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スイートピーの和名は麝香連理草!由来や怖い花言葉の真実を解説

スイートピー 和名1 春の窓辺に飾られたパステルカラーの美しいスイートピーの花束 スイートピー
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こんにちは、My Garden 編集部です。

春の柔らかな日差しが降り注ぐ季節になると、花屋さんの店頭にはフリルのような花びらをまとった色とりどりのスイートピーが並び始めます。卒業式や入学式のブーケとしても定番のこの花は、私たちにとって「春の訪れ」そのものを象徴するような、明るく希望に満ちた存在です。その甘く優しいパウダリーな香りに包まれると、張り詰めた心がふっとほどけていくような安らぎを感じる方も多いのではないでしょうか。私自身も、毎年春になると必ず部屋に飾るほど大好きな花の一つです。

しかし、ふと「スイートピーって、日本語ではなんて呼ぶんだろう?」と疑問に思い、スマートフォンで検索してみると、画面には「麝香連理草」という、何やら古めかしく難解な漢字が表示されます。さらに、その名前の由来や詳細を知ろうと深掘りしていくと、検索候補には「怖い」「毒性」「死」といった、可憐な見た目からは想像もつかない不穏なキーワードが次々と現れ、驚いてしまった経験をお持ちの方もいるかもしれません。「こんなに可愛い花なのに、本当に怖いの?」「もしかして、部屋に飾るだけでも危険があるの?」そんな不安を感じてしまった読者の皆様のために、今回はその疑問をすべて解消します。

この記事では、スイートピーの和名「麝香連理草」に込められた、明治時代の人々の並々ならぬ感性と、その背景にあるロマンチックな愛の物語を紐解いていきます。また、検索エンジンで「怖い」と表示される理由である「毒性」の正体についても、植物生理学的な視点から冷静に解説し、安全に楽しむための正しい知識をお伝えします。さらに、昭和の大ヒット曲『赤いスイートピー』が、実は園芸の世界にとんでもない「革命」を引き起こしていたという感動の実話や、大切な人に贈る前に知っておきたい色別の花言葉の意味まで、スイートピーに関するあらゆる知識を網羅しました。この記事を読み終える頃には、単なる知識としてだけでなく、目の前のスイートピーがより愛おしく、特別な存在として感じられるようになっているはずです。さあ、一緒にこの花の奥深い世界へ足を踏み入れてみましょう。

この記事のポイント

  • 和名である麝香連理草の正しい読み方と、漢字一文字ずつに込められた深い意味
  • 名前に隠された「香りの王様」との関係や、永遠の愛を誓うロマンチックな物語
  • 検索エンジンで「怖い」と表示される理由となる毒性のメカニズムと正しい対処法
  • 歌謡曲が現実を変えた奇跡、赤いスイートピーの品種改良にかけた農家の情熱
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スイートピーの和名と美しい由来

まずは、地中海シチリア島生まれのスイートピーが、はるか遠く離れた日本という異国の地でどのような名前を与えられ、愛されてきたのか、そのルーツを探る旅に出かけましょう。植物の和名というのは、単に西洋の学名を日本語に翻訳しただけのものではありません。そこには、その花を初めて目にした当時の日本人たちが何を感じ、どの特徴に心を奪われたのかという「感動の記憶」が色濃く刻まれています。漢字の字面から浮かび上がる情景や、なぜそのような名前が選ばれたのかという時代背景を深く知ることで、この花が持つ魅力の層が何倍にも厚みを増して感じられるはずです。

和名の漢字表記と正しい読み方

スイートピー 和名2 和室の床の間に飾られ「麝香連理草」という和名の風情を感じさせる紫のスイートピー

スイートピーの和名は、植物図鑑や学術的な場において最も一般的かつ正式なものとして「麝香連理草」という表記が用いられ、これを「ジャコウレンリソウ」と読みます。初めてこの漢字の並びを目にしたとき、その画数の多さと、どこか漢詩や古典文学を連想させる重厚な雰囲気に、「まるで歴史の教科書に出てくる難しい言葉のようだ」と身構えてしまった方もいるのではないでしょうか。現代の私たちが日常会話で使う「スイートピー」という軽やかでポップなカタカナ語の響きとは対照的に、この和名には明治時代の知識人たちが持っていた高い教養と、美に対する厳格なまでの姿勢が反映されています。

また、これ以外にも「麝香豌豆(ジャコウエンドウ)」や「香豌豆(カオリエンドウ)」という別名で呼ばれることもあります。古い園芸書を紐解くと、これらの名前が併記されているのを見かけることがありますが、いずれの名前に共通しているのは、「香り」と「豆」という二つの要素を非常に重要視している点です。特に「麝香連理草」という名前は、単なる植物の分類上の名称を超えて、一つの完成された詩的な表現として成立しています。「麝香」という香りの絶対王者と、「連理」という永遠の愛の象徴を組み合わせたこの名前は、当時の日本人が西洋から渡来したこの花に対して抱いた、ある種の畏敬の念すら感じさせます。現代ではカタカナ語が主流となり、和名を使う機会は減ってしまいましたが、あえてこの「麝香連理草」という名前を口にしてみると、不思議と背筋が伸びるような、凛とした美しさを感じませんか? 言葉の響き一つで花の印象が変わるのも、日本語という言語が持つ面白さであり、奥深さでもあります。

由来となった麝香の香りとは

スイートピー 和名3 和名にある「麝香(ムスク)」のような芳醇な甘い香りをイメージさせるスイートピーと香水瓶

和名の冒頭に堂々と冠された「麝香(ジャコウ)」という言葉。これは単に「良い香り」を意味する一般的な形容詞ではありません。本来は、ヒマラヤなどの高山地帯に生息するジャコウジカ(Moschus moschiferus)という動物のオスから採取される分泌物「ムスク」のことを指します。このムスクは、古くから香水の持続性を高める保留剤や、万能薬として金にも匹敵する価値で取引されてきた、まさに「香料の王様」です。その香りは非常に濃厚で甘く、どこか官能的で、一度嗅いだら脳裏に焼き付いて一生離れないほどの強烈なインパクトを持っています。

では、なぜ可憐な花の和名に、動物由来の香料の名が付けられたのでしょうか。それは、幕末から明治初期にかけて日本にスイートピーが紹介された際、当時の人々がその圧倒的な芳香に衝撃を受けたからに他なりません。当時の日本にも梅や沈丁花など香りの良い花はありましたが、スイートピーが放つ甘くパウダリーで、部屋中に広がるような強さは、それまでの和の花の常識を覆すものでした。「この素晴らしい香りを表現するには、並大抵の言葉では足りない。あの伝説の香料、麝香に例えるしかない」という、当時の人々の驚きと称賛の声が聞こえてくるようです。実際、スイートピーの学名である Lathyrus odoratus(ラティルス・オドラタス)の種小名「odoratus」も、ラテン語で「芳香のある」「香り高い」という意味を持っています。洋の東西を問わず、この植物の最大のアイデンティティは視覚的な美しさ以上に、その「香り」にあると認識されていた確固たる証拠ですね。

豆知識:原種の香りはもっと強かった?
17世紀にシチリア島でクパニ神父によって発見された当時の野生種(原種)は、花こそ小さく地味なバイカラーでしたが、その香りは現代の園芸品種よりもはるかに濃厚で強かったと記録されています。もしタイムマシンがあったら、当時の人々が「麝香のようだ」と例えたそのオリジナルの香りを、ぜひ一度体験してみたいものですね。

連理草の意味とロマンチックな伝説

スイートピー 和名4 和名「連理草」の由来となった支柱に強く絡みつくスイートピーの巻きひげのアップ

続いて、名前の後半部分を構成する「連理草(レンリソウ)」について解説します。この「連理」という言葉、歴史ドラマや中国の古典文学がお好きな方なら聞き覚えがあるかもしれません。植物学的な意味では、別々の木の枝が成長する過程で重なり合い、組織が癒着して木目が通じ合い、やがて一本の木のように一体化する現象を指します。この自然界の神秘的な現象は、古くから「深く愛し合う夫婦や恋人同士が、一心同体となって結びつく様子」の究極の象徴として、詩や物語の中で頻繁に用いられてきました。

スイートピーにこの「連理」の名が当てられた背景には、その独特な生態が大きく関係しています。スイートピーを育てたことがある方ならご存知かと思いますが、この植物は葉の先端が変化した「巻きひげ」を持っています。成長するにつれて、この巻きひげを支柱や隣り合う植物、あるいは自分自身の茎にしっかりと絡ませながら、空へ向かって伸びていきます。その姿が、まるで愛する人に寄り添い、決して離れまいと抱きしめ合う恋人たちのように見えたのでしょう。また、スイートピーの葉(羽状複葉)は、小さな葉(小葉)が左右対称にペアになって整然と並んでいます。この仲睦まじい様子もまた、「連理」という言葉のイメージを補強しています。「麝香連理草」という名前は、単に植物の特徴を表しているだけでなく、「甘美な香りを放ちながら、愛する人と強く結びつく草」という、極めて情緒的でロマンチックなメッセージを含んでいるのです。

白居易『長恨歌』の世界
中国の唐代を代表する詩人・白居易(白楽天)が、玄宗皇帝と楊貴妃の悲恋を詠んだ『長恨歌』の中に、「天に在りては願わくは比翼の鳥となり、地に在りては願わくは連理の枝と為らん(空を飛ぶなら翼を並べて飛ぶ鳥になりたい、地上にいるなら枝が絡み合って一体となった木になりたい)」という有名な一節があります。明治の教養人たちは、スイートピーの絡みつく姿にこの詩の世界を重ね合わせたのかもしれません。

別名の麝香豌豆とマメ科の特徴

スイートピー 和名5 マメ科特有の蝶形の花とエンドウ豆に酷似した鞘を持つスイートピー(別名:麝香豌豆)

スイートピーには「麝香連理草」の他にも、「麝香豌豆(ジャコウエンドウ)」や「香豌豆(カオリエンドウ)」という別名が存在します。ここで使われている「豌豆(エンドウ)」という漢字は、私たちが普段スーパーで購入し、食卓に並べるあの「エンドウ豆(グリーンピースやサヤエンドウ)」を指します。スイートピーの花をよく観察してみると、確かにエンドウ豆の花と瓜二つの蝶形花冠(ちょうけいかかん)を持っていますし、花が終わった後にできる豆の鞘(さや)の形もそっくりです。植物学的にも同じマメ科に属しているため、これは非常に正確で実用的な命名だと言えるでしょう。

「香りの良いエンドウ豆」という意味で名付けられたこれらの別名は、植物としての分類を直感的に理解するのに役立ちます。英語圏でも “Sweet Pea”(Sweet=甘い香り、Pea=豆)と呼ばれており、世界中の人々がこの植物に対して「香りのする豆」という共通の認識を持っていることがわかります。しかし、この「エンドウ(豌豆)」や「Pea」という言葉が含まれていることが、ある一つの重大な誤解を生む原因にもなっています。それは、「エンドウ豆の仲間なら、実った豆も食べられるのではないか?」という誤解です。特に家庭菜園などでスイートピーを育てていると、春の終わりに立派な豆の鞘がぶら下がっているのを見て、つい収穫して茹でてしまいたくなる衝動に駆られるかもしれません。しかし、これには重大な危険が潜んでいます。名前が似ていても、あるいは見た目がそっくりでも、中身は全くの別物です。この点については、記事の後半で「毒性」について解説するセクションで詳しく触れますが、まずは「名前はエンドウだけど、決して食用ではない」ということを心に留めておいてください。

江戸末期に伝わった歴史的背景

スイートピー 和名6 江戸時代末期に日本へ渡来した当時の姿を描いたようなスイートピーの古典的な植物画

日本という島国に、遠く離れた地中海原産のスイートピーが初めて降り立ったのは、今から約160年前、江戸時代末期の1862年(文久2年)頃だとされています。歴史の教科書で言えば、生麦事件が起きたり、新選組が結成される前夜であったりと、まさに幕末の動乱の真っ只中です。日本が長い鎖国を解き、横浜や長崎などの港を通じて西洋の文化や文物が怒涛のように流入し始めた、激動の時代でした。当時の記録によると、幕府がヨーロッパに派遣した「文久遣欧使節」が持ち帰った植物の種子の中にスイートピーが含まれていたという説や、オランダやイギリスからの貿易船によってもたらされたという説が有力です。

いずれにせよ、ちょんまげを結い、着物を着ていた当時の人々にとって、ひらひらとしたドレスのような花弁と、強烈な甘い香りを持つこの花は、見たこともない「異国の美」そのものだったに違いありません。当時の著名な本草画家である関根雲停(せきね うんてい)が残した写生図にも、スイートピーの姿が詳細に描かれていると言われています。写真機がまだ一般に普及していない時代、画家たちはその珍しい花の色や形を詳細に観察し、筆で記録に残そうとしました。彼らの筆致からは、未知の植物に対する旺盛な好奇心と、その美しさを後世に伝えようとする熱意が伝わってきます。最初は一部の大名や富裕層、あるいは植物愛好家の間だけで楽しまれていた高嶺の花でしたが、明治、大正と時代が進むにつれて栽培技術が確立され、昭和の高度経済成長期を経て、今では春の訪れを告げる定番の花として、私たちの日常に溶け込むようになりました。

スイートピーの和名に隠された物語

美しい和名の裏側には、華やかなだけではない、少しドキッとするような事実や、一曲の歌謡曲が園芸業界を動かしたという奇跡のようなストーリーも隠されています。ここからは、検索エンジンでよく見かける「怖い」というキーワードの真相や、品種改良に人生を捧げた人々のドラマ、そして大切な人に贈る前に知っておきたい花言葉の意味について、さらに深く掘り下げていきましょう。

怖い検索候補と毒性の真実

スイートピー 和名7 マメ科特有の蝶形の花とエンドウ豆に酷似した鞘を持つスイートピー(別名:麝香豌豆)

インターネットで「スイートピー」について調べようと検索窓に文字を入力した瞬間、「怖い」「毒性」「毒」といった不穏なサジェストキーワードが表示され、背筋が凍るような思いをしたことはありませんか? 「あんなに可愛らしい花に、まさか毒があるなんて…」と信じられない気持ちになるのも無理はありません。しかし、結論から申し上げますと、これは単なる都市伝説や噂ではなく、植物生理学的な事実に裏付けられた真実なのです。

スイートピーを含むレンリソウ属(Lathyrus)の植物は、その種子や植物体全体、特に花が終わった後にできる豆の中に、「β-アミノプロピオニトリル(BAPN)」という特殊なアミノ酸誘導体を含有しています。少し専門的な話になりますが、この物質は動物の体内で骨や血管、皮膚などの結合組織を作るのに不可欠なコラーゲンやエラスチンの「架橋(クロスリンク)」を阻害する作用を持っています。つまり、この毒素を大量に摂取し続けると、体の中の結合組織が弱くなり、正常な構造を維持できなくなってしまうのです。これを「ラチリズム(Lathyrism)」と呼びます。

歴史的に見ると、食糧難や飢饉に見舞われた地域で、レンリソウ属の豆(特に Lathyrus sativus など)をやむを得ず主食として長期間摂取した人々の間で、深刻な中毒症状が発生した記録が残っています。主な症状としては、脊髄の運動神経が侵されることによる下肢の麻痺、痙攣、歩行困難などが挙げられ、重篤な場合は一生車椅子生活を余儀なくされることもありました。スイートピー(L. odoratus)の場合も、実験動物において骨の変形や大動脈瘤などを引き起こすことが確認されています。

【重要】絶対に口にしないでください
スイートピーの豆の鞘は、見た目が食用のサヤエンドウやグリンピースに酷似していますが、上記の通り神経毒を含んでいます。人間が数粒誤食した程度で直ちに重篤な神経麻痺が出ることは稀ですが、毒への感受性には個人差がありますし、体の小さな子供やペットにとってはより危険性が高まります。特に家庭菜園で食用エンドウとスイートピーを近くに植えている場合は、収穫時に混入しないよう、明確にエリアを分けるか、タグをつけて厳重に管理してください。

このように書くと「やっぱり怖い花なんだ」と思われてしまうかもしれませんが、あくまで「食べた場合」の話です。観賞用として切り花を部屋に飾ったり、庭で育てて香りを楽しんだりする分には、毒ガスが出るわけでも、触れてかぶれるわけでもありません。毒があるのは、植物が自らの種子を動物に食べられないように守るための「生きる知恵」です。正しい知識を持って、口に入れないというルールさえ守れば、スイートピーは決して恐ろしい植物ではありません。むしろ、そんな強力な武器を隠し持っているというミステリアスな一面も、この花の魅力の一つと言えるかもしれませんね。

野生の連理草との明確な違い

スイートピー 和名8 毒性があり食用厳禁だがサヤエンドウに酷似しているスイートピーの豆の鞘

「和名の由来」のセクションで少し触れましたが、「連理草(レンリソウ)」というキーワードで検索すると、園芸店のスイートピーとは似ても似つかない、紫色の小さな花の写真が出てくることがあります。これは、日本に古くから自生している野生種の「レンリソウ(学名:Lathyrus quinquenervius)」のことです。同じマメ科レンリソウ属の仲間ではありますが、園芸種のスイートピーとは全く別の植物です。

この野生のレンリソウは、主に湿地や河川敷などの湿った日当たりの良い場所を好んで生息し、5月から6月にかけて、1.5cmほどの小さな蝶形の花を咲かせます。スイートピーのような華やかさや強い芳香はありませんが、可憐で野趣あふれる姿には独自の魅力があります。しかし現在、この在来種のレンリソウは、河川改修や湿地の埋め立て開発、環境の変化などにより生息地を奪われ、その数を激減させています。多くの都道府県で絶滅危惧種や準絶滅危惧種に指定されており、環境省のレッドリストにも掲載されるほど希少な存在となっています。もし野外でレンリソウを見かけることがあっても、それは非常に貴重な出会いです。決して採取したりせず、そっと見守ってあげてください。園芸店で売られている華やかな「スイートピー(麝香連理草)」と、日本の自然の中でひっそりと息づく「レンリソウ」。名前は似ていますが、それぞれ全く異なる背景と現状を持っていることを知っておくと、植物への理解がより深まるでしょう。

英語名と学名が示す性質

次に、世界共通の呼び名である英語名と、植物学的な正式名称である学名にスポットライトを当ててみましょう。和名の「麝香連理草」が情緒的で文学的なニュアンスを含んでいたのに対し、英語名や学名は、この植物の性質をよりダイレクトに、そして少し科学的な視点から私たちに語りかけてくれます。

まず、英語名の「Sweet Pea(スイートピー)」ですが、これを直訳すると「甘い(香りの)豆」となります。非常にシンプルですが、これ以上ないほど的確にこの花の特徴を捉えていますよね。「Sweet」は甘いお菓子を指すだけでなく、心地よい香りや愛らしい様子を表現する際にも使われる言葉です。つまり、英語圏の人々にとっても、この植物の最大のチャームポイントは、あのふんわりと漂う「甘い香り」にあるという認識は共通なのです。もし英語名が「Beautiful Pea(美しい豆)」や「Red Pea(赤い豆)」だったら、これほど世界中で愛される花にはなっていなかったかもしれません。「Sweet」という響きが持つ優しさと幸福感が、この花のイメージを決定づけていると言っても過言ではないでしょう。

一方で、学名のLathyrus odoratus(ラティルス・オドラタス)に目を向けると、少し違った側面が見えてきます。後半の「odoratus」は、ラテン語で「芳香のある」「香り高い」という意味で、和名の「麝香」や英語名の「Sweet」と完全に一致しています。問題は、前半の属名「Lathyrus」です。この言葉の語源には諸説ありますが、古代ギリシャ語で「非常に」を意味する “la” と、「刺激する」「情熱的な」を意味する “thyros” が組み合わさってできたという説が有力視されています。「非常に刺激する」とは、一体どういうことでしょうか? これには、先ほど解説した「毒性」が関係していると考えられます。古代の人々は、この属の植物に含まれる成分が神経を刺激し、麻痺や興奮を引き起こすことを経験的に知っていたのかもしれません。あるいは、一部の地域で信じられていた「催淫作用がある」という伝説に由来するという説もあります。いずれにせよ、学名には「甘い香り(odoratus)」という天使のような顔と、「刺激的で危険(Lathyrus)」という小悪魔的な顔の両方が同居しているのです。

赤いスイートピー誕生の秘話

スイートピー 和名9 品種改良によって誕生した鮮やかな赤色(クリムゾン)のスイートピーの花束

日本におけるスイートピーの歴史を語る上で、絶対に避けて通れないのが、1982年(昭和57年)にリリースされた松田聖子さんの名曲『赤いスイートピー』の存在です。この曲は単なる流行歌の枠を超え、日本の園芸史に刻まれるべき「ある奇跡」を引き起こしたのです。実は、曲がリリースされた当時、歌詞に出てくるような「真っ赤なスイートピー」は、市場にはほとんど存在していませんでした。正確には、赤に近い濃いピンクや紫色の品種はありましたが、歌詞の世界観にあるような、燃えるような「真紅(クリムゾン)」のスイートピーは、遺伝的な要因から作出が非常に難しいとされていたのです。

作詞を担当された松本隆さんは、後に「赤いスイートピーがないことは知らなかった。心象風景としての『赤』を描いた」と語っています。つまり、あの歌はフィクションから始まった物語だったのです。しかし、曲が大ヒットし、社会現象となると事態は一変します。全国の花屋さんや生花市場に、「あの歌に出てくる赤いスイートピーをください!」「恋人に赤いスイートピーを贈りたい」という注文が殺到したのです。花屋さんたちは「すみません、実はないんです…」と断るしかなく、悔しい思いをしていました。そんな状況を見て、「よし、ないなら俺たちが作ってやろうじゃないか!」と立ち上がったのが、日本の情熱あふれる育種家(ブリーダー)たちでした。

特に、三重県伊勢市のスイートピー生産者である中川猛(なかがわ たけし)さんの挑戦は、まさに執念とも言えるものでした。スイートピーの赤色色素を安定させるのは至難の業でしたが、中川さんは交配と選抜を繰り返し、なんと18年以上もの歳月を費やして、ついに鮮やかな赤色の品種を作り出すことに成功したのです。2002年頃に発表されたその品種の一部には、「ムジカ(音楽)」と「クリムゾン(深紅)」を組み合わせた名前などが付けられたと言います。これは明らかに、きっかけとなった楽曲への敬意とオマージュですよね。「歌が現実を作り出した」というこのエピソードは、世界中の園芸史を見渡しても類を見ない珍しい事例です。現在、お花屋さんで当たり前のように見かける赤いスイートピー。その鮮やかな赤色の背景には、クリエイターの想像力と、それに応えようとした農家さんの職人魂という、二つの情熱が咲き誇っているのです。

門出を祝う花言葉の由来

スイートピーの花言葉といえば、「門出」「別離」「優しい思い出」などが有名です。春の卒業・入学シーズンに贈られる定番の花として定着しているのも、この花言葉のおかげと言えるでしょう。では、なぜスイートピーには「別れ」や「旅立ち」を意味する言葉が与えられたのでしょうか。最も大きな理由は、その花の形にあります。スイートピーの花びらをよく見てみてください。ふわりと波打つような独特の形は、今にも空へ飛び立とうとしている蝶の姿に似ていませんか? この「飛翔」のイメージが、親元や母校という巣から飛び立ち、新しい世界へと羽ばたいていく若者たちの姿と重なり、「門出」という花言葉が生まれたとされています。

また、「別離」という言葉が含まれているため、「恋人に贈ると別れることになるのでは?」「縁起が悪いのでは?」と心配される方もいらっしゃいますが、これには誤解があります。この「別離」は、決して「永遠の別れ(死別)」や「絶縁」といったネガティブな意味ではありません。由来は19世紀後半から20世紀初頭のイギリス、エドワード朝時代にまで遡ります。当時の貴族たちの間では、晩餐会やパーティーにお招きしたゲストに対し、お開きになって帰る際に、感謝の気持ちを込めてスイートピーの花を贈る習慣があったそうです。つまり、「楽しい時間をありがとう、気をつけて帰ってね」「また会いましょう」という、Good-bye & Departure(良き別れと出発)の意味が込められているのです。人生において、別れは新しい出会いの始まりでもあります。スイートピーの持つ「別離」は、過去を慈しみながらも、未来へ向かって一歩踏み出す背中を優しく押してくれる、とてもポジティブで温かいメッセージなのです。退職される先輩や、遠くへ引っ越してしまう友人へ贈る花として、これほど相応しい花は他にないかもしれませんね。

色別で異なる花言葉の解説

スイートピー 和名10 ピンクや白や紫など色ごとに異なる花言葉を持つ多彩なスイートピーのフラワーギフト

スイートピーには、定番のピンクや白だけでなく、紫、黄色、そして先ほどご紹介した赤など、実に多彩なカラーバリエーションが存在します。そして、それぞれの色には固有の素敵な花言葉が付けられています。贈る相手のイメージや、伝えたいメッセージに合わせて色を選ぶのも、スイートピーならではの楽しみ方です。ここでは、代表的な色の意味を詳しく解説していきましょう。

花言葉 由来・メッセージ性 おすすめのギフトシーン
ピンク 繊細、優美、恋の愉しみ 桜貝のような可憐な色合いから、初々しい恋心や女性らしい優しさを象徴します。「恋の愉しみ」という言葉は、デートのワクワク感にも似ていますね。 片思いの相手への告白、パートナーへの誕生日、ひな祭りや母の日のプレゼントにも最適です。
ほのかな喜び、微かな喜び 純白のドレスを思わせる清楚な姿から、純粋な心や新しい始まりを意味します。派手すぎない「ほのかな」喜びという表現が奥ゆかしいですね。 結婚祝い、ブライダルブーケ、出産祝いなど、人生の新しいスタートを祝う場面にぴったりです。
永遠の喜び 古くから高貴な色とされる紫。落ち着きのある美しさから、一時の感情ではない、長く続く深い喜びや絆を表しています。 結婚記念日(特に長年連れ添った夫婦)、敬老の日、恩師への感謝の贈り物として喜ばれます。
判断力、分別 一説には、信号機の黄色(注意)から連想されたとも言われるユニークな花言葉。迷っている人の背中を押し、正しい道へ導くという意味も。 これから新しい決断をする人への激励や、珍しい色なのでアレンジメントのアクセントとして。
(特定の伝統語なし)情熱、燃える愛 伝統的な花言葉はありませんが、楽曲の影響から「情熱的な愛」の象徴と見なされています。バラにも負けない強いメッセージ性を持ちます。 プロポーズ、バレンタインデー、特別な記念日に、愛の言葉と共に贈るのがロマンチックです。

どのお色も魅力的ですが、最近では品種改良が進み、花びらの縁だけ色が違う「バイカラー(複色)」や、淡いグラデーションが美しい品種、さらには染料を吸わせて作った神秘的な青色や茶色のスイートピーなども出回っています。花言葉にこだわりすぎず、「相手が一番元気になりそうな色」や「その人の雰囲気に似合う色」を直感で選んでみるのも素敵ですよ。色に迷ったら、複数の色を混ぜて「ミックス」にするのも華やかでおすすめです。

スイートピーの和名を楽しみ愛でる

ここまで、スイートピーの和名「麝香連理草」に秘められた意味や、毒性にまつわる真実、そして歌が生んだ奇跡の物語まで、様々な角度からこの花の魅力をご紹介してきました。普段何気なく眺めていたスイートピーが、今までとは少し違った、より深い存在に見えてきたのではないでしょうか。「麝香」に例えられたその香りは、忙しい日常で張り詰めた私たちの心をふっと緩めてくれます。リビングや玄関に数本飾るだけで、家の中に春の風が吹き込んだような明るい気持ちになれるはずです。

また、「連理草」という名前に込められた「誰かと深く結びつきたい」という願いは、人間関係が希薄になりがちな現代において、改めて大切にしたい温かい感情かもしれません。もちろん、毒性があるという事実は忘れてはいけません。しかし、それは「美しいバラには棘がある」のと同じように、この植物が長い進化の過程で身につけた「個性」であり「強さ」の証でもあります。正しく理解し、適切な距離感で付き合えば、危険なことは何もありません。むしろ、その妖艶な二面性を知ることで、より一層この花の虜になってしまうかもしれませんね。

春、お花屋さんの前を通ったら、ぜひ足を止めてみてください。そして、ひらひらと舞う蝶のような花びらに顔を近づけ、先人たちが感動したあの「甘い香り」を胸いっぱいに吸い込んでみてください。そこには、言葉では伝えきれないほどの、豊かな春の喜びが待っているはずです。この記事が、あなたのスイートピーとの出会いをより素敵なものにするきっかけになれば幸いです。

この記事の要点まとめ

  • スイートピーの和名は「麝香連理草(ジャコウレンリソウ)」と読む
  • 「麝香」は最高級香料ムスクのことで、原種の強い香りが由来となっている
  • 「連理」は枝が絡み合って一本になる木のことで、深い愛の象徴
  • 葉の巻きひげが他の植物に絡みつく生態が「連理」に見立てられた
  • 別名「麝香豌豆(ジャコウエンドウ)」は香りの良いエンドウ豆という意味
  • 1862年の幕末に日本へ渡来し、当時の人々を驚かせた
  • 体内に「BAPN」という神経毒を持つため、豆などを絶対に食べてはいけない
  • 検索で「怖い」と出るのは、誤食による中毒(ラチリズム)のリスクがあるため
  • 観賞用として飾る分には安全であり、過度に恐れる必要はない
  • 野生の「レンリソウ」は絶滅危惧種であり、園芸種のスイートピーとは別物
  • 名曲『赤いスイートピー』のヒットが、実在しなかった赤い品種の開発を促した
  • 全体の花言葉「門出」「別離」は、花が飛び立つ蝶に見えることに由来する
  • 「別離」はネガティブな意味ではなく、新しい旅立ちへの祝福(Departure)
  • ピンクは「恋の愉しみ」、紫は「永遠の喜び」など色ごとに意味がある
  • 名前の由来や歴史を知ることで、スイートピーの観賞がより深い体験になる
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