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こんにちは。My Garden 編集部です。
早春のガーデニングで、主役級の活躍を見せてくれる水仙(スイセン)。学名はNarcissus(ナルキッスス)といいます。あの凛とした姿と、ふわりと漂う良い香りが、まだ寒い日もある中で春の訪れを力強く実感させてくれますよね。私も大好きな花の一つです。
でも、「水仙 品種 一覧」と調べてみると、人気のテータテートや昔ながらの日本水仙以外にも、原種系から豪華な園芸品種まで、本当にたくさんの種類があって驚くかもしれません。「ラッパ咲き」や「八重咲き」、「房咲き」といった形の多様性はもちろん、定番の白や黄、そして近年人気の優しいピンクといった花色も豊富です。
いざお庭に植えようと思っても、「ガーデニング初心者だから、植えっぱなしにできる育てやすい品種はどれ?」「せっかくなら香りの強い品種を選びたいな」「ミニスイセンが可愛いけど、どうやって使えばいいんだろう?」など、世界中に数万種あるとも言われる中から、どれが自分のイメージやお庭に合っているのか迷ってしまうことも多いかなと思います。
この記事では、そんな奥深い水仙の世界を、皆さんの「知りたい!」という目的に合わせて、代表的な人気品種から国際的な分類まで、分かりやすく一覧でご紹介しますね。あなたのお庭にぴったりの水仙を見つけるお手伝いができれば嬉しいです。
- 目的別(初心者、香り、花色)のおすすめ品種
- 国際分類(12区分)に基づく詳しい品種一覧
- 人気の品種(テータテート、アイスフォーリス等)の特徴
- 植えっぱなしでも咲かせる育て方のコツ
目的別で探す水仙の品種一覧
水仙の品種は本当に膨大ですが、すべてを暗記する必要はまったくありません。まずは、皆さんが水仙を選ぶときの「目的」や「好み」に焦点を当てて、「こんな水仙が欲しい!」という切り口から、おすすめの品種や選び方のポイントをピックアップしてみますね。
人気の品種、テータテートなど
まずはじめに、ガーデニングショップや園芸雑誌などで特に人気が高く、多くのガーデナーに愛されている代表的な品種からご紹介します。「あ、これ見たことある!」という品種もきっとあると思いますよ。迷ったら、まずはこれらの人気品種から選んでみるのも良いスタートになるかもしれません。
‘テータテート’ (Tête-à-Tête)

ミニスイセンの代表格といえば、やっぱり「テータテート」かなと思います。フランス語で「二人きりでのおしゃべり(内緒話)」なんて素敵な名前がついています。その名の通り、一つの茎から小ぶりな花が寄り添うように咲く姿が愛らしいですね。
草丈が15~25cmくらいと非常にコンパクトなので、鉢植えや寄せ植え、花壇の縁取り(最前列)にぴったりです。鮮やかな黄色い花が、まだ肌寒い早春(3月頃)に、元気を分けてくれるように咲き誇ります。とっても丈夫で、植えっぱなしでもよく増えるのも人気の理由ですね。ムスカリの青やパンジー、ビオラなど、他の春の花との相性も抜群ですよ。
花期自体は一つの花で見るとやや短めですが、次々と花茎が上がってくるので、長く楽しませてくれます。
‘アイスフォーリス’ (Ice Follies)

大杯スイセン(Div. 2)の代表品種で、こちらも非常に人気があります。草丈は30~40cm程度になるので、花壇の中段あたりで存在感を発揮してくれます。クリーム色(または淡いレモンイエロー)の整った花弁に、はっきりとしたフリルがかった黄色のカップ(副花冠)が特徴です。
この品種の最大の魅力は、なんといってもそのカップの色の変化。咲き始めは鮮やかな黄色いカップですが、時間が経つにつれてその色が白っぽく淡いクリーム色へと変化していくんです。一つの株で二度楽しめるような、移ろう美しさが素敵ですね。強健で育てやすく、球根もよく増えるので、初心者の方にもよくおすすめされています。
‘ピンクチャーム’ (Pink Charm)

「お庭に優しいピンク色を取り入れたい」という方に絶大な人気を誇るのが、この「ピンクチャーム」です。昔の水仙は黄色と白が主流でしたが、品種改良によってこんなに美しいピンク系の品種が生まれました。
白い花弁に、フリルがついたサーモンピンクの大きなカップが、とっても優雅な雰囲気。まるで春のお洒落なドレスのようですよね。草丈は30~40cm、開花期は春咲きの中でもやや遅めの4月頃です。ほのかな香りも楽しむことができ、切り花としても人気が高い品種です。
‘タヒチ’ (Tahiti)

「とにかく豪華で華やかな水仙が欲しい!」という方には、「タヒチ」がおすすめです。分類上は八重咲き(Div. 4)になります。外側の黄色い花弁と、中心部で重なり合うオレンジ色の副花冠(副花弁)とのコントラストが鮮烈で、南国(タヒチ)を思わせる情熱的な美しさがあります。
花径が10cmほどにもなる大輪系で、草丈も30~45cmとしっかりしているので、お庭でもひときわ目を引く存在になりますね。春のガーデンで、主役を張れる貫禄があります。ほのかな香りも楽しめますよ。
初心者向け、植えっぱなしの育て方
「ガーデニングは初めてで、管理が簡単なものがいい」「一度植えたら、あまり手間をかけずに毎年咲いてほしい」…そう思いますよね。水仙は、そんな方にもとってもおすすめな球根植物なんです。
水仙は基本的にとても強健な球根植物で、日本の気候(特に耐寒性)にも強く、数年間は植えっぱなしでも大丈夫なものが多いのが嬉しいポイントです。ヒガンバナ科の植物なので、モグラやネズミといった土の中の動物による食害を受けにくいのも、植えっぱなしに向いている理由の一つですね。
特に初心者の方に推奨されるのは、古くから日本で親しまれている「日本水仙(ニホンズイセン)」です。これは日本の環境に非常によく適応していて、丈夫でよく増えてくれます。また、先ほどご紹介した大杯スイセンの「アイスフォーリス」やミニスイセンの「テータテート」なども、非常に強健で育てやすい品種として知られていますよ。
植えっぱなしで毎年咲かせるためには、一つだけ、とても重要なコツがあります。それは、花が終わった後も、葉っぱを絶対に切らないことです。
花が終わると葉だけがだらしなく伸びて、ちょっと景観が…と切りたくなってしまう気持ち、すごく分かります。ですが、この葉が日光を浴びて「光合成」をすることで、来年咲くための大切な栄養分を作り、それを地中の球根に蓄えているんですね。葉が自然に黄色く枯れてくるまで(だいたい5月~6月頃)、ぐっと我慢するのが、翌年も美しい花を見るための最大の秘訣です。
だらしなく見える葉が気になる場合は、水仙の手前にギボウシ(ホスタ)やヒューケラのような、春以降に葉を展開する宿根草を植えておくと、水仙の枯れゆく葉をうまく隠してくれるのでおすすめですよ。
植えっぱなし栽培の成功ポイント
- ① 花がら摘み花が咲き終わったら、すぐに摘み取ります。種を作らせて余計な栄養(体力)が使われるのを防ぎ、球根の消耗を避けるためです。この時、萎んだ花だけを摘むのではなく、花がついていた「花茎(かけい)」を根元から切り取ります。
- ② 葉は絶対に切らない(最重要)葉が光合成をして、翌年開花するための栄養を球根に送っています。自然に黄色く枯れるまで(5~6月頃)待ちましょう。葉が枯れたら、軽く引っ張って取れるようになります。
- ③ お礼肥(おれいごえ)花が終わり、葉がまだ青々としている間に、肥料を与えます。これは「花を咲かせてくれてありがとう」という意味と、球根が太るのを助けるための「栄養補給」です。リン酸(P)やカリウム(K)が多めの緩効性化成肥料や、球根用の専門肥料を株元にまくと効果的です。
- ④ 掘り上げ(分球)地植えで3~5年(鉢植えは1~2年)経って、球根が混み合い、花の数が減ってきたら「分球」のサインです。葉が枯れた頃(6月頃)に掘り上げます。古い土や根を取り除き、自然に分かれる球根を分けて、網袋などに入れて風通しの良い涼しい日陰で夏越しさせ、秋に改めて植え直しましょう。
水仙の基本的な植え付け時期(秋です!)や土の準備、肥料のタイミングなど、年間の詳しい育て方については「鉢植え水仙の育て方!球根選びから花後まで」の記事で詳しく解説していますので、ぜひ合わせてご覧ください。
香りの強い品種と早咲きの品種

水仙の魅力は、美しい花姿だけでなく、その「香り」にもありますよね。品種グループによって香りの強さや種類がかなり違うので、ぜひ選ぶときの参考にしてみてください。また、お庭が寂しくなりがちな冬に咲いてくれる「早咲き」の品種も、とても貴重な存在です。
香りで選ぶ
水仙の香りは、大きく分けて「甘く上品な香り」と「個性的で強い香り」があるかなと思います。
- 強い芳香(良い香り)「匂いスイセン」とも呼ばれるジョンキル系(Div. 7)は、その名の通り、甘く強い芳香を持つグループです。また、房咲きのタゼッタ系(Div. 8)も香りが強い品種が多いことで知られています。特にタゼッタ系の「日本水仙」や「黄房スイセン」は、多くの人が「良い香り」と感じる、上品な甘い香りがします。切り花としてお部屋に一輪あるだけで、春の香りが充満して、とても幸せな気分になりますよ。八重咲きの「リプリート」なども芳香があるとされます。
- ほのかな香り「ピンクチャーム」や「タヒチ」などは、強すぎず、顔を近づけるとふわりと香る、ほのかな香りを持つとされます。
- 香りの注意点:ペーパーホワイト同じタゼッタ系(房咲き)の「ペーパーホワイト」も香りが非常に強いのですが、これは少し注意が必要です。この香りはムスク系や、人によっては薬品臭、あるいは「あまり良くない匂い」と例えられるような独特の強い香りで、好みがはっきりと分かれます。早咲きで真っ白な花はとても魅力的なのですが、室内で楽しむ切り花としては、一度香りの「質」をご自身で確認してからの方が良いかもしれません。
開花時期で選ぶ
水仙は、品種によって12月の冬から4月の春遅くまで、開花時期がリレーしていきます。これをうまく利用すると、長期間水仙を楽しむことができますよ。
- 早咲き(冬咲き:12月~2月頃)お庭やベランダが寂しくなりがちな真冬に、貴重な彩りを加えてくれるのが早咲き種です。代表的なのは、「日本水仙」や「ペーパーホワイト」ですね。原種系の「ナルキッスス・バルボコディウム(ペチコートスイセン)」も1月頃から咲き始めます。寒い時期に健気に咲く姿は、本当に愛おしく、見る人の心を温かくしてくれます。
- 春咲き(一般:3月~4月頃)多くの園芸品種は、3月~4月頃、まさに春本番といった時期に開花します。「アイスフォーリス」や「タヒチ」、「テータテート」などもこのグループです。この時期に咲く水仙は、チューリップやムスカリ、アネモネ、ヒヤシンスなど、他の春咲き球根と開花時期が重なるので、色や高さを組み合わせて「春の競演」を楽しむのに最適ですね。
白、黄、ピンクなど花色で選ぶ品種
お庭全体のカラースキーム(配色)に合わせて、花色で選ぶのもガーデニングの醍醐味ですよね。水仙は黄色や白が基本カラーですが、最近は品種改良が進み、本当に美しいピンク系や、オレンジがかった品種もたくさん登場しています。
- 清楚な「白系」の品種ホワイトガーデンを目指す方や、他のどんな色の花とも調和し、引き立ててくれる名脇役としても優秀なのが白系の水仙です。‘ペーパーホワイト’ (Div. 8): 花弁も副花冠も真っ白な房咲き。早咲きで、純白が際立ちます。‘マウント・フッド’ (Div. 1): 真っ白で大型のラッパ咲き。咲き始めは少し黄色みがかっていますが、だんだんと純白に変化していきます。‘タリア’ (Div. 5): 少しうつむき加減に咲く、清楚な白花。花弁が反り返るのも特徴で、「天使の涙」という愛称で呼ばれることもあります。
- 元気な「黄系」の品種春の光に最も映える、ビタミンカラーの黄色。水仙の基本色であり、見ているだけで元気をもらえますよね。‘テータテート’ (Div. 6 / 12): 鮮やかな黄色のミニスイセン。春の寄せ植えに欠かせません。‘キングアルフレッド’ (Div. 1): これぞ水仙!というイメージの、王道な黄色のラッパ咲き。ガーデンの主役になります。‘タヒチ’ (Div. 4): 黄色い花弁とオレンジの副花冠が混じる、情熱的な八重咲き。
- 優美な「ピンク系」の品種近年、特に人気が高まっているのがピンク系の品種です。水仙の「ピンク」は、ショッキングピンクのような色ではなく、サーモンピンクやアプリコットピンクといった、温かみのある優しい色合いが中心ですね。‘ピンクチャーム’ (Div. 2): 白い花弁に、サーモンピンクのフリル付きカップ。優雅さNo.1かも。‘リプリート’ (Div. 4): 白い花弁と、咲き進むにつれて淡いオレンジからサーモンピンクへと色が変化する副花冠が美しい八重咲きです。芳香もあります。
水仙の毒に注意!安全な扱い方

ここで、水仙をガーデニングで楽しむ上で、最も重要と言っても過言ではない注意点をお伝えしなければなりません。私もガーデニングを始めた頃に知って驚いたのですが、実は、水仙は全草(花、葉、茎、特に球根)に毒性があります。
これはヒガンバナ科の植物(ヒガンバナやアマリリス、スノードロップなども同様です)に共通する特徴で、「リコリン」や「ガランタミン」といったアルカロイド系の有毒成分が含まれているんです。もし誤って食べてしまうと、食後30分以内くらいで嘔吐や下痢、頭痛、めまいなどの症状が出ることが報告されています。
特に、日常生活で注意が必要なのが、葉が「ニラ」と、球根が「タマネギ」と非常によく似ている点です。
毎年のように、家庭菜園のニラと間違えて水仙の葉を収穫してしまい、餃子やおひたしなどにして食べて食中毒になる事故が発生しています。また、秋に掘り上げた球根を、うっかりタマネギと間違えて保存・調理してしまうケースもあります。
【重要】水仙の毒性(食中毒・皮膚炎)に関するご注意
水仙による食中毒事故は、本当に身近なところで発生しています。安全に楽しむために、以下の点を必ず守ってください。
- 水仙の葉や球根は、ニラやタマネギと見た目が似ていますが、有毒ですので絶対に食べてはいけません。
- ニラとの一番確実な見分け方は「匂い」です。ニラはあの特有の強い匂いがしますが、水仙の葉には匂いがほとんどありません。(※ただし、葉をちぎると青臭い匂いはします)自信がなければ絶対に食べないでください。
- 家庭菜園などでニラを栽培している方は、水仙を植えている場所とは必ず離れた場所で管理・栽培してください。柵などで明確に分けるのも有効です。
- 球根の植え付けや花を切る際に出る「汁」で、皮膚がかぶれる(接触性皮膚炎)こともあります。肌が弱い方は、作業時に手袋を着用することを強くおすすめします。
- 小さなお子様や、ペット(犬や猫など)がいるご家庭では、誤って口にしないよう、植え場所や切り花を飾る場所に特に注意が必要です。ペットが誤食した場合も、人間と同様に中毒症状を引き起こす可能性があり危険です。
(出典:厚生労働省「有毒植物に要注意」)
もし誤って食べてしまったり、触れた後に体調に異変を感じたりした場合は、食べたものを持参するなどして、すぐに医療機関(ペットの場合は動物病院)を受診し、専門家にご相談ください。
詳しい水仙の品種一覧と分類
ここからは、少し専門的になりますが、水仙の国際的な分類に沿って、さらに詳しく代表的な品種を一覧で見ていきましょう。この分類は、園芸品種の分類・登録を行っている英国王立園芸協会(RHS)によって、花の形態に基づいて定められた世界共通の12区分(Division, 略してDiv.)です。
この分類を知っておくと、「ラッパ咲きって、どれくらいのラッパなの?」「八重咲きと房咲きってどう違うの?」といった疑問がクリアになり、品種の特徴がぐっと掴みやすくなりますよ。球根のラベルや園芸店のカタログにも「Div. 2」といった表記があることもありますので、覚えておくと便利です。
分類の主な基準は、花の外側にある6枚の「花弁(花被片)」と、中心部にある「副花冠(ふくかかん)」(私たちがカップやラッパと呼んでいる部分)の長さの比率や、その形状によって厳密に決まっています。
【早見表】水仙の国際分類(RHS 12区分)
主要な分類の特徴を、代表的な品種例とともに一覧にまとめました。
| 分類 (Div.) | 名称 | 主な特徴 | 代表品種例 |
|---|---|---|---|
| Div. 1 | ラッパスイセン (Trumpet) | 副花冠が花弁と同じか、それ以上長い。1茎1花。 | ‘キングアルフレッド’, ‘マウント・フッド’ |
| Div. 2 | 大杯スイセン (Large-cupped) | 副花冠が花弁の1/3より長く、花弁より短い。1茎1花。 | ‘アイスフォーリス’, ‘ピンクチャーム’ |
| Div. 3 | 小杯スイセン (Small-cupped) | 副花冠が花弁の1/3以下の長さ。1茎1花。 | ‘アクトレス’ |
| Div. 4 | 八重咲きスイセン (Double) | 花弁や副花冠が重なり合い、八重になる。 | ‘タヒチ’, ‘リプリート’ |
| Div. 5 | トリアンドルス系 (Triandrus) | 1茎から数輪、うつむき加減に咲き、花弁が反る。 | ‘タリア’ |
| Div. 6 | シクラミネウス系 (Cyclamineus) | 1茎1輪、花弁がシクラメンのように強く反り返る。 | ‘テータテート’, ‘ジェットファイア’ |
| Div. 7 | ジョンキル系 (Jonquilla) | 1茎から数輪の小花。葉が細い(糸葉)。強い芳香。 | ‘ベルソング’ |
| Div. 8 | タゼッタ系 (Tazetta) | 1茎から多花(3~20輪)が房状に咲く。香りが強い。 | ‘日本水仙’, ‘ペーパーホワイト’ |
| Div. 9 | ポエティクス系 (Poeticus) | 純白の花弁に、非常に小さい副花冠(縁が赤い)。 | ‘アクテア’(口紅スイセン) |
| Div. 10 | バルボコディウム系 (Bulbocodium) | 副花冠が極端に大きく発達し、花弁が細い。 | ‘ナルキッスス・バルボコディウム’(ペチコート) |
| Div. 11 | スプリットコロナ系 (Split-corona) | 副花冠が深く裂け、花弁のように広がる(蝶咲き)。 | ‘パルマレス’ |
| Div. 12 | その他 (Miscellaneous) | 上記の11区分に当てはまらない、原種や交雑種。 | (N. ‘Jumblie’ など) |
ラッパ咲き、大杯、小杯スイセン
これらは、1本の茎に1つの花が咲く、最もスタンダードな「一茎一花」のグループです。水仙と聞いて多くの人がイメージする姿に近いかもしれませんね。この3つの分類は、副花冠(カップ)の長さによって、厳密に分類されています。
Div. 1:ラッパスイセン (Trumpet)

定義: 副花冠(ラッパ部)の長さが、花弁(花被片)と同じ長さ、またはそれ以上になるもの。
まさに「トランペット」という名がふさわしい、堂々とした花姿が特徴です。花も大きく、草丈も高めになる品種が多いので、花壇の後方や中心に植えると、春のガーデンの主役としてひときわ存在感を放ちます。伝統的でクラシックな水仙のイメージですね。
代表品種: ‘キングアルフレッド’(黄)、’マウント・フッド’(白)
Div. 2:大杯スイセン (Large-cupped)

定義: 副花冠(カップ部)の長さが、花弁の長さの3分の1よりは長く、花弁の長さよりは短い(=花弁の長さ未満)もの。
品種の数が最も多い、水仙の「王道」ともいえる最大のグループです。花色(花弁とカップの色の組み合わせ)や、カップの形(フリルの入り方など)が非常に多様で、選ぶ楽しさが最もある分類かもしれません。先に紹介した「アイスフォーリス」や「ピンクチャーム」もこの仲間です。
代表品種: ‘アイスフォーリス’、’ピンクチャーム’、’フォーチュン’
園芸店での「ラッパ咲き」表記に注意
このDiv. 2(大杯)の品種は、カップが大きくて立派なため、園芸市場ではしばしば「ラッパ咲き」として販売されていることがあります。もちろん見た目の印象として間違いではないのですが、植物学的な分類定義(Div. 1)とは異なる場合がある、ということですね。例えば「アイスフォーリス」は、分類コード「2 W-Y」の通り、正しくはDiv. 2に属します。
Div. 3:小杯スイセン (Small-cupped)

定義: 副花冠(カップ部)の長さが、花弁の長さの3分の1以下と、とても小さいもの。
カップが小さく目立たない分、外側の6枚の花弁の美しさが際立つ、とても清楚なグループです。控えめで、どこか日本的な奥ゆかしさも感じさせる印象がありますね。派手さはありませんが、他の花とも調和しやすく、玄人好みする品種が多いかもしれません。
代表品種: ‘アクテア’、’バラット・ブラウニング’
八重咲きと房咲きの代表的な品種
スタンダードな「一茎一花」の形とはまた違う、花の「つき方」や「重なり」で分類される、華やかなグループです。
Div. 4:八重咲きスイセン (Double)

定義: 花弁(花被片)や副花冠(またはその両方)が幾重にも重なり合い、八重咲きになるものをまとめた区分です。
その姿は非常に豪華で華やか。バラやボタン、カーネーションのようにも見え、1輪あるだけでお庭がパッと明るくなります。切り花としてもボリュームがあり、アレンジメントでも人気ですね。「タヒチ」や「リプリート」がこの仲間です。
ただ、花が豪華な分、雨を含むと重みで花茎が倒れやすいことがあるので、心配な場合は早めに支柱を立ててあげると安心かもしれません。
代表品種: ‘タヒチ’(黄/オレンジ)、’リプリート’(白/ピンク)、’アクロポリス’(白/赤)
Div. 8:タゼッタ系 (Tazetta)

定義: 1本の茎から3~20輪ほどの小さな花が、ブーケのように房状に咲きます。「房咲きスイセン」とも呼ばれます。
1本の茎でもたくさんの花がつくので、ボリューム感が出るのが魅力です。先ほど「香りで選ぶ」でも触れたように、香りが強い品種が多いのがこのグループの最大の特徴ですね。古くから日本で親しまれている「日本水仙」もこのグループに含まれ、日本の冬の風景にいかに馴染んでいるかが分かります。
代表品種: ‘日本水仙’ (N. tazetta var. chinensis)、’ペーパーホワイト’ (N. papyraceus)、’黄房スイセン’ (N. × odorus)
ミニ水仙とペチコート咲き(原種系)
個性的な花の形や、小さな草丈が愛らしいグループです。大輪の品種とは違う、可憐な魅力があり、鉢植えや寄せ植え、花壇の手前、あるいはロックガーデン(岩を使ったお庭)などでその真価を発揮しますね。
Div. 6:シクラミネウス系 (Cyclamineus)

定義: 1本の茎に1つの花が咲き、その花弁がまるでシクラメンの花のように、後ろに強く反り返るのが最大の特徴です。
躍動感があり、風を受けて飛んでいるようにも、ちょっとおすまししているようにも見えますね。ミニスイセンの代表格「テータテート」は、この区分、またはDiv. 12(その他)に分類されることが多いです。他にも、黄色い花弁にオレンジのラッパが鮮やかな「ジェットファイア」なども人気があります。
代表品種: ‘テータテート’、’ジェットファイア’
Div. 10:バルボコディウム系 (Bulbocodium)

定義: 副花冠が極端に大きく発達してラッパ(ロート)状になり、逆に花弁は糸のように細く小さい、とてもユニークな形状をしています。
「ペチコートスイセン」や「フープスカート」とも呼ばれ、その名の通り、ふんわり広がったバレリーナのスカートのような愛らしい姿をしています。原種系のミニスイセンで、野趣あふれる雰囲気があり、早咲き(1月~2月頃)の品種も多く、芳香があるものもあります。
代表品種: ‘ナルキッスス・バルボコディウム’ (Narcissus bulbocodium)
その他の可憐な分類(Div. 5, 7)

他にも個性的で可憐なグループがありますよ。
Div. 5:トリアンドルス系 (Triandrus)
1本の茎から数輪(2~6輪)、少しうつむき加減に可憐な花が咲きます。花弁がやや反り返る特徴があり、とても清楚な雰囲気です。代表品種の ‘タリア’ は、その純白の花姿と優雅さから「天使の涙」と呼ばれることもあり、非常に人気が高いです。
Div. 7:ジョンキル系 (Jonquilla)
「匂いスイセン」とも呼ばれ、甘く強い芳香を持つグループです。1本の茎に1~5輪ほどの小花が咲き、葉が細い(糸葉スイセン)のも特徴です。香りを重視するなら、ぜひ選びたいグループですね。
代表品種: ‘ベルソング’、’スイートネス’
口紅スイセン(ポエティクス系)
Div. 9:ポエティクス系 (Poeticus)

定義: 1本の茎に1つの花が咲き、花弁は雪のように純白です。そして、最大の特徴は副花冠。非常に小さく(平たいディスク状)、その縁が鮮やかな赤色やオレンジ色になります。
このグループも、特徴が非常にハッキリしていて一度見たら忘れられないかもしれません。真っ白な花弁に、中心の赤い縁取りが、まるで「口紅」を引いたように見えることから、「口紅スイセン」とも呼ばれます。その名(Poeticus=詩人の)の通り、どこか詩的で、ハッとするような美しさがあります。
和の雰囲気にも合うと人気があり、開花期が他の水仙よりやや遅め(晩春の4月下旬~5月頃)のものが多いのも特徴です。春のガーデンのフィナーレを飾ってくれる存在ですね。
代表品種: ‘アクテア’
バタフライ咲き(スプリットコロナ系)
Div. 11:スプリットコロナ系 (Split-corona)

定義: なんと、中心にある副花冠(カップ)が、途中で深く裂けて、花弁のように大きく広がって咲く、非常に個性的なグループです。
最後にご紹介するのも、とっても豪華なグループです。その姿が、まるで蝶が羽を広げているように見えることから「バタフライ咲き」、または洋服の「襟(カラー)」のようにも見えることから「カラー(襟)スイセン」とも呼ばれます。
他のどの水仙の分類ともまったく違う、蘭の花にも似たような華やかさがあり、近年とても人気が出てきている分類ですね。水仙コレクションのアクセントとして、あるいは「ちょっと変わった水仙が欲しい」という方に、ぜひおすすめしたい品種群です。
代表品種: ‘パルマレス’、’カサータ’
目的別、水仙の品種一覧まとめ
ここまで、皆さんの目的別のおすすめ品種から、ちょっと専門的な国際分類に基づいた詳しい水仙の品種一覧まで、駆け足でご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
「水仙」と一口に言っても、冬の静けさの中で凛と香る「日本水仙」から、春の訪れを告げる元気いっぱいの「テータテート」、息をのむほど豪華絢爛な「タヒチ」や「スプリットコロナ系」まで、本当に多種多様な魅力があることが伝わったら嬉しいです。
ラッパ咲きや大杯スイセンは春の花壇の主役として、ペチコート咲きやテータテートは鉢植えや寄せ植えのアクセントとして、そして日本水仙は一足早い冬の彩りとして…。ぜひ、今回の水仙の品種一覧を参考にして、あなたのお庭やライフスタイルにぴったりの「お気に入りの水仙」を見つけてみてくださいね。
球根は、秋(10月~11月頃)に園芸店やホームセンターに並び始めます。選ぶときは、カビが生えておらず、持った時にずっしりと重く、硬く締まっている球根を選ぶのが良い花の咲くコツですよ。
多くの品種は、ご紹介した「毒性」にだけ十分に気を付ければ、丈夫で植えっぱなしでも育つ、ガーデニングの頼もしい味方です。ぜひ気軽に、水仙のガーデニングを楽しんでいただけたらなと思います。
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