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こんにちは。My Garden 編集部です。
水栽培でヒヤシンスのきれいな花と香り、素敵でしたよね。あの甘い香りがお部屋に広がると、一足先に春が来たなあと、とても豊かな気持ちになります。でも、そんなヒヤシンス水栽培で花が終わったら、その使い終わった球根、皆さんはどうしていますか?
「このまま捨てるのは、なんだか勿体ないな…」「もしかして、これって2回目も咲くのかな?」「でも、水栽培だったし、もう無理なのかな…」と、疑問に思う方も多いかなと思います。私もガーデニングを始めた頃は、まったく同じことを考えていました。
結論から言うと、水栽培の球根は、花を咲かせるためにエネルギーをほぼすべて使い果たして、もうクタクタの状態です。そのまま同じように水につけておいても、残念ながら栄養不足で腐ってしまい、来年は絶対に咲きません。
でも、諦めないでください。適切なタイミングで、適切な場所、つまり「土」に植えることで、球根をしっかり休ませて、再び栄養を蓄えさせ、見事に復活させることができるんです。
この記事では、花が終わった直後にすべき緊急処理や、なぜ葉を切らない方がいいのかという大切な理由、そして来年も花を咲かせるための植え替えから掘り上げ、夏の間の大切な保存方法まで、一年を通した育て方の流れを、私の経験も踏まえながら詳しくご紹介しますね。少し手間はかかりますが、この「一年プロジェクト」を乗り越えて、翌年また花が咲いた時の喜びは格別ですよ。
- 花が終わった直後にすべき球根の緊急対応
- なぜ水栽培のままでは2回目が咲かないのか、その植物学的な理由
- 水栽培から土への植え替え実践ガイドと、その後の管理方法
- 来年も咲かせるための掘り上げ、消毒、保存までの年間スケジュール
ヒヤシンス水栽培、花が終わったら?まずやる事

水栽培で美しい花を咲かせ終えたヒヤシンスの球根は、例えるなら「フルマラソンを全力で完走したランナー」みたいに、蓄えていたエネルギー(栄養)をほぼ全て使い果たしています。とっても疲れているんですね。マラソンランナーなら、ゴール直後に水分と栄養補給が必要ですよね。ヒヤシンスも同じです。
この球根にもう一度チャンスをあげるか、それともここでお別れするかは、花が終わった直後の「今」の対応にかかっています。来年も咲かせたいと思うなら、まずは球根がこれ以上ムダなエネルギーを消耗しないように、「応急処置」をしてあげましょう。
咲き終わった花茎を切る処理方法
花がしおれてきたら、できるだけ早く、できれば花が完全に枯れて茶色くなる前に対応するのがおすすめです。なぜそんなに急ぐかというと、植物は花が終わると、子孫を残すために「種」を作ろうとするからです。これは植物の本能なんですね。
この「種作り(結実)」には、球根に残された本当に最後の、けなげなエネルギーまで使われてしまいます。私たちは種が欲しいわけではなく、球根本体に太ってほしいので、この種作りはすぐにストップさせないといけません。ただでさえ消耗している球根が、さらに栄養を搾り取られて弱ってしまうのを防ぐのが、この作業の一番の目的なんです。
処理の方法には、主に2つのやり方があるかなと思います。どちらも一長一短あるので、ご自身の状況に合わせて選んでみてください。
方法A(安全策):「花がら」だけを摘み取る

これは、しおれた花の部分(花がら)だけを、指でひとつひとつ優しく摘み取る方法です。花がついていた太い茎本体には触れず、花だけを取り除きます。少し地道な作業ですが、これが一番安全です。
この方法の最大のメリットは、球根本体や茎に「傷」をつけないこと。特に水栽培の環境は常に湿度が高く、雑菌が繁殖しやすい状態です。切り口という「傷口」から雑菌が入って球根が腐ってしまう(軟腐病など)リスクを最小限にできます。最も安全で、ガーデニング初心者の方にもおすすめできる、失敗が少ない方法かなと私は思います。
方法B(迅速策):「花茎」を根本から切る
こちらは、花が咲き終わった茎全体を、清潔なハサミで球根の付け根(根本)からバッサリとカットする方法です。作業は一度で済みますし、見た目もスッキリします。
ただし、これは大きな「切り口」を作ることになるので、やはりそこから雑菌が入るリスクがゼロではありません。もしこの方法を選ぶなら、カットしたその日のうちに、すぐに土に植え替えることを強くおすすめします。切り口が水に浸かる時間がなくなり、土の中で乾きやすくなるため、腐敗のリスクを少し下げられるからですね。使うハサミも、できればアルコールなどで消毒してから使うと、より安全です。
どちらを選ぶべき? 処理方法の比較
私個人の意見としては、腐敗のリスクが最も低い「方法A(花がら摘み)」を強くおすすめします。水栽培で体力を消耗しきった球根は、いわば「病人」のようなもの。とにかく安全第一で、リスクを避けて管理するのが、来年につなげる一番のコツかなと思います。
| 方法 | 具体的な作業 | メリット | デメリット(リスク) | 推奨される状況 |
|---|---|---|---|---|
| 方法A (安全策) | 萎れた花だけを指で摘む | 球根に傷がつかず、腐敗リスクがほぼゼロ | 少し手間がかかる。見た目は茎が残る。 | すべての場合(特に強く推奨) |
| 方法B (迅速策) | 清潔なハサミで茎の根元を切る | 作業が早く、見た目がスッキリする | 切り口から雑菌が入り、球根が腐るリスクがある | カット後、即日で土に植え替える場合のみ限定 |
重要な葉は切らない理由と光合成

花が終わった後のヒヤシンスの主役は、花ではなく、実は「葉」なんです。この青々とした葉こそが、来年の花を咲かせるためのエネルギーを新しく作り出し、球根に蓄えるための、この世で最も大切な「栄養工場」の役割を果たします。
ですから、「花が終わったから、もう用済み」といって、この葉を絶対に切ってはいけません。これが一番やってはいけないことです。
光合成の仕組みと球根の肥大
葉が太陽の光を浴びて「光合成」を行い、その栄養(主に糖分)を、茎を通って球根にせっせと送り返します。この栄養が球根の「鱗茎(りんけい)」と呼ばれるタマネギのような部分に蓄えられることで、使い果たして小さく、軽くなってしまった球根が、再び太ることができるんです。
もしこの大切な葉を切ってしまったら、球根は栄養を蓄える手段を完全に失い、もう二度と花を咲かせられなくなってしまいます。球根はただただ痩せ細り、やがては土の中で消えてしまいます。
植物の「光合成」とは?
すごく簡単に言うと、植物が葉っぱで「太陽の光」「空気中の二酸化炭素」「根から吸った水」を材料にして、自分の活動エネルギーとなる「糖分(栄養)」を作り出す、魔法のような仕組みのことです。この工場(葉)が元気で、一日でも長く活動するほど、球根にたくさんの栄養が蓄えられます。
水栽培だと、どうしても室内で日光が足りなくて、葉がだらしなく長く伸びる「徒長(とちょう)」を起こしている場合もあるかもしれません。見た目が悪いからと切りたくなる気持ちも分かりますが、それでも切らずに我慢です。その伸びすぎた葉にも、光合成を行う能力はしっかり残っています。土に植え替えた後、この葉が「もう栄養を全部送ったよ」と自分の役目を終えて、自然に黄色く枯れるまで、大切に残しておきましょう。
なぜ土に植える?2回目は咲くか
「水栽培の容器に、また水と液体肥料を入れておけば、栄養が補給されて2回目も咲くのでは?」と思うかもしれません。私もガーデニングを始めた頃、そう思っていました。理論上は、栄養があれば良さそうですよね。
でも、その答えはハッキリしていて「不可能」なんです。
水栽培の球根が「消耗」している理由
私たちがお店で買う水栽培用のヒヤシンス球根は、秋に収穫された後、春に咲くために必要な「寒さ」を経験させる冷蔵処理(春化処理)が施され、さらに「花を咲かせるためだけ」の栄養をパンパンに蓄えられた、いわば「開花準備OK!」のエリート状態です。
水栽培での開花は、その球根内部に蓄えられた「貯金」だけを一方的に切り崩して花を咲かせている状態なんですね。言わば、貯金だけで生活しているようなものです。花が終わった今、その貯金は完全に底をつき、空っぽになっています。
水と液肥だけではダメな理由
花が終わった栄養空っぽの球根を、たとえ液体肥料を入れた水の中に戻しても、球根が体力を回復するには不十分なんです。なぜなら…
- 根が呼吸できない: 土の中には適度な「空気」がありますが、水の中は空気が不足しがちで、根が呼吸困難になり、やがて腐ります。
- 栄養が偏る: 液体肥料は一時的な栄養にはなりますが、土のように栄養を保持し、安定して供給し続ける力はありません。
- 微量元素の不足: 植物が必要とするのは窒素・リン酸・カリだけではありません。鉄やマンガン、ホウ素といった「微量要素」も必要ですが、これらは土に含まれています。
- 支えがない: 新しい根が張るためのしっかりとした「支え」がありません。
「土」は球根が生活するレストラン
水栽培が「貯金だけで楽しむショー」だとしたら、土は「栄養(肥料)を補給し、生活し、再び貯金(蓄積)する」ための場所、まさにレストランです。
土は、水や肥料を保持するだけでなく、根が呼吸するための「空気」も蓄え、球根を支え、肥大に必要な「微量元素」も供給してくれます。この安定した環境こそが、消耗した球根が体力を回復し、再び太るために不可欠なんですね。
ですから、消耗した球根を復活させて来年も咲かせるためには、「土に植え替えて、光合成をサポートし、適切な肥料を与える」ことが唯一の、そして最善の方法になります。
水栽培から土への植え替え3ステップ

花がらを処理し、大切な葉を残した状態の球根を、いよいよ土に植え替えます。この作業は、花が終わったらできるだけ早く(数日以内に)行うのが理想的です。球根が水の中で体力を消耗し続け、腐り始めるのを、一刻も早く止めてあげたいからですね。
準備するもの
まずは必要な道具を揃えましょう。慌てなくて済むように、先に準備しておくとスムーズです。
- 鉢(プランター)または庭のスペース: 地植え(花壇)がベストですが、鉢植えでももちろん大丈夫です。鉢植えの場合は、球根が太るスペースと、根が伸びるスペースが必要なので、少し深めの5号鉢(直径15cm、深さ15cm以上)がおすすめです。
- 土: 市販の「草花用培養土」で十分です。必ず新しい土を使いましょう。古い土を再利用すると、病気や害虫の原因になることがあります。水はけが良いものが良いですね。培養土の選び方に迷ったら、水はけと保水性のバランスが良いものを選ぶと失敗が少ないですよ。
- 肥料: 「緩効性(かんこうせい)肥料」(マグァンプKなど、粒状でゆっくり効くタイプ)を準備します。これは土に混ぜ込む「元肥(もとごえ)」として使います。
- (あれば)鉢底石と鉢底ネット: 鉢植えの場合、水はけを良くするために必須です。
ステップ1:穴を掘り、肥料を混ぜる
まず、鉢植えなら鉢底ネットを敷き、鉢底石を底が見えなくなるくらい入れます。その上に培養土を鉢の半分ほど入れます。地植えなら、植える場所を軽く耕しておきます。
土に、準備した緩効性肥料を少量、パラパラと混ぜ込みます(これが元肥です)。このとき、肥料が球根や根に直接触れると「肥料焼け」を起こすことがあるので、根が当たる部分の真下は避け、土とよく混ぜるのがコツです。肥料の上に薄く土を一層かぶせる感じでもOKです。
植える穴の深さは、「球根がすっぽり隠れ、葉の付け根が土の表面と同じくらいになる深さ」が目安です。水栽培で根がヒゲのように長く伸びていると思うので、その根が折れずに収まる十分な深さを確保してくださいね。
ステップ2:球根をそっと置く
水栽培で伸びた根は、水を含んでいて、本当に繊細で切れやすいです。濡れたティッシュペーパーみたいに脆いんですね。この根が切れると、新しい根が土から出るまで、球根は水分や養分を吸えなくなってしまい、スタートダッシュが遅れてしまいます。
根を傷つけないよう、土に掘った穴にそーっと置きます。根が長すぎる場合は、無理に押し込まず、穴の中で自然にトグロを巻くように、優しく広げてあげましょう。もし多少切れてしまっても、土に植えればまた新しい根が出てくるので、あまり神経質にならなくても大丈夫ですよ。優しく扱うことが一番です。
ステップ3:土をかぶせ、肥料と水を与える
球根の周りから、隙間を埋めるように優しく土をかぶせます。葉の付け根(球根の頭)が隠れないように注意してください。土をかぶせたら、根と土が密着するように、手のひらで軽く押さえて土を落ち着かせます。
ここで、球根が体力を回復するための「お礼肥(おれいごえ)」を与えます。「お礼肥」とは、花を咲かせてくれてありがとう、そして、これから体力を回復してね、という願いを込めた肥料です。球根の周りの土の上(根元から少し離した場所)に、花用の固形肥料(緩効性のものでOK)をパラパラとまきます。
最後に、鉢植えの場合は鉢底から水が流れ出るまで、地植えの場合もたっぷりと水やりをして、土と根をしっかり密着させて植え替え完了です!
植え替えのタイミング
この植え替え作業は、花が終わったらできるだけ早く行うのがベストです。遅くとも、葉が青々としている間に行ってください。葉が黄色く枯れ始めてからでは、光合成で栄養を蓄える時間がほとんど残っておらず、植え替えても手遅れになってしまいます。
ヒヤシンス水栽培、花が終わったら来年も咲く?
土への植え替え、本当にお疲れ様でした!これでひとまず、球根が生き残るための応急処置は完了です。でも、実はここからが、来年の春に再び花を咲かせるための、ちょっと長い「球根育成プロジェクト」の本番スタートです。
植え替えた後、春から夏、秋、そして冬を越すまでの管理が、来年ちゃんと咲いてくれるかどうかを左右します。いわば、球根のリハビリ期間ですね。少し時間はかかりますが、球根が育っていく様子を観察するのも、また違ったガーデニングの楽しみですよ。
植え替え後の地植えと鉢植えの管理
植え替え直後は、もちろん花がない「葉だけ」の寂しい姿になります。一見すると地味ですが、思い出してください。この期間こそが、葉っぱ工場がフル稼働する、来年のための「栄養蓄積期間」です。この時期の管理が、球根の太り具合を決めます。
地植え vs 鉢植え:どちらが良い?
来年咲く確率を少しでも上げたいなら、一番のおすすめは「地植え(花壇)」です。理由は、土の量が圧倒的に多く、栄養や水分、地温が安定しているため、球根がのびのびと根を張り、太りやすいからなんですね。植えてしまえば、水やりも雨任せで良いくらいです。
もちろん、ベランダなどスペースが限られている場合は「鉢植え」でも可能です。ただし、鉢の中は土の量が限られる分、地植えに比べて乾燥しやすく、水切れや肥料切れを起こしやすくなります。特に夏場は水やりの頻度も上がります。そのため、地植えよりは少し難易度が上がるかな、という印象です。鉢植えを選ぶ場合は、できるだけ土が十分に入る深めの鉢を選び、この後の水やりと肥料の管理をより丁寧に行う必要があります。
水やり:メリハリが重要
球根が栄養を蓄えている間(葉が青々としている間)は、光合成のために水が必要です。水やりを続けましょう。
- 地植えの場合: 植え付け時にたっぷりと水を与えたら、その後は基本的に雨任せで大丈夫です。ただし、春先に晴天が何日も続いて土がカラカラに乾くようなら、水を与えます。
- 鉢植えの場合: これが一番のポイントです。「土の表面が乾いたタイミングで、鉢底から水が流れるまでたっぷり」が基本中の基本です。土の表面を指で触ってみて、乾いていたらあげる、という感じです。この時期の水切れは、球根が太るのを妨げるため厳禁です。一方で、土が常にジメジメと湿っていると「水のやりすぎ」となり、根が呼吸できず腐る原因にもなります。しっかり乾いてから、たっぷり与える「メリハリ」がとても大事ですね。
肥料(追肥):葉が元気なうちに
植え付け時に与えた固形肥料(お礼肥)に加えて、葉が青々としている間(おおむね4月〜5月頃)、さらに栄養を補給すると、より効果的に球根を太らせることができます。
おすすめは、市販の「液体肥料」です。液体肥料は水に薄めて使うため即効性があり、葉が活動している間に素早く栄養を吸収させることができます。いわば「栄養ドリンク」のようなものですね。規定の倍率(少し薄めでもOK)に薄め、週に1回〜10日に1回程度、水やり代わりに与えると良いかなと思います。この時期は、球根を太らせる「リン酸(P)」や「カリ(K)」が多めのものが理想的です。
成功のサイン:葉が黄色くなる時
そして6月頃、春からずっと青々としていた葉が、自然に黄色く変色し、やがて枯れ始めます。「あれ、枯れちゃった!失敗?」と不安になるかもしれませんが、これは失敗ではありません。むしろ、「球根への栄養転送がすべて完了し、球根が休眠に入りますよ」という成功のサインです!
葉の中の栄養分が、球根に向かって「お引越し(転流)」している証拠です。ですから、葉が黄色くなり始めても、焦って切ってはいけません。完全に黄色く、カサカサになるまで、焦らず見守りましょう。
葉が枯れたら球根の掘り上げ作業
葉が完全に黄色く枯れたら、水やりをストップします。土の中で球根は「休眠期」に入りました。ここから、球根を秋までどう管理するか、2つの選択肢があります。「植えっぱなし」にするか、「掘り上げる」かです。
どちらが良いかというと、ヒヤシンスの場合、そして日本の気候を考えると、私は断然「掘り上げる」ことをおすすめします。
チューリップなどもそうですが、ヒヤシンスの球根は、日本のジメジメした高温多湿の夏が非常に苦手なんです。手間はかかりますが、このひと手間で、秋に無事な球根と再会できる確率が格段に上がります。
この作業は、葉が完全に枯れて、梅雨が本格化する前(6月中旬〜下旬頃)の、晴れた日が続くタイミングで行うのがベストです。
掘り上げた球根の消毒と保存方法

掘り上げから保存までは、球根を病気や腐敗から守るために、いくつか大事なステップがあります。この作業は、来年の開花を左右する、このプロジェクトのハイライトの一つですよ。
1. 掘り上げと清掃
葉が完全に黄色くなったのを確認したら、球根の周りの土を傷つけないように、スコップなどで少し離れた場所から、広範囲を深く掘り起こすようにして掘り上げます。球根にスコップを突き刺さないように注意してくださいね。
掘り上げたら、土を優しく落とします。この時点では水洗いはまだしません。枯れた葉や古い皮、乾燥してカラカラになった古い根っこを手で取り除きます。この時、球根の周りに小さな「子球(こきゅう)」ができていたら、手で優しくポロッと取れるものだけ分けます。無理に引き剥がすのはNGです。(この子球は、来年花が咲くほどの体力はない「赤ちゃん」ですが、植えておけば数年後に花を咲かせるかもしれませんよ。)
2. 洗浄と消毒(重要)
大まかな土やゴミを取り除いたら、球根をざっと水洗いして、土汚れを落とします。その後、病気(特にカビ系の病気)予防のために、殺菌剤に浸して消毒します。これは、土の中にいた目に見えない病原菌をリセットするために、とても重要な作業です。
園芸用の殺菌剤(「ベンレート水和剤」や「オーソサイド水和剤80」などが一般的です)を、製品の規定の倍率に薄めた液に、球根を30分ほど浸します。
3. 乾燥
消毒液から引き上げたら、水で洗い流さず、そのまま風通しの良い「日陰」で、1週間ほど球根をしっかりと乾燥させます。絶対に直射日光に当ててはいけません。球根が日焼けして(煮えて)傷んでしまい、腐敗の原因になります。軒下やカーポートの下などが良いですね。表面が完全に乾けばOKです。
4. 保存

完全に乾燥したら、いよいよ秋までの夏越し保存です。玉ねぎなどを入れるネットや、通気性の良い紙袋(封をしない)に入れます。プラスチックの袋など、通気性が悪いものは厳禁です。球根が呼吸できず、蒸れて腐ってしまいます。
それを、秋の植え付け時期(10月〜11月)まで、風通しの良い涼しい場所(冷暗所)に吊るして保存します。玄関の土間や、エアコンが効いていない北側の部屋、物置などが良いですね。湿気がこもる押入れや、高温になる西日が当たる場所は避けてください。時々様子を見て、カビが生えたり、ブヨブヨと柔らかくなったりしていないかチェックすると完璧です。
消毒作業と農薬の安全使用に関するご注意
園芸用の殺菌剤(農薬)を使用する際は、製品に記載されている使用方法、希釈倍率、注意事項を必ず確認し、厳守してください。特に小さなお子様やペットがいるご家庭では、取り扱いや保管場所に十分注意が必要です。作業時は、肌が弱い方はゴム手袋などを着用すると安心ですね。
農薬の安全な使用については、公的なガイドラインも参考にすると良いでしょう。
(参考:農林水産省『農薬の適正な使用』)
最終的な使用の判断は、ご自身の責任においてお願いいたします。
球根を植えっぱなしにするリスク
先ほど「掘り上げ推奨」とお伝えしましたが、改めて「植えっぱなし」にした場合のリスクを詳しく整理しておきますね。なぜ私がこんなに掘り上げをおすすめするかが、お分かりいただけるかなと思います。特に水栽培で弱った球根にとっては、このリスクは致命的になりかねません。
リスク1:高温多湿による腐敗
これが最大のリスクです。日本の梅雨から夏にかけての気候は、土の中が蒸れやすく、球根(特にヒヤシンスやチューリップなど、乾燥した夏を好む球根)にとっては大敵です。土の中で球根が「煮える」ような状態になり、細菌やカビが繁殖して、ブヨブヨに腐ってしまう(病気になる)可能性が非常に高いです。秋になって掘ってみたら、球根が溶けてなくなっていた…ということも少なくありません。
リスク2:病害虫の発生
土の中にずっといると、球根に寄生する「ネダニ(球根ダニ)」や、カビが原因の病気(フザリウムなど)の温床になりやすいです。これらの病害虫は、球根が休眠している間に、ゆっくりと球根の養分を吸ったり、腐らせたりします。掘り上げて消毒・乾燥させることで、これらのリスクを物理的にリセットできるんです。
リスク3:球根の衰弱と分球
もし運良く腐敗や病害虫を免れたとしても、植えっぱなしにすると、球根が分球(ぶんきゅう)して、小さな子球がたくさんできてしまうことがあります。これは一見増えているようですが、実際は栄養が分散してしまい、翌年はどの球根も花を咲かせるほどの体力がなくなり、葉だけしか出てこない…ということになりがちです。掘り上げることで、球根の状態を管理しやすくなりますね。
植え替え後に咲かない最大の理由

さて、乾燥と保存の夏を無事に乗り越えた球根は、秋(10月〜11月が目安)になったら、再び土に植え付けます。(植え付け方法は、春に行った「水栽培から土への植え替え3ステップ」と基本的に同じです。元肥を忘れずに!)
しかし、ここで、水栽培の経験が「最大の罠」になることがあります。それは、「寒さから守ろうと、大事に室内に取り込んでしまう」ことです。
「ヒヤシンス=水栽培=室内で育てる植物」というイメージが、私たちには強くありますよね。でも、それは大きな誤解なんです。
春化(バーナリゼーション)という「冬の記憶」
ヒヤシンスの花芽(かが:花の芽)が育ち、春に開花するためには、冬の一定期間の「寒さ(低温)」に遭遇することが絶対に必要なんです。具体的には、5℃以下の低温に数週間以上さらされる必要があります。
この寒さを経験することで、球根の中の「花を咲かせるスイッチ」が入る仕組み(春化・バーナリゼーションと呼ばれます)になっています。この「冬の記憶」があるからこそ、春になって暖かくなった時に、「よし、冬が終わった!花を咲かせるぞ!」と活動を再開できるんですね。
なぜ水栽培は室内でも咲いたの?
では、なぜ私たちが冬に買った水栽培用の球根は、暖かい室内でも咲いたのでしょうか?
それは、私たちが購入する水栽培用の球根は、生産者さんによって、すでに「冬の寒さ」を経験させるための冷蔵処理(低温処理)が、人工的に施されているからです。つまり、球根はすでに「冬を経験済み」だと勘違いさせられているんですね。だから、暖かい室内でも「春が来た!」と思って花を咲かせてくれるんです。
しかし、一度咲き終わったあなたの球根は、その「記憶」はリセットされています。ですから、来年咲かせるには、この「冬の寒さ」を、もう一度自然の環境で、ちゃんと経験させてあげる必要があるんです。
秋に植えた鉢植えを、「可哀想だから」と寒さから守ろうと大事に玄関やリビングに取り込んでしまうと、球根はいつまでたっても冬が来たことを認識できません。その結果、葉は出てくるかもしれませんが、肝心の花芽は育たず、春になっても花を咲かせることができない、というわけです。
水栽培で体力を回復させた球根を来年咲かせるための最後の鍵は、「必ず屋外に置き、冬の厳しい寒さにしっかりと当てること」。これ、本当に大事なポイントなので、覚えておいてくださいね。雪が積もっても大丈夫なくらい丈夫ですよ。
ヒヤシンス水栽培、花が終わった後の育て方
ヒヤシンス水栽培で花が終わった後、来年も咲かせるための作業は、見てきたように、一年がかりのプロジェクトです。ちょっと大変そうに聞こえるかもしれませんが、こうして流れで見ると、やるべきことはシンプルですよね。
最後に、その流れを時系列のカレンダーとしてまとめてみますね。この「年間ロードマップ」を参考に、来年の開花を目指してみましょう!
花が終わった後の一年カレンダー(まとめ)
この流れを参考に、来年の開花を目指してみましょう!
| 時期 | 主な作業 | 重要なポイント |
|---|---|---|
| 冬〜春(今)
(花が咲き終わる) |
①花がら摘み
②土への植え替え |
・葉は絶対に切らない!
・種に栄養を行かせないよう、すぐに花がらを摘む。 ・できるだけ早く土に植え替える(元肥・お礼肥を忘れずに)。 |
| 春〜初夏
(4月〜6月) |
栄養蓄積(葉だけの管理) | ・屋外の日なたで管理。
・土が乾いたらたっぷり水やり(特に鉢植え)。 ・液体肥料などで追肥し、球根を太らせる。(葉が枯れるまで) |
| 夏
(6月〜8月) |
①掘り上げ
②消毒・乾燥 ③保存 |
・葉が完全に黄色く枯れたら掘り上げる(梅雨入り前)。
・殺菌剤(ベンレート等)で消毒し、日陰でしっかり乾燥。 ・玉ねぎネット等に入れ、風通しの良い冷暗所で夏越し。 |
| 秋
(10月〜11月) |
再植え付け | ・保存していた球根を、屋外の花壇や鉢に植え付ける。
・この時も元肥(緩効性肥料)を入れる。 |
| 冬
(12月〜2月) |
低温遭遇(寒さにあてる) | ・【最重要】植えた鉢は「屋外」に置く。
・室内に取り込まない。冬の厳しい寒さにしっかり当てる。 |
| 翌年の春
(3月〜4月) |
再び開花! | ・土から力強く芽が出て、再び美しい花を咲かせます。 |
一度きれいな花を楽しませてくれた球根です。こうして適切な処置を施して土に還し、植物の本来のサイクルを助けてあげるのも、ガーデニングの大きな楽しみの一つかなと私は思います。
手間はかかりますが、水栽培で消耗しきったあの小さな球根が、自分の手で世話をしたことで翌年再び花を咲かせた時の喜びは、本当に格別ですよ。その花は、お店で買ってきたどの花よりも愛おしく感じるはずです。ぜひ、この一年プロジェクトに挑戦してみてくださいね。

