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なでしこの開花時期はいつ?品種選びと長く咲かせるコツ

なでしこ 開花時期 ナデシコ
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こんにちは、My Garden 編集部です。

可憐な姿で私たちを癒やしてくれる「なでしこ」ですが、その開花時期について「いつ咲くのが正解なの?」と疑問に思ったことはありませんか。実は、なでしこと一口に言っても多くの品種があり、春に咲くものや秋まで長く咲く四季咲きのものなど、種類によって見頃が全く異なります。また、せっかく育てているのに花が咲かない場合や、いつ切り戻しをすれば良いのか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。さらに、贈り物にする際に気になる花言葉の意味についても知っておきたいところです。この記事では、なでしこの品種ごとの開花サイクルの違いや、長く花を楽しむための具体的なお手入れ方法について詳しく解説していきます。

この記事のポイント

  • 品種ごとの正確な開花時期と見頃の特徴
  • 秋の七草と呼ばれる理由と実際の季節感
  • 長く咲かせるための切り戻しと夏越しの方法
  • 花が咲かない原因と解決策および花言葉
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なでしこの開花時期は品種で違う?

なでしこ 開花時期1 なでしこの品種別開花時期カレンダー(カワラナデシコ・ビジョナデシコ・テルスター)の比較表

一口に「なでしこ」と言っても、園芸店に並ぶ品種にはいくつかのタイプがあり、それぞれ花を咲かせるタイミングや期間が異なります。「なでしこを買ってきたのに、ラベルに書いてある時期と違う気がする」「春に咲いて終わってしまった」といった経験はありませんか?それは、育てている品種の特性によるものかもしれません。ここでは、代表的な品種ごとの開花サイクルを整理し、あなたが育てている、あるいはこれから育てたいなでしこがいつ見頃を迎えるのかを詳しく解説していきます。

カワラナデシコの見頃は夏から

なでしこ 開花時期2 深く裂けた繊細な花弁が特徴的なカワラナデシコ(大和撫子)のピンク色の花

日本に古くから自生し、日本女性の美称である「大和撫子(ヤマトナデシコ)」の代名詞でもあるカワラナデシコ(Dianthus superbus var. longicalycinus)。この品種の開花時期は、一般的に6月から10月頃とされています。春の花というイメージを持たれている方もいるかもしれませんが、実際には梅雨入り前後から咲き始め、初夏から秋にかけて長く咲くのが特徴です。その繊細で優美な姿は、日本の蒸し暑い夏に一服の涼を運んでくれる貴重な存在と言えるでしょう。

カワラナデシコの最大の特徴は、何と言ってもその独特な花弁の形状です。ピンクや白、淡い紅色の花弁の縁が糸のように深く細かく裂けており、風に揺れる様子は非常に情緒があります。この構造のおかげで、見た目に重苦しさがなく、夏の花壇や寄せ植えに軽やかなリズムを生み出してくれるのです。私自身も庭で育てていますが、他の植物が真夏の暑さでぐったりしてしまうような時期でも、カワラナデシコは細い茎をしなやかに伸ばし、凛として咲き続けてくれるので、とても頼もしい存在だと感じています。

ただし、お住まいの地域の栽培環境によって、花の咲き方には大きな波があります。本来、カワラナデシコは冷涼な気候を好む植物です。そのため、北海道や長野県の高冷地などの涼しい地域では、夏の間も途切れることなく次々と花を咲かせ続けます。一方で、東京や大阪など関東以西の暖地では、最高気温が30℃、時には35℃を超えるような真夏の時期(特に8月)になると、さすがに株が消耗してしまいます。この時期は一時的に花数が減ったり、開花を休んだりすることがありますが、これは植物が自らを守るための「夏休み」のようなものです。

この「夏休み」の期間に、無理に肥料を与えて咲かせようとすると、かえって株を弱らせてしまいます。じっと我慢して、涼しくなる秋まで株を休ませてあげることで、9月以降、気温の低下とともに再び蕾を上げ、美しい花を咲かせてくれます。つまり、暖地においては「初夏」と「秋」の二度、見頃が訪れると考えてよいでしょう。

また、野生のカワラナデシコは草原や河川敷の日当たりの良い場所に自生していますが、近年園芸店で販売されている苗は、園芸用に改良された品種が多く出回っています。これらは野生種に比べてより花付きが良く、草丈もコンパクトにまとまりやすい性質を持っています。もし、初めてカワラナデシコを迎えるのであれば、まずは園芸店で苗を購入することをおすすめします。種から育てることも可能ですが、開花までに時間がかかるため、苗からスタートする方がその年の夏からすぐに見頃を楽しめるからです。

豆知識:個体差と地域差による違い
自然界や公園などで見かけるカワラナデシコは、個体差やその土地の微気候によって、7月頃に早々と見頃を終えて種をつけてしまう個体もあります。ご自宅で育てる場合は、水やりや肥料の管理によって開花期間を延ばすことができますが、環境に合わせて開花期間が変動することを覚えておきましょう。

秋の七草なのになぜ夏に咲くか

「なでしこは秋の七草のひとつだから、秋の花でしょう? 夏に咲いているのはおかしいのでは?」という疑問を持つ方は非常に多いです。ハギ、ススキ、クズ、オミナエシ、フジバカマ、キキョウとともに、奈良時代の歌人・山上憶良が万葉集で選定した「秋の七草」。確かに、この響きからは涼しい秋風の中でしっとりと咲くイメージを抱きますよね。しかし、実際に育ててみると、夏真っ盛りの7月や8月に満開を迎えることが多く、「あれ?季節外れかな?」と戸惑うこともあるかもしれません。

この「季節感のズレ」には、明確な理由があります。それは「暦(こよみ)のズレ」です。万葉集が詠まれた時代の「秋」は、旧暦(太陰太陽暦)に基づいていました。旧暦の秋は7月、8月、9月を指します。これを現在の暦(太陽暦・グレゴリオ暦)に当てはめると、およそ8月中旬から10月頃に相当します。つまり、昔の人々にとっての「秋の初め(立秋)」は、現代の私たちの感覚では、まだ残暑が厳しく、セミが鳴いているような「晩夏」にあたるのです。

さらに植物学的な視点で見ると、カワラナデシコは日照時間が長い時期に開花する性質を持っています。夏至を過ぎて日が短くなり始めるとはいえ、まだまだ日差しが強い時期こそが、彼らにとってのメインシーズンなのです。古人は、立秋を過ぎて朝夕にふと涼しい風が吹き始めた頃、草原で揺れるナデシコを見て「秋の訪れ」を感じ取っていたのでしょう。現代の私たちも、カレンダー上の秋(9月〜11月)だけにとらわれず、季節の移ろいを感じるサインとしてナデシコを愛でてみてはいかがでしょうか。

また、秋の七草は「鑑賞するための花」として選ばれたものであり、春の七草のように「七草粥」にして食べるためのものではありません(ナデシコ自体に毒はありませんが、食用としては一般的ではありません)。ナデシコを眺めながら、千年以上前の人々と同じ季節感や情緒を共有できるというのは、ガーデニングならではの深い楽しみ方の一つだと思います。詳しくは、国立天文台が公開している暦の解説なども参考にすると、季節の捉え方がより深まるはずです。(出典:国立天文台『暦計算室』

ビジョナデシコは春の一季咲き

なでしこ 開花時期3 春に手鞠状に密集して咲くカラフルなビジョナデシコ(ヒゲナデシコ)の花

「ヒゲナデシコ(髭撫子)」というユニークな別名を持つビジョナデシコ(Dianthus barbatus)。名前の由来は、花の根元にある総苞(そうほう)というガクの下にある葉が細長く伸び、まるで髭(ひげ)のように見えることから来ています。「美女」という名前の通り、小さな花が手鞠(てまり)のように密集して咲く姿は非常に豪華で華やかさがあり、切り花としても大変人気があります。

このビジョナデシコの開花時期は、他のなでしことは明確に異なり、5月から6月頃に集中する「春咲き」です。最大の特徴は、基本的に「一季咲き」であるという点です。カワラナデシコや後述するテルスターのように、夏を越えて秋まで繰り返し咲くことは少なく、春にそのエネルギーを爆発させるかのように一斉に咲き誇った後は、その年の開花シーズンを完全に終了します。

なぜ春だけに咲くのでしょうか?これには植物ホルモンと温度の関係が深く関わっています。ビジョナデシコは、花芽(蕾の赤ちゃん)を作るために、一定期間の低温(一般的に10℃〜12℃以下)に遭遇する必要があります。これを植物学用語で「バーナリゼーション(春化処理)」と呼びます。秋に種から発芽して葉を茂らせた株が、冬の寒さをじっと耐え抜くことで、植物体内で「春が来たら咲くぞ」というスイッチが入ります。そして、春の気温上昇とともに一気に茎を伸ばし、開花に向かうのです。

そのため、ビジョナデシコは園芸的には「二年草(にねんそう)」として扱われることが一般的です。種まきから開花まで足掛け2年かかるという意味ですが、実際には秋にまいて翌春に咲くため、半年から8ヶ月程度の栽培期間となります。もし、春(3月〜4月)に種をまいてしまうと、幼苗の段階で冬の寒さを経験していないため、スイッチが入らず、その年は葉っぱだけが茂り、花が咲くのは翌年の春になってしまいます。「せっかく種をまいたのに、葉っぱばかりで全然咲かない!」という失敗の多くは、この性質を知らずに春まきをしてしまったケースがほとんどです。

最近では品種改良が進み、低温要求性が低く、春まきでもその年のうちに咲く品種や、多少の四季咲き性を持つ品種も登場していますが、基本的には「春のワンシーズンを豪華に彩る花」として計画を立てるのが正解です。一季咲きだからこその、凝縮された圧倒的な美しさを楽しんでください。

注意点:日本の夏には弱い
ビジョナデシコは寒さにはめっぽう強いのですが、高温多湿には非常に弱いです。日本の暖地では、花が終わった後の梅雨や夏の暑さで蒸れてしまい、夏越しができずに枯れてしまうことが多いです。そのため、無理に夏越しをさせようとせず、毎年種をまくか、新しい苗を植える「一年草扱い」と割り切って楽しむのが、美しい庭を維持するコツです。

四季咲き性のテルスターの特徴

なでしこ 開花時期4 プランターでコンパクトに咲く四季咲き性のナデシコ・テルスターの寄せ植え

園芸店やホームセンターの苗売り場で、一年中と言っていいほど見かける、ポットに入ったカラフルななでしこ。その多くは「テルスター」に代表される種間交配種(F1品種)です。これらは、中国原産の「セキチク(石竹)」と、先ほど紹介した「ビジョナデシコ」を掛け合わせて作られました。

テルスターの最大の魅力は、両親の良いとこ取りをした最強クラスの四季咲き性です。開花期間は非常に長く、4月から11月頃まで、真夏を除いてほぼ一年中と言っても過言ではないほど断続的に咲き続けます。セキチク譲りの「暑さへの強さ」と、ビジョナデシコ譲りの「寒さへの強さ」を兼ね備えており、日本の厳しい気候でも非常に育てやすいのが特徴です。

草丈は15cmから25cm程度とコンパクトにまとまるため、プランターやハンギングバスケット、花壇の最前列(縁取り)などに最適です。花色も赤、ピンク、白、紫、そしてそれらが混ざり合った複色(バイカラー)などバリエーションが豊富で、どんな雰囲気の庭にも合わせることができます。私も、ガーデニング初心者の方に「最初に育てる花は何がいいですか?」と聞かれたら、迷わずこのテルスターをおすすめしています。失敗が少なく、長く楽しめるからです。

この品種の四季咲き性は、「温度さえあれば花芽を作り続ける」という性質によるものです。特定の日長(日の長さ)や低温期間に厳密に縛られないため、春に満開を迎えた後、一度花が落ち着いても、切り戻しをして肥料を与えれば、秋には再び満開の姿を見せてくれます。一粒で二度も三度も美味しい、まさにコストパフォーマンス抜群の花と言えるでしょう。

ただし、いくら強健とはいえ、放置しっぱなしでは徐々に花数は減っていきます。咲き終わった花(花がら)をこまめに摘み取ることと、定期的な追肥を忘れないことが、11月まで長く咲かせるための唯一にして最大の条件です。手入れに応えて次々と蕾を上げてくれる姿は、育てる喜びをダイレクトに感じさせてくれますよ。

種まき時期で変わる開花サイクル

なでしこ 開花時期5 なでしこの秋まき栽培サイクル図解:種まきから冬越し、春の開花までの流れ

なでしこを苗からではなく種から育てる場合、「いつ種をまくか」というタイミングが、その後の成長と開花スケジュールを決定づける極めて重要な要素となります。種の袋や園芸書には「春まき」と「秋まき」の両方が記載されていることが多いですが、日本の気候、特に本州以南の一般地においては、それぞれメリットとデメリットがはっきりとしています。ここを間違えると、「咲かない」という事態に直結します。

まく時期 開花時期 特徴・メリット・デメリット
秋まき
(9月〜10月)
翌春
(4月〜6月)
  • メリット: 最も推奨される基本スタイルです。秋に発芽し、幼苗の状態で冬の寒さに当たることで、ビジョナデシコなどの低温要求性品種も確実に花芽をつけます。また、冬の間に根が地中深くしっかりと張るため、春を迎えた時のスタートダッシュが違います。株のボリュームが出て、花数が圧倒的に多くなります。
  • デメリット: 冬越しの管理が必要です。霜柱で苗が浮き上がらないように注意したり、寒風対策が必要な場合があります。
春まき
(3月〜4月)
その年の夏〜秋
または翌春
  • メリット: 冬越しの手間がありません。北海道や高冷地などの寒冷地では、秋まきだと冬に凍死してしまうため、この春まきが一般的です。
  • デメリット: 暖地での春まきは難易度が上がります。四季咲き品種(テルスターなど)ならその年のうちに咲くこともありますが、株が十分に育つ前に夏の酷暑が来るため、秋まきに比べて花数は少なくなります。また、ビジョナデシコなどの一季咲き品種は、翌年まで咲かない(二年草扱い)ことが多く、一年間葉っぱだけの状態で管理し続ける必要があります。

私自身の経験からも、暖地で育てるなら断然「秋まき」をおすすめします。9月下旬から10月中旬、ちょうど彼岸花が咲く頃や、金木犀の香りが漂う頃に種をまくと、年内に本葉が数枚展開し、しっかりとした根を張った状態で冬を迎えることができます。ナデシコは寒さに非常に強いため、雪の下になっても枯れることはほとんどありません(ただし、乾いた寒風には注意が必要です)。

一方、春まきをする場合は、品種選びが重要です。「開花までの日数が短い」と記載されている早生(わせ)品種や、四季咲き性の強い品種を選ばないと、夏までに咲かずに終わってしまうリスクがあります。種の袋の裏面に記載されている「発芽適温(だいたい20℃前後)」と「まきどき」を必ず確認し、お住まいの地域の気候に合わせて計画を立てましょう。

なでしこの開花時期を長く楽しむ技

品種ごとの時期がわかったところで、次は「どうすればカタログの写真のように長く、たくさん咲かせられるか」という実践的なテクニックについてお話しします。特になでしこは、ちょっとしたお手入れをするだけで秋の開花量が劇的に変わります。「植えっぱなし」にしておくと、夏に蒸れて枯れてしまうことも多い植物です。プロも実践している管理術をマスターして、長く楽しみましょう。

切り戻しを梅雨前にする重要性

なでしこ 開花時期6 なでしこの切り戻し位置の図解:株の半分から3分の1の高さで剪定する方法

なでしこを秋まで長く楽しむための最大の秘訣、そして多くの人が見落としがちな作業、それが「梅雨前の切り戻し(剪定)」です。日本の高温多湿な梅雨から夏にかけての気候は、本来乾燥した冷涼な気候を好むなでしこにとって、まさに「地獄」のような環境です。春に満開になった株をそのまま放置して梅雨入りしてしまうと、茂った葉の中で湿気がこもり、蒸れて下葉がドロドロに枯れ上がったり、灰色かび病などの病気が発生したりして、最悪の場合は株ごと腐って枯れてしまいます。

これを防ぎ、秋に再び満開の花を楽しむためには、5月下旬から6月上旬頃、花がひと通り咲き終わったタイミングで、思い切って株全体をカットする必要があります。これは「お手入れ」というより「生存戦略」に近い重要な作業です。

具体的な切り戻しの手順

まず、ハサミを清潔にしてから作業を始めます。「どこまで切ればいいの?」と不安になるかもしれませんが、目安は「株全体の高さの半分から3分の1程度」です。例えば、草丈が30cmあるなら、地面から10cm〜15cm程度の高さを残し、上部の花や蕾、茎をバッサリと切り落とします。この時、切る位置のすぐ下に健康な葉(脇芽の出る節)が残っていることを確認してください。また、株の内側にある枯れた葉や、黄色くなった葉、込み合っている枝も丁寧に取り除き、風通しを良くしておきましょう。

切り戻しがもたらす3つの効果

  • 通気性の確保: 株元の風通しを劇的に良くすることで湿度を下げ、蒸れやカビの原因菌の増殖を物理的に防ぎます。これが夏越しの成功率を飛躍的に高めます。
  • エネルギーのリセット: 植物は花が咲き終わると、種を作ろうとして多大なエネルギーを消費します。切り戻すことでこの消費を断ち切り、その力を「夏の暑さを耐え抜く体力」と「新しい根を張ること」に回させることができます。
  • 秋の開花促進(頂芽優勢の打破): 植物には茎の先端(頂芽)が優先的に伸びる性質がありますが、ここを切ることで抑制されていた脇芽(側枝)が一斉に動き出します。その結果、秋には枝数が倍増し、こんもりとした密度の高い株姿で咲いてくれるのです。

「せっかく蕾が残っているのにもったいない」と感じる気持ちは痛いほど分かります。私も最初は切るのを躊躇しました。しかし、この時期の「勇気ある撤退(カット)」こそが、秋に最高のパフォーマンスを引き出すための投資なのです。切った花は花瓶に生けて楽しみ、株の方は夏休みモードに切り替えてあげましょう。

夏越しで枯れるリスクを減らす

なでしこ 開花時期7 なでしこの夏越し対策:半日陰への移動とポットフィートを使った風通しの確保

切り戻しとセットで行いたいのが、適切な「夏越し(なつごし)」対策です。切り戻して風通しを良くしたとしても、日本の真夏の直射日光と高温は、なでしこにとって依然として脅威です。特に近年のような酷暑では、コンクリートのベランダやテラスの上に直接鉢を置いていると、照り返しによって鉢内の温度が50℃近くになり、根が煮えて死んでしまいます。

鉢植えの場合は、梅雨明けからお彼岸(9月下旬)頃までは、置き場所を変えることが重要です。理想的なのは「風通しの良い半日陰」です。具体的には、午前中の柔らかい光は当たり、午後からの強烈な西日は建物の影や木陰で遮られるような場所がベストです。もし移動が難しい場合や、一日中日が当たる南向きのベランダの場合は、市販の遮光ネット(遮光率30%〜50%程度)やよしずを使って、人工的に日陰を作ってあげましょう。

また、地面からの熱(輻射熱)を避けるために、鉢の下にレンガや「ポットフィート(鉢台)」、あるいはスノコを置いて、地面から離すことも非常に効果的です。これだけで鉢の温度は数度下がり、根へのダメージを軽減できます。地植えの場合は移動できませんので、株元にワラやバークチップなどでマルチングを行い、地温の上昇と乾燥を防ぐのが有効です。

水やりのゴールデンタイム

夏場の水やりにも注意が必要です。昼間の暑い時間帯に水をやると、土の中の水がお湯のようになり、根を傷める原因になります。水やりは必ず、「早朝の涼しい時間帯」「夕方、日が落ちてから」に行いましょう。また、過湿を嫌うため、土の表面が乾いていないのに毎日習慣的に水をやるのはNGです。「乾いたらたっぷり」の基本を徹底しつつ、夕方に葉水(はみず:葉っぱに水をかけること)をして、気化熱で株全体の温度を下げてあげるのも、プロが使う良いテクニックです。

花が咲かない時のチェック項目

「毎日水をやっているし、葉っぱは青々として元気よく茂っている。それなのに、なぜか花が全く咲かない…」あるいは「蕾がつかずにひょろひょろと伸びてしまう」。このような悩み相談をよく受けます。植物が花を咲かせないのには、必ず生理学的な原因があります。ここでは、代表的な3つの原因と対策を詳しく解説します。

1. 肥料のバランス(C/N率の不均衡)

なでしこ 開花時期8 窒素肥料過多によるナデシコの徒長(左:健康な株、右:ひょろひょろに伸びた株)の比較

最も多い原因がこれです。「大きく育てたい」「早く咲かせたい」という親心から、肥料を与えすぎていませんか?特に「窒素(ちっそ・N)」成分が多い肥料は要注意です。窒素は「葉肥(はごえ)」とも呼ばれ、茎や葉を成長させるために不可欠な栄養素ですが、これが多すぎると植物のバランスが崩れます。植物体内のC/N比(炭素と窒素のバランス)が窒素過多に傾くと、植物は「今は体を大きくする時期だ!まだ子孫(種)を残す時期じゃない!」と勘違いして、生殖成長(花や種を作ること)を後回しにしてしまいます。これを園芸用語で「徒長(とちょう)」や「ツルボケ」と呼びます。

対策: 花を咲かせたい時期には、窒素分を控え、花芽形成や根の伸長を助ける「リン酸(P)」が多く含まれる肥料に切り替えましょう。パッケージに「花付きを良くする」「開花促進」と書かれた液体肥料を、規定倍率で薄めて週に1回程度与えるのが効果的です。骨粉やバットグアノなどの有機肥料もリン酸分が豊富でおすすめです。

2. 日照不足

なでしこ 開花時期0 開花には日光が不可欠:日当たりの良い屋外で元気に育つなでしこ

なでしこは典型的な「陽性植物」であり、太陽の光がエネルギーの源です。健全な花芽を作るためには、1日あたり最低でも6時間以上の直射日光が必要です。明るい日陰や室内では、光合成によって作られる炭水化物(エネルギー)が不足し、花を咲かせるための莫大なエネルギーを確保できません。日照不足の株は、光を求めて茎をひょろひょろと伸ばし、葉の色も薄くなり、病気にかかりやすくなります。

対策: 可能な限り、屋外の日当たりの良い場所に移動させてください。どうしても日照が足りない場合は、植物育成用LEDライトなどで補助する手もありますが、基本はお日様の力に頼るのが一番です。

3. 寒さに当たっていない(バーナリゼーション不足)

先ほど「ビジョナデシコ」の項でも触れましたが、一部の品種(特に秋まきの品種)は「冬の寒さ」を経験しないと花芽を作らない性質を持っています。良かれと思って冬の間ずっと暖かいリビングの窓辺などに置いていると、植物はずっと春が来ない(冬を越していない)と判断し、いつまで経っても花芽形成のスイッチが入りません。

対策: なでしこは本来寒さに強い植物です。冬場は屋外に出し、寒風や霜(極端な凍結は避ける)に当てて季節を感じさせてあげることが、翌春の満開へのチケットとなります。「可愛がりすぎて咲かない」というのは、園芸あるあるの一つですね。

肥料のやり方と日当たり管理

健康な花を次々と咲かせ続けるためには、適切な「食料(肥料)」と「エネルギー(日光)」の供給管理が欠かせません。特に四季咲きの品種は、春から秋まで長期間走り続けるマラソンランナーのようなものです。途中でエネルギー切れを起こさないよう、適切な補給が必要です。

春(4月〜6月)と秋(9月〜11月)の生育期:
この時期は最も成長し、次々と花を咲かせる時期です。基本的には、植え付け時に土に混ぜ込む「元肥(もとごえ)」として、ゆっくり効く緩効性肥料(マグァンプKなど)を使用します。それに加えて、開花パフォーマンスを維持するために「追肥(ついひ)」を行います。月に1回、固形の緩効性肥料を株元に置くか、即効性のある液体肥料を1週間から10日に1回、水やりの代わりに与えてスタミナを補給してあげましょう。

夏(7月〜8月)と冬(12月〜2月):
この時期は生育が緩慢になるか、休止します。ここで良かれと思って肥料を与えてしまうと、根が栄養を吸収しきれずに、土の中の肥料濃度が高まりすぎてしまいます。すると浸透圧の関係で根の水分が奪われ、根腐れや枯れの原因となる「肥料焼け」を引き起こします。夏と冬は肥料をストップする、あるいはごく薄いものを控えめに与える程度に留めるのが鉄則です。「元気がないから肥料をあげる」というのは、弱っている胃腸にステーキを食べさせるようなもので、逆効果になることが多いので注意しましょう。

日当たりに関しては、先述の通り「日光大好き」が基本です。ただし、コンクリートの照り返しが強い場所では、鉢スタンドを使って高さを出し、風通しを確保しつつ日光を浴びせる工夫が必要です。太陽の光をたっぷり浴びたなでしこは、茎が太くがっしりと育ち、葉も厚くなり、病害虫への抵抗力も高まります。

怖い花言葉の噂は本当なのか

なでしこ 開花時期10  「純愛」の花言葉を持つピンクのなでしこのギフトとメッセージカード

大切な人へのプレゼントや、母の日の贈り物としてなでしこを選ぼうとした時、インターネットで検索すると「なでしこ 花言葉 怖い」というサジェストキーワードが出てきて、ドキッとしたことはありませんか?「もしかして、不吉な意味があるのでは…」「死を連想させる?」などと不安になってしまう気持ち、よく分かります。贈り物にするなら、相手に失礼がないか心配になりますよね。

しかし、結論から申し上げますと、なでしこ全般に「怖い」意味や「ネガティブ」な意味の花言葉は一切存在しません。

ナデシコ全体の花言葉は「純愛」「大胆」「無邪気」「貞節」などです。色別に見ても、ピンクは「純粋な愛」、赤は「純粋で燃えるような愛」、白は「器用・才能」といったように、非常にポジティブで美しいメッセージばかりが並んでいます。西洋でも “Pink”(ナデシコのこと)は、母の愛や感謝の象徴として扱われることが多く、母の日のカーネーション(ナデシコ科)と同様に愛されています。

では、なぜ「怖い」という噂が立ったのでしょうか?リサーチの結果、いくつかの要因が複合していると考えられます。

  • 「大和撫子」のイメージの裏返し: 「耐え忍ぶ日本女性」という古風なイメージから、情念の深さや、芯の強さが転じて「怒らせると怖い」「執念深い」といった俗説的な解釈が一部で生まれた可能性があります。
  • 幽霊画の描写: 江戸時代の幽霊画などでは、幽霊の足がない描写とともに、荒れ果てた野原に咲く細く頼りなげな草花が描かれることがあり、ナデシコの繊細な茎がそのイメージと結びついたという説があります。
  • 他のお花との混同: 墓地によく植えられる「彼岸花(ヒガンバナ)」や、毒を持つ植物と混同され、なんとなく「怖い」というイメージが飛び火した可能性も否定できません。

安心してギフトにしてください
ナデシコの花言葉は、愛や才能を称える素晴らしいものばかりです。誤解を恐れずに、「いつもありがとう」や「才能あふれるあなたへ」といったメッセージを添えて贈ってみてください。その可憐な姿は、きっと相手の心を温かくしてくれるはずです。

なでしこの開花時期を把握しよう

なでしこは、品種選びとちょっとしたお世話のコツさえ掴めば、春から秋まで長く私たちの目を楽しませてくれる素晴らしい植物です。春の爆発的な開花を楽しむならビジョナデシコ、秋まで長く付き合いたいならテルスターやカワラナデシコと、ご自身のライフスタイルや育てたい環境に合わせて、ぴったりのなでしこを選んでみてください。

植物は正直です。私たちが手をかけた分だけ、必ず美しい花で応えてくれます。梅雨前の切り戻しや、夏場の置き場所の工夫など、今回ご紹介したテクニックを一つでも実践していただき、あなたの庭が可愛いなでしこで満たされることを願っています。

最後に、この記事の要点をまとめました。

この記事の要点まとめ

  • なでしこの開花は品種により春咲き(一季)と四季咲きがある
  • カワラナデシコの見頃は初夏から秋(6月〜10月)にかけて
  • 秋の七草だが、現代の暦では夏に見頃を迎えることが多い
  • ビジョナデシコは低温要求性があり基本的に春の一季咲きである
  • テルスターなどの交配種は4月から11月の四季咲き性が強く初心者向き
  • 種まきは秋に行い、冬の寒さに当てて株を充実させるのが一般的
  • 梅雨前の「切り戻し」が秋の開花量と株の生存率を決定づける
  • 切り戻しは株の高さの半分から3分の1程度まで大胆に行う
  • 高温多湿に弱いため、夏は風通しの良い半日陰で管理する
  • 葉ばかり茂って咲かない場合は窒素肥料の与えすぎを疑う
  • 開花期間中はリン酸多めの肥料を与えて花付きを促進させる
  • 一部の品種は冬の寒さに当てないと花芽がつかない(バーナリゼーション)
  • なでしこに怖い花言葉はなく「純愛」「才能」などポジティブな意味
  • 日当たりを好むため、1日6時間以上の直射日光が当たる場所が理想
  • 定期的な花がら摘みで病気を防ぎ、次々と新しい花を咲かせることができる
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