こんにちは、My Garden 編集部です。
母の日や誕生日、特別な記念日にお祝いでいただいたカーネーションの花束。その鮮やかな色や優しい香りを眺めていると、ふと「この美しさをそのまま残せたらいいのにな」と思うことはありませんか。実はお花屋さんで購入した切り花のカーネーションであっても、適切な手順を踏んで挿し木を行えば、新しい命として再生させることが可能なんです。
カーネーションの切り花を挿し木にして増やすためには、植物が根を出しやすい季節を見極めることや、成功率を左右する芽の選び方が非常に重要になってきます。特に気温が下がる冬などの季節は、ペットボトルを加工した簡易温室を活用したり、暖かい室内での管理を徹底したりと、ちょっとしたコツが必要になります。もちろん、市販のメネデールやルートンといったアイテムを準備することや、雑菌のない清潔な土を用意するといった基本的な準備も欠かせません。水差しで根が出てくるのをじっくり待つのも楽しい時間ですが、その後の鉢上げや株を大きくする摘心、さらには夏場のハダニ対策まで、やるべきことは意外とたくさんあります。
この記事では、私自身の「お花を少しでも長く楽しみたい」という純粋な好奇心をもとに、切り花のカーネーションから挿し木を成功させるための具体的なステップを詳しくまとめました。これを読めば、初心者の方でも自信を持って再生栽培にチャレンジできるはずです。大切な思い出が詰まったお花を、ぜひあなたの手で二代目の株として庭やベランダに咲かせてみましょう。
この記事のポイント
- 挿し木に最適な時期と季節ごとの温度管理のコツ
- 発根の成否を分ける葉芽の正しい見分け方と調整方法
- メネデールやルートンを活用した科学的な発根促進テクニック
- 定着した後の植え替えや摘心、病害虫から守る長期的な管理術
カーネーションの切り花から挿し木で増やす準備とコツ
切り花のカーネーションから新しい苗を育てる作業は、植物が持つ「再生能力」を引き出すワクワクするプロセスです。まずは、挿し木を始める前に知っておきたい生理的な特徴や、成功の土台となる下準備について、私自身の経験を交えて深掘りしていきましょう。
挿し木に適した時期と温度管理のポイント

カーネーションの挿し木を成功させるための最大の鍵、それは「いつ始めるか」という時期の選択です。植物には細胞が活発に分裂して新しい組織を作るエネルギーが満ち溢れている時期があり、そのタイミングを逃さないことが大切ですね。私たちが心地よいと感じる気候は、植物にとっても根を出しやすい環境であることが多いんですよ。
一般的に、最もおすすめなのは春(4月〜6月)と秋(9月〜10月)です。この時期は気温がだいたい15度から25度の間で安定しやすく、根がない状態の「挿し穂」にとって、過度な乾燥や蒸れによるストレスが少ない絶好のチャンスとなります。特に日本特有の梅雨時期は、空中の湿度が高く保たれるため、葉からの蒸散を抑えたい挿し木にとっては意外と好都合なシーズンだったりします。私自身、梅雨時に日陰で管理した挿し木が、驚くほど元気に根を張ってくれた経験があります。空気がしっとりしている分、植物の体内の水分が保たれやすいんでしょうね。
一方で、最高気温が30度を超えるような真夏や、霜が降りるような冬は、植物にとっても非常に過酷な環境です。夏場は暑さで切り口の細菌が繁殖しやすく、根が出る前に腐ってしまうリスクが非常に高まります。また、冬場は植物自体の代謝が落ちてしまうため、根が出る前に葉が寿命を迎えてしまうことが多いんです。もし冬に挑戦したい場合は、室内の20度前後をキープできる暖かい場所を選び、地温が下がらないような工夫が必要です。カーネーション(学名:Dianthus caryophyllus)はナデシコ科の植物で、本来は冷涼で乾燥した気候を好みます。そのため、日本の高温多湿すぎる環境よりは、少し涼しいくらいの方が成功しやすいと言えます。
(出典:愛知県農業経営課「あいちの園芸(きりばな):カーネーション」)
季節別の温度管理チェックリスト
| 季節 | 管理場所の目安 | 注意すべきポイント |
|---|---|---|
| 春・秋 | 屋外の明るい日陰 | 急な直射日光による葉焼けと乾燥に注意 |
| 梅雨 | 雨の当たらない風通しの良い軒下 | 多湿によるカビの発生や切り口の腐敗を防ぐ |
| 夏 | エアコンの効いた室内(窓際) | 高温による蒸れと水の腐敗を徹底的に防ぐ |
| 冬 | 室内の明るい窓辺 | 夜間の急激な冷え込みと暖房による極度の乾燥 |
まずは、今の季節が挿し木に適しているかを確認し、もし適期外であれば室内環境を整えることから始めてみてください。植物にはそれぞれ適切な活動温度があります。無理に過酷な時期に屋外で進めるよりも、室内で人間と一緒に過ごすような環境の方が、挿し木は成功しやすいかなと思います。焦らず、植物のリズムに寄り添ってあげるのが、ガーデニングを楽しむ一番の秘訣かもしれません。
成功率を高める元気な葉芽の見分け方

お花屋さんに並んでいるカーネーションは、大きな花を咲かせることを目的として育てられたものです。植物のエネルギーの使い道には「栄養成長(茎や葉を伸ばす)」と「生殖成長(花や種を作る)」の2種類があるのですが、切り花は完全に後者のモードに入っています。そのため、茎の途中から出ている脇芽の多くが、すでに蕾を準備している「花芽」に変わってしまっていることが多いんです。ここが、切り花からの挿し木が少し難しいとされる一番のハードルですね。
挿し木で新しい株を再生させるには、花を咲かせるための芽ではなく、新しい茎や根を伸ばすためのエネルギーに満ちた「葉芽(栄養芽)」を厳選することが絶対に必要です。花芽を選んでしまうと、植物は「根を出す」ことよりも「花を咲かせる」ことを優先してしまい、結果として根が出ないまま蕾が膨らみ、最後には枯れてしまうんです。私も昔、よく分からずに適当な芽を挿していた頃は、この「花芽の罠」に何度もかかってしまいました。
葉芽と花芽を正しく見分けるためには、芽の「先端のカタチ」をよーく観察してみてください。
葉芽:先端がシュッと鋭く尖っています。未展開の葉が何枚も重なり合っている様子が見て取れます。全体的に細長い印象です。
花芽:全体的にふっくらと丸みを帯びています。中に小さな蕾を隠し持っているような独特の膨らみがあり、先端が葉芽ほど尖っていません。
実際、一本の切り花から挿し木に適した完璧な葉芽が見つかる確率はそれほど高くありません。だからこそ、複数のカーネーションがある場合は、そのすべてをじっくり観察して、最も可能性の高い芽を選び出すことが重要です。もしすべての芽が丸くなっていて花芽しかなさそうな場合は、一度お花を鑑賞した後に茎を少し短めに切り戻し、新しい葉芽が吹いてくるのを待つというのも、成功率を上げるための一つの知恵ですよ。根気強く、一番元気な「新しい命」を探してあげましょう。
切り口の調整と水揚げの正しい手順

理想的な葉芽を見つけたら、いよいよそれを「挿し穂」として切り出し、土に挿すためのコンディションを整えていきます。この段階での処理の精度が、その後の発根スピードや成功率を劇的に左右します。まずは、長さ10cmから15cm程度の健康な脇芽を選び、主茎から丁寧に切り離します。
ここで何よりも大切にしてほしいのが、使用する刃物の清潔さと切れ味です。汚れたハサミや、細胞を押し潰してしまうような切れ味の悪いカッターを使うと、切り口から雑菌が入ったり、水の通り道である導管が潰れたりして、発根する前に腐ってしまいます。私は必ず、作業の直前に刃先をアルコール消毒するか、火で炙って滅菌するようにしています。切り口は、表面積を広げて吸水効率を高めるために、節のすぐ下(5mm程度)で斜め45度にスパッと一息にカットします。さらに、その切り口の反対側からも少しだけ切り込みを入れる「くさび形」に整えると、より多くの水分を吸収できるようになりますよ。
次に、挿し穂のエネルギーバランスを調整するために、葉の整理を行います。
1. 下の方にある数枚の葉は、丁寧に取り除きます。土に埋まる部分に葉が残っていると、そこから腐敗が始まってしまうからです。
2. 上の方に残す葉は、光合成ができる最低限の量(3〜4枚程度)に絞ります。
3. もし葉が大きい場合は、ハサミで横に半分カットして面積を小さくします。
これは「蒸散抑制」という、挿し木において非常に重要な工程です。根がない植物は、葉から水分が逃げるスピードに吸水が追いつかないため、あえて葉を減らすことで体内の水分バランスを保たせてあげるわけですね。
挿し穂作りのステップまとめ
- 刃物はアルコールなどで必ず滅菌し、切れ味の良いものを使う
- 節のすぐ下を斜めにカットし、さらに反対側も切ってくさび形にする
- 土に埋まる部分の葉は取り除き、上葉は半分に切って蒸散を抑える
加工が終わった挿し穂は、すぐに水に浸けてあげましょう。この「水揚げ」をしっかり行うことで、挿し穂の細胞の一つ一つに水分が行き渡り、土に挿した後の生存力が格段に高まります。乾かさないように注意しながら、優しく丁寧に扱ってあげてくださいね。この丁寧なひと手間が、数週間後の喜びにつながります。
メネデールやルートンで発根を促進する方法

植物がゼロから根を再生させるのは、人間で言えば大手術からの回復期のようなものです。植物自身が持っている生命力だけでも根は出ますが、やはり適切な「サプリメント」を使ってサポートしてあげると、成功率はぐんと上がります。私がカーネーションの挿し木をするときに、お守りのように必ず使っているのが、植物活力剤のメネデールと、発根促進剤のルートンです。
まずは、カットしたばかりの挿し穂を、メネデールを規定の濃度(一般的には100倍)に薄めた水に浸けます。メネデールには鉄分などがイオンの形で含まれており、切り口の保護や、根がない状態での呼吸を助ける働きがあります。私はいつも1時間から数時間、長いときは一晩じっくりとこの「メネデール浴」をさせています。これで挿し穂の体力がぐんと回復し、土に挿した後の「踏ん張り」が効くようになるんです。この「水揚げ」をしっかりやるかやらないかで、その後の萎れ具合が全く違ってくるから不思議ですよね。
そして、いよいよ土に挿す直前に行うのが、ルートンの塗布です。ルートンは「オーキシン」という発根を促す植物ホルモンを主成分とした粉末状の薬剤です。使い方のコツは、とにかく「欲張らないこと」です。
1. 切り口が少し湿っている状態で、粉をちょんちょんとつけます。
2. 全体に薄くまぶしたら、挿し穂を軽く指で弾いて、余分な粉をトントンと落とします。
厚塗りしてしまうと、逆に切り口の呼吸を妨げたり、土の中で固まって根が出る邪魔をしたりすることがあるので注意してください。「薄く、均一に化粧をする」ようなイメージが理想的です。
これらのアイテムはホームセンターの園芸コーナーで数百円程度で手に入るものです。一つ持っておくと、カーネーション以外の挿し木にも使えてとても便利ですよ。自分たちの代わりに植物を支えてくれる頼もしい味方を、ぜひ活用してみてくださいね。
挿し床に適した土とバーミキュライトの活用

元気な挿し穂が準備できたら、次はその「居場所」となる土選びです。挿し木に使う土において、何よりも優先されるべき絶対条件は「清潔(無菌)」であること、そして「肥料分が全く入っていない」ことです。普段使っている野菜や花用の培養土は、植物を大きく育てるための肥料や未熟な堆肥が入っていることが多く、これが切り口から雑菌が入って腐る最大の原因になってしまいます。挿し木にとっての土は、育つための栄養源ではなく、あくまで「根が出るまでの清潔なベッド」だと考えてくださいね。
私の一押しであり、最も成功率が高いと感じているのがバーミキュライトです。バーミキュライトは鉱物を超高温で加熱処理して作られた人工土壌なので、完全に無菌状態です。保水性が非常に高い一方で通気性も確保されており、根が出ようとしているデリケートな時期の植物にとって最適な環境を提供してくれます。また、赤玉土(小粒)も排水性が良くておすすめですが、バーミキュライトの方が根に優しくフィットする質感があり、挿し穂を支えやすいという利点もあります。
挿し木に最適な用土の比較表
土を鉢に入れたら、あらかじめ割り箸などで2〜3cmの深さの「案内穴」を開けておきましょう。そこに挿し穂をそっと差し込み、周りの土を指の腹で優しく押さえて固定します。いきなり土に突き刺すと、せっかく塗ったルートンが剥がれ落ちたり、大事な切り口が傷ついたりしてしまいます。この「優しく迎え入れる」ひと手間が、成功への隠れたポイントです。植え終わったら、鉢の底から澄んだ水が流れ出るまでたっぷりと水を与え、土と挿し穂をしっかりと密着させてあげましょう。これで、新しい命の挑戦が始まります。
水差しで根を出すメリットと土への移行術

「土に挿すと、中で根が出ているか分からないから不安…」という方に人気なのが、透明な容器に水を入れて育てる水差し(水耕法)です。毎日、茎の切り口から白い根がちょこんと出てきて、少しずつ伸びていく様子を直接目で確認できるのは、何物にも代えがたい喜びですよね。根が出たことが一目でわかるので、「ちゃんと生きてる!」という確信が持てるのが最大のメリットです。私も新しい品種を増やすときは、変化が楽しみでついつい水差しを選んでしまうことがあります。
水差しで管理する場合のコツは、とにかく「水の鮮度」を保つことです。2日に1回、できれば毎日新しい水に取り替えてあげてください。また、水の中にメネデールを数滴垂らしておくと、発根がぐんとスムーズになります。置き場所は、明るいけれど直射日光の当たらない場所が最適です。強い日が当たると水温が上がりすぎて茎が茹で上がってしまったり、藻が発生したりするので注意してくださいね。キッチンのカウンターや、カーテン越しの窓際などがちょうど良い環境だと思います。
ただし、ここで一つだけ覚えておいてほしい非常に重要なことがあります。水の中で育った根(水耕根)は、土の中の根とは少し性質が違うんです。水耕用の根は酸素を水から取り込むように特化しており、土という物理的な抵抗や異なる酸素環境に置かれると、すぐには適応できません。そのため、水差しから土へ移行させるタイミングと、その後のフォローがその後の成長を左右します。
水差しで根を確認できたからといって油断せず、この「土への移行」を丁寧に行うことで、水差しのメリットを最大限に活かしつつ、最終的に外の環境にも負けない丈夫な株へと育て上げることができますよ。
切り花のカーネーションを挿し木で育てる管理技術
無事に挿し木を終えたら、次は「管理」のステージに入ります。ここから根がしっかりと張って、新しい葉が次々と展開してくるまでの数週間が、一番ハラハラし、かつ重要な時期です。特別な設備がなくても、家庭にあるものを活用して定着率を劇的に上げるテクニックについて詳しくお話ししますね。
ペットボトルを使った密閉挿しで湿度を保つ

根がない状態の挿し穂にとって、命に関わる最大の脅威は「乾燥」です。土から水を吸い上げる機能がまだ備わっていないのに、葉からは太陽の熱や空気の乾燥によって水分がどんどん逃げ出してしまいます。このアンバランスを解消するために、私が自信を持っておすすめしているのが、ペットボトルを活用した「密閉挿し」という手法です。
作り方は驚くほどシンプルで、お金もかかりません。
1. 1.5リットルまたは2リットルの透明なペットボトルを用意します(中が見えるもの)。
2. カッターで底の部分を切り抜きます。
3. 挿し木をした鉢の上に、ドームのようにスッポリと被せます。
4. 飲み口のキャップは、最初の数週間は閉めたままにしておきます。
これだけで、ペットボトルの中は湿度がほぼ100%に保たれます。葉から水分が逃げようとしても、周りの空気がすでに水蒸気でいっぱい(飽和状態)なので、蒸散が強制的にストップするんですね。まさに「小さな温室」です。ペットボトルの内側に水滴がびっしりついていれば、うまく湿度が保たれている証拠ですよ。
置く場所は、直射日光の当たらない「明るい日陰」が鉄則です。直射日光が当たると、ペットボトルの中が恐ろしいほどの高温になり、植物が蒸れ死んでしまいます。2〜3週間ほどして、新しい芽が動き出し、根が出ている気配を感じたら、キャップを外して少しずつ外の空気に慣らしていきます。この「順化(じゅんか)」のプロセスを数日かけてゆっくり行うことで、環境の変化に負けない強い苗に仕上がります。この方法を知ってから、私の挿し木の成功率は飛躍的に向上しました。ぜひ皆さんも試してみてくださいね。
冬の寒さから守る室内での栽培対策
冬にカーネーションの挿し木に挑戦する場合、一番の敵は「低温」です。カーネーションの細胞が元気に活動し、新しい組織を作り出すためには、やはり最低でも15度前後、できれば20度くらいの地温を確保したいところ。屋外は寒すぎますし、かといって室内も工夫なしでは難しいのが冬の栽培の現実です。私自身、冬の寒さで発根が止まってしまい、何度も苦い経験をしてきました。
冬の管理場所として最も適しているのは、室内の「明るい窓際」です。日中は太陽の光で暖かくなりますが、注意が必要なのは夜間です。冬の窓際は外気の影響をダイレクトに受けて、夜中に一気に温度が氷点下近くまで下がることがあります。私は夜寝る前には、鉢を窓際から部屋の中央のテーブルの上などに移動させるようにしています。また、冷たいフローリングに直接鉢を置くのは避けましょう。段ボールや発泡スチロールの板を敷くだけでも、下からの「底冷え」を防いで地温を保つのに大きな効果がありますよ。
また、冬の室内は暖房の影響で想像以上にカラカラに乾燥しています。この乾燥は、まだ根が十分に機能していない苗にとっては致命傷になりかねません。先ほどのペットボトルドームは冬の乾燥対策としても非常に優秀ですが、ドームを使わない場合は、霧吹きでこまめに葉を湿らせてあげる「葉水(はみず)」を習慣にしましょう。朝晩の葉水は、乾燥を防ぐだけでなく、冬に発生しやすい害虫の予防にもなるんです。「植物と一緒に冬を越す」という気持ちで、毎日の変化を楽しんで観察してあげてくださいね。
鉢上げのタイミングと植え付けの注意点

挿し木を開始してから、早ければ2週間、通常は1ヶ月ほど経つと、挿し穂に嬉しい変化が現れます。芽の先端が数ミリ伸びてきたり、葉の色が以前より濃くツヤっとしてきたりしたら、それは地中で新しい根がしっかりと活動し始めている素晴らしいサインです。鉢の底から白い根がひょっこり顔を出していたり、指で軽くつまんで抵抗を感じるようになったら、いよいよ「自立」の時、鉢上げ(植え替え)を行いましょう。
鉢上げをするときは、まず3号(直径9cm)程度のポリポットや鉢を用意します。いきなり大きな鉢に植えないのが最大のコツです。土の量が多いと乾きが遅くなり、まだ未発達な根が酸欠を起こして腐ってしまう「根腐れ」の原因になるからです。土は、市販の「花と野菜の培養土」をベースに、さらに排水性を高める工夫をしましょう。私は培養土に鹿沼土(小粒)やパーライトを2割ほど混ぜて、水はけが良くなるように調整しています。
植え付け時の注意点は、「根を絶対に傷つけないこと」と「深植えを避けること」です。
1. 挿し木床から苗を抜くときは、スコップで周りの土ごと大きくすくい上げます。根を引っ張るのは厳禁です!
2. 新しい鉢に少し土を入れ、苗をそっと配置します。
3. 茎が深く埋まらないよう、根の付け根が土の表面と同じか、むしろ1cmほど高くなるように植える「高植え」を意識してください。
カーネーションは株元の蒸れに極端に弱く、深く植えすぎるとそこから「立枯病」などの病気が発生しやすくなります。土を盛りすぎず、風通しの良い「首元」を作ってあげることが、その後の健康な成長を左右します。植え替え後はたっぷりと水をやり、1週間ほどは直射日光を避けた明るい日陰で、新しい土に馴染むのをじっくり待ってあげてくださいね。
摘心で株を大きく仕立てるメンテナンス

鉢上げしたカーネーションが順調に根付き、背丈が10cmから15cmくらいまで伸びてくると、多くの人が「よしよし、このままどんどん大きく育って!」と期待を込めて見守ります。でも、ここで一つ大切なメンテナンスが必要になります。そのまま一本の茎を伸ばし続けると、カーネーションはひょろひょろとした一本立ちになり、てっぺんに一輪だけお花を咲かせて終わってしまうんです。お花屋さんで見かけるような、枝がたくさん分かれてボリュームのある姿にするためには、「摘心(てきしん/ピンチ)」という作業が絶対に欠かせません。
摘心とは、成長している茎の先端をハサミでカットすること。これを行うことで、植物が本来持っている「頂芽優勢(てっぺんの芽が一番伸びようとする性質)」が解除され、眠っていた下の節の脇芽たちが「自分たちの出番だ!」と一斉に伸び始めます。これを繰り返すことで、枝が2本、4本、8本と倍々に増えていくわけですね。
具体的な手順は以下の通りです。
1. 下から数えて5〜6節(葉が出ている場所)くらいを残し、その上の茎を清潔なハサミでカットします。
2. 数日すると、残した節の付け根から新しい脇芽がニョキニョキと出てきます。
3. その脇芽がまた数センチ伸びてきたら、さらにその先を2〜3節目でカットします。
最初は「せっかく伸びたのに切るなんて…」と勇気がいりますが、この勇気が将来の「満開の鉢植え」を作るための唯一の方法です。切った先端がもし元気な葉芽であれば、それをまた別の鉢に挿して、さらに株を増やすことだってできるんですよ。ガーデニングは、切ることで増える。そんな不思議な体験をぜひ楽しんでみてください。
灰色かび病やハダニの被害を防ぐ防除法
一生懸命育ててきたカーネーションの苗が、ある日突然元気がなくなってしまったらショックですよね。挿し木から育った若い株は、まだ組織が柔らかく、環境の変化や病害虫に敏感です。特に、日本の四季の中で注意しなければならないのが、長雨の時期の「灰色かび病」と、乾燥期の「ハダニ」です。これらを未然に防ぐことが、美しい花を咲かせるための最後の関門になります。
灰色かび病は、花弁や葉、茎に灰色のカビが生え、そのままドロドロに軟化して腐ってしまう病気です。原因はズバリ「多湿と蒸れ」です。水やりの時に葉にお水をかけすぎないよう、株元の土に直接与えるようにしましょう。また、枯れた下葉や終わった花(花がら)は、カビの温床になる前にこまめに取り除くことが大切です。風通しを良くしておくことが最大の予防策になります。私は混み合った枝を間引いて、株の中まで風が通るように意識しています。
一方で、ハダニは目に見えないほど小さな害虫で、葉の裏に寄生して栄養を吸い取ります。被害に遭うと、葉の表面に白いカスリ状の斑点が出て、全体的に白っぽくカサカサした印象になってしまいます。ハダニは乾燥した環境を好むので、日頃の霧吹き(葉水)が非常に有効な予防策になります。葉の裏側にもしっかりお水がかかるようにスプレーしてあげてくださいね。水はハダニにとって最大の弱点なんです。
カーネーションの切り花を挿し木で成功させるまとめ
カーネーションの切り花から挿し木を成功させ、自分だけの一鉢を育てる道のりは、決して短くはありません。でも、毎日少しずつ変化していく様子を観察し、新しい芽が動き出し、土を突き破って白い根が伸びてくる感動は、何物にも代えがたい喜びがあります。お花屋さんで買った時はただの「鑑賞物」だったものが、自分の手で命をつなぐことで、家族のような深い愛着のあるパートナーに変わっていく。それこそが園芸の素晴らしさであり、醍醐味だと私は思います。この記事でご紹介したコツを一つ一つ実践していけば、きっとあなたの大切な思い出のカーネーションも、また新しい花を咲かせてくれるはずです。まずは一本の小さな芽から、新しい挑戦を始めてみませんか。
この記事の要点まとめ
- 挿し木の成功率は春の4月から6月と秋の9月から10月が最も高い
- 脇芽は先端が鋭く尖った葉芽を絶対に選ぶのが最大のコツ
- 清潔で鋭利な刃物を使い節のすぐ下を斜め45度にカットする
- 下葉を丁寧に取り除き上葉を半分に切って蒸散を最小限に抑える
- メネデールで体力を回復させルートンで発根を強力にサポートする
- 用土はバーミキュライトなどの清潔で肥料の入っていないものを選ぶ
- 土に挿すときはあらかじめ穴を開けてから優しく挿入して固定する
- 水差しでの発根後は根が伸びすぎる前に早めに土へ植え替える
- ペットボトルドームを活用して湿度100パーセントの状態を維持する
- 冬の管理は室内の明るい場所で夜間の冷え込みと底冷えを徹底して防ぐ
- 新しい芽がツヤよく伸びてきたら根が出た証拠なので鉢上げを検討する
- 鉢上げ時は根を傷つけないよう注意し株元の蒸れを防ぐため高植えにする
- 摘心を数回繰り返すことで枝数を増やしボリュームのある株に仕立てる
- 風通しを確保し日頃の葉水で灰色かび病やハダニの被害を未然に防ぐ
- 正確な栽培情報については公式サイトや専門家の助言も併せて参考にする
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