灰色かび病の見分け方と対策【家庭菜園OK】

灰色かび病の典型的な症状(イチゴの果実に密生した灰色のカビ) ガーデニングの基礎知識

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こんにちは。My Garden 編集部です。

大切に育てている植物が、なんだか元気がない。ふと見ると、灰色のカビのようなものが…。それ、もしかしたら「灰色かび病」かもしれませんね。

灰色かび病は、トマトやイチゴ、キュウリといった野菜から、きれいなバラまで、本当にいろいろな植物に発生するやっかいな病気です。この菌(Botrytis cinerea)は「多犯性」といって、数百種類もの植物に感染する能力を持っています。まさにガーデナーの宿敵とも言えるかもしれません。

特に梅雨時や秋の長雨の時期、なんだかジメジメするな…という環境で広がりやすいんですよね。菌の活動適温が20℃前後と、人間が過ごしやすい春や秋が一番危険な時期だったりします。露地栽培だけでなく、施設(ハウス)栽培でも、冬場の加温時に換気が不十分だと結露して多発することがあります。

うどんこ病や菌核病といった他の病気との違いが分かりにくかったり、効果的な対策や予防方法が知りたい、という方も多いかなと思います。灰色かび病の原因を知って、しっかり対策を立てたいですよね。また、この病気の菌が、実は高級な貴腐ワインと関係がある、なんていう意外な一面も…!

この記事では、そんな灰色かび病の基本的な知識から、具体的な予防方法、もし発生してしまった時の農薬の使い方まで、家庭菜園を楽しむ皆さんに向けて分かりやすくご紹介していきますね。早期発見と予防がなにより大切なので、ぜひ日々のガーデニングの参考にしてください。

この記事のポイント

  • 灰色かび病の基本的な特徴と発生原因
  • うどんこ病や菌核病との見分け方
  • 野菜や花き類、作物別の注意点
  • 家庭菜園でもできる予防対策と農薬の知識

灰色 かび 病の症状と見分け方

まずは、敵を知ることからですね。灰色かび病は、その名の通り「灰色のカビ」が特徴ですが、初期症状や似た病気との違いを知っておくことが、早期発見のカギになります。この菌は「ボトリチス・シネレア(Botrytis cinerea)」という名前で、本当にどこにでもいる菌なんです。枯れた植物の上で生き続ける能力(腐生能力)が非常に高く、土壌や枯れ枝、植物の残渣(残りかす)の中で越冬し、春になると胞子を飛ばし始めます。

菌核病との決定的な違い

灰色かび病(灰色のカビ)と菌核病(白いカビと黒い菌核)の症状比較写真

灰色かび病と本当によく似ていて、私も最初は見間違えそうになったのが「菌核病(きんかくびょう)」です。どちらも低温でジメジメした時期が大好きで、植物が水浸しみたいになって(水浸状)、やがてドロドロに軟化・腐敗していく症状はそっくりです。レタスやキャベツの地際が腐る症状などは、どちらの病気でも起こり得ます。

でも、決定的な違いがいくつかあります。

  • 灰色かび病: 病気が進んだ場所に、灰色の粉っぽいカビ(分生子という胞子の塊)がびっしり生えます。この胞子が風などで飛散し、次々と感染(二次伝染)を広げます。
  • 菌核病: 最初は白い綿のようなカビ(菌糸)が生えて、病気が進むと、そのカビの中や腐った組織の中に、ネズミのフンのような黒くて硬い塊(菌核)ができます。

この「菌核」は、菌が冬越ししたり、悪い環境を耐え忍ぶための耐久体です。これが土の中に残ると、翌年(あるいは数年後)にキノコのようなもの(子のう盤)を発生させ、そこから胞子を飛ばして新たな伝染源となります。これが見つかれば、菌核病でほぼ確定ですね。

カビの色が「灰色」か「白色」か、そして「黒い塊」があるかないか。ここが一番の見分けポイントです。

【比較】灰色かび病 vs 菌核病

特徴 灰色かび病 菌核病
発生環境 低温・多湿 (適温20℃前後) 低温・多湿 (適温15〜20℃)
初期症状 水浸状の斑点 → 軟化・腐敗 水浸状の斑点 → 軟化・腐敗
カビの色 灰色(粉状) 白色(綿状)
特徴的なもの 灰色の胞子(分生子)が密生する 黒く硬い菌核を形成する
伝染源 被害残渣、菌核、分生子 土壌中の菌核、被害残渣

うどんこ病との見分け方

灰色かび病(腐敗)とうどんこ病(葉の表面の白い粉)の症状の違い

「うどんこ病」も白いカビのように見えますが、これは灰色かび病とは全然違います。むしろ、症状も発生環境も対照的な部分があるんですよ。

うどんこ病は、葉の表面にうどんの粉をまぶしたように、白いカビが「点々と」広がっていくのが特徴です。植物がジメジメして腐るというよりは、葉の養分を吸い取って光合成を邪魔し、だんだん生育が悪くなって葉が黄色くなったり、ひどいと枯れていくイメージですね。キュウリやカボチャ、バラなどでよく見られます。

発生環境も、灰色かび病が「低温・多湿(高湿度)」を好むのに対し、うどんこ病は湿度が低くても(乾燥気味でも)発生しやすく、むしろ雨が続くと胞子が流れて発生が減ることもあるくらいです。ただし、胞子の発芽にはある程度の湿度が必要なので、「乾燥しているけど夜露は降りる」ような春や秋に多発しやすいですね。

侵入経路も、灰色かび病が「傷口」や「枯れた花弁」など弱った部分を足場にするのが得意なのに対し、うどんこ病は比較的健康な葉の表面から直接侵入できる力を持っています。

見分け方のポイント

  • 灰色かび病: 「ジメジメした腐敗」+「灰色のカビ」+「傷口や花がらから発生」
  • うどんこ病: 「葉の表面」+「白い粉(点々)」+「乾燥気味でも発生」

このように、症状と発生条件がまったく違うので、落ち着いて観察すれば見分けは簡単かなと思います。

トマトに見られる特有の症状

トマトは灰色かび病にかかりやすい代表的な野菜ですね。特に施設栽培(ハウス栽培)では、湿度管理が難しく、冬から春(11月~5月頃)にかけて多発することがあります。

感染の足場は「花弁」

トマトのヘタ(ガク)に残った花弁から灰色かび病が発生している様子

特に注意したいのが、「咲き終わった花(花弁)」です。トマトは次々と花を咲かせますが、受粉が終わった花弁は自然に枯れていきます。この枯れた花弁が果実のヘタ(ガク)の部分に残り、そこが湿気を持つことで菌にとって格好の栄養源(足場)になるんです。

この古い花びらに菌がくっついて増殖し、そこからヘタの部分、そして果実へと感染が広がっていくケースがすごく多いんです。果実が腐り始めるのもヘタの周りから、ということが多いのはこのためですね。なので、この「花がら」をこまめに摘んであげる(摘花)だけでも、かなりの予防になります。

また、葉や茎にも発生します。茎に発生した場合、病斑が褐色になって、やがて茎を一周するように広がると、そこから上部への水や養分の通り道が絶たれ、株全体がしおれて枯死してしまうこともあり、非常に危険です。

危険サイン「ゴーストスポット」

トマトの緑色の果実に現れた灰色かび病の「ゴーストスポット」(白い輪状の斑点)

それともう一つ、トマトの青い実(未熟果)に「ゴーストスポット」と呼ばれる、直径数ミリ程度の、縁が緑色で中心が淡褐色の白い輪っか状(ドーナツ状)の斑点が出ることがあります。

これは、菌の胞子が果実の表面に付着し、発芽して侵入しようとした「痕跡」のようなもの。菌が侵入しようとした瞬間に、トマト自身が局所的な防御反応(過敏感反応)を起こしたり、あるいは侵入直後に急に天気が晴れて乾燥したり、紫外線に当たったりして、菌がそれ以上活動できずに死滅した結果と考えられています。

この斑点自体が腐敗に発展することは稀で、果実が熟しても跡が残る程度ですが、これがたくさん出ているということは、「あ、今うちのトマト、灰色かび病菌が活動できるくらい高湿度になってるな」という強力な警告シグナルです。すぐさま換気を強化するなど、環境を見直す必要がありますね。

イチゴの果実腐敗

収穫間近のイチゴが灰色かび病で腐敗し、灰色の胞子に覆われている状態

家庭菜園のイチゴ。赤く色づいてきて「さあ収穫!」と思ったら、灰色のカビに覆われてブヨブヨに…これは本当にがっかりしますよね。これも、ほぼ灰色かび病が原因です。

イチゴは地面に近い場所で実がなりますし、収穫期が低温・多湿の時期(春先など)と重なるので、どうしても被害が出やすいんです。地面に敷いたワラやマルチ(ビニール)の上に、枯れた下葉が落ちて、そこが菌のすみか(伝染源)になっていることも多いですね。そこから雨の跳ね返りなどで、花や果実に感染が広がります。

ポストハーベスト病害としての脅威

さらにやっかいなのが、収穫した後のパックの中で広がる「ポストハーベスト病害」です。収穫した時点ではキレイに見えても、目に見えないレベルで菌が潜伏感染していて(特に花が感染していた場合)、冷蔵庫や輸送中、店頭に並んでいる間に、低温環境下でもゆっくりと発症が進み、腐敗してしまうことがあります。

これを防ぐには、収穫後の管理はもちろんですが、それ以上に「収穫前の畑(圃場)の段階」で、いかに菌の密度を下げ、感染していない健全な果実を収穫するかが重要になってきます。収穫時の取り扱いも丁寧に行い、果実に傷をつけないことも大切です。

キュウリへの感染

キュウリの幼果(小さい実)が花落ち部から灰色かび病に感染し腐敗している様子

キュウリも油断できません。キュウリの場合も、やっぱり「花」が感染ルートになりやすいです。

雌花が咲き終わった後、黄色い花弁が幼い果実の先端(花落ち部)にくっついたままになって、そこが湿気を持つことで菌が増殖し、腐敗が始まってしまうパターンですね。せっかく実がつき始めたのに、先端から水浸状になって腐って黄色くなり、ポロッと落ちてしまう…そんな時は灰色かび病を疑ってみるといいかもしれません。

また、キュウリは整枝(脇芽かき)や葉かき(古い葉の除去)、摘芯などで植物体に「傷口」ができやすい植物です。この切り口が湿ったままだと、そこからも菌が侵入することがあります。作業はなるべく湿度が低い、晴れた日の午前中に行い、切り口が早く乾くようにしてあげるのも地味ですが大切なポイントです。

症状の共通点:すべては「水浸状」から

どの植物でも、最初は「水がしみたような斑点(水浸状)」から始まることが多いです。そこから淡い褐色になって、ジメジメした環境(相対湿度90%以上)が続くと、一気に軟らかく腐敗し、おなじみの「灰色のカビ(胞子)」が姿を現します。この胞子が風や雨で飛んで、次の感染源になるわけですね。葉に発生した場合は、輪紋状の大きな病斑になることもあります。

灰色 かび 病の予防と作物別対策

灰色かび病は、一度発生すると胞子があっという間に飛んで広がるので、とにかく「予防」が一番大事だと痛感しています。菌を「発生させない」「活動させない」環境づくりが基本ですね。菌はどこにでもいるので、「根絶」は不可能。いかに「発病させないか」が勝負です。

バラなど花き類の管理方法

バラの花弁に灰色かび病が発生し、水がしみたような斑点(シミ)とカビが出ている状態

バラやシクラメン、ビオラ、ガーベラ、トルコギキョウなど、花を楽しむ植物も灰色かび病のターゲットです。せっかくの花弁がシミになったり、腐敗したりすると、観賞価値が台無しになってしまいますよね。

特にバラのように花びらが多い花(多弁花)は、花の中に湿気をため込みやすく、雨が続くと花ごと腐るように褐色になってしまうことがあります。つぼみの段階で感染することもありますね。

一番の対策は、「咲き終わった花(花がら)」をこまめに摘み取ることです。これはトマトやキュウリとまったく同じですね。古い花びらは菌の大好物なので、これを残しておくと、そこから葉や新しいつぼみにまで病気が移ってしまいます。

あとは、やっぱり風通し。葉が茂りすぎている場所は、思い切って剪定して、株元まで風が通るようにしてあげるのが効果的ですね。特にシクラメンやビオラのように株元が密になりやすい植物は、黄化した古い葉(下葉)をこまめに取り除き、株の中心に空気が通るようにしてあげるのが重要です。

施設栽培では、暖房機と換気扇、循環扇(サーキュレーター)を連動させて、ハウス内の湿度を一定以下(例:相対湿度90%未満)に保つ「湿度制御(環境制御)」が、発病抑制に極めて有効な技術として使われています。

ブドウと貴腐ワインの意外な関係

ここでちょっと豆知識です。私たちガーデナーにとっては宿敵のような「灰色かび病菌(ボトリチス・シネレア)」ですが、実は世界的に有名な高級デザートワイン「貴腐ワイン」を生み出す立役者でもあるんです。

フランスのソーテルヌやドイツ、ハンガリーのトカイなど、特定の気象条件下(収穫期の秋に、朝霧で湿気が多く、日中は晴れて乾燥する)でこの菌がブドウの果実(完熟した白ブドウ品種)につくと、果実が腐敗するのではなく、皮に小さな穴が開いて水分だけがゆっくりと蒸発していきます。

その結果、糖度やアミノ酸、香気成分がものすごく凝縮された「貴腐ブドウ」ができるんだとか。この菌(Botrytis)が「貴腐菌(Noble rot=高貴なる腐敗)」と呼ばれるゆえんですね。同じ菌なのに、環境やタイミング、ブドウの品種が違うと害菌にも益菌にもなるなんて、なんだか自然の奥深さを感じてしまいます。

ただし、これは本当に特殊な条件が揃った場合の話。日本の多くの環境、特に梅雨時や、湿度が高すぎる秋雨の時期に発生すると、単なる腐敗(灰色かび病)になってしまい、ブドウの品質を著しく損ねてしまいます。貴腐ワイン造りがいかに奇跡的なものかがわかりますね。

灰色 かび 病に効く農薬とは

予防を徹底していても、梅雨や秋の長雨が続くなど、気象条件によってはどうしても発生してしまうことはあります。特に被害が広がりそうな初期段階では、農薬(殺菌剤)の力を借りるのも一つの手です。

薬剤耐性菌に注意!

ただし、灰色かび病菌は、全植物病原菌の中でもトップクラスで「薬剤耐性菌(やくざいたいせいきん)」が出やすい、手ごわい相手として知られています。

「薬剤耐性」というのは、分かりやすく言うと「薬が効かない菌」のこと。同じ薬(あるいは同じ作用の仕組みを持つ薬)を使い続けていると、その薬に強い(耐性を持った)菌だけが生き残り、その子孫が増えていきます。その結果、せっかく薬をまいたのに全然効かない…!ということになりかねません。

これは、灰色かび病菌が非常に変異しやすく、世代交代も早いためと考えられています。

ローテーション散布が絶対

耐性菌の出現リスクを管理するために、農薬は「必ず違う系統(作用の仕組みが違う)のものを順番に使う」ことが重要です。これを「ローテーション散布」と言います。

製品名が違っても、中身の「有効成分」や「作用の仕組み」が同じなら、ローテーションしたことになりません。そこで国際的な目安になるのが「FRAC(フラック)コード」という分類番号です。これは、殺菌剤を作用の仕組み(作用機序)ごとにグループ分けした番号なんですね。(出典:農林水産省「農林水産省における薬剤抵抗性対策に向けた取組状況」

農薬のパッケージや説明書に「殺菌剤分類:7」や「FRACコード:11」のように記載されていることが多いので、前回使った薬とは違う番号の薬を選ぶようにするのが一番確実ですね。

主な灰色かび病薬のFRACコード例

※実際の使用にあたっては、必ずお使いの作物の農薬登録情報を確認し、使用基準を守ってください。

FRACコード 作用の仕組み(系統) 耐性リスク 特徴・注意点
1 ベンズイミダゾール系 古くからある薬剤。耐性菌が広範に報告されているため注意。
2 ジカルボキシイミド系 耐性菌の報告あり。地域の発生状況を考慮。
7 SDHI剤 中〜高 比較的新しい薬剤群。基幹剤の一つだが耐性菌に注意。
9 アニリノピリミジン系 中〜高 予防効果が高い。低温期でも効果が安定しやすい。
11 QoI剤(ストロビルリン系) 幅広い病気に効くが、耐性菌が非常に出やすい系統。連用厳禁。
12 フェニルピロール系 低〜中 胞子の発芽を強く抑える。予防効果主体。
M(M1, M3, M4など) マルチサイト(多作用点)剤 菌の複数の場所に作用するため、耐性菌が出にくい。保護殺菌剤(予防薬)として重要。
BM(BM2など) 生物農薬(微生物) バチルス菌など有用微生物を利用。化学農薬のローテーションに組み込むことで耐性菌管理に有効。

ローテーションの組み方 (例): 「9 (アニリノピリミジン系)」→「7 (SDHI剤)」→「12 (フェニルピロール系)」→「M (マルチサイト剤)」のように、毎回違う番号の薬剤を選択します。耐性リスクが「高」の薬剤の使用は特に慎重に行う必要がありますね。

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農薬使用の注意点

農薬を使う際は、必ずその製品のラベルを熟読してください。散布は「治療」よりも「予防」が基本。灰色かび病は一度発病すると進行が早いため、発病が確認されてから慌てて散布しても手遅れ(特に腐敗した部分)になることが多いです。発生しやすい時期(長雨が続く予報の時など)に、あらかじめ散布しておく「予防散布」が最も効果的です。

  • 対象作物を守る: その農薬が、あなたの育てている植物(例:トマト、イチゴ、バラ)に登録されているか必ず確認してください。登録がない作物に使うことは法律で禁止されています。
  • 使用基準を守る: 決められた希釈倍率、使用回数、そして「収穫何日前まで使用可能か」という基準(使用時期)を絶対に守ってください。特に家庭菜園で収穫を楽しむ野菜類では最重要です。
  • 散布方法: 薬液がムラなくかかるように散布します。特に感染起点となりやすい「花」や「花がら」、湿度が高くなる「株元」や「葉の裏側」にも、しっかりかかるように丁寧に散布します。
  • 保護具: 散布する際は、農薬用のマスク、ゴーグル、長袖・長ズボン、帽子、手袋などを着用し、薬剤を吸い込んだり皮膚に付着したりしないよう、ご自身の安全も確保してくださいね。

どの農薬を選べばいいか迷った時は、お近くの園芸店やホームセンターの専門スタッフの方に、「灰色かび病の薬で、前回これ(FRACコードXX番)を使ったので、違う系統のものが欲しい」と相談するのが一番早いかなと思います。

最終的な農薬の使用判断や選択は、ご自身の責任において、必ず製品の公式サイトや最新の登録情報を確認してから行ってください。

家庭菜園でできる予防対策

灰色かび病の予防対策として、感染したトマトの葉や花がらをハサミで除去する作業

農薬はちょっと…という方や、まずはできることから始めたい、という方向けに、基本的な予防対策(耕種的防除)をまとめます。これが一番のキモですし、農薬の効果を高めるためにも不可欠です。

  1. 風通しと日当たりを良くする

    これが全ての基本ですね。密植(ぎゅうぎゅうに植えること)を避けて、株と株の間(株間)をしっかり空けます。植物が成長したときに葉と葉が触れ合うか触れ合わないか、くらいが目安です。葉が茂りすぎると、株の内部に湿った空気がこもり、菌の天国になってしまいます。思い切って整枝・剪定し、不要な脇芽や古い下葉を取り除き、株の中心部まで風と光が届くようにします。

  2. 水やりの工夫

    過剰な水やりは、土壌の過湿だけでなく、ハウス内の湿度も上げてしまいます。これが一番大事かも。水やりはなるべく早朝(午前中)に行い、夕方までに葉や株元が乾くようにするのがベストです。夕方以降に水やりをすると、夜間に湿度が高い状態が続き、結露を招き、病気の発生を著しく助長します。葉や花に直接水をかけるのではなく、株元にそっとあげる「株元かん水」を徹底します。可能なら点滴チューブなどを使って地中に直接水を供給できると理想的ですね。

  3. 伝染源を取り除く(衛生的管理)

    咲き終わった花がら、病気にかかった葉や果実、地面に落ちた枯れ葉。これらは全て菌のすみか(第一次伝染源)になります。特に灰色かび病菌は腐生能力が高いので、枯れた組織で爆発的に増えます。見つけたら直ちに摘み取り、ビニール袋に入れて口を縛り、ゴミとして処分(圃場外に持ち出す)してください。その辺にポイっと捨ててはダメですよ!そこから胞子が飛散して、病気がまん延します。理想は、灰色のカビ(胞子)が形成される前に、水浸状や褐変の段階で除去することです。収穫が終わった後の株(残渣)も、畑に残さず速やかに片付けます。

  4. マルチング

    マルチフィルムや敷きワラ、モミ殻などで土の表面を覆う(マルチング)と、土壌からの水分の蒸発を抑えられますし(湿度管理)、雨や水やりによる泥はね(土の中の菌が葉に跳ね上がる)を防ぐ物理的な障壁としても機能します。イチゴなどでは必須の対策ですね。地温の安定や雑草防止にも役立ちます。

  5. 窒素肥料をやりすぎない

    肥料、特に窒素(N)が多すぎると、植物体が軟弱に育ち(過繁茂・軟弱徒長)、葉が大きく柔らかくなりすぎて、病気にかかりやすくなります。組織が柔らかいと菌が侵入しやすくなるんですね。日照不足の時も同様のことが起こりやすいです。作物の生育状況を見ながら、適正な施肥(肥培管理)を心がけるのも、植物を健康に保ち、病気への抵抗力を高める立派な病害予防です。

特定農薬の活用

また、農薬としてカウントされない「特定農薬」である重曹(炭酸水素ナトリウム)食酢を希釈してスプレーすることも、予防的な効果が期待できると言われていますね。これらは化学農薬と違って治療効果(菌を殺す力)は低いですが、菌の活動を抑える静菌的な効果が期待され、発生初期や予防段階で使う選択肢としてはアリかなと思います。

  • 重曹: 水1リットルに対し1グラム(1000倍希釈)程度で溶かして散布します。(500倍希釈という情報もありますが、濃度の薬害に注意)
  • 食酢: 水1リットルに対し3〜5ml(300〜500倍希釈)程度で散布します。

※ただし、これらも濃度が濃すぎると植物に薬害(葉が焼けるなど)が出ることがあります。特に高温時や日中の散布は避けてください。使用はあくまで自己責任で、まずは一部の葉で試してから全体に使うなど、慎重に行う必要があります。治療効果は期待できないため、多発している場合は化学農薬や生物農薬の使用を検討してください。

灰色 かび 病を防ぐまとめ

灰色かび病予防のため、トマトの下葉を摘み取り、株元の風通しを良くする整枝作業

最後に、灰色かび病対策のポイントをもう一度おさらいしますね。

この病気の原因は「ボトリチス・シネレア」という菌ですが、この菌は枯れた植物の上で生き続ける「腐生能力」が非常に高く、どこにでもいる「常在菌」です。圃場(畑や庭)からゼロにすることはできません。だからこそ、「菌が活動しやすい条件(低温・多湿)を作らない」ことが、すべての対策の基本になります。

灰色かび病は、病原菌による病気であると同時に、換気や水やりの失敗、掃除(衛生的管理)の不足といった「管理(マネジメント)による病気」という側面が強いと私は感じています。つまり、私たちの管理次第で、発生をかなり抑えられる病気でもあると思うんです。

灰色かび病 予防の三大原則

  • ① 湿度を上げない(風通し・水やり・換気)植物の周りのジメジメをなくす。特に夜間の結露を防ぐ。
  • ② 菌の足場をなくす(花がら・枯れ葉の徹底掃除)菌のエサとなる枯れた組織を放置しない。
  • ③ 早期発見・即隔離(病変部は胞子が飛ぶ前に除去・処分)カビが生える前に見つけて取り除く。

特にハウス栽培や室内管理では空気がこもりがちなので、換気扇やサーキュレーターを24時間弱く回しっぱなしにして、空気を常にゆっくり動かしてあげるだけでも、植物の表面の結露が防げて、発生率はかなり変わってくると思います。

やっかいな病気ではありますが、特徴を知って先手先teで対策を打てば、被害を最小限に抑えることは十分可能だと私は思っています。大切な植物を守るために、ぜひ日々の観察と管理を続けてみてくださいね。

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