こんにちは、My Garden 編集部です。
お店のフラワーコーナーや園芸店で見かけると、そのパッと明るく整った表情につい手を伸ばしたくなるガーベラ。ビビッドな赤やピンク、優しいパステルカラーなど色鮮やかで可愛らしい姿は、お部屋やベランダを瞬時に華やかな空間に変えてくれますよね。
しかし、いざ自宅に迎えてウキウキしながら育て始めてみると、「たくさんの蕾がついているのに開かずに枯れてしまった」「最初は咲いていたけれど、葉っぱばかり茂って二度目の花が咲かない」「冬を越せずに茶色く枯れ込んでダメにしてしまった」といった、ほろ苦い経験をされた方も非常に多いのではないでしょうか。
「ガーベラは育てるのが難しい」「やっぱり寿命が短い消耗品の植物なんだ」と、半ば諦めの気持ちを抱いてしまっている方もいるかもしれません。でも、ちょっと待ってください。その認識は少しだけ誤解が含まれているかもしれません。
実はガーベラは、その可愛らしい見た目とは裏腹に、適切な環境とちょっとしたコツさえ掴めば、何年も繰り返し花を咲かせ続けることができる、非常に生命力の強い「宿根草(しゅっこんそう)」という植物なのです。私たち人間と同じように、彼らにも「快適で心地よい居場所」と「ストレスを感じる苦手な環境」があります。言葉を話さない彼らの、その「声なき声」に耳を傾け、ほんの少し環境を整えてあげるだけで、ガーベラは驚くほど長く、そして力強く、あなたの暮らしに寄り添ってくれます。
この記事では、多くの人が誤解しているガーベラの「寿命」に関する真実から、日本の一般的な家庭環境で陥りやすい「枯れる原因」の徹底解明、そしてプロの生産者も実践している「寿命を数年単位に延ばすための具体的な栽培テクニック」までを、初心者の方にも分かりやすく、かつ植物生理学の視点も交えて深掘りして解説します。今日からできるケアの一つひとつが、あなたのガーベラを「使い捨てのインテリア」ではなく「一生のパートナー」へと変えていくはずです。ぜひ最後までお付き合いください。
この記事のポイント
- 花の寿命と株自体の寿命の違いを正しく理解できる
- 鉢植えがすぐに枯れてしまう主な原因と対策がわかる
- 寿命を数年単位に延ばすための具体的な管理方法を学べる
- 長く咲き続けるおすすめの品種や復活のコツを知れる
ガーベラの鉢植えの寿命と枯れる原因

「あんなに元気だったのに、気づいたら葉っぱがぐったりしていた…」。そんな悲しい別れには、必ず植物学的な原因が存在します。まずは、ガーベラという植物が本来持っているポテンシャル(潜在能力)と、それを阻害してしまう要因について、少し専門的な視点も交えながら紐解いていきましょう。
花持ち期間と株の寿命の違い

まず最初に、私たちが普段日常会話の中で漠然と使っている「寿命」という言葉を、植物学的な視点で明確に2つの要素に分解して考える必要があります。それは「花(花序)としての寿命」と「株(植物体)としての寿命」です。この2つの概念を混同してしまうと、本当はまだ元気に生きているガーベラを、「もう花が終わったから死んでしまった」と誤って捨ててしまうことになりかねません。
知っておきたい2つの寿命の違い
- 花の寿命(花持ち):蕾が開いてから、花弁が萎れたり散ったりするまでの観賞期間。一般的に2週間~3週間程度。
- 株の寿命(生存期間):根や茎(地下茎)が生きて成長を続け、次世代の花を生み出し続ける期間。適切な環境なら数年以上。
まず「花の寿命」についてですが、ガーベラの花は環境が整っていれば、鉢植え状態で約2週間から3週間、条件が良ければ1ヶ月近く美しさを保ちます。切り花として花瓶に生けた場合、水揚げが悪くなるとバクテリアの繁殖などで導管が詰まり、首が垂れてしまう(ベントネック)現象が起きやすいですが、鉢植えは根から継続的に新鮮な水分と養分が供給されるため、切り花よりも圧倒的に長く楽しむことができます。特に、室温が15℃~20℃程度の涼しい環境であれば、呼吸によるエネルギー消費が抑えられるため、驚くほど長く咲き続けます。
次に、より重要で本質的な「株の寿命」についてです。ここが最大の誤解ポイントなのですが、ガーベラはパンジーやヒマワリのような一年草(種を蒔いて花が咲いたらその年のうちに枯れる植物)ではありません。「宿根草(しゅっこんそう)」と呼ばれる、根や地下茎が生きていれば毎年季節が巡るたびに花を咲かせる多年草のグループに属しています。
つまり、生物学的な寿命の限界は明確には決まっておらず、原産地の南アフリカや、環境制御されたプロの生産現場では、数年にわたって同じ株から花を収穫し続けることが可能です。たとえ冬場に寒さで地上部の葉が枯れて茶色くなったとしても、それは植物が身を守るための「休眠」であって、枯死したわけではありません。地中の根と成長点さえ生きていれば、春の暖かさとともに再び瑞々しい新芽を吹き出します。「花が終わったから寿命だ」「葉が枯れたから捨てよう」と早合点せず、そのたくましい生命力を信じてあげることが、長く付き合うための第一歩です。
鉢植えがすぐに枯れる原因

「数年も生きるポテンシャルがあるはずなのに、どうして一般家庭ではワンシーズン、あるいは数週間でダメになってしまうことが多いの?」という疑問を持たれるのも無理はありません。実は、鉢植えのガーベラが短命に終わる原因のほとんどは、寿命ではなく「人為的な管理ミス」や「日本の気候への不適合」によるトラブルにあります。
その中でも、ガーベラを枯らす原因のNo.1は、間違いなく「根腐れ」です。ガーベラの根は、他の草花に比べて非常に太く、多くの酸素を必要とする構造をしています。良かれと思って毎日お水をあげてしまい、土が常に湿ってドロドロの状態になると、土の粒子の隙間にある空気(酸素)が水で追い出されてしまいます。すると根は酸欠による窒息状態になり、細胞が壊死してしまいます。そこへ「ピシウム菌」や「疫病菌」といった水生菌(腐敗菌)が侵入し、あっという間に株全体をドロドロに腐らせてしまうのです。
また、意外と知られていないものの、根腐れと同じくらい多い失敗原因が「深植え(ふかうえ)」によるクラウンの腐敗です。ガーベラの株元をよく観察してみると、葉っぱが放射状に出ている中心部分(成長点)が少し膨らんでいるのがわかります。これを「クラウン」と呼びます。人間でいえば心臓にあたる非常に重要な器官です。
最重要チェックポイント:深植えになっていませんか?
クラウンは、新しい葉や花芽が生まれる神聖な場所であり、常に乾燥気味に保たれる必要があります。しかし、植え替えの際にこのクラウンまで土に埋めてしまったり、購入時のポット苗が最初から深植え気味だったりすると、水やりのたびに成長点に泥水が滞留します。ここから軟腐病(なんぷびょう)などの細菌が入り込み、ある日突然、中心部から溶けるように枯れてしまうのです。これは「寿命」ではなく、明確な「事故」と言えます。
このように、ガーベラが「寿命」を迎える前に枯れてしまうのは、植物自体が弱かったからではなく、「根が呼吸できない過湿環境」や「成長点が埋もれてしまう深植え」という物理的な要因が大半です。逆に言えば、この2点さえクリアできれば、ガーベラの生存率は劇的に向上し、本来の寿命を全うできるようになります。
鉢植えでの冬越しと耐寒性

日本の四季、特に冬の厳しい寒さと乾燥した北風は、温暖な南アフリカを原産とするガーベラにとって大きな試練となります。本来、温帯から熱帯の気候を好むガーベラにとって、日本の冬は寿命を縮める大きなリスク要因です。
一般的に園芸店やスーパーで流通している鉢花用のガーベラ(ミニガーベラなど)の耐寒温度は、約0℃から5℃程度と言われています。これは、「凍らなければギリギリ耐えられる」というレベルであり、決して寒さに強いわけではありません。霜に当たったり、土中の水分が凍結したりすると、細胞内の水分が膨張して細胞壁が破壊され、そのまま枯死に至ります。特に、夜間の冷え込みが厳しいベランダや、寒風が直接吹き荒れる屋外に放置すると、一夜にして再起不能なダメージを受けることがあります。
冬越しを成功させ、翌春も花を咲かせるためには、以下の3つのステップを実践してください。
- 11月頃を目安に室内へ移動:最低気温が10℃を下回るようになったら、戸外から室内の日当たりの良い窓辺へ移動させます。ガーベラは日光を好むので、冬でもできるだけ光に当てることが重要です。
- 夜間の窓辺の冷気に注意:昼間はポカポカと暖かい窓辺も、夜間は放射冷却現象によって屋外並みに冷え込みます。夜は厚手のカーテンを閉めて冷気を遮断するか、鉢を部屋の中央付近に移動させて、急激な温度低下から守りましょう。
- 水やりは「控えめ」にシフト:冬の間は気温が下がり、植物の成長が緩やかになるため、水を吸う力も弱まります。夏と同じペースで水やりをしていると確実に根腐れします。土の表面が乾いてからさらに3~4日待って水を与える「乾かし気味」の管理を徹底することで、根腐れと凍結の両方を防ぐことができます。植物体の水分量を減らすことで、樹液濃度が高まり、凍結しにくくなる効果もあります。
もし関東以西の温暖な地域で、どうしても屋外で冬越しさせたい場合は、南向きの軒下など霜や雨が当たらない場所に置き、夜間は不織布や段ボール、発泡スチロールなどで鉢ごと覆って保温するなどの対策が必須です。しかし、確実性を求めるなら「冬はリビングの窓辺」が鉄則です。
うどんこ病などの病気対策

ガーベラを長く育てていると、避けて通れないのが病気との戦いです。これらは放置すると株の体力を著しく奪い、光合成能力を低下させ、寿命を一気に縮めてしまいます。特にガーベラで発生頻度が高いのが「うどんこ病」です。
うどんこ病は、その名の通り、葉や茎、ひどい時には蕾にまで「うどんの粉(小麦粉)」をまぶしたような白いカビが発生する病気です。主に春(4月~6月)と秋(9月~11月)の、人間にとっても過ごしやすい20℃前後の気温で、空気が乾燥している環境を好みます。葉が白く菌糸で覆われると、日光が遮られて光合成ができなくなり、株が栄養失調状態に陥って徐々に弱っていきます。初期段階であれば、白い部分を見つけ次第すぐに取り除くことで拡大を防げますが、蔓延すると非常に厄介です。
家庭でできる「重曹スプレー」での対策
まだ初期のうどんこ病であれば、農薬を使わずに家庭にある重曹で対処が可能です。重曹のアルカリ成分がカビの細胞を破壊したり、静菌作用をもたらしたりすると考えられています。
- 作り方:水500ml~1リットルに対して、重曹1g程度(ひとつまみ)をよく溶かします。展着剤として台所用中性洗剤を一滴混ぜると、葉に定着しやすくなります。
- 注意点:濃度が濃すぎると、塩害のように葉が黒ずんだり枯れたりする「薬害」を起こして逆効果になるため、必ず薄い濃度から試し、目立たない葉でテストをしてから全体に使用してください。
また、梅雨時期などの湿気が多い季節や、冬場の密閉された室内では「灰色かび病(ボトリチス病)」が発生しやすくなります。これは、咲き終わった花や枯れた葉に灰色のカビが生え、そこから健康な部分へと感染が広がる病気です。一度発病すると治療が難しいため、予防の基本は「サニテーション(衛生管理)」です。枯れた花や葉をこまめに取り除き、風通しを良くしておくことが、農薬に頼らない最大の防御策となります。
より専門的な防除方法や、発生時期の詳細なデータについては、各都道府県の農業試験場が公開しているガイドラインも非常に参考になります。例えば、千葉県農林総合研究センターでは、ガーベラを含む花き類の病害虫防除に関する詳細な指針を公開しており、発生生態に基づいた科学的な対策を知ることができます。
(出典:千葉県農林総合研究センター『病害虫防除指針(ガーベラ)』)
長持ちするミニガーベラ等の品種

ここまで栽培管理のコツをお話ししてきましたが、「自分はズボラだから、繊細な管理は自信がない…」「忙しくて毎日の観察は難しい」という方には、そもそも生物学的に寿命が長く、強健に改良された品種を選ぶことを強くおすすめします。近年、ガーベラの品種改良は目覚ましく進んでおり、従来の「鉢花は弱くて当たり前」という常識を覆すような品種が登場しています。
その代表格が、オランダで開発された「ガーデンガーベラ」、特に「ガルビネア」というシリーズです。一般的なミニガーベラが温室での生産・観賞を前提に改良されてきたのに対し、このガルビネアは「屋外の庭植え」を前提に育種されました。そのため、驚異的な耐寒性と耐病性を備えています。
| 特性 | 一般的なミニガーベラ(鉢花用) | ガーデンガーベラ(ガルビネア等) |
|---|---|---|
| 耐寒温度 | 約0℃以上(霜に当たると枯れる)
※基本的に冬は室内管理が必要 |
約-5℃(軽い霜なら耐える)
※関東以西の平地なら屋外越冬が可能 |
| 開花期間 | 春と秋(夏と冬は休むことが多い)
※暑さと寒さで花が止まりやすい |
4月~12月(連続開花性が極めて高い)
※真夏でも花が咲き続けるパワーがある |
| 病気への強さ | うどんこ病やハダニに弱い
※定期的な薬剤散布が望ましい |
病害抵抗性が強く、育てやすい
※無農薬でも比較的健全に育つ |
| おすすめな人 | 室内でコンパクトに楽しみたい人
色や形のバリエーション重視の人 |
庭植えやベランダで長く楽しみたい人
「とにかく枯らしたくない」人 |
ガルビネアであれば、関東以西の平地なら屋外の花壇やプランターに植えっぱなしでも冬を越せる確率が高く、春から晩秋まで絶え間なく花を咲かせ続けてくれます。1株から年間で50本~100本もの花が咲くとも言われており、そのパフォーマンスは圧倒的です。「過去にガーベラを枯らしてしまってトラウマがある」という方は、ぜひ次回購入する際に「ガーデンガーベラ」というラベルを探してみてください。品種選びひとつで、ガーベラとの付き合い方は劇的に楽になり、寿命の悩みから解放されるはずです。
ガーベラの鉢植えの寿命を延ばす育て方
ここからは、今お手元にあるガーベラの鉢植えを、来年も再来年も咲かせるための実践的なケア方法をご紹介します。特別なプロ仕様の道具は必要ありません。日々の観察眼と、ほんの少しの手間の掛け方を変えるだけで、ガーベラの寿命は確実に延びていきます。
寿命を左右する水やりの基本

植物を枯らしてしまう原因の多くは水やりですが、ガーベラの場合は特にその傾向が顕著です。長生きさせるための水やりの極意は、「徹底的なメリハリ(乾湿のサイクル)」に尽きます。
ガーベラは「お水は大好きだけど、足元が常に濡れているのは大嫌い」という、少々わがままな性質を持っています。土が湿ったまま水を与え続けると、土壌内の酸素が欠乏し、根が窒息してしまいます。逆に乾燥させすぎると、しおれて回復にエネルギーを使ってしまい、花を咲かせる体力が削がれます。ベストなタイミングは、「土の表面が白っぽく完全に乾いた瞬間」です。
具体的な確認方法としては、以下のようなアナログなチェックが最も確実です。
- 指で触る(フィンガーテスト):土の表面を指で触ってみて、湿り気を全く感じず、サラサラとした感触であればOK。少しでも冷たかったり湿っていたりしたら我慢します。
- 鉢を持ち上げる(ウェイトテスト):水やり直後の「ズッシリとした重さ」を覚えておき、持ち上げた時に「あれ、軽い!」と感じたら水のあげ時です。これは土の中の水分量を知る最も正確な方法の一つです。
- 葉の様子を見る(視覚チェック):朝、葉にピンとしたハリがなく、少しふにゃっと垂れ下がっているようなら水切れのサインです。ただし、真昼に垂れているのは暑さによる一時的な現象の場合もあるので、朝夕の涼しい時間帯に確認しましょう。
そして、いざ水をあげる時は、鉢底から水がジャバジャバと流れ出るくらい、たっぷりと与えます。これには単に水を補給するだけでなく、土の中に溜まった古いガスや老廃物を水圧で押し出し、新鮮な酸素をたっぷりと含んだ新しい空気を土壌内に引き込む(換気する)という重要な役割があります。「コップ1杯の水を毎日あげる」というような「ちょこちょこ水やり」は、土の下の方まで水が届かず、かつ常に湿った層ができてしまうため、百害あって一利なしです。
【寿命を縮めるNG行為】注ぎ方のマナー
じょうろで水をあげる際、上からシャワーのようにバシャバシャとかけてはいけません!花弁に水がかかるとシミになりますし、何より株の中心(クラウン)に水が溜まると、そこから腐敗が始まります。必ず、葉をそっと手で持ち上げて「鉢の縁(ふち)」から、土の表面に直接優しく注ぐようにしてください。このひと手間を惜しまないことが、寿命を大きく左右します。
植え替えの時期と土の配合

購入したままの鉢(特にプラスチックの柔らかいポット)で1年以上育てていると、鉢の中は根っこでギュウギュウ詰め(根詰まり)の状態になります。根詰まりを起こすと、水を与えても土に染み込んでいかず、酸素不足で根が傷み、株の老化が加速します。人間が成長して靴が小さくなったら買い替えるように、ガーベラも定期的な「鉢のサイズアップ」が必要です。
植え替えの頻度は、基本的に年に1回が理想です。最適な時期は、寒さが和らぎ成長が活発になり始める春(3月中旬~5月)か、夏の猛暑が落ち着いた秋(9月中旬~10月)です。真夏や真冬は株へのストレスが大きすぎるため、緊急時以外は避けるのが無難です。
用土は、何よりも「水はけ(排水性)」と「通気性」が最優先されます。ホームセンターで売られている一般的な「草花用培養土」をそのまま使っても良いですが、より寿命を延ばしたいなら、ひと工夫加えましょう。市販の培養土に、赤玉土(小粒)や軽石、パーライトなどを全体の2割~3割ほど混ぜ込むのがプロの裏技です。これにより土の中に適度な隙間(孔隙)ができ、水がサーッと抜けて新鮮な空気が入ってくる、ガーベラが最も好む土壌環境になります。
そして、植え替え作業で最も重要な技術的ポイントが「浅植え(あさうえ)」の徹底です。新しい鉢に植え付ける際、元の土の高さよりも深く植えてはいけません。むしろ、株元のクラウンがしっかりと地上に出て、空気に触れるよう、あえて少し高めに植え付けるくらいで丁度良いのです。「クラウンは絶対に埋めない」。これを合言葉に作業を行ってください。これができているかどうかで、その後の生存率が決まると言っても過言ではありません。
花が終わったら行う茎の処理

咲き終わった花をそのままにしておくと、植物は子孫を残すために種(綿毛)を作ろうとして、莫大なエネルギーを消費してしまいます。また、枯れた花弁は湿気を呼び、カビや病気の温床になります。次々と新しい花を咲かせるためにも、見頃を過ぎた花は早めに処理する必要があります。
ここで非常に重要なのが「取り方」です。多くの草花はハサミで茎を切りますが、ガーベラに関しては「手で根元から引き抜く」のが正解であり、鉄則です。なぜなら、ガーベラの茎は中が空洞(ストロー状)になっているため、ハサミで途中で切ると、残った茎の切り口に雨水や水やりの水が溜まってしまうからです。その溜まった水が腐ると、組織を通じて腐敗菌が繁殖し、やがて株元のクラウンまで到達して株全体を枯らしてしまいます。
プロ直伝!正しい花がらの抜き方(ツイスト&プル)
- 対象となる花の茎の根元近くを、親指と人差し指でしっかりとつまみます。
- そのまま左右に軽くねじったり、揺すったりして、株との接合部の組織を少し緩めます。
- 勢いをつけて、真横ではなく斜め上方向に「スポッ」と引き抜きます。
上手く抜けると、茎の付け根の白い部分(袴のような部分)まできれいに取れて、非常に気持ちが良いものです。これが綺麗に取れると、腐敗のリスクがなくなります。
ただし、購入したばかりの株や、根張りがまだ弱い株の場合、無理に強く引っ張ると株ごとスポンと抜けてしまう事故が起きることがあります。その場合は、片手で株元の土をしっかりと押さえながら行うか、どうしても抜けない場合は清潔なハサミを使って、できるだけ根元ギリギリでカットしてください。カットした場合は、後日その茎が茶色く枯れてきたら、改めて引き抜くようにしましょう。
花が咲かない時の解決策
「葉っぱは青々として元気なのに、全然花芽が上がってこない…」。いわゆる「葉ばかり様」状態は、ガーベラ栽培で非常によくあるお悩みの一つです。「もう寿命なのかな?」と心配になるかもしれませんが、株が生きていれば寿命ではありません。花を咲かせるためのスイッチが入っていないだけの場合がほとんどです。
花が咲かない主な原因は、以下の2つに集約されます。
- 日光不足(光量不足):ガーベラは日光が大好きです。光合成によって作られた炭水化物(エネルギー)が花芽の元になります。日陰や室内の暗い場所で管理していると、植物は生きるために光を求め、葉を大きくしたり茎を伸ばしたりすることにエネルギーを使ってしまい、花を咲かせる余裕がなくなります。春と秋は、できるだけ直射日光の当たる戸外に出して、たっぷりと光合成をさせてあげましょう。
- 窒素(ちっそ)過多(C/N比のバランス):肥料の成分バランスも重要です。肥料の3要素のうち「窒素(N)」は葉や茎を育てる成分、「リン酸(P)」は花や実を育てる成分です。窒素分が多い観葉植物用の肥料などを与えすぎると、植物は「今は体を大きくする栄養成長の時期だ」と勘違いして、葉っぱばかりを巨大化させてしまいます。これを「栄養成長過多」と呼びます。
対策としては、まず日当たりの良い場所に移動させること。そして、肥料の種類を見直すことです。「花工場」や「ハイポネックス(開花用)」など、パッケージに「花つきを良くする」と書かれた、リン酸成分が高めに配合されている液体肥料に切り替えましょう。規定の倍率で薄めて10日~2週間に1回与えることで、植物体内の栄養バランスが整い、再び花芽を作り始めてくれるはずです。
葉っぱの間引きと株分け

ガーベラを長く健康に育てていると、葉の数がどんどん増えてきます。一見、葉が多いのは元気な証拠のように思えますが、葉が茂りすぎて株の中心(クラウン)が完全に隠れてしまうと、新たな問題が発生します。中心部に日が当たらなくなると、新しい花芽の分化(発生)が阻害されてしまうのです。また、株元の風通しが悪くなり、湿気がこもってうどんこ病やハダニなどの病害虫の絶好の隠れ家にもなります。
そこで必要な定期メンテナンスが「葉かき(葉の間引き)」です。株全体を上から見て、以下のような葉を優先的に根元から(花がら摘みと同じ要領で)引き抜きましょう。
- 地面に垂れ下がっている古い葉(光合成効率が悪く、病気のリスクが高い)
- 黄色く変色したり、傷んだりしている葉
- 中心部を覆い隠すように生えている大きな葉
目安としては、常に中心のクラウンに日光が当たり、風が通り抜ける状態をキープすることです。葉の数を適正に管理することで、クラウンに光刺激が入り、驚くほど花付きが良くなります。
さらに、数年育てて株自体が巨大化し、成長点がいくつもひしめき合っているような状態(過密状態)になったら、「株分け」のベストタイミングです。植え替えの適期(春か秋)に、株を鉢から抜き、古い土を落としてから、手やナイフを使って成長点がそれぞれ残るように2~3個に分割します。こうして株を更新(リフレッシュ)することで、それぞれの株にスペースと栄養が行き渡るようになり、若返った株は再び旺盛な生命力を取り戻します。株分けを繰り返すことで、お気に入りのガーベラを半永久的に増やし、楽しみ続けることができるのです。
※この記事で紹介した農薬や肥料の使用については、必ず製品のラベルや公式サイトの最新情報を確認し、自己責任でご使用ください。環境や品種によって適切な方法は異なる場合があります。
ガーベラの鉢植えの寿命まとめ
いかがでしたか?「ガーベラはすぐに枯れる」「難しい植物だ」というイメージが、少し変わったのではないでしょうか。ガーベラは決して「使い捨て」の植物ではありません。私たちが彼らの性質を正しく理解し、ちょっとした手を差し伸べるだけで、何年にもわたって季節ごとに美しい花を咲かせてくれる、頼もしいパートナーです。
最後に、ガーベラと長く付き合うためのポイントを振り返っておきましょう。これさえ守れば、あなたのガーベラ栽培はきっと成功します。
この記事の要点まとめ
- 花の寿命は2~3週間だが、株自体は数年以上生きる宿根草である
- 鉢植えが枯れる最大の原因は、水のやりすぎによる「根腐れ」である
- 成長点であるクラウンを土に埋める「深植え」は腐敗の大きな原因になる
- 耐寒性は高くないため、冬場は室内の日当たりの良い窓辺に取り込むのが基本
- うどんこ病は早期発見が鍵。重曹スプレーなどで初期に対処する
- 初心者には「ガルビネア」などの耐寒性が高く寿命が長いガーデンガーベラがおすすめ
- 水やりは「土の表面が完全に乾いてから」たっぷりと与えるメリハリが重要
- 水やりの際は、株の中心に水をかけず、必ず鉢の縁から優しく注ぐ
- 植え替えは春か秋に行い、水はけの良い用土を使用し、浅植えにする
- 花がらはハサミで切らず、根元から引き抜くことで茎の腐敗を防ぐ
- 花が咲かない時は日照不足か窒素過多を疑い、リン酸多めの肥料を与える
- 葉が茂りすぎたら「葉かき」を行い、株の中心にしっかり光を当てる
- 株が大きくなったら「株分け」をして更新し、若返りを図る
- 適切な管理を行えば、ガーベラは毎年花を咲かせ、あなたの暮らしを彩り続けてくれる
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