こんにちは、My Garden 編集部です。
可憐で優美な花姿が魅力のナデシコ(ダイアンサス)。鉢植えで楽しむのも素敵ですが、お庭の地面いっぱいに咲き誇る姿には、また格別の風情がありますよね。私もガーデニングを始めたばかりの頃、「この可愛い花を庭一面に咲かせたい!」と思い立ち、意気揚々と苗を植えたことがあります。しかし、結果は散々でした。植えた翌月には蒸れて枯れ込み、冬には霜柱で根が浮いてしまい、春を迎えることなく消えてしまったのです。
「地植えは簡単そうに見えて、実は奥が深い」と痛感した瞬間でした。でも、諦めないでください。ナデシコは本来、非常に強健で環境適応能力の高い植物です。失敗の原因の多くは、日本の特殊な気候(高温多湿)とナデシコの生理的特性のミスマッチにあります。つまり、その「ズレ」さえ解消してあげれば、地植えでも毎年元気に花を咲かせてくれるのです。
この記事では、私が数々の失敗から学んだ「ナデシコを地植えで成功させるための鉄則」を、初心者の方にも分かりやすく、そして詳しく解説していきます。最適な時期の見極め方から、土壌改良の科学的なアプローチ、そして意外と知られていない「浅植え」の重要性まで、プロの知識と個人の経験を融合させた実践的なテクニックをお届けします。
この記事のポイント
- ナデシコの地植えに適した時期と、地域ごとの気候に合わせた戦略的なタイミング
- 「植えっぱなし」で長く楽しむための、品種ごとの特性と選び方の基準
- 蒸れを防ぎ、根腐れを回避するための「土壌改良」と「浅植え」の具体的な手順
- ナデシコの美しさを引き立てつつ、生育環境を共有できる「寄せ植え」の組み合わせ
撫子の地植えを成功させる基本手順
ナデシコの地植え栽培を成功させるためのロードマップは、「環境作り」から始まります。苗を買ってきて穴を掘って埋めるだけでは、日本の厳しい環境で生き残ることは難しいでしょう。ここでは、植え付け前の準備から実際の植栽技術まで、成功率を劇的に高めるための基本手順を深掘りします。
撫子の地植えに適した時期

地植えの成功を左右する最初の関門は「いつ植えるか」です。植物にはそれぞれ、根を伸ばすのに適した温度(生育適温)があり、ナデシコの場合はおおよそ15℃~25℃の範囲で根の活動が最も活発になります。このタイミングを逃すと、せっかく植えても根が土に馴染まず(活着せず)、その後の暑さや寒さに耐えられなくなってしまいます。
基本的には、春と秋が適期とされていますが、私が推奨するのは「お住まいの地域の気候に合わせて、最もリスクの少ない時期を選ぶ」という戦略です。具体的には以下の表のような基準で判断してみてください。
地域別の植え付け適期と推奨理由
| 地域・気候区分 | 推奨時期 | 詳細な理由と戦略 |
|---|---|---|
| 寒冷地・積雪地
(北海道、東北、高冷地など) |
春植え
(3月中旬~5月) |
冬の寒さが厳しいため、秋植えでは根が十分に張る前に土壌が凍結し、枯死するリスクが高まります。春、雪解け後に地温が上昇してから植え付けることで、梅雨入りまでに株を充実させることができます。 |
| 温暖地・一般地
(関東以西の平野部など) |
秋植え
(9月下旬~11月上旬) |
春に植えると、根が完全に張りきる前に酷暑の夏が到来し、体力不足で夏越しに失敗しやすくなります。秋の穏やかな気候の中でじっくり根を張らせることで、翌春の開花パフォーマンスが最大化し、夏の暑さへの耐性も獲得できます。 |
秋植えにおける「4週間ルール」
特に温暖地で推奨される「秋植え」ですが、一つだけ絶対に守ってほしいルールがあります。それは、「本格的な霜が降りる4週間前までには植え付けを完了させる」ということです。
なぜなら、ナデシコが新しい土壌に根を張り、水分や養分を自力で吸えるようになるまで(活着するまで)には、約2週間から1ヶ月程度の期間が必要だからです。もし、根が活着していない状態で土壌が凍結すると、「凍上(とうじょう)」と呼ばれる現象が起きます。これは霜柱によって土が持ち上がり、まだ浅いナデシコの根が物理的に切断されたり、地上に浮き上がって乾燥してしまったりする現象です。これを防ぐためにも、天気予報や地域の初霜データをチェックし、余裕を持って作業を行うことが不可欠です。
植えっぱなし向きの品種選び

「ナデシコ」という名前は、ダイアンサス属(Dianthus)に属する植物の総称であり、その種類は世界中に300種以上存在します。園芸店に並ぶナデシコも、一年で枯れてしまうものから、数年にわたって庭に定着するものまで多種多様です。「地植えにして植えっぱなしで楽しみたい」と考えているなら、品種選びを間違えてはいけません。
知っておきたい寿命の違い
・一年草・二年草タイプ:ビジョナデシコ(ヒゲナデシコ)などは、種を蒔いてから花が咲くまで時間がかかり、開花後に枯れる、または夏の暑さで枯れることが多いタイプです。毎年同じ場所で咲かせるには、こぼれ種を期待するか、植え替えが必要です。
・多年草タイプ:カワラナデシコやタツタナデシコ、現代の改良品種などは、適切な管理を行えば冬を越し、翌年も花を咲かせることができます。
私が地植え用として特におすすめしたいのは、以下の3つのグループです。
1. テルスター系(Dianthus ‘Telstar’)
「ビジョナデシコ」と「セキチク」を交配して作られた品種群で、ナデシコの歴史を変えたと言われるほどの名作です。暑さ、寒さの両方に強く、さらに四季咲き性(春から秋まで繰り返し咲く性質)が非常に強いため、一度植えれば長い期間花壇を彩ってくれます。初心者の方が最初に選ぶなら、まず間違いのない選択肢です。
2. PW品種などの最新改良種(ダイアンサス・ハイブリッド)
近年、種苗メーカーの努力により、「スーパーダイアンサス」とも呼べる高性能な品種が登場しています。例えば「フルーリアムール」や「ダイアンサス・ミーテ」といったシリーズは、従来のナデシコの最大の弱点であった「耐暑性」を劇的に向上させています。日本の蒸し暑い夏でも株が溶けにくく、分枝(枝分かれ)が良いため、一株でボリュームのある景観を作ることができます。
3. カワラナデシコ(Dianthus superbus var. longicalycinus)
「秋の七草」の一つとしても知られる、日本在来のナデシコです。花弁が深く裂けた繊細な姿は、洋風の品種にはない風情があります。日本の気候風土に適応して進化してきたため、環境が合えば非常に丈夫です。ナチュラルガーデンや、山野草を中心とした庭作りを目指す方には最適です。
なお、農林水産省の品種登録審査基準においても、ナデシコ属は一般的に耐寒性を持つとされていますが、その形態や生態的特性は品種により多様であることが示されています。自分の庭の環境に合った品種を選ぶことが、成功への第一歩です。(出典:農林水産省『ナデシコ属(Dianthus L.)』)
地植えに適した土作りと場所
「ナデシコ栽培の成否は、苗を植える前の土作りで8割決まる」。これは決して大袈裟な表現ではありません。ナデシコの原産地は、ユーラシア大陸の岩場や乾燥した草地が多く、水はけが良く日当たりの強い環境を好みます。一方で、日本の庭土は粘土質で湿気が多く、さらに雨の影響で酸性に傾いていることが一般的です。このギャップを埋める作業が土作りです。
1. 徹底した日当たりと排水性の確保

まず、場所選びですが、「半日以上直射日光が当たる場所」が絶対条件です。日陰では徒長(茎がひょろひょろに伸びること)し、花付きが悪くなるだけでなく、病気への抵抗力も落ちてしまいます。
そして、水はけの改善です。粘土質の土壌なら、1平方メートルあたり腐葉土を10~20リットル、さらに水はけを助ける川砂や軽石(パーライトなど)を適量混ぜ込みます。これにより、土の中に「団粒構造」が生まれ、余分な水がスムーズに排出されるようになります。
2. 酸性土壌の中和とカルシウム補給
ナデシコは中性から弱アルカリ性(pH 7.0~7.5)の土壌を好みます。日本の酸性土壌(pH 5.5~6.0程度)のままでは、根の生育が阻害されてしまいます。
そこで活躍するのが「苦土石灰(くどせっかい)」です。植え付けの2週間前に、1平方メートルあたり約100g(大人の手で二掴み程度)を散布し、よく耕してください。
ここで重要なのが、苦土石灰に含まれる「カルシウム」の働きです。カルシウムは単にpHを調整するだけでなく、植物の細胞壁を構成する「ペクチン」と結合し、細胞を強固にする役割を果たします。細胞壁が丈夫になれば、病原菌の侵入を防ぐことができ、夏の暑さや乾燥に対するストレス耐性も向上します。つまり、石灰を撒くことは、ナデシコに「天然の鎧」を着せるようなものなのです。
根腐れしない地植えの植え方
土の準備が整ったら、いよいよ植え付けです。ここで多くの人がやってしまいがちな失敗が「深植え」です。ナデシコの地植えにおいて、植え方の深さは生死を分けるほど重要です。
なぜ「深植え」はいけないのか?
ナデシコの茎の基部(地際部分)は、呼吸を盛んに行っている部位であり、同時に最も病気に弱い「アキレス腱」でもあります。この部分が土に埋もれてしまうと、常に湿った状態になり、酸素不足に陥ります。さらに、土壌中に潜むリゾクトニア菌などの病原菌が侵入しやすくなり、「立枯病」や「茎腐れ」を引き起こす原因となります。
プロが実践する「浅植え(高植え)」テクニック

根腐れや茎腐れを防ぐためには、以下の手順で植え付けてみてください。
- 植え穴の調整:苗の根鉢(ポットから抜いた土の塊)よりも、少し浅めに穴を掘ります。
- 高さを確認:苗を穴に入れたとき、根鉢の上面が、周囲の地面よりも1cm~2cm程度高くなるように調整します。これが「浅植え(高植え)」です。
- 土寄せ:飛び出した根鉢の側面を隠すように、周囲から土を寄せます。このとき、決して茎の付け根に新しい土を被せないように注意してください。
- ウォータースペースと株間:寄せた土の外側が少し低くなるようにして、水やりの際に水が溜まるスペースを作ります。また、株と株の間隔は、成長後の蒸れを防ぐために最低でも20cm、できれば30cm確保します。最初はスカスカに見えるかもしれませんが、すぐに成長して埋まります。
この植え方により、株元の水はけと通気性が劇的に改善され、長雨の時期でも茎が腐るリスクを大幅に減らすことができます。
地植えで映える寄せ植えの提案

ナデシコを単独で植えるのも美しいですが、相性の良い植物と組み合わせることで、お互いの魅力を引き立て合う素敵なガーデンを作ることができます。寄せ植え(混植)を成功させるコツは、「好む環境(日当たり・水はけ)が似ている植物を選ぶ」ことです。
ナデシコと相性抜群のパートナー植物
| 植物名 | 相性が良い理由とデザイン効果 |
|---|---|
| ローズマリー
(立性・匍匐性) |
ナデシコと同じく乾燥と日光を好み、アルカリ性土壌にも適応します。濃い緑の葉と野趣あふれる姿が、ナデシコの可憐な花色を引き立てます。また、ハーブの香りが害虫を遠ざける効果も期待できます。 |
| シロタエギク
(ダスティーミラー) |
シルバーリーフ(銀葉)の代表格です。ナデシコのピンクや赤といった鮮やかな花色と、シロタエギクの銀白色は補色の関係に近く、非常に洗練されたコントラストを生み出します。乾燥に強い点も共通しています。 |
| タイム
(クリーピングタイムなど) |
地面を這うように広がるタイムは、ナデシコの株元を適度にカバーしつつ、雑草の抑制(グランドカバー効果)をしてくれます。過湿を嫌う性質も似ており、管理のリズムが合わせやすいパートナーです。 |
| スイートアリッサム | 春や秋に、小さな花を絨毯のように咲かせます。ナデシコの足元に植えることで、立体感のある花壇になります。こぼれ種で増える強さも魅力です。 |
逆に、水を好む植物(例えばインパチェンスやアジサイなど)と近くに植えてしまうと、どちらかが水不足になるか、根腐れを起こす原因になります。環境特性のマッチングを意識することが、メンテナンスフリーな庭への近道です。
撫子の地植え後の管理と季節対策
無事に植え付けが完了しても、そこで終わりではありません。ナデシコを地植えで何年も楽しむためには、日本の四季、特に「高温多湿な夏」と「霜が降りる冬」を乗り越えるための適切な管理が不可欠です。ここからは、水やりや肥料といった日常のお世話から、季節ごとのトラブルを回避するためのプロのテクニックまでを詳しく解説していきます。
地植え撫子の水やりの基本

地植え栽培の最大のメリットの一つは、鉢植えに比べて水やりの手間が大幅に減ることです。しかし、「地植えだから完全に放置で良い」と勘違いしてしまうと、思わぬ落とし穴にはまることがあります。ナデシコの生理的特性を理解し、必要な時だけ手を差し伸べる「メリハリのある水管理」が、丈夫な株を育てる鍵となります。
1. 植え付け直後の「活着期間」は最重要
苗を地面に植えてから、新しい根が周囲の土壌に伸びて水分を吸収できるようになるまで(活着するまで)には、およそ2週間から1ヶ月程度の時間がかかります。この期間中に土を完全に乾かしてしまうと、まだ根が十分に機能していないナデシコはすぐに脱水症状を起こし、最悪の場合はそのまま枯れてしまいます。
植え付け直後は、土の表面が乾きかけたらたっぷりと水を与え、絶対に水切れさせないように注意深く観察してください。
2. 活着後は「雨にお任せ」のスパルタ管理
一度根付いてしまえば、ナデシコは乾燥に対して非常に強い耐性を発揮します。過度な水やりは、根が呼吸困難に陥るだけでなく、根が水分を求めて深く伸びようとする力を削いでしまい、ひ弱な株になってしまいます。
基本的には自然の降雨に任せ、「土が乾いているのが当たり前」という状態をキープしましょう。私の庭では、梅雨や秋の長雨の時期以外は、ほとんどホースを向けることはありません。
3. 真夏の緊急対応と「ターガーロス」の見極め
例外的に水やりが必要になるのが、真夏に晴天が1週間以上続き、雨が全く降らない場合です。この時、水を与えるべきかどうかの判断基準となるのが、植物の「萎れ(ターガーロス)」のサインです。
朝夕の涼しい時間帯に見ても葉に張りがなく、少し垂れ下がっているように見えたら、それは限界のサインです。気温が低い「早朝(午前6時~7時頃)」に、株元へたっぷりと水を与えてください。
昼間の水やりは厳禁!
真夏の日中に水やりをすると、土の中の水分が太陽熱で温められ、お湯のようになって根を煮てしまいます(根腐れや根煮えの原因)。また、高温多湿環境を一気に作り出し、蒸れを誘発するため、必ず涼しい時間帯に行いましょう。
花を咲かせる肥料の与え方
ナデシコは春から秋にかけて、次々と花を咲かせる非常にエネルギー消費の激しい植物です。美しい花を途切れさせないためには、適切なタイミングでの栄養補給が欠かせません。しかし、肥料は「やればやるほど良い」というものではなく、時期を間違えると毒にもなります。
ナデシコが喜ぶ肥料の成分
肥料には「窒素(N)・リン酸(P)・カリ(K)」の三要素がありますが、ナデシコ栽培で特に重要なのが「リン酸(P)」です。リン酸は「実肥(みごえ)」とも呼ばれ、花芽の形成や開花、そして根の伸長を強力にサポートします。
逆に、窒素が多すぎると、葉や茎ばかりが茂って花が咲かなくなる「蔓ボケ(つるぼけ)」状態になりやすく、さらに組織が軟弱になってアブラムシなどの害虫を呼び寄せる原因にもなります。肥料を選ぶ際は、リン酸分が強化されたものを選ぶのがコツです。
年間の施肥スケジュール
肥料を与える(追肥する)タイミングは、ナデシコの生育サイクルに合わせます。
- 春(3月~5月)と秋(9月~10月):生育が旺盛な時期です。緩効性の化成肥料(固形肥料)を株元にばら撒くか、即効性のある液体肥料を1週間から10日に1回程度与えます。これにより、開花パフォーマンスが劇的に向上し、株のボリュームもアップします。
- 夏(6月~8月)と冬(11月~2月):この時期の施肥は絶対禁止です。夏は高温で根の機能が低下しており、肥料を吸収できずに土壌中に残った成分が根を傷める「肥料焼け」を起こします。冬は休眠期に近い状態なので、肥料は不要です。
梅雨入り前の「肥料切り」
私が特に気をつけているのが、5月下旬頃から肥料をストップすることです。土の中に肥料分が残ったまま梅雨に入ると、株が徒長しやすく、蒸れて腐るリスクが高まります。夏を健康に越させるためには、あえて「粗食」にすることが重要なのです。
蒸れを防ぐ切り戻しのやり方

ナデシコの地植えにおいて、最も勇気が必要で、かつ最も重要な作業が「切り戻し」です。「せっかく綺麗に咲いているのに、切るなんてもったいない」と思う気持ちは痛いほど分かりますが、これをやらないと日本の高温多湿な夏を越すことはできません。
切り戻しを行うべき生理学的理由
植物には、茎の先端にある芽(頂芽)が優先的に成長し、脇芽の成長を抑制する「頂芽優勢(ちょうがゆうせい)」という性質があります。切り戻しによって頂芽を物理的に除去すると、この抑制が解除され、植物ホルモン(サイトカイニンなど)の働きで株元から新しい脇芽が一斉に伸び始めます。
これにより、株の重心が低くなって倒伏を防げるほか、枝数が増えて花数が倍増し、さらに株内部の風通しが良くなって蒸れを防ぐという、一石三鳥の効果が得られるのです。
失敗しない切り戻しの手順
最適な時期は、梅雨入り前の「5月下旬から6月上旬」です。
- 高さの目安:思い切って、株全体の高さの「2分の1から3分の1」くらいまで切り詰めます。
- 切る位置(重要):茎をよく見ると、葉が出ている「節(ふし)」があります。必ず、「緑色の葉が残っている節の、約5mm~1cm上」で切ってください。
- 注意点:葉が枯れ落ちて茶色く木質化した部分まで深く切りすぎると、光合成ができず、新しい芽を吹くエネルギーを作れずにそのまま枯死してしまいます。必ず「緑の葉」を残すのが鉄則です。
この作業を行うことで、株元の風通しが劇的に改善され、蒸れによる「立ち枯れ」のリスクを回避できます。秋には再び、こんもりとした美しい姿で花を咲かせてくれますよ。
暑さに弱い撫子の夏越し方法
ナデシコにとって、日本の夏は生存限界に近い過酷な環境です。特に近年のような猛暑日は、人間だけでなくナデシコにとっても命に関わります。地植えの場合は鉢植えのように日陰へ移動させることができないため、その場でできる環境緩和策を講じる必要があります。
1. マルチングによる地温上昇の抑制

夏の直射日光は地面を焼き、浅い位置に根を張るナデシコに大ダメージを与えます。これを防ぐために、株元に腐葉土、バークチップ、あるいはワラなどを敷き詰める「マルチング」を行いましょう。
マルチング材が断熱材となり、地温の急激な上昇を抑えるとともに、土壌水分の蒸発を防ぎ、乾燥ストレスを緩和する効果があります。
2. 遮光ネットでの物理防御
もし西日がガンガン当たる場所に植えている場合は、7月~8月の間だけ「遮光ネット」や「寒冷紗(かんれいしゃ)」を設置することをおすすめします。
遮光率30%~50%程度のものを使用し、株の上にふんわりとかけるか、支柱を立てて日傘のように設置します。これにより、強烈な紫外線と熱線を和らげ、葉焼けや株の消耗を防ぐことができます。
夜間の「打ち水」効果
熱帯夜が続くときは、夕方以降に株元ではなく「周囲の地面」に水を撒く(打ち水をする)のも有効です。気化熱によって周囲の気温を下げ、夜間に植物が呼吸で消費するエネルギーを抑えることができます。
寒さに強い撫子の冬越し対策
ナデシコは本来「寒地型植物」の性質を持っており、耐寒性は非常に高いです。多くの品種はマイナス10℃程度まで耐えることができ、関東以西の平地であれば、特に対策をしなくても常緑(または半常緑)のまま冬を越します。しかし、油断大敵なのが「土壌凍結」と「乾燥した寒風」です。
最大の敵は「霜柱(しもばしら)」
冬の寒さそのものよりも怖いのが、霜柱による「凍上(とうじょう)」という現象です。土の中の水分が凍って霜柱ができると、土が持ち上がり、ナデシコの根も一緒に引っ張り上げられてしまいます。
根が切断されるだけでなく、地表に露出した根が寒風に晒されて乾燥し、そのまま枯れてしまうのです。これを防ぐために、冬前(11月下旬頃)になったら、株元に腐葉土やもみ殻を厚さ3cm~5cm程度敷き詰め、霜柱が立たないように保温してあげましょう。
寒冷地での不織布活用
北海道や東北地方、あるいは寒風が吹き荒れる場所では、農業用の「不織布(パオパオなど)」を株の上からベタ掛けし、四隅をピンで固定しておくと安心です。
不織布は光と水を通しつつ、冷たい風を遮断し、内部の湿度を適度に保つ効果があります。これにより、葉の凍結や乾燥枯れ(冬枯れ)を効果的に防ぐことができます。
撫子が枯れる原因と病害虫

「大切に育てていたのに、急に枯れてしまった…」。そんな悲しい事態を防ぐために、ナデシコに発生しやすいトラブルの原因と対処法を知っておきましょう。早期発見・早期対処こそが、被害を最小限に食い止める鍵です。
主な枯死原因:蒸れと茎腐れ
ナデシコが枯れる原因のナンバーワンは、間違いなく「湿気」です。特に、梅雨時や秋の長雨の後に、株全体がドロっと溶けたようになったり、地際から茶色く変色して倒れたりする場合は、「立枯病(たちがれびょう)」や「茎腐れ」の可能性が高いです。
これらはカビ(糸状菌)の一種が原因ですが、根本的な原因は「深植え」や「過湿」です。一度発病すると回復は難しいため、発病した株は土ごと取り除き、周囲の土壌を殺菌するか、水はけを改善するしかありません。やはり、「浅植え」と「切り戻し」による予防が何よりも重要です。
注意すべき害虫と対処法
- アブラムシ:春と秋の新芽や蕾にびっしりとつきます。吸汁して株を弱らせるだけでなく、ウイルス病を媒介する厄介者です。見つけ次第、ガムテープでペタペタ取ったり、オルトラン粒剤などの浸透移行性殺虫剤を株元に撒いたりして駆除します。
- ヨトウムシ(夜盗虫):「昼間は元気だったのに、朝見たら葉っぱがボロボロ…」という場合は、ヨトウムシの仕業かもしれません。昼間は土の中に隠れていて、夜になると出てきて活動します。株元の土を軽く掘ってみて幼虫を見つけるか、夜間にパトロールして捕殺するのが確実です。
- ハダニ:高温乾燥期に発生しやすく、葉の裏に寄生して汁を吸います。葉の色が白っぽくカスリ状に抜けたら要注意。水に弱いため、水やりの際に葉の裏側にも水をかける「シリンジ(葉水)」を行うことで、発生を抑制できます。
発生しやすい病気
- 灰色かび病(ボトリチス病):低温多湿の時期に、花がらや枯れ葉に灰色のカビが生える病気です。終わった花(花がら)や枯れた下葉をこまめに掃除し、風通しを良くすることで予防できます。
農薬の使用について
病害虫の防除には、環境改善などの耕種的防除が基本ですが、被害が拡大しそうな場合は適切な農薬の使用も検討しましょう。使用の際は、必ずラベルの記載事項を守り、対象作物や希釈倍率を確認してください。(出典:農林水産省『農薬コーナー』)
撫子の地植え栽培のまとめ
ナデシコの地植え栽培について、植え付けから季節の管理まで詳しく解説してきました。最後に、これだけは覚えておいてほしい重要ポイントをまとめました。これらをチェックリストとして活用し、ぜひ元気なナデシコを育ててくださいね。
この記事の要点まとめ
- 地植えの成功率は「植え付け時期(春か秋)」と「土壌改良」で8割決まる
- 温暖地では秋植え、寒冷地では春植えを選択するのがベストな戦略
- 土壌は苦土石灰で中和し、腐葉土や軽石を混ぜて水はけを徹底的に確保する
- 品種選びでは「テルスター」や「PW品種」などの耐暑性があるものを選ぶと失敗が少ない
- 植え付け時は、根腐れを防ぐために必ず「浅植え(高植え)」にする
- 株間は成長を見越して20cm~30cm確保し、風通しを良くする
- 水やりは、活着するまでは乾かさないようにし、活着後は「乾燥気味」にスパルタ管理する
- 真夏の水やりは、早朝の涼しい時間帯に行い、日中の灌水は厳禁
- 肥料はリン酸分が多いものを春と秋に与え、夏と冬は肥料焼けを防ぐために中止する
- 梅雨入り前に株の高さの半分~3分の1まで「切り戻し」を行い、蒸れを防ぐ
- 切り戻しの際は、必ず「緑の葉が残っている節の上」で切ることを守る
- 夏越し対策として、マルチングで地温上昇を抑え、必要なら遮光ネットを活用する
- 冬越し対策として、霜柱による根の切断(凍上)を防ぐために株元を保温する
- 枯れる最大の原因は「湿気」と「深植え」による茎腐れや立枯病である
- アブラムシやヨトウムシなどの害虫は、早期発見と捕殺、適切な薬剤使用で対処する
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