こんにちは、My Garden 編集部です。
冬の寒さが厳しくなるにつれ、園芸店やホームセンターの店頭が鮮やかなシクラメンで彩られる季節がやってきました。赤、ピンク、白といった定番カラーは、年末の風物詩として私たちの目を楽しませてくれます。しかし近年、そうした暖色系の景色の中に、一際異彩を放つ「青い輝き」が存在することをご存知でしょうか?
それが、サントリーフラワーズが長年の歳月と最先端のバイオテクノロジーを駆使して開発した、奇跡の青いシクラメン「セレナーディア(Serenadia)」です。
「青いシクラメンなんて存在するの?」と驚かれる方もいらっしゃるかもしれません。かつて植物界において、シクラメンやバラ、カーネーションに青色を発現させることは、遺伝子的に不可能な「聖域」とされていました。しかし、その常識を覆して誕生したセレナーディアは、深い海や夜空を思わせる神秘的な花色で、見る人すべてを魅了します。
一方で、一般的なシクラメンに比べて流通量が極めて少なく、価格もプレミアムであることから、「育て方が難しいのではないか?」「枯らしてしまったらショックが大きい」と、購入を躊躇してしまう園芸ファンも少なくありません。また、その希少性から、大切な方への「失敗できないギフト」として検討されている方も多いはずです。
そこで今回は、この希少な青いシクラメン「セレナーディア」について、アロマブルーやビクトリアブルーといった品種ごとの詳細な違いや選び方から、植物生理学に基づいた失敗しない栽培管理法、そして多くの栽培者が頭を悩ませる「夏越し」の成功テクニックまで、私の実体験と徹底的なリサーチに基づいて完全解説します。
この記事のポイント
- 青いシクラメン独自の花言葉とギフトとしての特別な価値
- アロマブルーなど人気品種の特徴比較と自分に合う選び方
- 枯らさず長く楽しむための水やりと最適な置き場所の条件
- 難しいと言われる夏越しを成功させるための具体的な管理法
サントリーの青いシクラメンセレナーディアの魅力

園芸ファンにとって、「青い花」というのは永遠の憧れであり、ロマンの象徴です。自然界には青い色素を持つ花が意外と少なく、特に園芸品種として改良が進んだ植物ほど、青色は失われやすい傾向にあります。サントリーグループは、世界で初めて「青いバラ(アプローズ)」や「青いカーネーション(ムーンダスト)」を開発した「青色育種のパイオニア」です。その技術の粋を集め、シクラメンという品目で「青」への挑戦を結実させたのが、このセレナーディアシリーズなのです。
ここでは、単なる「珍しい色の花」という枠を超えた、セレナーディアが持つブランドとしての深いストーリー性や、品種ごとに計算し尽くされた繊細な個性について、詳しく掘り下げてご紹介していきましょう。
セレナーディアの花言葉と青い色の意味

花を贈る際、あるいは自宅に迎える際、その花が持つ「言葉」や「意味」は、私たちが思う以上に重要な役割を果たします。特にシクラメンは、古くから親しまれている花であるがゆえに、色によって様々な意味づけがなされてきました。
例えば、最も一般的な「赤色」のシクラメンには、「嫉妬」という少しドキッとするような花言葉が含まれています。また、反り返って咲く花姿から「内気」や「はにかみ」といった意味も持ちます。これらは決して悪い意味ばかりではありませんが、結婚祝いやパートナーへの贈り物としては、誤解を招かないか少し心配になる要素でもあります。
しかし、セレナーディアには、そうした従来のシクラメンのイメージを一新する、非常に力強く、かつロマンチックな花言葉が与えられています。その言葉とは、「大切な人への想い」や「献身的な愛」です。
名前の由来とメッセージ
ブランド名である「セレナーディア(Serenadia)」は、音楽用語の「セレナーデ(Serenade:小夜曲)」に由来しています。セレナーデとは、夕べに恋人の窓辺で、愛しい人への想いを伝えるために演奏される音楽のこと。つまり、この花自体が「愛や感謝を歌うように届けるメッセンジャー」であるというコンセプトが込められているのです。
この深い愛情を示すメッセージ性は、愛するパートナーへのプレゼントにはもちろんのこと、これまで育ててくれたご両親や、恩師へ「言葉では尽くせない感謝と尊敬」を伝える際にも最適です。「嫉妬」などのネガティブな意味を持たないため、安心して贈ることができるのも大きなメリットと言えるでしょう。
また、色彩心理学的にも「青」や「紫」といった寒色系の色は、「鎮静効果」「知性」「高貴さ」を象徴する色です。冬の室内は暖房器具や暖色系のインテリアで暖かく保たれていますが、そこに視覚的に「静寂」や「落ち着き」をもたらす青色の花が一鉢あるだけで、空間全体が引き締まり、洗練された大人の雰囲気を演出することができます。派手すぎず、かといって地味でもない。この絶妙なバランスこそが、セレナーディアが「大人のギフト」として支持される理由なのです。
香り高いアロマブルーの特徴と魅力

セレナーディアシリーズは現在、複数の品種で構成されていますが、その中でもシリーズの顔とも言える存在であり、私が個人的にも「まずはこれを体験してほしい」と強くおすすめするのが「アロマブルー(Aroma Blue)」です。
この品種の最大の特徴は、その名の通り「香り(アロマ)」にあります。実は、原種のシクラメンには香りを持つものが多いのですが、園芸用に改良された一般的なシクラメン(Cyclamen persicum系)の多くは、花を大きくしたり色を鮮やかにしたりする過程で香りが失われてしまい、無香のものが大半です。しかし、アロマブルーは育種の過程で香りの形質を取り戻し、爽やかで優しいフローラルノートの芳香を持っています。
その香りは、ユリやバラのように濃厚で部屋中に充満するような強さではなく、近づいた時にふわりと漂う、上品で清潔感のある香りです。玄関やリビング、寝室のサイドテーブルなどに置くと、通りかかるたびに心が洗われるような癒やしを与えてくれます。視覚的な美しさだけでなく、嗅覚を通じても季節の訪れを感じさせてくれる点は、アロマブルーならではの贅沢な体験と言えるでしょう。
色と形の美学
花色は、シリーズの中で最も「青」に近い、深く落ち着いた濃青紫色です。自然光の下では紫色が強く見えますが、蛍光灯の下などではより青みがかって見えるなど、光の加減で表情を変えるのも魅力です。花形は一重咲きのすっきりとしたフォルム。一見シンプルに見えますが、その分花弁のベルベットのような質感や色の深みが際立ち、凛とした美しさを感じさせます。この装飾を削ぎ落とした美しさが、香りの良さをより引き立てているように感じます。
また、栽培的な観点から見ても、アロマブルーは非常に優秀です。花茎が太くしっかりと立ち上がりやすいため、花が倒れにくく、株全体のまとまりが良いのが特徴です。葉の枚数も多い傾向にあり、適切な管理を行えば、中心から次々と新しい蕾が上がり、春先まで途切れることなくその色と香りを楽しむことができます。
ビクトリアブルーなど人気品種の違い

セレナーディアの魅力はアロマブルーだけにとどまりません。他にもそれぞれ全く異なる個性的な特徴を持った品種がラインナップされており、選ぶ楽しみがあります。ご自身の好みや、飾る場所のインテリア、あるいは贈る相手のイメージに合わせて選ぶと良いでしょう。ここでは、主な品種の違いを詳細に比較・解説します。
ビクトリアブルー(Victoria Blue)
「ビクトリア咲き」と呼ばれる、花弁の縁に基本色とは異なる色が入る覆輪(フリンジ)パターンが特徴の品種です。セレナーディアのビクトリアブルーは、深く鮮やかな青紫色の花弁の縁に、純白のラインがくっきりと入ります。この青と白のコントラストは非常に華やかで立体感があり、遠目からでもパッと目を引く圧倒的な存在感があります。
単色のシクラメンが「静寂」だとすれば、ビクトリアブルーは「躍動」や「歓喜」を感じさせます。生産者の方の現場の声として、生育が早く開花パフォーマンスが良いという特性も報告されています。つまり、購入した直後から満開に近い豪華な状態を楽しめる可能性が高く、「すぐに華やかな雰囲気にしたい」という要望に応えてくれる品種です。
ライラックフリル(Lilac Frill)
こちらはアロマブルーやビクトリアブルーのような濃色系とは対照的に、非常に優しげな淡いライラック色(薄紫)をした品種です。最大の特徴は、花弁の縁が細かく波打つ「八重咲き(フリル咲き)」であること。一輪一輪にボリュームがあり、まるでドレスの裾が重なり合ったような、極めてエレガントでロマンチックな印象を与えます。
濃い紫色は時に「重たい」「暗い」と感じられることがありますが、このライラックフリルのパステル調の色彩は、白やベージュ、ナチュラルウッドを基調とした明るいインテリアのお部屋に絶妙にマッチします。また、八重咲きの花は一般的に受粉しにくいため花持ちが良い傾向にあり、一輪の花を長く観賞できるのも、忙しい現代人にとっては嬉しいポイントです。
| 品種名 | 花色 | 花形 | 香り | おすすめのタイプ |
|---|---|---|---|---|
| アロマブルー | 濃青紫 | 一重 | あり | 香りと色を楽しみたい、シックで落ち着いた雰囲気が好きな方 |
| ビクトリアブルー | 青紫×白 | 覆輪 | 微香/無 | 華やかさとコントラスト、視覚的なインパクトを求める方 |
| ライラックフリル | 淡紫 | 八重 | 微香/無 | 豪華なボリュームと優しい色合い、明るい雰囲気を好む方 |
セレナーディアの価格と販売店や通販情報

これだけ魅力的なセレナーディアですが、やはり購入前に気になるのは「どこで買えるのか」「適正価格はいくらなのか」という現実的な情報でしょう。結論から申し上げますと、セレナーディアは一般的なシクラメンと比較して流通期間が極めて短く、価格もプレミアムな設定となっています。衝動買いできる価格帯ではないため、計画的な購入が必要です。
価格相場の目安と理由
贈答用として見栄えのするしっかりとした5号鉢サイズ(バスケットやラッピング付き)の場合、大手通販サイトや花屋のネットショップでの価格相場は6,000円〜9,000円(税込・送料込)程度が一般的です。ホームセンターなどで販売される3〜4号のポット苗であれば1,500円〜3,000円程度で購入できることもありますが、ギフト用としての品質や株の充実度を求めるなら、やはり5号鉢以上のものを推奨します。
「シクラメン一鉢に1万円近く?」と驚かれるかもしれません。しかし、自然界にない「青色」の色素を発現させるための膨大な研究開発費、特許・品種登録料、そしてデリケートな希少品種を最高品質に仕立て上げる生産者さんの高度な技術と手間を考えれば、それだけの価値がある「生きた芸術品」だと私は思います。単なる園芸植物というよりは、ブランド品を購入する感覚に近いかもしれません。
購入のタイミングに注意:完売リスク
セレナーディアの流通ピークは、11月中旬から12月中旬にかけてのわずか約1ヶ月間です。特に人気のアロマブルーは、11月の予約段階で生産分が完売してしまうことも珍しくありません。
実店舗の園芸店や大型ホームセンターでも稀に入荷することがありますが、入荷数は限られており、出会えるかどうかは運次第です。「探し回ったけれど見つからなかった」という事態を避けるためにも、確実に手に入れたい場合は、10月下旬〜11月上旬の間に、信頼できるフラワーショップのネット通販で「予約」を完了させることを強くおすすめします。お歳暮シーズン直前の12月に入ると、市場在庫が一気になくなり入手困難になりますので、早めの行動が鍵となります。
贈り物に最適なセレナーディアの選び方
セレナーディアは、その希少性、美しさ、そしてストーリー性から、冬のギフトとして非常に高い人気を誇ります。贈る相手やシチュエーションに合わせて最適な品種を選ぶことで、あなたの想いはより深く、より感動的に伝わるはずです。いくつかの具体的なシーンをご提案します。
お歳暮・冬のフォーマルなギフトとして
目上の方や、日頃お世話になっている取引先、恩師への「お歳暮」として贈るなら、やはり風格のある「アロマブルー」が最適です。落ち着いた深い色味と品のある香りは、相手に敬意を表すのに相応しい気品があります。「珍しい青いシクラメンを見つけたので、ぜひ香りと共に楽しんでいただきたくて」という一言を添えれば、あなたの心遣いとセンスの良さが伝わるでしょう。
パートナーや記念日のサプライズに
11月22日の「いい夫婦の日」や、クリスマスプレゼントとしてパートナーに贈るなら、華やかな「ビクトリアブルー」やロマンチックな「ライラックフリル」も素敵です。「セレナーデ(愛の歌)」という名の由来や、「献身的な愛」という花言葉をメッセージカードに記して贈れば、いつもの記念日が忘れられない特別な一日に変わることでしょう。
自分へのご褒美(セルフギフト)として
近年、一年間、仕事や家事、育児を頑張った自分自身へのご褒美(セルフギフト)として購入される方が非常に増えています。冬の休日に、暖かい部屋でお気に入りの飲み物を片手に、美しい青い花と香りを独り占めして眺める時間。それは、疲れた心を癒やし、明日への活力をチャージするための、何物にも代えがたい贅沢なひとときとなるはずです。
セレナーディアの育て方と長く楽しむコツ
「以前、高いシクラメンをもらったけれど、年明けには枯らしてしまった…」そんな苦い経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。シクラメン、特にセレナーディアのような改良品種を長く楽しむためには、植物の生理に基づいた正しい管理が必要です。「なんとなく」ではなく、「なぜそうするのか」という理由を理解すれば、栽培の失敗は劇的に減らすことができます。ここでは、枯らさないための鉄則を徹底解説します。
初心者でも安心な基本的な育て方

シクラメン栽培において最も重要な要素は、「光」と「温度」のバランスです。シクラメンの原産地である地中海沿岸の冬をイメージしてください。雨季で適度な湿り気があり、涼しくて、日差しはたっぷりある。これがシクラメンの理想郷です。日本の冬の室内で、いかにこの環境に近づけるかが勝負となります。
光の管理:光合成を最大化する
11月から4月の生育期間中は、とにかく室内の日当たりの良い窓辺に置くことが必須です。光が不足すると、植物は光を求めて茎を徒長(ひょろひょろと伸ばす)させ、軟弱になります。さらに光合成不足でエネルギーが足りず、花数が激減したり、花色が薄くなったりします。レースカーテン越しの日光を、できるだけ長い時間(理想は1日4〜5時間以上)当ててあげましょう。
温度の管理:人間とは違う快適ゾーン
ここが最大の落とし穴であり、枯らす原因の第1位です。シクラメンの生育適温は10℃〜15℃です。人間がポカポカと快適に感じる20℃以上の暖房の効いたリビングは、シクラメンにとっては「真夏の灼熱地獄」に等しいのです。
高温下では、植物は呼吸によってエネルギーを激しく消耗し、光合成で作った養分を使い果たしてぐったりとしてしまいます。理想は、暖房の効いていない明るい部屋や、玄関、廊下などです。「人が少し肌寒いと感じる場所(厚着をしてちょうどいい場所)」が、シクラメンにとってはベストな環境だと思ってください。
暖房の風は厳禁!
エアコンやファンヒーターの温風が直接当たる場所は絶対に避けてください。極度の乾燥と熱風により、蕾は開くことなくミイラ化して茶色く枯れ落ちてしまいます。これは一度起きると回復しませんので、置き場所には細心の注意を払ってください。
ただし、5℃を下回るような極端な寒さも苦手です。特に寒冷地の窓辺は、夜間に放射冷却で氷点下近くまで下がることがあります。日が暮れたら厚手のカーテンを閉めるか、部屋の内側(窓から離れた場所)に移動させる「夜間の避難」を行うことで、凍害を防ぐことができます。
失敗しない水やりのタイミングとコツ

「水やり3年」と言われるほど奥が深い水やりですが、シクラメンを枯らす原因の多くは「水のやりすぎによる根腐れ」です。可愛がりすぎて毎日水をあげてしまうのが、実は一番の虐待になってしまいます。シクラメンの根は酸素を好むため、土が常に湿っていると窒息してしまうのです。
絶対ルール:乾くまで待つ
水やりのタイミングは、「土の表面が白っぽく乾いてから」が鉄則です。指で土を触ってみて、少しでも湿り気を感じるうちは我慢してください。「土が乾く」ということは、「土の中に空気が入るスペースができる」ということです。この「乾く(空気を吸う)」と「湿る(水を吸う)」のメリハリが、健康な根を育てます。
また、葉がわずかにくたっと垂れ下がった時も水やりのサインですが、これを頻繁に繰り返すと株にストレスがかかるので、やはり「指で土の乾きを確認する」のが一番確実な方法です。
底面吸水鉢の落とし穴と管理法
贈答用のセレナーディアの多くは、「底面吸水鉢(鉢底のタンクから水を吸い上げる構造)」に入っています。これは管理が楽な反面、注意が必要です。
タンクに常に水が満タンに入っている状態だと、土の中が常に水浸しになり、根腐れリスクが高まります。タンクの水がなくなったらすぐに足すのではなく、半日〜1日ほど空の状態を作る(給水を止める)ことで、根に新鮮な空気を吸わせることができます。この「水断ち」の時間が重要です。
また、月に1回程度は、キッチンやベランダで上からたっぷりと水を与え、鉢底から勢いよく水を流し出す作業を行ってください。これは「リーチング」と呼ばれ、土の中に蓄積した古い肥料成分や老廃物を洗い流し、土壌環境をリフレッシュさせるために非常に重要な作業です。これをやるだけで、根の張りが劇的に良くなります。
難しい夏越しを成功させる管理方法

日本の高温多湿な夏は、涼しい地中海生まれのシクラメンにとって最大の試練です。多くの人がここで枯らしてしまいますが、夏越しさえ成功すれば、秋には球根が一回り大きくなり、再び素晴らしい花を楽しむことができます。
夏越しには、水を完全に断って球根だけにする「ドライ法(休眠法)」と、葉を残して成長を維持させる「ウェット法(非休眠法)」の2通りがありますが、セレナーディアのような園芸品種においては、「非休眠法(ウェット法)」が圧倒的に推奨されています。
なぜなら、近年のシクラメン(特にメリクロン苗など)は、一度完全に休眠させてしまうと、秋になっても目覚めずにそのまま干からびてしまう(ミイラ化する)リスクがあるからです。葉を残して根を生かしておくウェット法の方が、秋の再成長がスムーズで、開花も早くなるメリットがあります。
非休眠法(ウェット法)の実践ステップ
- 5月〜梅雨入り:花が終わり始めたら、徐々に直射日光を避け、風通しの良い明るい日陰(北側の軒下など)に移動させます。雨が当たる場所は病気の原因になるので絶対に避けます。
- 真夏(7月〜8月):最も重要なのは「涼しさ」と「通気性」です。30℃を超える日が続く場合は、戸外よりもエアコンの効いた明るい室内の窓辺(レースカーテン越し)に避難させるのも有効な手段です。人間が快適ならシクラメンもなんとか耐えられます。
- 水やり:土の表面が乾いたら与えますが、冬場よりも頻度を減らし、「少し乾かし気味」を意識します。高温時の過湿は、お湯の中に根を入れているようなもので、即座に腐敗に直結します。
- 肥料:暑さで根の活動が弱っているため、夏の間は肥料を一切ストップします。ここで「元気がないから」と肥料を与えると、消化不良を起こして根が傷み、トドメを刺すことになります。
夏の間、葉が数枚でも青々と残っていれば夏越しは成功です。葉が全部落ちてしまっても、球根が硬ければ生きている可能性があるので、諦めずに涼しく管理し続けましょう。
枯れたり葉が黄色くなる原因と対策
どれだけ大切に育てていても、生き物ですからトラブルは起こります。「葉が黄色くなった」「カビが生えた」といった症状が出ても、慌てずに原因を見極めれば回復可能です。ここではよくある症状別の対処法をまとめます。
葉が黄色くなる原因と対処法
- 環境変化のストレス:購入直後、生産者の快適な温室から家庭環境(乾燥や光量不足)に移ったショックで、下葉が黄色くなることがあります。これは生理的な適応反応(古い葉を捨てて新しい環境に適応しようとしている)ですので、黄色い葉を取り除き、環境に慣れさせれば次第に収まります。
- 根腐れ:土が湿っているのに葉が黄色くなり、茎の根元がブヨブヨしている場合は根腐れです。直ちに水やりを中止し、風通しの良い日陰で乾燥させてください。重症の場合は、腐った根を取り除いて植え替える緊急手術が必要ですが、回復は難しい場合もあります。
- 葉焼け:急に暗い場所から強い直射日光に当てると、葉が白っぽく変色します。カーテン越しの日光で徐々に慣らす(ハードニング)ことが大切です。
灰色かび病(ボトリチス病)への対策
花弁に小さな水玉状のシミができたり、茎の根元に灰色のフワフワしたカビが生えたりするのが「灰色かび病」です。これはシクラメンの大敵で、低温多湿な環境や、枯れた花がらを放置することで発生します。
対策の基本は「徹底的な掃除」と「換気」です。咲き終わった花や枯れた葉は、カビの温床になる前に速やかに取り除きます。もしカビが発生してしまったら、その部分を胞子が飛ばないように静かに、かつ完全に取り除き、ベンレートなどの園芸用殺菌剤を散布して拡大を防ぎます。
正しい花がらの摘み方(ねじり取り)

ハサミは使いません(切り口から菌が入るため)。茎の根元を指でしっかりとつまみ、少しねじりながらスッと勢いよく引き抜きます。こうすると茎が途中で残らず、球根の付け根からきれいに取れます。途中でちぎれて残った茎は腐敗の原因になるので、必ず根元から抜くのがコツです。
翌年も花を咲かせる冬越しのポイント
厳しい夏を乗り越え、涼しい風を感じる9月下旬〜10月頃になったら、いよいよ2年目のシーズンの始まりです。シクラメンは多年草ですので、ここからのケア次第で何年も楽しむことができます。
まずは一回り大きな鉢に植え替えを行います。土は市販の「シクラメンの土」を使うのが最も安全で失敗がありません。この時、球根の頂部が半分くらい土から出るように「浅植え」にするのがポイントです。球根を土に埋めてしまうと、成長点が蒸れて腐る原因になります。
植え替え後、1週間ほど日陰で休ませてから、徐々に日当たりの良い場所へ戻していきます。新しい葉が展開し始めたら、肥料(液体肥料を1週間に1回程度)も再開させましょう。夏を越した株は球根が肥大しており、エネルギーを蓄えています。うまくいけば11月〜12月頃から、購入時以上にたくさんの花を咲かせ、あなたを驚かせてくれるはずです。2年目、3年目と付き合いが長くなるほど、愛着もひとしおですよ。
特別な一鉢としてのセレナーディアの価値
セレナーディアを育てることは、単にきれいな花を消費することではありません。日々の天候を気にかけ、水やりのタイミングを見極め、季節の移ろいと共に植物と対話する。そうした丁寧な時間そのものが、忙しい私たちの暮らしに潤いを与えてくれます。
「青いシクラメン」という、かつては夢物語だった花が、今あなたの目の前にある。その奇跡と美しさを、ぜひご自宅で体験してみてください。この記事が、あなたのセレナーディアとの生活を少しでも長く、彩り豊かなものにする手助けとなれば幸いです。
(出典:サントリーフラワーズ『セレナーディア 商品情報』)
この記事の要点まとめ
- セレナーディアはサントリーが開発した希少な「青いシクラメン」であり、長年の園芸技術の結晶である
- 花言葉は「大切な人への想い」「献身的な愛」であり、お歳暮やパートナーへの特別なギフトに最適
- 「アロマブルー」は爽やかな香りと深い青紫色が特徴で、視覚と嗅覚の両方で楽しめる代表品種
- 「ビクトリアブルー」は白との複色が華やかで、「ライラックフリル」は淡い八重咲きと、品種ごとに個性が異なる
- 購入は10月下旬〜11月中の通販予約が最も確実で、価格相場は5号鉢で6,000円〜9,000円程度
- 栽培適温は10℃〜15℃で、人間が快適な20℃以上の部屋や暖房の風が直接当たる場所は厳禁
- 日当たりの良い窓辺で管理し、夜間の窓際の冷え込み(凍結リスク)には注意して部屋の内側に移動させる
- 水やりは「土の表面が白っぽく乾いてから」が絶対のルール。指で湿り気を確認し、過湿による根腐れを防ぐ
- 底面吸水鉢の場合は、タンクの水を時々空にして根に空気を吸わせ、月1回は上から水を流す(リーチング)を行う
- 夏越しは葉を残して管理する「非休眠法(ウェット法)」が推奨され、成功すれば秋の開花が早まる
- 夏場は直射日光を避け、風通しの良い涼しい日陰(北側の軒下など)で管理し、肥料は完全に断つ
- 葉が黄色くなるのは環境変化や根腐れが主な原因。水やりを控えて様子を見ることが第一の対処法
- 花がらや枯れ葉はこまめに根元からねじり取り、大敵である灰色かび病の発生を防ぐ
- 夏越し後の9月下旬〜10月に一回り大きな鉢へ植え替えと施肥を行い、翌シーズンの開花に備える
- 青い花色は鎮静効果が高く、冬の室内を上品で洗練された癒やしの空間に演出してくれる
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