こんにちは、My Garden 編集部です。
春の柔らかな日差しから初夏の強い太陽へと季節が移ろう時期、散歩道やご近所の花壇で、太陽に向かってパッと大きく開いた鮮やかな花を見かけることはありませんか。黄色やオレンジのビタミンカラーが眩しく、花びらの根元には勲章のような模様があるその花。「あ、ガザニアが咲いている!」と直感的に思うかもしれませんが、ちょっと待ってください。実はその花、ガザニアによく似た別の植物かもしれません。
ガーデニングの世界には、「アフリカンデージー」と呼ばれる南アフリカ原産のキク科植物のグループをはじめ、ガザニアと見分けがつかないほど酷似した花たちが数多く存在します。オステオスペルマム、アークトチス、ガーベラ、そしてリビングストンデージー…。それぞれが独自の魅力を持っていますが、性質や育て方は微妙に異なります。もし、あなたが「この花を庭に植えたい」と思っているなら、その正体を正しく知ることはとても重要です。
さらに深刻なケースもあります。道端や河川敷で見かける「ガザニアに似た黄色い花」の中には、日本の生態系を脅かすとして法律で栽培が禁止されている「特定外来生物」が含まれている可能性があるのです。知らずに持ち帰ってしまうと、大変なことになりかねません。
この記事では、園芸初心者の方でも確実に「ガザニア」と「それ以外の似ている花」を見分けられるよう、プロの視点も交えながら徹底的に解説します。花の色だけでなく、葉の裏側の秘密や、茎の立ち上がり方など、明日から使える識別テクニックをマスターして、ガーデニングライフをより安全で楽しいものにしていきましょう。
この記事のポイント
- ガザニアと似た植物を決定的に見分ける「葉の裏側」の秘密
- オステオスペルマムやアークトチスなど、よく似たライバル植物たちの正体
- 道端で見かける黄色い花に潜む「特定外来生物」のリスクと法的注意点
- 日当たりやライフスタイルに合わせて、あなたの庭に最適な花を選ぶ基準
ガザニアに似た花の名前と見分け方
「ガザニアに似ているけれど、何かが違う気がする…」。その違和感の正体を突き止めるためには、ただ漫然と花を見るだけでは不十分です。植物探偵になった気分で、花びらの模様、葉の質感、そして太陽に対する反応など、いくつかのチェックポイントを観察する必要があります。ここでは、園芸店や街中でよく混同される植物たちの特徴を、一つひとつ丁寧に紐解いていきましょう。
蛇の目模様がある種類の特徴

ガザニアという花を最も印象づけている特徴、それは何と言っても花びらの根元に入る鮮明なリング状の模様です。この模様は、蛇の目のように見えることから「蛇の目(じゃのめ)」模様と呼ばれたり、あるいは勲章のリボンのように見えることから、ガザニアの和名である「クンショウギク(勲章菊)」の由来にもなっています。
この強烈なインパクトを持つ模様があるだけで「これはガザニアだ」と判断してしまいがちですが、実はこの蛇の目模様を持つ植物はガザニアだけではありません。もし、あなたが目の前の花を見て、「模様はガザニアそっくりだけど、なんだか背が高くて野性味があるな」と感じたなら、それは「ベニジウム(寒咲き蛇の目菊)」という別の植物である可能性が非常に高いです。
ワイルドな巨人、ベニジウム
ベニジウム(現在はアークトチス属に分類されることが多いですが、園芸上はこの名で流通しています)は、ガザニアと同じキク科の植物で、花の中心に黒や濃い褐色の非常にくっきりとした蛇の目模様を持っています。花のアップ写真だけを見比べると、ガザニアとの区別は困難なほど似ています。
しかし、全身像を見ると違いは一目瞭然です。ガザニアが地面を這うように葉を広げ、花茎もせいぜい15cm〜30cm程度にしか伸びないのに対し、ベニジウムは太い茎をぐんぐんと空に向かって伸ばし、大人の腰ほどの高さ(60cm〜90cm)まで成長します。まるで「巨人化したガザニア」のような姿です。
また、質感にも大きな違いがあります。ベニジウムは全体的に非常に「毛深い」植物です。茎や蕾全体が、まるでクモの巣を巻き付けたかのような白い綿毛で覆われており、ガザニアの整った園芸品種の美しさとは対照的な、荒々しくワイルドな雰囲気を持っています。花壇の後方に植えて立体感を出すには最高の植物ですが、コンパクトにまとめたい場合には不向きかもしれません。
豆知識:なぜ「蛇の目」模様があるのか?
この派手な蛇の目模様は、私たち人間の目を楽しませるためのデザインではありません。これは植物学的には「蜜標(ネクターガイド)」と呼ばれる重要な機能を持っています。
昆虫、特にハチの仲間は紫外線を見ることができ、この模様の部分が彼らの目にはターゲットマークのように際立って見えています。「ここに美味しい蜜と花粉がありますよ!ここに着地してください!」と誘導する看板の役割を果たしているのです。植物たちが過酷な自然界で確実に受粉し、子孫を残すために進化させた、非常に賢い生存戦略なんですね。
葉の形や裏側の様子で見分ける
花の色や形は、近年の驚異的な品種改良によってバリエーションが増えすぎており、見た目だけで品種を特定するのはプロでも難しくなってきています。しかし、植物には変えられない「生まれ持った身体的特徴」があります。それが「葉」です。私が友人や読者の方から植物の同定相談を受けた際、真っ先にお願いするのが「葉の裏側を見せてください」という行動です。実はこれが、ガザニアかそうでないかを判断する、最も確実で、かつ誰にでもできる決定打となります。
ガザニアの葉は「リバーシブル」

まず、ガザニアの葉をよく観察してみましょう。形は細長いへら状だったり、鳥の羽のように深く切れ込みが入っていたりと品種によって様々です。しかし、共通しているのはその質感です。厚みがあり、硬く、表面は濃い緑色でツヤツヤとした光沢があります。手で触ると、少し革製品のようなしっかりとした硬さを感じるはずです。
そして、ここからが最重要ポイントです。その葉をくるっと裏返してみてください。もし、裏面が真っ白な綿毛でびっしりと覆われていたら、おめでとうございます。それは間違いなくガザニアです。緑色の表面とは対照的に、裏面はまるで白いフェルト生地を貼り付けたかのように真っ白です。この「表は緑、裏は白」というリバーシブルな特徴こそが、ガザニア属の身分証明書なのです。
なぜ葉の裏が白いのか?
この白い綿毛には、生きるための切実な理由があります。ガザニアの故郷は南アフリカ。強烈な日差しと乾燥が支配する過酷な環境です。葉の裏にある「気孔」から水分が蒸発するのを防ぐため、そして地面からの照り返しの熱を遮断するために、自前の断熱コートとして綿毛を密生させていると考えられています。
似ている花たちの葉は?

一方で、ガザニアとよく混同されるオステオスペルマムやガーベラはどうでしょうか。これらの植物の葉の裏を見てみると、基本的には表面と同じような緑色(あるいは薄緑色)をしており、ガザニアのような分厚い白い綿毛の層はありません。オステオスペルマムの葉は少し肉厚ですが裏は緑ですし、ガーベラの葉は薄くて大きく、やはり裏は緑です。「花はそっくりで迷うけれど、裏が白ければガザニア、緑ならその他」と覚えておくだけで、あなたの植物識別能力は格段に向上します。
夜になると閉じる花か確認する
「休日の昼間、庭で見かけた時はあんなに満開だったのに、平日の夕方帰宅してから見たら、花が全部閉じてしまっていた…もしかして枯れた?」
ガザニアを初めて育てた方から、このような驚きの声をいただくことがあります。安心してください、枯れたわけではありません。これは植物の生理現象で「就眠運動(しゅうみんうんどう)」、あるいは光傾性と呼ばれる性質です。
ガザニアの敏感な体内時計
ガザニアは「太陽の花」という呼び名がふさわしいほど、光に対して敏感です。日光が当たり温度が上がると花びらを大きく開きますが、夕方になって光が弱まったり、雨や曇りで気温が下がったりすると、花びらを閉じてしまいます。これは、大切な花粉や雌しべを夜露や雨による湿気から守るための防御反応です。野生では非常に合理的な機能ですが、私たち人間にとっては「天気が悪い日や夜間は花を楽しめない」という少し残念なデメリットでもあります。
この性質はガザニアだけでなく、似ている花の代表格であるリビングストンデージーやアークトチスにも強く見られます。特にリビングストンデージーの反応速度は驚くほど速く、雲が太陽を遮った瞬間に閉じ始めるほどです。日中留守にしがちな方にとっては、なかなか満開の姿を拝めない花たちかもしれません。
「夜も咲く」という選択肢

しかし、近年の園芸技術の進歩は目覚ましいものがあります。この「夜に閉じる」という弱点を克服した植物が登場しているのです。それが、オステオスペルマムの最新品種です。従来、オステオスペルマムも夜には閉じる性質がありましたが、「4D」シリーズや「シャイン」シリーズのように、夜間や曇天時でも花を開いたままの状態をキープできる画期的な品種が開発され、流通し始めています。
もし、「仕事から帰ってきて、夜の庭でも咲いているガザニアのような花が欲しい」というニーズがあるなら、それはガザニアではなく、こうした改良されたオステオスペルマムを選ぶのが正解です。植物の性質を理解することで、自分のライフスタイルに合った花選びができるようになります。
オステオスペルマムとの違いとは
春の園芸店に行くと、最も目立つ場所にガザニアと並んで大量に陳列されているのがオステオスペルマムです。インターネット検索でも「ガザニアに似た花」として筆頭に挙がる、まさに永遠のライバル関係にある花です。植物分類学的にもどちらもキク科・キンセンカ連に属する近縁種ですが、よく観察するとそのキャラクターは全く異なります。
| 比較項目 | ガザニア (Gazania) | オステオスペルマム (Osteospermum) |
|---|---|---|
| 主な花色 | 黄、オレンジ、赤、茶などの「暖色系」が中心。 元気でエネルギッシュな印象。 |
紫、青紫、ピンク、白などの「寒色系」が豊富。 上品で涼しげなシックな印象。 |
| 葉の裏側 | 真っ白な綿毛がある(最重要識別点)。 | 緑色で、綿毛はない。 |
| 茎の性質 | 地際でロゼット状に広がるか、地面を這う。 背は低い。 |
茎が立ち上がり、成長すると根元が木のように硬くなる(木質化)。 |
| 花の形 | 平咲きが基本で、一重が多い。 | スプーン咲き、八重咲き、3D咲きなど変異に富む。 |
決定的な違いは「色」と「形」

最も分かりやすい違いは「花の色」です。ガザニアはアフリカの太陽を思わせる黄色やオレンジ、赤といったビタミンカラーが主流です。一方、オステオスペルマムには、ガザニアには決して出せない色があります。それは、透き通るような紫色、青紫、ラベンダー色です。もし、目の前の花がシックな紫色や、青みを含んだクールな色合いであれば、それはガザニアではなくオステオスペルマムであると断定してほぼ間違いありません。
また、花の形にもオステオスペルマムならではの特徴があります。「スプーン咲き」と呼ばれるタイプをご存知でしょうか。花びらの中央がキュッとくびれて細くなり、先端だけがスプーンのように丸く広がっている品種(『ナシンガ』など)です。このユニークで愛らしい形状は、ガザニアには見られないオステオスペルマムの独壇場です。
成長すると「木」になる?
草姿(そうし)の違いも見逃せません。ガザニアは草丈が低く、地面を覆うように育ちますが、オステオスペルマムは成長するにつれて茎が立ち上がり、株元の茎が茶色く硬くなって「木」のようになります。これを「木質化(もくしつか)」と言います。大株になったオステオスペルマムは、草というよりは小さな低木のような風格漂う姿になります。
アークトチスやガーベラとの比較
「ガザニアかな?でも葉っぱがなんだか違う…」。そう感じた時に候補に挙がるのが、アークトチスとガーベラです。これらも非常によく似ていますが、それぞれに強烈な個性を持っています。
全身シルバーの貴公子、アークトチス

アークトチスは、別名「ハゴロモギク(羽衣菊)」という大変美しい和名を持っています。この名前の由来は、その葉にあります。先ほど「ガザニアは葉の裏だけが白い」と説明しましたが、アークトチスはレベルが違います。葉の表面も裏面も、そして茎までもが、細かい白い軟毛でびっしりと覆われており、植物全体が輝くような銀白色(シルバーリーフ)に見えるのです。
手で触れると、フェルトやフランネル生地のような、ふわふわとした柔らかい感触があります。花はガザニアに似ていますが、花茎(かけい)を長くスッと伸ばして優雅に咲くため、切り花のような整った立ち姿になります。また、花の中心部(筒状花)が深い青色や黒紫色をしている品種が多く、白い花びらとのコントラストは息をのむ美しさです。「葉っぱも茎も全部白くてフワフワしている」なら、それはアークトチスです。
裸の茎で立つ人気者、ガーベラ
世界中で愛されるガーベラも、花の形だけを見ればガザニアと似ています。しかし、株の構造は全くの別物です。ガーベラの最大の特徴は、「無葉花茎(むようかけい)」です。地面の株元から、葉が一枚もついていないツルツルの裸の茎をスッと一本だけ伸ばし、その頂点に花を咲かせます。
ガザニアやオステオスペルマムは、花のすぐ下や茎の途中にも葉がついていますが、ガーベラの茎には葉がありません。葉はすべて地際に集まっており、薄くて大きく、深い切れ込みが入っています。ガザニアのような硬質感や裏面の白さはなく、瑞々しい緑色をしています。雨や多湿に弱く、庭植えよりは鉢植えや切り花として楽しまれることが多いのも違いの一つですね。
ベニジウムやリビングストンデージー
最後に、より個性的な2つの植物を紹介しましょう。これらも「ガザニア似」としてよく名前が挙がります。
宝石をまとった花、リビングストンデージー

地面を這うように広がり、太陽の下で一斉に開花する姿がガザニアそっくりなのがリビングストンデージーです。しかし、近づいて見ると、その葉に驚くべき特徴があることに気づくはずです。
リビングストンデージーの葉や茎は多肉質で厚みがあり、その表面にキラキラと輝く無数の粒がついています。これは水滴ではありません。「塩嚢細胞(えんのうさいぼう)」または「ブラダー細胞」と呼ばれる特殊な細胞で、まるで宝石や氷の結晶を散りばめたかのような美しさです。
花の色もガザニア以上に派手でサイケデリックです。蛍光ピンク、鮮やかなオレンジ、紫などが入り混じり、花びらには金属的な強い光沢(メタリックな輝き)があります。太陽の光を浴びて一斉に開いた時の眩しさは、他の植物にはない圧倒的なパワーがあります。「葉っぱがキラキラしていて、色がとにかく派手」なら、それはリビングストンデージーで決まりです。
道端のガザニアに似た花と栽培の注意
ここまでは、園芸店で購入できる「楽しむための花」を紹介してきました。しかし、ここからは少し真面目な話、そして知っておかなければならない「リスク管理」の話をします。散歩中や河川敷で見かける「きれいな花」を、安易に庭に持ち込んだりしていませんか?その行為が、思わぬ法律違反になる可能性があるのです。
道端の黄色い花は雑草なのか
初夏、5月から7月頃にかけて、河川敷の土手や高速道路の法面、あるいは道端のちょっとした空き地が一面、鮮やかなオレンジがかった黄色い花で埋め尽くされている光景を見たことがあるでしょう。「わあ、きれいなお花畑!野生のガザニアかな?」「黄色いコスモスみたい」と心を奪われるかもしれません。
確かに、九州や四国などの暖かい地域(海岸沿いなど)では、耐寒性のある宿根ガザニアが庭から逸出して野生化し、石垣の間などでたくましく咲いているケースも稀にあります。しかし、日本全国の道端で爆発的に増えている背の高い黄色い花の正体は、ガザニアではありません。その多くはオオキンケイギクという植物です。
見分け方は簡単です。やはりここでも「葉の裏」が役に立ちます。その黄色い花の葉を裏返してみてください。白くなければ、それはガザニアではありません。また、ガザニアは地面近くで低く咲きますが、この植物は膝丈から腰丈(30cm〜70cm)くらいの高さまで伸び、風に揺れています。この美しい「黄色いお花畑」の裏側には、日本の在来生態系を脅かす深刻な問題が潜んでいるのです。
ガザニアに似た雑草オオキンケイギク
このオオキンケイギク(Coreopsis lanceolata)については、ガーデニングを楽しむ私たちだけでなく、すべての人が正しく知っておくべき義務があると言っても過言ではありません。なぜなら、オオキンケイギクは、そのあまりに強すぎる繁殖力によって、もともと日本に生えていた植物(在来種)を駆逐し、生態系のバランスを崩してしまう恐れがあるとして、環境省によって「特定外来生物」に指定されているからです。
絶対にやってはいけないこと
【重要】特定外来生物オオキンケイギクの取り扱い
特定外来生物法(外来生物法)により、オオキンケイギクには非常に厳しい規制が設けられています。善意であっても、以下の行為を行うと法律違反となり、個人の場合でも懲役や高額な罰金が科せられる可能性があります。
- 栽培すること:
「きれいだから」といって庭に植えたり、鉢植えで育てたりすること。 - 生きたまま運搬すること:
根がついた状態で掘り起こして家に持ち帰ったり、車で移動させたりすること。 - 販売・譲渡・頒布すること:
メルカリなどのフリマアプリで種や苗を売ったり、近所の人に苗を分けたりすること。 - 野外に放つこと:
種をばら撒いたり、庭で増えた苗を山や川に捨てたりすること。
オオキンケイギクの見分け方

オオキンケイギクの花は直径5〜7cmほどで、遠目にはガザニアやコスモスによく似ています。しかし、花びらをよーく見てください。花びらの先端が不規則にギザギザと4〜5つに裂けているのが最大の特徴です。ガザニアの花びらは先端が尖っているか、なめらかに丸みを帯びていることが多いので、この「ギザギザ」を確認できれば区別できます。
庭で見つけたらどうする?
もし、自宅の庭に「植えた覚えのない黄色い花」が勝手に生えてきた場合は、オオキンケイギクである可能性を疑ってください。かわいそうに思うかもしれませんが、駆除が必要です。ただし、生きたまま移動させることが禁止されているため、以下の手順で行ってください。
- 種が飛び散らないように注意しながら、根っこから引き抜く。
- その場で(庭の中で)ビニール袋に入れる。
- 袋の口をしっかり縛り、数日間天日干しにするなどして、袋の中で完全に枯死させる。
- 枯れたことを確認してから、燃えるゴミとして処分する。
「きれいだからそのままにしておこう」という優しさが、結果として地域の自然を壊してしまうことになります。正しい知識を持って行動することが、本当の意味での自然愛護につながります。
ディモルフォセカの葉はベタベタか
インターネット上の検索キーワードを分析していると、「葉がベタベタする」「茎がネバネバして気持ち悪い」といった、触感に関する疑問が多く寄せられていることに気づきます。大切な植物が病気にかかってしまったのではないかと不安になりますよね。この「ベタベタ」の正体については、大きく分けて2つのシナリオが考えられます。一つは植物が本来持っている「生理現象」、もう一つは放置できない「害虫被害」です。
シナリオ1:植物の生理現象(無害)

まず、心配のないケースから解説しましょう。かつてオステオスペルマムと同属として扱われていたディモルフォセカ(特に一年草タイプ)や、一部の原種に近いオステオスペルマムの品種には、葉や茎、蕾の首元などの表面に「腺毛(せんもう)」と呼ばれる非常に細かい毛が密生しているものがあります。
この腺毛の先端からは、粘着性のある液体が分泌されており、触ると指に吸い付くようなベタつきを感じることがあります。また、独特の青臭い匂いがすることもあります。これは植物が乾燥から身を守ったり、小さな害虫が這い上がってくるのを物理的に防いだりするための「防御機能」であると考えられています。もし、葉が全体的に均一にうっすらとベタついていて、植物自体が元気で葉の色も良ければ、それはその花が持つ個性です。「この子はこういう手触りの子なんだな」と受け入れてあげてください。
シナリオ2:害虫による排泄物(有害)
しかし、注意が必要なのが「害虫」のケースです。もし、ベタベタしている部分が局所的であったり、葉の表面に油を塗ったようにテカテカ光っていたり、あるいは黒い煤(すす)のような汚れが付着していたりする場合は警戒してください。アブラムシやカイガラムシが潜んでいる可能性が高いです。
これらの害虫は、植物の柔らかい部分から汁を吸い、その余分な糖分を「甘露(かんろ)」と呼ばれる甘くてベタベタした排泄物として出します。これが葉に落ちてベタつきの原因となります。さらに放置すると、その甘い排泄物にカビが生えて葉が黒くなる「すす病」を誘発し、光合成ができなくなって植物が弱ってしまいます。
ベタベタの原因を見分けるチェックリスト
- 植物の特性(無害)の可能性が高いケース:
葉や茎全体が均一に粘着質である。
植物の顔色は良く、葉の変色や縮れが見られない。
近くにアリが歩き回っていない。 - 害虫(有害)の可能性が高いケース:
葉の一部だけが激しくテカテカと光ってベタついている。
葉の裏や新芽の先に、小さな虫の集団がいる。
ベタベタした場所にアリがたくさん集まっている(アリは甘い排泄物を好むため、アブラムシと共生します)。
葉が黒ずんでいたり、黄色く変色して弱っている。
もし害虫が見つかった場合は、すぐに専用の薬剤を散布するか、数が少なければ歯ブラシなどで物理的にこすり落として駆除しましょう。早期発見が植物を守る鍵です。
庭に植えるのにおすすめの花
ここまで、ガザニアに似た様々な花たちの違いや特徴を見てきました。「どれも素敵で迷ってしまう!」「結局、私の庭にはどれを植えればいいの?」という方も多いのではないでしょうか。最後に、あなたの庭の環境や、ガーデニングにかけられる手間、そして好みのスタイルに合わせた「ベストな花の選び方」をご提案します。
植物選びの基本は「適地適作(てきちてきさく)」。環境に合った植物を選ぶことが、失敗せずに花いっぱいの庭を作る最大の秘訣です。
1. 夏の暑さが厳しく、水やりを忘れがちな場所なら「ガザニア」
「南向きの花壇で、夏場はコンクリートの照り返しが強くて灼熱地獄になる」「仕事が忙しくて、毎日の水やりは自信がない」という方には、迷わずガザニアをおすすめします。ガザニアの強靭さは、似ている花たちの中でも群を抜いています。
南アフリカの乾燥地帯が故郷だけあって、一度根付いてしまえば、多少の乾燥にはびくともしません。特に、葉の裏に白い綿毛を持つガザニアは、その断熱コートのおかげで蒸散を防ぎ、強い日差しを跳ね返す力を持っています。また、地面を覆うように広がる性質(匍匐性)があるため、雑草が生えるのを防ぐグランドカバーとしても優秀です。ただし、日本の梅雨のような高温多湿は少し苦手なので、盛り土をして植えるなど、水はけだけは良くしておきましょう。「最強のタフネスプランツ」を求めているなら、ガザニアが一番のパートナーになってくれます。
2. シックでモダンな雰囲気を演出したいなら「オステオスペルマム」
「黄色やオレンジのビタミンカラーもいいけれど、もう少し落ち着いた大人っぽい庭にしたい」「玄関先をお洒落に飾りたい」という方には、オステオスペルマムが最適です。ガザニアにはない紫色、ワインレッド、ブロンズ色、そしてアンティーク調のくすんだパステルカラーなど、非常に洗練された色合いが揃っています。
オステオスペルマムは、ガザニアに比べると少し暑さに弱い(真夏に花を休む)傾向がありますが、寒さには比較的強く、関東以南の暖地であれば屋外で冬越しできることも多いです。鉢植えや寄せ植えのメインとして使えば、玄関先を一気にカフェのような空間に変えてくれるでしょう。夜でも花を楽しみたい方は、前述した夜間閉鎖しない改良品種(『シャイン』シリーズなど)を探してみてください。
3. 春だけの強烈なインパクトが欲しいなら「リビングストンデージー」
「春の間だけ、とにかく派手で明るい花畑を作りたい!」「SNS映えするような写真を撮りたい」という短期決戦型の方には、リビングストンデージーがおすすめです。蛍光ペンのような鮮やかなピンクやオレンジの花と、キラキラ輝く葉のコンビネーションは、見る人に強烈なポジティブなエネルギーを与えます。
高温多湿に弱く、日本の梅雨前には枯れてしまうことが多い一年草ですが、その分、開花期の爆発力は凄まじいものがあります。チューリップやムスカリなどの球根植物と一緒に植えると、足元を華やかに彩ってくれます。「花の絨毯」を作ってみたい方は、ぜひ挑戦してみてください。
4. シルバーリーフで他を引き立てたいなら「アークトチス」
花だけでなく、葉の美しさも楽しみたい、いわゆる「カラーリーフ」としての役割も期待する方にはアークトチスがぴったりです。全体が銀白色の毛で覆われた葉は、庭の中で素晴らしいアクセントになります。濃い緑色の植物の中にシルバーリーフのアークトチスを一株混ぜるだけで、庭全体に奥行きと明るさが生まれ、プロっぽい植栽になります。
花茎が長く伸びるので、切り花として部屋に飾るのにも向いています。「見る」だけでなく「飾る」楽しみも欲しい方には、アークトチスが満足度の高い選択肢になるでしょう。
ガザニアに似た花を正しく選ぶ要点
ガザニアに似た花たちは、どれも個性的で魅力的な植物ばかりです。しかし、その違いを正しく理解していないと、「思っていた花と違う」「環境に合わずに枯れてしまった」「知らずに法律違反の植物を持ち帰ってしまった」といったトラブルにつながることもあります。最後に、今回ご紹介した識別ポイントと選び方をリスト形式でまとめました。これを見れば、目の前の花が何者なのか、そして自分の庭に何を植えるべきかがクリアになるはずです。
この記事の要点まとめ
- ガザニアの葉の裏は真っ白な綿毛でびっしりと覆われている(最強の識別点)
- 葉の裏が緑色で毛がなければオステオスペルマムやガーベラの可能性が高い
- 花びらの根元に蛇の目模様(リング)があるのはガザニアやベニジウム
- 紫や青紫、ピンクの花が咲いていたらガザニアではなくオステオスペルマム
- 葉も茎も全体が銀白色の毛で覆われていたらアークトチス(ハゴロモギク)
- 葉や茎にキラキラした水泡状の突起があるのはリビングストンデージー
- 茎が立ち上がり60cm以上の高さになる蛇の目模様の花はベニジウム
- ガザニアは光に反応して夜や曇りの日、雨天時に花を閉じる性質がある
- 最近のオステオスペルマムには夜も花が閉じずに咲き続ける品種がある
- 道端や河川敷に群生するオレンジ色の花は特定外来生物オオキンケイギクの可能性がある
- オオキンケイギクは花びらの先端が不規則にギザギザと裂けている
- 特定外来生物は生きたままの持ち帰りや栽培が法律で禁止されている
- 乾燥に強く真夏の直射日光に耐えられるグランドカバーならガザニアが最強
- ベタベタする葉はディモルフォセカの生理現象かアブラムシの排泄物の可能性がある
- 自分の庭の日当たり条件や好みの色に合わせて種類を選ぶことが成功の鍵
|
|


