こんにちは、My Garden 編集部です。
庭を彩る大きなボールのようなアリウム、本当に素敵ですよね。でも、花が終わった後にそのままにしておいて、翌年芽が出なかったという悲しい経験をしたことはありませんか。実は、日本特有の気候のせいで、アリウム球根掘り上げのタイミングやその後の管理を間違えると、土の中で球根が腐ってしまうことがよくあるんです。せっかく手に入れたお気に入りの品種をリンクさせて楽しむために、私と一緒に正しいケアの方法をチェックしていきましょう。この記事では、失敗しがちなポイントや具体的な保存の仕方を分かりやすく解説します。アリウム球根掘り上げ時期の目安や、植えっぱなしにできる品種の見分け方、さらには腐るのを防ぐための消毒方法まで、役立つ情報を詰め込みました。
この記事のポイント
- 日本の気候に合わせた腐らせないための掘り上げ時期が分かる
- 大型のアリウムと小型の品種で異なる管理方法の使い分け
- 保存中の病気から守るための消毒や乾燥の具体的なステップ
- 翌年も美しい花を咲かせるための植え付け環境の整え方
初心者でも失敗しないアリウム球根掘り上げの基本
アリウムを毎年美しく咲かせるためには、まず「なぜ掘り上げる必要があるのか」という根本的な理由を知ることが大切です。ここでは、初心者が最初につまずきやすい原因と、作業の基礎知識について、私の失敗談も交えながら詳しくお伝えしますね。私も最初は「植えっぱなしの方が楽でいいな」なんて甘く考えていましたが、日本の過酷な夏を知れば知るほど、この作業がどれほど重要か身に染みてわかるようになりました。
日本の夏にアリウムの球根が腐る原因と生理的背景

アリウムの仲間は、もともと中央アジアから地中海沿岸にかけての、乾燥した高地や夏季にほとんど雨が降らない地域を原産としています。こうした地域では、植物は厳しい夏を乗り切るために地下の球根にすべてのエネルギーを蓄え、完全に活動を止める「休眠」という生存戦略を選んできました。しかし、日本はどうでしょうか。梅雨という長雨のシーズンがあり、その後には高温多湿な夏がやってきます。アリウムにとって、この湿気は生理的に最も受け入れがたい環境なんですね。休眠中である夏に土の中が湿りすぎると、球根の表面から酸素を取り込めなくなって呼吸困難に陥り、そこから腐敗菌が爆発的に繁殖しやすくなります。
特に問題となるのが、土壌の中に潜んでいる「軟腐病菌(Erwinia carotovora)」などの細菌です。これらの菌は、土の温度が25℃を超え、かつ水分が豊富にある状況で猛烈に増殖します。休眠中の球根は自らの防御機能が低下しているため、菌の侵入を簡単に許してしまうんです。気が付いた時には、球根の内部が粘液状に溶け、独特の嫌な臭いを放つ状態になってしまいます。これが「翌年に芽が出ない」最大の理由です。また、アリウムは球根の中に多くの水分とデンプンを蓄えており、これが菌にとって最高の栄養源になってしまうという皮肉な一面もあります。そのため、物理的に土から取り出して、彼らが本来望んでいる「乾燥した環境」を私たちが人工的に作ってあげなければならないのです。この「救出作業」こそが、日本での栽培における成功の鍵となります。
アリウムギガンチウムは植えっぱなしにできるのか
インパクトのある大きな紫色のボールのような花を咲かせる「アリウム・ギガンチウム」は、庭の主役として非常に人気があります。しかし、残念ながら日本の多くの地域では植えっぱなしにするのは非常に難しいのが現状です。その理由は、ギガンチウムの球根の構造にあります。この品種はアリウム属の中でも最大級の球根を持ちますが、その分、内部に保持している水分割合が非常に高く、組織が比較的柔らかいんです。テニスボールほどの大きさになるこの巨大な組織が、日本の蒸し暑い土の中に数ヶ月放置されると、まるでスポンジが腐るように一気に傷んでしまいます。
私自身、過去に一度だけ「水はけの良い場所だから大丈夫だろう」とギガンチウムを植えっぱなしにしたことがあります。しかし、翌春に芽が出てくることはありませんでした。掘り返してみると、そこには黒ずんでドロドロになった球根の残骸があるだけ…。大型種はエネルギーを大量に蓄えている分、一度腐敗が始まるとそのスピードも驚くほど速いんです。水はけが非常に良い砂質の土壌であったとしても、日本の平均的な降雨量と湿度はギガンチウムの許容範囲を大きく超えています。もし、毎年確実に見事な大輪を咲かせたいのであれば、手間はかかりますが梅雨が本格化する前に毎年掘り上げることを強くおすすめします。
ただし、例外的な地域もあります。例えば北海道や東北の寒冷地、あるいは標高の高い高原地帯など、夏の間も土の温度が低く保たれ、湿気がこもりにくい場所であれば、数年間は植えっぱなしでも夏越しができるケースがあります。それでも、アリウムは分球(球根が分かれること)しにくい大型種であっても、長年同じ場所に置くと土壌の栄養バランスが崩れたり、連作障害が発生したりします。結局のところ、美しさを維持するためには定期的な掘り上げが欠かせないのです。
種類や品種で判断する球根掘り上げの必要性と基準

アリウムと一口に言っても、世界中に数百もの種類が存在するため、実は掘り上げが必要なものと、そうでないものに分かれます。この基準を正しく理解しておくと、すべての株を毎年掘り上げるという重労働を避けることができ、スマートなガーデニングが楽しめます。判断の目安となるのは、やはり「球根のサイズ」と「原産地の環境に近いかどうか」です。一般的に、大きな花を咲かせるものほど管理が難しく、小ぶりな花をたくさん咲かせるものほど日本の気候に馴染みやすい傾向があります。
| タイプ | 代表的な品種名 | 掘り上げの推奨頻度 | 栽培の難易度と特徴 |
|---|---|---|---|
| 大球性 | ギガンチウム、グローブマスター、ホワイトジャイアント | 毎年必ず行う | 非常に腐りやすく、日本の夏には最も不向き。掘り上げは必須。 |
| 中球性 | シュベルティ、クリストフィ、アンバサダー | 毎年〜1年おき | 造形美が素晴らしい。腐敗リスクは高いが、乾燥管理で維持可能。 |
| 小球性 | コワニー(ネアポリタヌム)、モーリー、ユニフォリウム | 2〜3年に1回 | 非常に強健。植えっぱなしでも増えるが、過密による花付き低下を防ぐため更新。 |
コワニーやモーリーなどの小型種は非常にタフで、日本の梅雨も平気な顔で乗り越えてくれることが多いです。これらは「植えっぱなし」で数年楽しむのが一般的ですが、放っておくと今度は「過密」という別の問題が発生します。球根が分球してどんどん増えていくため、土の中が球根でギッシリ埋まってしまうんですね。そうなると、一つ一つの球根に十分な栄養が行き渡らなくなり、葉っぱばかりが茂って花が咲かない「観葉植物状態」になってしまいます。そのため、3年周期くらいで一度掘り上げ、球根を整理して植え直してあげるのが、長く楽しむための秘訣です。自分の育てている品種がどちらのタイプか迷ったら、まずは「大きいものは毎年、小さいものは3年に一度」と覚えておけば間違いありません。不安な場合は、購入時のタグを確認するか、球根の直径が5cmを超えるかどうかを一つの基準にしてみてください。
葉の色や枯れ具合で決まる掘り上げの最適な時期

「いつ掘ればいいの?」という疑問に対する答えは、カレンダーの日付よりも、目の前のアリウムが発しているサインに隠されています。その最大のサインこそが「葉っぱの状態」です。花が終わった直後のアリウムは、地上部がまだ緑色をしていますよね。この時期、球根の中では非常に重要な「養分転流」というプロセスが行われています。葉が光合成で作ったデンプンを、じわじわと地下の球根へと送り届けている真っ最中なんです。このプロセスを妨げてしまうと、来年の花芽が作られなかったり、球根が痩せてしまったりします。私はこの時期を「来年のための貯金期間」と考えて、葉を大切に見守るようにしています。
適切なタイミングを見極める「三段階のサイン」
まず、5月から6月にかけて花が色褪せ、形が崩れてきたら、最初のステップとして「花首」のところでカットしましょう。これは、植物が「種」を作るためにエネルギーを浪費するのを防ぎ、すべての力を球根へ集中させるためです。次に、葉の先端からじわじわと黄色く変色し始めるのを待ちます。最終的な掘り上げの目安は、全体の3分の2ほどが枯れて、茶色っぽくなってきたタイミングです。これが休眠への準備が完了したという合図です。地域にもよりますが、だいたい6月上旬から中旬、本格的な梅雨の長雨が続く直前に行うのがベストタイミングとなります。
「早すぎ」と「遅すぎ」のデメリット
もし、葉がまだ青々としているうちに掘ってしまうと、球根の充実不足を招きます。逆に、葉が完全にカラカラに乾いて消えてしまうまで待つのも危険です。地上部がなくなると、どこに球根があるか正確に分からなくなり、掘る時にシャベルで大切な球根を真っ二つに…なんて悲劇が起きてしまいます。また、完全に枯れるまで放置すると、日本の梅雨にどっぷり浸かってしまい、掘り出す前に土の中で腐敗が始まってしまうリスクも高まります。葉が少し黄色くなり、くたっとしてきた「今」こそが、安全に救出できるクリティカルな窓なんです。このタイミングを逃さないことが、翌年の成功への第一歩となります。
球根を傷つけないための掘り上げの正しい方法とコツ

いよいよ掘り上げ作業に入りますが、ここで最も大切なのは「天気」です。必ず、土がカラカラに乾いている晴天の日を選んでください。湿った土の状態で掘ると、球根の表面に泥がびっしりと付き、それが乾くまでの間に菌が繁殖したり、皮が剥がれたりしてしまいます。また、乾いた状態で掘る方が土がホロホロと落ちやすく、球根を傷つけるリスクを最小限に抑えられます。作業を始める前に、まずは茎の周りに残っている雑草を抜き、球根の正確な位置を予測しましょう。
シャベルを入れる距離と深さの秘訣
掘る際、茎のすぐ近くにシャベルを突き立てるのは厳禁です。アリウムの球根は、品種によっては横方向に新しい球根(子球)を作っていることがあります。そのため、茎の付け根から少なくとも20〜30cmは離れた場所に、垂直に深くシャベルを入れましょう。一度に掘り出そうとせず、株の周囲を円を描くように3〜4箇所シャベルを入れ、土をゆっくりと浮かせます。アリウムの根は意外と太くて深く張っているため、強引に引き抜くと球根の底にある「基盤部」という大事な部分を剥がしてしまう恐れがあります。基盤部が傷つくと、そこから病原菌が入りやすく、保存中に腐る原因になるので注意が必要です。
土落としは「優しく・丁寧に」が鉄則
土が十分に浮き上がったら、あとは自分の手を使って優しく土をほぐしながら、宝探しをするような感覚で球根を救出します。掘り上げたばかりの球根は、外皮がまだ生っぽく、非常にデリケートです。爪で引っ掻いたり、硬いブラシでこすったりしてはいけません。大きな土の塊を手で落としたら、あとは風に当てて自然に乾くのを待ちます。水洗いは原則として推奨しません。水分はアリウムにとって最大の天敵だからです。どうしても汚れが気になる場合は、後述する消毒の際に一緒に落とすか、完全に乾いた後に柔らかい布で軽く拭う程度に留めましょう。私はいつも、新聞紙の上に広げて半日ほど陰干しをしてから、残った土をパラパラと落とすようにしています。これが球根を最も傷めない、一番優しい方法だと思っています。
感染症を防ぐためのハサミの消毒やツールの管理

園芸を楽しむ上で、意外と盲点なのがツールの衛生管理です。アリウムはネギ属の植物であり、ネギ類に特有の「モザイク病」などのウイルス性疾患にかかることがあります。これらのウイルスは、ハサミの刃に付着した汁液を通じて健康な株へと次々に伝染していくんです。もし、あなたの庭に一株でも病気にかかったアリウムがあれば、同じハサミで次々と茎を切っていくことで、庭全体を全滅させてしまうリスクがあります。ウイルス性の病気には特効薬がないため、予防こそが最大の防御になります。
ハサミを消毒するプロの習慣
面倒かもしれませんが、一株ごとにハサミの刃をアルコールで拭くか、ライターなどで軽く炙る「火炎消毒」を行うのが、大切なコレクションを守るための鉄則です。私はいつも、携帯用の除菌スプレーとティッシュを作業用ポーチに入れておき、株が変わるたびに刃を拭くようにしています。また、使用後のシャベルやピンセットなども、土に含まれる菌を他の場所へ持ち込まないよう、作業が終わるたびに水洗いしてしっかり乾かし、できれば消毒しておきましょう。こうした「ちょっとした手間」を惜しまないことが、数年後の庭の健全さを決定づけます。
栽培者自身の安全を守るために
また、球根の汁液には「アリシン」などの硫黄化合物が含まれており、これが原因で皮膚がかぶれてしまうことがあります。特に掘り上げたばかりの新鮮な球根は成分が強いため、直接触れると痒みや湿疹が出ることがあります。敏感肌の方はもちろん、そうでない方もビニール手袋や軍手を着用して作業することをおすすめします。もし汁液が肌についてしまったら、すぐに石鹸と流水で十分に洗い流してくださいね。植物の健康を守ると同時に、自分自身の健康を守ることも忘れないでください。安全に作業を終えることができてこそ、心からガーデニングを楽しめるというものです。
アリウム球根掘り上げ後の適切な保存と植え付け方
無事に土の中から救出した後も、安心するのはまだ早いです。秋の植え付けまでの約4ヶ月間、球根は眠りながらも呼吸を続けています。この「夏休み」の期間を、いかに快適な環境で過ごさせてあげられるかが、来春の満開を左右する運命の分かれ道となります。ここでは、私が長年実践してきた、球根を腐らせないための保存テクニックと、再び土に還す際の重要なポイントを、ステップバイステップで詳しく解説していきます。
保存中の病害虫を防ぐベンレートでの消毒と乾燥

掘り上げたばかりの球根は、見た目がどんなに綺麗でも、目に見えない病原菌やカビの胞子が付着していることがよくあります。これをそのまま放置して保存すると、夏の高温多湿な空気によって菌が活性化し、秋に植える頃には中身がスカスカになっていたり、黒カビに覆われていたりする…という失敗が非常に多いんです。そこで、プロの園芸家も必ずと言っていいほど行っているのが、殺菌剤による「球根消毒」です。これを行うことで、保存中の生存率が劇的に向上します。
ベンレート水和剤を使った消毒の実践
最も一般的で信頼性が高いのは「ベンレート水和剤」です。まず、バケツに水を入れ、規定の倍率(球根消毒の場合は250〜500倍程度が目安)に薄めた液を作ります。この薬液に、ネットに入れた球根を30分ほど浸し、じっくりと薬を染み込ませます。消毒が終わったら、ここで一番大事なポイントですが、水で洗い流してはいけません。薬の成分が球根の表面に残ることで、保存中のバリアになってくれるからです。浸漬後は、新聞紙などの上に広げ、風通しの良い日陰で表面が完全に乾くまで数日間しっかり陰干しします。この「消毒後の完全乾燥」が、保存成功の絶対条件です。湿ったまま袋に入れると、逆効果になってしまうので注意してください。
腐敗個体の「厳格な淘汰」
消毒作業の際、一つ一つの球根を手に取って感触を確かめてみましょう。表面に茶色い斑点があるもの、押すとブヨブヨして柔らかいもの、あるいは酸っぱいような異臭がするものは、すでに内部で腐敗が進んでいます。これらの個体は、どんなに強力な消毒薬を使っても救い出すことはできません。それどころか、一緒に保存することで健康な球根まで腐らせてしまう「時限爆弾」になります。もったいないという気持ちは痛いほど分かりますが、異常を感じた球根は迷わず破棄し、完璧に健康なものだけを選別してください。この厳格さが、来年の美しい花壇を約束してくれます。
ネットや紙袋を利用した風通しの良い日陰での保存

消毒と乾燥が終わったら、いよいよ夏越しの場所を決めます。アリウムの保存において、最も避けるべきは「高温」と「蒸れ」です。よくやりがちな失敗が、綺麗に拭いた球根をビニール袋に入れて机の引き出しなどにしまってしまうこと。これでは球根から出るわずかな水分が袋の中にこもり、サウナのような状態になってしまいます。休眠中の球根は、実は非常にゆっくりと呼吸しており、熱を発しています。その熱と水分を逃がしてあげることが、保存の鉄則です。
理想的な保存容器と環境
私が最もおすすめするのは、「玉ねぎやミカンが入っているネット袋」です。これなら360度すべての方向から空気が通り、湿気がこもることがありません。ネットに入れた球根は、直射日光の当たらない、北側の風通しの良い軒下などに吊るしておきましょう。室内で保管する場合は、エアコンの風が直接当たらない、涼しい暗所(床下収納や玄関の隅など)を選んでください。もしネットがない場合は、厚手の紙袋に入れて口を軽く閉じる方法もありますが、この場合は時々中をかき混ぜて空気を入れ替えてあげる必要があります。
夏休みの「中間点検」を忘れずに
一度吊るしたら植え付けまで放置…ではなく、月に一度は「夏休みの宿題チェック」のように様子を見てあげてください。触ってみて極端に軽くなっていないか(乾燥しすぎ)、嫌な臭いがしないか、あるいはナメクジなどが侵入していないかを確認します。もし周囲に腐りかけたものがあればすぐに取り除き、環境をリセットしましょう。このひと手間を惜しまないことで、球根との信頼関係が深まり、秋の植え付けを万全の状態で迎えることができるんです。手間暇をかけた分だけ、春の花は美しく輝きます。
分球や木子の回収でアリウムを効率よく増やす方法
アリウム球根掘り上げの最もエキサイティングな瞬間、それは「新しい命」との対面です。アリウムは、親となる大きな球根の脇に新しい小さな球根を作ることで増えていきます。掘り上げた際に、球根の根元に子供のような小さな球根がくっついているのを見つけたら、それはあなたの庭にアリウムの予備軍が増えたという素晴らしいニュースです。これを活用しない手はありません。
自然な「分球」を促す方法
親球の横についている子球は、手で軽く触れてポロッと取れるようなら、すでに独立する準備ができています。無理にナイフで切り分けようとすると、親球の基盤部を傷つけ、そこから腐ってしまうリスクがあります。もし、しっかりとくっついている場合は、無理に剥がさずそのまま植え付けても大丈夫です。取れた子球も、親球と同じように消毒・乾燥させて保存しましょう。これらは来年、あるいは再来年には親球と同じ立派な花を咲かせてくれる、大切な「クローン」になります。
「木子(きご)」をじっくり育てる楽しみ
さらに、球根の表面にゴマ粒や小さなパールのような白い粒がたくさん付着していることがあります。これが「木子」と呼ばれる、球根の赤ちゃんです。これらは非常に小さいため、すぐに花を咲かせることはできません。開花サイズまで育てるには、通常3年から5年ほどの月日が必要になります。私は、こうした木子を捨てずに集めて、プランターなどにまとめて植え、「アリウム保育園」として育てています。毎年少しずつ大きくなっていく姿を見るのは、大型種を咲かせるのとはまた別の、育種家のような深い喜びがありますよ。時間はかかりますが、自分の手で増やしたアリウムが初めて咲いた時の感動は、言葉では言い表せないほどです。
植え付けの深さと苦土石灰を用いた土壌環境の整備

10月になり、金木犀の香りが漂い始める頃、いよいよ球根を土に還す「定植」の時期がやってきます。アリウムは「水はけが良く、適度な栄養があり、かつ酸性でない土」を好みます。日本の土壌は雨が多く、どうしても酸性に傾きがちです。アリウムを植える場所が決まったら、植え付けの2週間前までに準備を始めましょう。
土づくりの黄金比と酸度調整
まずは、苦土石灰(くどせっかい)を1平米あたり100g〜150gほど撒き、土を深く耕して中和させます。さらに、完熟した腐葉土や堆肥をたっぷりと混ぜ込み、ふかふかの土を作ります。もし、粘土質の土壌で水はけに不安がある場合は、川砂やパーライトを1〜2割混ぜ込むと劇的に改善されます。アリウムは「根腐れ」が最大の失敗原因なので、水が溜まらないように高畝(たかうね)にするなどの工夫も効果的です。目標とする土壌のpHは6.0から7.0の弱アルカリ〜中性付近。この土台作りが、春の茎の太さを決定づけます。
理想的な「深植え」と株間距離
植え付ける深さは、球根の高さの2〜3倍くらいを基準にします。例えば、直径5cmのギガンチウムなら、球根の上に15cm程度の土が被るように植えます。初心者は「深すぎて芽が出ないのでは?」と心配して浅く植えがちですが、浅植えは厳禁です。深く植えることで、冬の厳しい寒さから球根を守り、春に1メートル以上にもなる巨大な茎を物理的に支えることができるんです。また、株同士の間隔は、大型種なら30cm程度、小型種でも10cm以上は空けてあげましょう。花が咲いた時に風通しが悪くならないように、ゆとりを持って配置するのが、病気予防のコツでもあります。
アリウムの植え付け条件早見表
| 種類 | 植える深さ(覆土) | 株の間隔(株間) | 土壌の好み |
|---|---|---|---|
| ギガンチウム | 15cm 〜 20cm | 25cm 〜 30cm | 排水性の高い中性土壌 |
| クリストフィ | 10cm 〜 15cm | 20cm 〜 25cm | 多肥を好む、日当たり必須 |
| コワニー | 5cm 〜 7cm | 8cm 〜 12cm | 乾燥気味を好む、群生向き |
犬や猫に危険な球根の毒性と扱う際の皮膚刺激対策

最後にお伝えしなければならないのが、アリウムの持つ「毒性」についてです。見た目は美しく、お料理に使うネギやニンニクと同じ仲間ですが、観賞用のアリウムも、実は動物にとっては非常に危険な成分を含んでいます。特に犬や猫といったペットと一緒に暮らしている方は、細心の注意が必要です。
ペットにとっての「ネギ中毒」のリスク
アリウム属の植物には「有機チオ硫酸化合物」が含まれており、これが犬や猫の体内に入ると、赤血球のヘモグロビンを酸化させ、赤血球自体を破壊してしまいます。その結果、「溶血性貧血」という非常に重篤な症状を引き起こします。掘り上げたばかりの球根は成分が濃縮されており、興味本位で少しかじっただけでも、嘔吐や下痢、血尿、粘膜の蒼白といった症状が出ることがあります。掘り上げ作業中に目を離した隙に…という事故が最も多いため、作業中はペットを近づけない、あるいは球根を出しっぱなしにしないといった管理を徹底してください。
人間への皮膚刺激と対処法
私たち人間にとっても、球根の汁液に含まれる硫黄化合物は刺激物となります。茎を切ったり球根の皮を剥いたりした際に、指先がピリピリとしたり、赤く腫れたりすることがあります。これは一種の「接触性皮膚炎」ですので、作業後は必ず石鹸を使って念入りに手を洗い、できれば作業中から薄手のゴム手袋を着用するのが一番の解決策です。また、球根の乾燥中に出る微細な粉末が目に入ると痛むこともあるため、風の強い日の作業にはゴーグルをするなど、自分自身の体を守る工夫も忘れないでくださいね。正しい知識を持って扱うことで、リスクを最小限に抑え、アリウムの美しさを純粋に楽しむことができます。
失敗を防ぐアリウム球根掘り上げの重要ポイントまとめ
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!アリウムの管理は確かに手間がかかる部分もありますが、それを補って余りあるほどの魅力がこの花にはあります。日本のジメジメした過酷な夏から、あなたの大切な球根を救い出してあげられるのは、育てているあなただけです。この記事でご紹介した、掘り上げのタイミング、適切な道具の管理、そして徹底した消毒と乾燥のサイクル。これら一つひとつを丁寧に行えば、来年の春、青空をバックに凛と咲き誇るあのアリウムの姿を、再び自分の庭で見ることができるはずです。
ガーデニングは、自然との対話です。植物が何を嫌がり、何を求めているのかを理解してあげることで、彼らは想像以上の美しさで応えてくれます。もし途中でやり方が分からなくなったり、球根に異変を感じたりしたら、またこの記事を読み返してみてください。そして、正確な薬剤の使用や病気の詳しい診断については、信頼できる園芸専門店のアドバイザーさんに相談しながら進めるのが、最も賢く、確実な方法です。あなたの庭に、来年も見事なアリウムが咲き誇ることを心から応援しています。さあ、今年の夏は、愛着のある球根を一緒に救出してあげましょう!アリウム球根掘り上げというこの小さな手間が、大きな感動へと繋がることを願っています。
この記事の要点まとめ
- 日本は高温多湿なためアリウムは休眠中の夏に腐りやすい
- 大型種のギガンチウムなどは毎年掘り上げるのが成功の秘訣
- 小型種は2から3年に一度の掘り上げで植えっぱなしでも楽しめる
- 掘り上げる合図は葉が黄色く全体の3分の2ほど枯れたとき
- 梅雨入り前の晴天の日に土が乾いた状態で作業を行う
- シャベルは株から離して深く入れ球根を傷つけないよう掘り出す
- 道具はウイルス感染を防ぐために一株ごとに消毒するのが理想
- 掘り上げた球根はベンレートなどの殺菌剤で消毒して腐敗を防ぐ
- 保存はネット袋などに入れ風通しの良い日陰に吊るしておく
- ビニール袋での保管は蒸れて腐る原因になるので絶対に避ける
- 分球や木子を回収することで効率的に株を増やすことができる
- 植え付け前の土壌には苦土石灰を混ぜて酸度を調整しておく
- 球根の2から3倍の深さに植えることで寒さや倒伏を防止する
- アリウムはペットにとって猛毒なので保管場所には細心の注意を払う
- 最終的な判断は専門家に相談し自己責任で作業を行うことが大切
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