こんにちは、My Garden 編集部です。
ベランダや庭を明るく彩ってくれるゼラニウムですが、ある日ふと見ると葉が黄色くなっていたり、全体的に元気がなくなっていたりすることはありませんか。昨日までは青々としていたはずなのに、気づけば下の方の葉が変色していたり、新芽が白っぽくなっていたりすると、大切に育てているからこそ「病気になってしまったのではないか」「枯れてしまうのではないか」と不安になってしまいますよね。特に、独特のV字模様の変色や、葉がポロポロと落ちる症状が出ると、どう対処すればよいか迷ってしまうものです。
実は、ゼラニウムの葉が黄色くなる現象は、植物が発している「SOSサイン」であり、その原因は一つではありません。夏の暑さや冬の寒さといった季節的な要因から、水やりの過不足、肥料バランスの乱れ、そして時には深刻な病気まで、様々な理由が隠されています。しかし、安心してください。植物が出しているサインを正しく読み解き、原因を特定することができれば、適切なケアをして復活させてあげることが可能です。
今回は、ゼラニウムの葉色が変わってしまう原因を「葉の場所」や「症状のパターン」から見極める方法と、元気を取り戻すための具体的なリカバリー策について、私の経験も交えながら詳しくお話しします。
この記事のポイント
- 黄色くなる場所やパターンから原因を特定する方法
- 根腐れや水切れなど水やりに関するトラブルの対処
- 季節ごとのストレスや病気への適切なケア
- 長く花を楽しむための日々の管理と予防策
ゼラニウムの葉が黄色くなる原因と見分け方

ゼラニウムの葉が黄色くなる現象は、植物からのメッセージですが、その「方言」はとても複雑です。水やりの頻度や土の状態、季節による気温の変化、あるいは肥料のバランスなど、様々な要因が考えられます。まずは、葉のどの部分が(下葉なのか新芽なのか)、どのように(全体的になのか部分的になのか)変色しているかを観察することで、その原因を突き止めていきましょう。原因を特定することが、復活への最短ルートです。
下の葉が黄色くなるのは根腐れか

株の下の方にある古い葉から順番に黄色くなって落ちていく場合、もっとも疑わしい原因は「根腐れ」か「水切れ」のどちらかです。これらは「水を与えすぎた」場合と「水が足りない」場合という、正反対の管理不足に見えますが、植物にとってはどちらも「根から水分をうまく吸い上げられない状態」であるため、地上部には非常によく似た症状が現れます。
しかし、私の経験上、日本の家庭園芸におけるゼラニウムのトラブルの8割以上は、過湿による根腐れが原因です。ゼラニウムの原産地は南アフリカのケープ地方で、乾燥した岩場のような環境に自生しています。そのため、乾燥には驚くほど強い耐性を持っていますが、日本の梅雨や秋雨のようなジメジメした環境や、毎日の良かれと思った頻繁な水やりには非常に弱いのです。
土が常に湿った状態が続くと、土の中の粒子と粒子の間にある隙間(気相)が水で埋まり、酸素がなくなってしまいます。根も私たちと同じように酸素を吸って呼吸(好気呼吸)をしているため、酸素不足になると窒息し、細胞が死滅して腐ってしまいます。さらに、酸素が少ない環境を好む嫌気性細菌が繁殖し、根を攻撃し始めます。
根が腐ると、当然ながら水分や養分を吸い上げることができなくなります。すると植物体はパニック状態になります。「根から水が入ってこない!このままでは枯れてしまう!」と判断したゼラニウムは、生き残るための苦渋の決断をします。それは、「エネルギー消費の多い古い葉(下葉)を切り捨てて、生命維持に不可欠な成長点(新芽)に水分を集中させる」という戦略です。植物ホルモンの一種であるエチレンなどが働き、下葉の葉緑素(クロロフィル)を分解して、そこに含まれる窒素やマグネシウムなどの栄養を体内に回収し、葉を黄色くして自ら切り離すのです。これが、根腐れによって下葉が黄色くなる生理的なメカニズムです。
根腐れのサインと自己診断チェック
葉が黄色くなるだけでなく、以下のような症状がないかチェックしてください。一つでも当てはまれば、根腐れが進行している可能性が高いです。
- 茎の状態:茎の根元を触るとブヨブヨと柔らかくなっている、あるいは黒ずんでいる。
- 臭い:土の表面からカビっぽい嫌な臭いや、ドブのような腐敗臭がする。
- 土の乾き:水をあげてから数日経っても土が湿ったままで、乾く気配がない。
- 落葉の仕方:葉が黄色くなると同時に、茶色や黒っぽく変色して、触ると簡単にポロリと落ちる。
これらに当てはまる場合は、根腐れの可能性が非常に高いです。逆に、土が中までカラカラに乾いていて葉が萎れているだけであれば、単純な水切れですので、水をたっぷり与えれば数時間でシャキッと回復します。
夏に葉が黄色くなる高温障害とは

日本の夏、特に30℃を超えるような真夏の高温期には、人間と同じようにゼラニウムも激しい夏バテを起こします。この時期に、特定の病気ではないのに葉の色が全体的に薄くなったり、黄色っぽく退色したりするのは、「高温障害」である可能性が非常に高いです。
ゼラニウムの生育適温は15℃〜25℃程度であり、冷涼な気候を好みます。気温が30℃を超えると生育が鈍り、35℃近くになると生存限界に近づきます。さらに、近年の日本のような「夜間の温度も25℃を下回らない熱帯夜」が続くと、植物は深刻なダメージを受けます。植物は昼間に光合成でエネルギーを作りますが、夜間は呼吸をしてエネルギーを消費します。夜の気温が高いと呼吸量が過剰になり、昼間に作ったエネルギーを夜の間に使い果たしてしまい、体が消耗してしまうのです。
このような高温ストレス下では、光合成をするための酵素(ルビスコなど)の働きが悪くなる一方で、光呼吸(酸素を消費して二酸化炭素を出す反応)が増大し、効率よく栄養を作れなくなります。その結果、葉の緑色の色素であるクロロフィルを維持・合成することが難しくなり、葉色が薄くなってしまうのです。特に、直射日光が当たる葉は葉面温度が気温以上に上昇するため、葉緑素が分解されやすくなります(光阻害)。
「サマー・ホワイト」現象に注意
夏場に、新芽や若い葉がまるで斑入り品種のように真っ白やクリーム色になることがあります。これは「サマー・ホワイト」や「高温性白化現象」と呼ばれる生理現象の一種です。突然変異や病気ではないかと驚かれる方が多いですが、これは高温によって葉緑素の合成が一時的に阻害されているだけの一過性のものです。秋になり涼しい風が吹くようになれば、自然と緑色に戻るか、あるいは次に展開する葉から緑色に戻りますので、過度な心配はいりません。
この時期に一番やってはいけないことは、親心で「元気がないから栄養をつけてあげよう」と肥料を与えることです。これは致命的なミスです。人間で言えば、高熱を出して胃腸が弱っている時に、脂っこいステーキを無理やり食べさせるようなものです。弱っている根に肥料を与えると、肥料の塩分濃度による浸透圧ストレスでさらに根から水分が奪われ(肥料焼け)、トドメを刺してしまうことになりかねません。夏場の黄化や白化に対しては、「肥料は厳禁、とにかく涼しくさせること」が唯一にして最大の治療法です。
新芽の葉が白いのは鉄欠乏が原因

株の先端にある新芽や展開したばかりの新しい葉が、鮮やかな黄色や白っぽいレモン色になっていて、葉脈(葉の筋)だけがくっきりと緑色に残っている場合、それは「鉄欠乏(クロロシス)」の疑いがあります。全体が黄色くなる窒素不足とは異なり、葉脈が緑色に残る(インターベイナル・クロロシス)のが大きな特徴です。
鉄は、植物が光合成を行う葉緑素(クロロフィル)を作るために必要不可欠な微量要素です。しかし、鉄は植物の体内での移動性が非常に悪いという特徴があります。窒素やマグネシウムなどは、不足すると古い葉から新しい葉へと移動(転流)できますが、鉄は一度葉に固定されると動けません。そのため、鉄の供給が途絶えると、これから育とうとしている新芽の部分で真っ先に材料不足が起き、葉緑素が作れずに白や黄色になってしまうのです。
「鉄分不足なら、鉄の釘やサプリメントをあげればいいの?」と思うかもしれませんが、問題はもっと複雑です。実は、日本の土壌には鉄分自体は十分に含まれていることが多いのです。ではなぜ欠乏するのか。その原因の多くは「土壌pH(酸度)の上昇(アルカリ化)」にあります。
ゼラニウムは弱酸性の土(pH 6.0〜6.5)を好みますが、日本の園芸では「酸性土壌を中和するために苦土石灰を撒く」という習慣が根強くあります。これをゼラニウムに過剰に行ったり、適当な量で撒きすぎて土がアルカリ性(pH 7.0以上)に傾くと、土の中の鉄分が化学反応を起こして「水に溶けない形(不溶化)」に変化してしまいます。根は水に溶けた成分しか吸収できないため、目の前に鉄があるのに吸えない「消化不良」の状態に陥るのです。これを「石灰誘発性クロロシス」と呼びます。
こんな場所での栽培は要注意
- コンクリートブロックの塀際の花壇:コンクリートからは常にアルカリ成分(カルシウム)が溶け出しているため、その近くの土壌はアルカリ化しやすくなっています。
- 新しいコンクリート製のプランター:あく抜きをしていない新品のプランターも同様です。
- 輸入培養土や安価な土:pH調整が適切でない場合があります。
このような環境で新芽が白くなった場合は、肥料不足ではなく土のpH異常を疑い、酸度未調整のピートモスを混ぜるなどの対策が必要です。
V字に葉が黄色くなる病気は危険

もし、葉の縁から内側に向かって、くさび形(V字型)に黄色や茶色に変色している葉を見つけたら、最大限の警戒が必要です。これは生理障害ではなく、「ゼラニウム細菌病(キサントモナス)」あるいは「褐斑細菌病」という、非常に厄介な伝染病の典型的な症状だからです。
この病気は、Xanthomonas campestris pv. pelargonii という細菌によって引き起こされます。この菌は、葉の気孔や剪定時の傷口、あるいは根の傷から侵入し、植物の水分や養分の通り道である「維管束(導管)」の中で爆発的に増殖します。導管が菌で詰まると、水分が上まで上がらなくなり、まるで水切れしたかのように株全体が急速に萎れ(ウィルティング)、やがて茎が黒く変色して腐り、枯死してしまいます。これを「ブラックレッグ(黒脚)」症状とも呼びます。
この病気の最も恐ろしい点は、その驚異的な感染力です。病気にかかった株を剪定したハサミを消毒せずに他の健康な株に使うと、ほぼ100%の確率で感染します。また、水やりの際の水跳ねによっても土壌中の菌が隣の株へ移動します。さらに、一度発症した土壌中には菌が長期間残存するため、同じ土を使って新しいゼラニウムを植えると、その株もまた感染してしまうのです。
見つけたら即処分を:治療法はありません
非常に残念なお知らせですが、一度発症して維管束の中に入り込んだ細菌を完全に退治できる薬剤は、プロの農家が使う特殊なものを除き、一般家庭用には存在しません。抗生物質なども植物には使用できません。
V字型の黄化症状が出た株を発見した場合、かわいそうですが速やかに抜き取り、ビニール袋に入れて密閉し、燃えるゴミとして処分してください。「まだ元気な部分があるから」と躊躇して残しておくと、大切なコレクション全体に病気が蔓延し、全滅するリスクがあります。「一株の犠牲で全体を守る」という厳しい判断が求められます。
また、病害の発生を予防するために、公的機関の情報を参照し、健全な苗の購入や、ハサミや手指の徹底的な消毒などの衛生管理を徹底することが推奨されています。
葉が黄色くなる病気や害虫の種類

細菌病以外にも、葉が黄色くなる原因となる病害虫はいくつか存在します。葉の表面や裏面をよく観察して、何が起きているのかを見極めましょう。細菌病とは異なり、早期発見ができれば市販の薬剤で対処できるものも多いです。
ウイルス病(モザイク病)
アブラムシやアザミウマなどが媒介するウイルスによって引き起こされます。葉に濃い緑と薄い緑の濃淡によるモザイク模様(まだら模様)が生じたり、葉脈が透けたり、葉が縮れて奇形化したりします。株全体が矮化(成長が止まる)することも多いです。これも細菌病と同様に治療法がないため、見つけ次第処分する必要があります。ウイルスの運び屋であるアブラムシを徹底的に駆除することが最大の予防策です。
真菌(カビ)性の病気
カビ(糸状菌)が原因で起こる病気も黄化を招きます。代表的なのは「葉枯病(リーフスポット)」と「灰色かび病(ボトリチス)」です。
葉枯病は、葉に褐色の丸い斑点や不整形の斑点ができ、その周囲が黄色く変色(ハロー現象)するのが特徴です。湿度の高い時期に発生しやすく、放置すると斑点が広がって葉全体が枯れ込みます。
灰色かび病は、低温多湿な環境を好み、枯れた花弁や葉に灰色のフワフワしたカビが生えます。これが健康な葉に触れると感染し、その部分が腐って黄色くなります。これらは「ダコニール1000」や「ベンレート」「GFベンレート水和剤」などの殺菌剤が有効ですので、症状が軽いうちに対処しましょう。
害虫による吸汁被害
特に注意したいのが「ハダニ」です。高温乾燥する時期に発生しやすく、葉の裏に寄生して植物の細胞内の汁を吸います。吸われた跡は葉緑素が抜けて白や黄色の小さな点になり、被害が広がると葉全体がカスリ状に白っぽく色が抜け、最終的に黄色くなって枯れ落ちます。
葉の裏を見て、赤い小さな虫がチョロチョロと動いていたり、クモの巣のような極細の糸が張っていたりしたらハダニ確定です。ハダニは水に弱いため、こまめに葉の裏に水をかける「葉水(シリンジ)」を行うことで予防できますが、大量発生した場合は「ベニカXファインスプレー」などの殺ダニ効果のある薬剤で駆除します。
| 症状 | 疑われる病害虫 | 特徴と対策 |
|---|---|---|
| 葉にモザイク状の濃淡・縮れ | ウイルス病 | 対策なし(廃棄)。アブラムシを防除する。 |
| V字型の黄変・茎の黒変 | 細菌病(キサントモナス) | 対策なし(廃棄)。ハサミの消毒を徹底。 |
| 褐色の斑点と周囲の黄化 | 葉枯病など(カビ) | 殺菌剤散布。落ち葉を掃除し風通しを良くする。 |
| 全体に白いカスリ状の点々 | ハダニ | 葉裏への葉水。殺ダニ剤の使用。乾燥を防ぐ。 |
肥料切れで葉の色が薄くなる場合

ここまで深刻な病気や環境ストレスについて解説してきましたが、実はもっと単純な原因、すなわち「お腹が空いている状態(肥料切れ)」でも葉は黄色くなります。特に、購入してから一度も植え替えをしていない鉢植えや、春と秋の開花期間中に追肥を忘れている場合によく見られます。
植物の体を作るタンパク質や、光合成を行う葉緑素の主成分は「窒素(N)」です。土の中の窒素分が枯渇すると、植物は新しい葉を作るための材料が足りなくなります。しかし、植物は賢いので、成長を止めないために体内のリサイクルシステムを作動させます。それは、古い葉に含まれている窒素を分解・回収し、それをこれから育つ新しい葉や花芽へと送る(転流)というシステムです。
その結果、株全体の色がなんとなく薄緑色になり、特に下の方の葉から順番に、全体が均一に黄色くなってポロリと落ちていくのです。根腐れの時のように葉が黒ずんだり、変な斑点が出たりすることはありません。
病気のような斑点や変な模様がなく、全体的に「色が薄ぼけてきたな」「最近花が咲かないな」「葉が小さくなってきたな」と感じたら、まずは肥料不足を疑ってみてください。
この場合は、即効性のある液体肥料(ハイポネックス原液など)を規定の倍率で薄めて与えれば、早ければ1週間〜10日程度で葉色が濃くなり、目に見えて回復します。また、緩効性の固形肥料(プロミックやIB化成など)を置肥するのも有効です。
ただし、前述の通り、夏場の高温期や冬の低温期など、植物が休眠している時期に肥料を与えると「肥料焼け」を起こして逆効果になるので、春(3月〜6月)や秋(9月〜11月)の成長期に行うことが鉄則です。
ゼラニウムの葉が黄色くなるときの対策と復活
原因がある程度特定できたら、次はその対策です。早めに対処することで、弱ってしまったゼラニウムを復活させることができます。ここでは、具体的なケアの方法や、季節ごとの管理ポイントについて、より実践的なテクニックを交えて解説します。
葉が黄色くなる株を復活させる技

もし診断の結果、原因が「根腐れ」だと判断した場合、ただ水やりを控えて様子を見ているだけでは、そのまま枯れてしまう確率が非常に高いです。なぜなら、一度腐って壊死した根の細胞は二度と元に戻らず、そこから腐敗菌が健康な部分へと侵攻していくからです。腐ったミカンを箱の中に放置しておくと他のミカンも腐るのと同じ原理です。
ここでは、思い切った「外科手術」のような植え替え手順をご紹介します。この作業は植物にとって負担が大きいですが、死にかけた株を救う唯一の方法です。
根腐れからの復活!緊急オペの手順
- 鉢から抜く
まず、株を鉢から優しく抜き取ります。根腐れしている場合、土が湿っていて重く、根が崩れやすいので慎重に行ってください。 - 根の検診と切除
根の状態をチェックします。黒褐色に変色している根、ブヨブヨしている根、軽く引っ張ると外側の皮が剥けて芯だけが残るような根はすべて腐っています。これらを清潔なハサミで迷わず切り落としてください。白い、あるいはクリーム色の健康な断面が見える健全な根だけを残します。場合によっては根がほとんど残らないこともありますが、腐った部分を残すよりマシです。心を鬼にしてカットしましょう。 - 地上部の剪定(バランス調整)
根をたくさん切った場合は、水分を吸い上げる力が極端に弱くなっています。その状態で葉がたくさんあると、葉からの蒸散に給水が追いつかず、株が脱水症状を起こして萎れてしまいます。残った根の量に合わせて、枝や葉も半分〜1/3程度まで切り戻し(剪定)、植物の負担を減らしてあげましょう。大きな葉を半分にカットするのも有効です。 - 新しい土に植える
腐敗菌が繁殖している古い土はすべて廃棄します。新しい清潔な培養土を使いましょう。この時、パーライトや赤玉土小粒を2〜3割ほど多めに混ぜ込み、通常よりも水はけと通気性を強化した土にするのがコツです。 - 鉢のサイズダウン
根を整理して小さくなった根鉢に合わせて、鉢のサイズも一回り小さくします(例:5号鉢だったなら4号鉢へ)。大きな鉢に少量の根で植えると、土の量が多すぎて乾かず、再度の根腐れを招きます。 - 養生期間
植え替え後は直射日光の当たらない、風通しの良い明るい日陰で管理します。発根促進剤(メネデールなど)を与えると効果的ですが、固形肥料などは根が出るまで厳禁です。1ヶ月ほどして新芽が動き出したら、手術成功です。
夏の暑さで葉が変色する時の処置
夏場の高温障害で葉が白っぽくなったり黄色くなったりしている場合は、とにかく「涼しく過ごさせる」ことが最優先です。植物にとっての体感温度を少しでも下げてあげることが、回復への鍵となります。エアコンの効いた室内に入れるのも一つの手ですが、日照不足になりがちなので、基本は屋外での環境改善を目指しましょう。
まず、置き場所の徹底的な見直しです。ベランダのコンクリート床に鉢を直置きしていませんか?真夏のコンクリートは直射日光で50℃以上になり、その熱が鉢に伝わって「根がお湯に浸かっている」ような状態になります。これを防ぐために、フラワースタンドやレンガ、木製のスノコなどの上に鉢を置き、地面から離して風通しを良くしてください。「二重鉢(鉢カバーを一回り大きな素焼き鉢にする)」にして、鉢の間の空記層で断熱するのも非常に有効なテクニックです。
次に、遮光です。ゼラニウムは日光が好きですが、日本の真夏の西日は強すぎます。午後からは日陰になるような場所へ移動させるか、遮光ネット(遮光率30〜50%程度)やすだれを使って、直射日光を和らげてあげましょう。「明るい日陰」くらいの環境が、夏バテ中のゼラニウムには最適です。
そして繰り返しになりますが、夏の間は肥料をストップする(断肥)ことです。弱っている時に「元気を出して!」と肥料をあげるのは、逆に根を傷める「肥料焼け」の原因になります。固形肥料が残っている場合は取り除いても構いません。秋に涼しくなって、新しい緑色の葉が展開し始めるまでは、水やりだけの管理に徹しましょう。
水やりも、鉢内の温度が上がらないよう、早朝の涼しい時間か、日が落ちてからの夕方に行うのが鉄則です。日中に水をやると、鉢の中で水がお湯になり、根を煮てしまいます。
冬に葉が黄色くなる場合の管理法
冬になると、寒さで葉が赤くなったり、下の方の葉が黄色くなってポロポロ落ちたりすることがあります。初心者のうちは「寒さで枯れてしまったのかも!」と焦ってしまうかもしれませんが、これはゼラニウムが寒さに耐えるための生理的な反応(紅葉や落葉)であり、病気ではないことが多いので安心してください。
ゼラニウムは本来常緑性の植物ですが、気温が下がって5℃を下回るようになると成長が緩慢になり、光合成の効率が落ちます。すると植物は、「光合成ができなくなった古い葉(下葉)を維持するエネルギーを節約しよう」と判断し、大切な栄養分(窒素やマグネシウム)を体内に回収しようとします。その結果、役目を終えた下葉が黄色くなって脱落するのです。
また、寒さストレスから身を守るために「アントシアニン」という赤い色素を作り出すため、葉が美しく赤く紅葉することもあります。これは植物が自分でマフラーを巻いて防寒しているようなものです。
冬の葉色変化は「冬支度」
葉が赤や黄色になるのは、ゼラニウムが日本の冬を乗り越えるために身を守っている証拠です。春になり暖かくなれば、また緑色の新しい葉が出てきますので、過度な心配はいりません。
ただし、生理現象だからといって放置して良いわけではありません。冬の管理で最も重要なのは「防寒」と「清潔(サニテーション)」です。
まず、ゼラニウムは0℃近くまで耐えられますが、水分を多く含む多肉質の茎を持っているため、霜に当たると組織が凍結・破裂して一発で枯れてしまいます。冬場は室内の日当たりの良い窓辺や、寒風や霜の当たらない南向きの軒下などに取り込んで管理しましょう。
そして、黄色くなって枯れた下葉を見つけたら、こまめに取り除くことが非常に重要です。冬の窓辺やビニール温室の中は、夜間の結露などで意外と湿気がこもりがちです。枯れ葉を株元に放置していると、そこに湿気が溜まり、「灰色かび病(ボトリチス)」というカビが発生する温床になります。このカビは低温多湿を好み、枯れ葉から健康な葉や茎へと感染を広げ、最終的に株全体を腐らせてしまいます。
「黄色い葉は見つけ次第取る」、そして「花がらもこまめに摘む」。この徹底したお掃除こそが、冬越しの成功率を上げる最大の秘訣です。
また、冬場は植物の活動が鈍り、水を吸う力が弱まっています。この時期に夏と同じペースで水やりをすると、冷たい土の中で根が冷えて傷んでしまったり、いつまでも土が乾かずに根腐れを起こしたりします。冬の水やりは「土の表面が乾いてからさらに2〜3日待ってから」、暖かい日の午前中に少量与えるくらいの「乾燥気味管理」がベストです。
水やり等の管理で葉の黄化を防ぐ

ここまで様々な原因を見てきましたが、ゼラニウムの葉の黄化トラブルを未然に防ぐための最大のポイントは、やはり日々の「水やり」にあります。私の感覚では、ゼラニウム栽培の失敗の9割は「水のやりすぎ」による根腐れが原因です。
ゼラニウムは「乾燥気味」を好む植物です。しかし、これは「水を少ししかあげなくていい」という意味ではありません。「土が濡れている時間」と「土が乾いている時間」のメリハリ(乾湿のサイクル)をつけることが重要なのです。常に土が湿っている状態は、根にとって息継ぎができないプールにずっと潜っているようなものです。根も新鮮な空気を求めています。
失敗しない!正しい水やりの3ステップ
- 確認する(重要!)
水やり前に必ず土の状態を確認します。目で見て表面が乾いていても、土の中は湿っていることがよくあります。指の第一関節くらいまで土にズボッと入れてみて、中まで乾いているか確認するのが確実です。また、水やり前の「鉢の重さ」を覚えておき、鉢を持ち上げてみて「軽い!」と感じた時だけあげるという方法も非常に有効です。 - たっぷりと
あげる時は、鉢底から水がジャーっと流れ出るまで、躊躇なくたっぷりと与えます。これにより、土の中に溜まった古い空気や老廃物を水圧で押し出し、新鮮な酸素を含んだ水と空気を根に届けることができます。「根腐れが怖いから」といってコップ1杯だけあげるような「チビチビ水やり」は、土の下の方に水が届かず、逆に根を傷める原因になるのでNGです。 - 捨てる
鉢皿(受け皿)に溜まった水は、必ず捨ててください。これを放置すると、鉢底が常に水に浸かった状態になり、そこから根腐れが始まります。夏場はボウフラの発生源にもなりますので、水やりと水捨てはセットで行いましょう。
また、梅雨の時期や秋の長雨シーズンは、特に注意が必要です。ゼラニウムの葉には細かい毛が生えており、雨水が溜まると乾きにくく、そこから斑点性の病気が発生しやすくなります。また、長雨による過湿は根腐れの特急券です。
天気予報をチェックして、雨が続く予報の時は、雨の当たらない軒下やベランダの奥に移動させるだけで、葉が黄色くなるリスクを大幅に減らすことができます。ゼラニウムは「雨が大嫌い」ということを覚えておいて、雨の日は傘を差してあげるつもりで管理してあげてくださいね。
植え替えで葉の健康を取り戻す

「水やりも気をつけているし、肥料もあげている。病気でもなさそうなのに、なんだか最近葉の色が悪いし、下葉がすぐ黄色くなる…」
そんな時は、鉢の中が限界を迎えているサインかもしれません。長く同じ鉢で育てていると、鉢の中が根でパンパンになり(根詰まり)、水や酸素が十分に行き渡らなくなります。また、長期間の使用によって土の団粒構造が崩れて泥のようになり、水はけが悪くなったり、土壌酸度(pH)が変化して養分が吸えなくなったりもします。
これらを根本的に解消し、葉の健康を取り戻すために必要なのが「植え替え(鉢増し・用土更新)」です。人間が成長に合わせて服を着替えるように、ゼラニウムも新しい土と広いスペースを求めています。
植え替えの目安は、1年〜2年に1回です。鉢底の穴から根がはみ出している場合や、水やりをしても水がなかなか染み込んでいかない(ウォータースペースに水が溜まる)場合は、緊急のサインです。適期は、植物への負担が少ない春(3月〜5月頃)か秋(9月〜10月頃)の気候の良い時期です。真夏と真冬は避けてください。
植え替えの手順は難しくありません。基本的には、現在よりも一回り大きな鉢を用意し、新しい培養土を使って植え替えるだけです。この時、土選びが重要になります。前述した「鉄欠乏(クロロシス)」を防ぐためにも、pHが調整された「ゼラニウム専用の培養土」を使うのが最も安心で失敗がありません。もし一般的な草花用培養土を使う場合は、酸度調整済みのものを選び、ご自身で石灰を過剰に追加しないように注意しましょう。水はけを重視するために、市販の培養土に赤玉土(小粒)を2割程度混ぜるのもプロのコツです。
植え替えの際は、古い土を1/3程度軽く落とし、茶色く傷んだ根があれば取り除いてから新しい土に植え付けます。根鉢を崩しすぎないようにするのがポイントです。
これにより、根が新しいスペースでのびのびと成長できるようになり、水分や養分の吸収効率が劇的に改善します。植え替えをしてから2週間もすれば、見違えるようにツヤツヤとした濃い緑色の新芽が展開してくるはずです。定期的な植え替えこそが、ゼラニウムを何年も美しく保ち、黄色い葉を見なくて済むための最大の秘訣なのです。
まとめ:ゼラニウムの葉が黄色くなるのを防ぐ
ゼラニウムの葉が黄色くなる現象について、原因と対策を詳しく解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。少し情報量が多かったかもしれませんが、それだけゼラニウムは繊細かつ正直に、私たちに体調を伝えてくれているということです。
葉が黄色くなるのは、植物からのメッセージです。それが「水が多すぎるよ(根腐れ)」というサインなのか、「暑すぎるよ(高温障害)」という悲鳴なのか、あるいは「病気にかかってしまった(細菌病など)」という警告なのか。それを正しく見極めることが、長く花を楽しむための第一歩です。
初心者のうちは判断に迷うこともあると思いますが、まずは落ち着いて「どの葉が(下葉か新芽か)」「どのように(全体かV字か)」変色しているかをよく観察してみてください。そして、原因に合わせた適切なケアをしてあげてください。特に、V字の黄化などの伝染病以外であれば、多くの場合は水やりや置き場所などの環境を改善することで回復させることができます。
ゼラニウムは本来とても丈夫で、愛情に応えて次々と花を咲かせてくれる素晴らしい植物です。毎日の水やりのついでに、葉の裏や株元の様子を見てあげる「パトロール」を習慣にして、小さな変化に早めに気づいてあげてくださいね。そうすれば、あなたのガーデンで一年中美しい緑と鮮やかな花を楽しませてくれるはずです。
この記事の要点まとめ
- 下葉の黄化は根腐れか水切れが主な原因だが、過湿による根腐れが大半
- 根腐れの場合は土が湿り、腐敗臭がしたり茎が軟化したりする
- 夏の全体的な黄化や白化は高温障害であり、肥料を与えず涼しく休ませる
- 夏場に白い新芽が出るのは「サマーホワイト現象」で病気ではない
- 新芽が黄色く葉脈が緑なのは「鉄欠乏(クロロシス)」で土壌のアルカリ化が原因
- コンクリート近くや石灰のやりすぎが鉄欠乏を招く
- V字型の黄変は「細菌病(キサントモナス)」であり治療法がないため即廃棄する
- モザイク模様の黄化はウイルス病の疑いがあり、アブラムシ防除が鍵
- 全体的に色が薄い場合は窒素不足(肥料切れ)を疑い、適期に追肥する
- 根腐れした場合は腐った根を切除し、新しい土へ植え替える「外科手術」を行う
- 夏場は遮光し、肥料を止めて、夕方などの涼しい時間に水やりをする
- 冬の黄葉は生理現象だが、枯れ葉は灰色かび病の原因になるためこまめに取り除く
- 水やりは土が完全に乾いてからたっぷりと与え、受け皿の水は捨てる
- 定期的な植え替え(1〜2年に1回)で根詰まりと土壌劣化を防止する
- ハサミなどの道具は使用ごとに消毒して、病気の伝染を防ぐ
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