が多く、必ずしも水不足ではありません。しかし、気温が下がった翌朝になっても葉がシャキッと戻らず、クタッとしたままであれば、それは本当の水不足です。このサインが出たときに初めて、たっぷりと水を与えてください。

真夏の水やりには「命に関わるルール」がある
もし真夏に水やりが必要になった場合、絶対に避けてほしいのが「日中の水やり」です。炎天下で水を与えると、水分が土の中で太陽熱によって熱せられ、文字通り「お湯」になってしまいます。これが根を煮て細胞を破壊する「煮え根」を引き起こします。また、急激な水分蒸発で株周りがサウナ状態になり、蒸れを加速させます。水やりは必ず、気温が十分に下がった「夕方」か、これから気温が上がる前の「早朝(朝6時頃まで)」に行いましょう。葉に水をかけるのではなく、株元の土に静かに注ぐのがポイントです。
肥料のやりすぎに注意する施肥計画
植物を大きく育てたいと思うと、ついつい肥料をたくさんあげたくなりますよね。しかし、ラベンダーに対してその優しさは「百害あって一利なし」になることが多いのです。彼らはもともと、岩場のような痩せた土地で進化してきた植物です。栄養が多すぎる環境は、彼らにとってメタボリックシンドロームのような不健康な状態を引き起こします。
特に注意すべきなのが、肥料の三要素の一つである「窒素(チッソ)」です。窒素は葉や茎を育てる栄養素ですが、これが過多になると、枝葉ばかりが茂って肝心の花が咲かなくなる「ツルボケ」状態になったり、茎が軟弱に徒長して雨風で倒れやすくなったりします。さらに、窒素過多で軟らかくなった組織はアブラムシなどの害虫にとってご馳走であり、病害虫の被害を誘発する最大の原因にもなります。
私が実践している、ラベンダーを健康に保つための「ミニマム施肥計画」は以下の通りです。
- 春の追肥(3月〜4月):
新芽が動き出し、これから成長期に入るタイミングで、緩効性の化成肥料(マグァンプKなど、リン酸分が多いものがおすすめ)を規定量の半分程度、株元にパラパラと撒きます。これが春の旺盛な成長と、花付きをサポートします。 - 秋の追肥(9月〜10月):
夏の猛暑を耐え抜いた株を労り、秋の根の成長を助けるために、同様に少量の肥料を与えます。ここで体力を回復させることで、冬越しの準備を整えます。
逆に、絶対に肥料を与えてはいけない時期があります。それは「夏(6月〜8月)」と「冬(12月〜2月)」です。夏は暑さで生理活性が落ちているため、肥料を吸収できずに根が肥料焼け(濃度障害)を起こしやすくなります。また、高温多湿下での肥料分は腐敗菌の餌にもなり、根腐れを助長します。冬は休眠期なので栄養を必要としません。肥料は「足りないかな?」と思うくらいで丁度よく、その方が香りの成分(精油)も凝縮され、野性的で丈夫な株に育ちます。
梅雨前の透かし剪定で蒸れを予防

日本のラベンダー栽培において、最大の難関であり、多くの株が命を落とす時期が「梅雨から初夏」にかけてです。高温と多湿のダブルパンチは、乾燥を好むラベンダーにとって致命的です。この時期を乗り切るために、私たち人間が手助けできる唯一にして最強の方法が、5月下旬〜6月の本格的な長雨シーズンに入る前に行う「透かし剪定(すかしせんてい)」です。
この剪定の目的は、株のサイズを小さくすることではなく、「株の内部の風通しを良くし、湿気がこもらないようにすること」です。ラベンダーは葉が密生しやすいため、そのままにしておくと株の内側が蒸れて葉が茶色く枯れ込み、そこからカビ(ボトリチス菌など)が発生して株全体を枯らしてしまいます。これを防ぐために、以下のような外科手術的な剪定を行います。
| 剪定する部位 | 具体的な方法と理由 |
|---|---|
| 下枝(地面に近い枝) | 地面に接している枝や、垂れ下がっている下の方の葉は、雨の跳ね返りで泥がつきやすく、そこから土壌病原菌が侵入する入り口になります。これらは「全て」株元から切り取ります。株元の土が見えるくらいスッキリさせるのがコツです。 |
| 込み合った枝(内部) | 株の上から中を覗き込み、枝が密集して交差している部分を探します。古い枝、細くて弱い枝、茶色くなった枝を優先的に、根元から間引きます。全体の枝数を3割〜5割減らすイメージです。 |
| 花茎(早めの収穫) | 花が咲いている場合、満開まで待たずに「5分咲き〜7分咲き」の頃に収穫を兼ねて花茎ごとカットします。花を咲かせるには多大なエネルギーを使うため、早めに切ることで株の体力を温存し、夏越しの成功率を高めます。 |
透かし剪定の完了目安としては、真横から見たときに、株の向こう側の景色がチラチラと透けて見える程度まで枝数を減らします。「こんなにスカスカにして大丈夫?ハゲてしまわない?」と心配になるかもしれませんが、これくらい思い切って風を通してあげないと、日本の梅雨と猛暑は乗り越えられません。植物の健康のために、心を鬼にしてハサミを入れてください。
形を整える冬の強剪定と切り戻し
梅雨前の剪定が「守りの剪定」なら、冬(暖地なら2月〜3月上旬の新芽が動く直前、寒冷地なら12月の雪が降る前か雪解け後の早春)に行うのは、株の形を大きく作り変える「攻めの剪定」、すなわち「強剪定(きょうせんてい)」です。これは、一年間で伸びすぎた枝をリセットし、春にこんもりとした美しいドーム型に仕立て直すための重要なリセット作業です。
作業内容はシンプルかつ大胆です。株全体の高さの2分の1から3分の1の位置で、全体を丸くバッサリと刈り込みます。もしこの剪定を行わずに放置すると、ラベンダーは頂芽優勢(先端の芽が優先して伸びる性質)により上へ上へと伸び続け、下の方は葉がなくなり木のようにスカスカになってしまいます(腰高な状態)。こうなると強風で倒れやすくなり、見栄えも悪くなります。

強剪定の生死を分ける「絶対ルール」
大胆に切ると言いましたが、一つだけ絶対に守らなければならない鉄の掟があります。それは、「必ず緑色の葉(または小さな新芽)が残っている位置で切る」ということです。
ラベンダーなどの半低木は、葉が全くない茶色く木質化した部分(古い茎)からは、新しい芽を出す力(萌芽力)が非常に弱い植物です。もし、葉のない位置まで深く切り詰めてしまうと、そこからは二度と新芽が出ずに、その枝ごと枯れてしまうリスクが非常に高いです。剪定バサミを入れるときは、必ず切り口の下に元気な葉があることを確認してから切ってください。葉が上の方にしかない場合は、その葉を残せるギリギリの位置で切るしかありません。
株が枯れる原因と木質化の対策

ラベンダーを数年育てていると、どうしても避けられないのが「木質化(もくしつか)」という現象です。これは株の根元がゴツゴツとした茶色の樹皮に覆われ、太い木の幹のようになる変化のことです。植物としては自然な老化現象であり、盆栽のような味わい深い姿とも言えますが、ガーデニング的にはいくつかの問題を引き起こします。
まず、木質化した部分は新しい芽が出にくいため、株の下半分がスカスカになり、花が上の方にしか咲かなくなります。また、古い維管束(水の通り道)は詰まりやすく、水の吸い上げが悪くなったり、突然の枯れ込み(枝枯れ病など)の原因になったりもします。残念ながら、一度完全に木質化してしまった部分を、若々しい緑の茎に戻す方法は存在しません。
この問題に対する対策として、私は以下の2段階のアプローチを推奨しています。
- 老化を遅らせるメンテナンス:
毎年の「強剪定」を欠かさず行い、株をコンパクトに維持することで、枝が徒長して木質化が急速に進むのをある程度遅らせることができます。こまめな散髪が若さを保つ秘訣です。 - 株の更新(世代交代)の準備:
ラベンダーの寿命は、高温多湿な日本の環境では概ね5年〜10年程度と言われています。「いつかは枯れるもの」と割り切り、株が元気なうちに次世代を用意しておくことが重要です。春(5月頃)や秋(9月〜10月)に剪定した枝を使って「挿し木(挿し芽)」を行い、自分の株のクローン(予備の苗)を作っておきましょう。挿し木は鹿沼土やバーミキュライトなどの清潔な用土に挿すだけで比較的簡単に発根します。親株が弱ってきたら、育てておいた若い苗と選手交代することで、お気に入りのラベンダーを絶やすことなく永遠に楽しむことができます。
寒冷地に必要な冬越しの防寒対策
北海道や長野県、東北地方などの寒冷地や豪雪地帯では、冬越しに特別な配慮が必要です。まず大前提として、マイナス10℃以下になるような地域で地植えにする場合、耐寒性の強い「イングリッシュ系(コモンラベンダー)」や「ラバンディン系」を選ぶことが必須です。これらはマイナス15℃〜20℃程度の低温にも耐える遺伝子を持っています。
しかし、寒さには強くても「雪の重み」には物理的に耐えられないことがあります。湿った重い雪が大量に積もると、その重圧で枝が裂けたり、株全体が押し潰されて折れてしまったりします。これを防ぐために、本格的な積雪シーズンの前に「雪囲い」を行います。株全体を藁(わら)やむしろで囲うか、枝を荒縄で螺旋状に縛ってコンパクトにまとめ(冬囲い)、雪の重みを受け流せるようにします。また、秋の終わりに一度強剪定を行って株を小さくしておくことも、枝折れ防止に非常に有効です。
一方で、耐寒性の弱いストエカス系(フレンチラベンダー)やデンタータ系は、寒冷地での地植え越冬はほぼ不可能です。これらは最初から鉢植えで育て、冬の間は日当たりの良い室内(5℃以上が理想)や、凍結しないサンルームなどに取り込んで管理するのが現実的です。無理に地植えにして枯らしてしまうより、移動できるメリットを活かして冬越しさせてあげましょう。
ラベンダーの育て方を守り初心者の地植えを完遂する
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。ラベンダーの地植え栽培について、かなり詳しく、そして少し厳しめにお伝えしてきました。「なんだか難しそう…」「覚えることが多いな」と思われたかもしれませんが、要点をまとめれば実はとてもシンプルです。
「日本の気候に合った品種(ラバンディン系)を選び、水はけの良い高畝に植え、肥料と水を控えてスパルタに育て、梅雨前と冬には思い切って散髪(剪定)をする」。
これだけを守れば、ラベンダーは驚くほど生命力溢れる姿を見せてくれます。むしろ、今まで枯らしてしまったのは「水をあげすぎていた」「肥料をあげすぎていた」という優しさの方向性が少し違っていただけなのかもしれません。
地植えのラベンダーが大きく育ち、初夏の風に揺れて庭いっぱいに爽やかな香りを漂わせる光景は、何にも代えがたい喜びと達成感を与えてくれます。その香りは、日々の疲れを癒やし、豊かな気持ちにさせてくれるはずです。最初の土作りと場所選びさえ間違えなければ、あとは植物の生きる力を信じて見守るだけです。ぜひ、今年の春や秋には、この記事を参考にラベンダーの地植えにチャレンジしてみてくださいね。あなたの庭が、素敵な紫色の香りで満たされることを心から応援しています。
この記事の要点まとめ
- 初心者の地植えは暑さに強い「ラバンディン系(グロッソ等)」を選ぶのが鉄則
- イングリッシュ系は高温多湿に弱いため、暖地での地植えには不向き
- 日当たり(6時間以上)と風通しが良い場所を確保する
- 室外機の風が当たる場所は乾燥と熱風で枯れるため絶対に避ける
- 日本の土は酸性になりがちなので、苦土石灰で弱アルカリ性に調整する
- 水はけを確保するため、土を盛った「高畝(レイズドベッド)」に植える
- 植え付けは3月〜5月の春がベストシーズン、暖地なら秋植えも可
- 根付いた後の水やりは基本的に降雨のみでOK、過湿は厳禁
- 肥料は春と秋に少量だけ与え、窒素過多による徒長と病気を防ぐ
- 梅雨前には「透かし剪定」を行い、株内部の蒸れを防ぐことが生存のカギ
- 冬(または早春)には「強剪定」を行い、株の形をドーム状に整える
- 強剪定時は、必ず緑の葉が残っている位置で切ること(木質部のみ残すと枯れる)
- 株元のマルチングには有機物ではなく、水はけの良い砂利や軽石を使う
- 木質化は避けられないため、挿し木で予備の苗を作って更新に備える
- 過保護にせず、乾燥気味に厳しく育てることが、長く楽しむための最大のコツ
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